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Resizable BARサポート完了!レイトレ&DLSS対応のNVIDIA GeForce RTX 3080のパワーは素晴らしい!!

定番カード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 Trinity」は今でも一線級 by 芹澤 正芳

 NVIDIAのハイエンドGPU「GeForce RTX 3080」。CUDAコア数は8,704基と前世代のハイエンドGPU「RTX 2080 SUPER」の3,072基から2倍以上も増やし、ビデオメモリには高速なGDDR6Xを10GBとまさにモンスター級のスペックを備える。レイトレーシング用のRTコアも進化し、PCゲーマーのハートを鷲づかみにした。

 そんなRTX 3080は2020年9月に発表されたが、2021年3月30日、CPUからビデオカード上のビデオメモリへのアクセスを効率化する“Resizable BAR”へのサポートが開始された。RTX 3060が先行して対応していたが、それがRTX 30シリーズすべてに拡大された形だ。RTX 3080が文句なしに高性能なのはすでに知られているが、Resizable BARに対応したことでより強まったことになる。これを機に、最新のRTX 3080システムを改めて検証してみたいと思う。

ZOTACのRTX 3080搭載カード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 Trinity」。実売価格は150,000円前後(4月下旬調査時。価格は時期により変動します)

 今回用意したのは、「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 Trinity」。2020年9月17日発売と、いち早く市場に投入されたRTX 3080搭載カードだ。もちろん当時の仕様ではResizable BARに対応していない。ここでは、性能検証だけではなくResizable BARに対応させるための手順も紹介していく。

定格動作できっちり冷やすトリプルファン

 ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 Trinityのブーストクロックは定格の1,710MHzだが、高い冷却力を備える独自の冷却システム「IceStorm 2.0」により、実際の運用ではさらなるクロックの伸びも期待できる。11枚のブレードを備える新たな冷却ファンは前世代よりもエアフローが最大10%増加しており、ヒートシンクやヒートパイプにも改良が加わっているとのことだ。

 3基あるファンは個別に回転数がコントロール可能。冷却が必要な箇所に必要なタイミングでエアフローを発生することにより、冷却力と静音性のバランスをうまく取っている。実際、高負荷時でも十分動作音は静かだ。アイドル時にはファンの回転を停止させる「FREEZE Fan Stop」にも対応する。

 なお、ゲームプレイ中でもGPU温度は72℃程度(バラック組み時)と冷却は十分で、RTX 3080のハイパワーを思い切りブン回しても不安はない。標準設定でのファンの回転数は高負荷時で1,340rpm前後だった。

GPU-Zでの表示。ブーストクロックは定格の1,710MHz
Power Limitの上限値は+5%と低め
ZOTAC独自の冷却システム「IceStorm 2.0」を採用。ファンには11枚のブレードが付いている
メタルダイキャスト製のバックプレートによってボード全体の剛性を高めている

 トリプルファン搭載ということもあり、サイズは317.8×120.7×58mmと、高さは控えめだがかなり長いデザインのカードだ。厚みも3スロット分あるので、ケースに搭載できるか確認しておいたほうがよいだろう。補助電源は8ピン×2で、推奨電源は750W以上だ。ディスプレイ出力はDisplayPort 1.4a×3、HDMI 2.1×1とRTX 30シリーズでは標準的な構成。

補助電源は8ピン×2構成。中央からやや後ろの位置にある。カードは長いが、上方向(高さ)には長くないので、補助電源は挿しやすい
ディスプレイ出力はDisplayPort 1.4a×3、HDMI 2.1×1
天面およびバックプレートのロゴマーク部分にRGB LEDを内蔵している

Resizable BARにはどうやって対応する?

 次に、「Resizable BAR」に対応する手順を一通りお見せする。基本的には、Resizable BAR対応のビデオカード用BIOS(vBIOS)をダウンロードして、アップデートを行なうだけ、と流れそのものは簡単だ。ただし、vBIOSの書き換えは失敗するとPCが起動できなくなるレベルのトラブルにつながる。事前に手順を確認する、作業中に電源を落とさないなど、慎重な作業をお願いしたい。また、Resizable BARを利用するには、CPUとマザーボードの対応も必要なので、動作条件の確認も忘れずにしておきたい。

Resizable BAR対応のvBIOSはZOTACのWebサイトにあるサポートページからダウンロードできる
【Resizable BARの利用に必要な環境】
CPUチップセット
AMD環境Zen 3世代のAMD Ryzen(5000番台)AMD 400/500シリーズチップセット
Intel環境(1)第10世代CoreプロセッサーIntel Z490/H470/B460/H410チップセット
Intel環境(2)第11世代Coreプロセッサー第11世代Coreプロセッサー向けチップセット全製品
※このほかマザーボードの対応も必要(ASRock、ASUSTek、Colorful、EVGA、GIGA-BYTE、MSIのマザーボードが対応)

 まず、ZOTACのWebサイトより「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 Trinity」の製品情報ページから、最新vBIOSをダウンロードする。ダウンロードした圧縮ファイルを展開して実行。あとは完了を待つだけだ。アップデート中に電源が切れると最悪、ビデオカードが使えなくなる。そこだけは注意して作業したい。なお、Resizable BARに対応しているかは、NVIDIAコントロールパネルのシステム情報やGPUの情報を表示するツール「GPU-Z」などで確認できる。

ダウンロードされた圧縮ファイルを展開して「A30800D.rebar_.exe」ファイルを実行する
PCの保護画面(SmartScreen)が表示された場合は「詳細情報」をクリックし、「実行」ボタンをクリックする
コマンドプロンプトの画面が表示され、自動的にvBIOSアップデートが進行して完了する
再起動後、Resizable BARに対応しているか確認しておこう。画面は「GPU-Z」

ベンチマークでResizable BAR対応の実力を見る

 それではベンチマークテストの結果を見ていこう。比較対象としてはRTX 2080 SUPER搭載高OCカード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 SUPER AMP Extreme」を用意した。Resizable BARに対応したゲームに関しては、有効/無効の両方でテストを行なっている。ちなみに、Resizable BARに対応するゲームは原稿執筆時点では17タイトル。AAA級の人気タイトルが中心だ。

 テスト環境は以下のとおり。

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 9 5900X(12コア24スレッド)
マザーボードMSI MPG X570 GAMING EDGE WIFI(AMD X570)
メモリMicron Crucial Ballistix RGB BL2K8G36C16U4BL
(PC4-28800 DDR4 SDRAM 8GB×2)※PC4-25600で動作
システムSSDKingston KC600 SKC600/1024G
(Serial ATA 3.0、1TB)
データSSDCFD PG3VND CSSD-M2B1TPG3VND
[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]
CPUクーラーCorsair iCUE H115i RGB PRO XT CW-9060044-WW
(簡易水冷、28cmクラス)
電源NZXT E Series E850 NP-1PM-E850A
(850W、80PLUS Gold)
OSWindows 10 Pro 64bit版

 まずは定番3Dベンチマークの「3DMark」から見ていこう。前世代のハイエンドGPUだったRTX 2080 SUPERを完全に置き去りにする結果だ。DirectX 11ベースのFire Strikeで約26%の向上、DirectX 12ベースの約35%の向上、レイトレーシング性能を見るPort Royalにいたっては約57%もスコアがアップしている。レイトレーシング用コアが第2世代に進化しているのが効いているのがよく分かる結果だ。

3DMarkの計測結果

 次に消費電力をチェックする。ここではパーツごと消費電力の計測ができる電源ユニットのNZXT E Series E850と、専用モニタリングアプリ「NZXT CAM」を使って、GPU単体の消費電力を測定している。OS起動10分後をアイドル時、3DMark-Time Spyデモモード実行時の最大値を3DMark時とした。

カード単体の消費電力

 カード電力はZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 Trinityが320W、ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 SUPER AMP Extremeが250Wとなっているので、順当な結果と言える。ビデオカード単体で300Wオーバーと、やはり電源は最低750W、できれば850W以上が欲しいところだ。

 それでは実ゲームでの性能を見ていこう。まずは人気のバトルロイヤルゲームの「フォートナイト」から。ソロプレイのリプレイデータを再生した際のフレームレートをCapframeXで測定した。今回は通常の最高画質設定に加え、レイトレーシングを有効にした設定でもテストしている。

フォートナイトの計測結果
フォートナイト(DXR使用)の計測結果

 RTX 3080なら最高画質でもフルHDで約150fpsを出せる。144Hzの高リフレッシュレート液晶と組み合わせても、最高画質でプレイできるのは大きな魅力。4Kでも74.5fpsと十分快適にプレイできるフレームレートとなった。RTX 2080 SUPERでは、4Kだと49.9fpsと快適プレイの目安である60fpsを下回ってしまう。RTX 3080のハイパワーぶりが分かる結果だ。

 その一方でレイトレーシングの画質を最高に設定するとRTX 3080を持ってしてもフルHDで60fpsに届かない。フォートナイトのレイトレーシングは非常に重く、DLSSを有効にしてもフレームレートはあまり伸びない。ゲーム側での改良を期待したいところだ。

 続いて、重量級タイトルでResizable BARにも対応している「ウォッチドッグス レギオン」と「アサシンクリード ヴァルハラ」を試してみた。どちらもゲーム内のベンチマーク機能を使用してフレームレートを測定している。

ウォッチドッグス レギオンの計測結果

 ウォッチドッグス レギオンはレイトレーシングに対応。そのままだとさすがに重いが、DLSSも有効することにより、大幅にフレームレートが改善し、RTX 3080ならDRXを最高品質に設定してもWQHDまでなら60fps以上をキープ可能だ。RTX 2080 SUPERではフルHDで60fpsキープがギリギリ。レイトレーシングが入ると、性能差がより際立ってしまう。Resizable BARの効果に注目してみると、WQHDと4Kで若干の向上が見られた。有効にしてムダになることはなさそうだ。

アサシンクリード ヴァルハラの計測結果

 アサシンクリード ヴァルハラはレイトレーシング非対応だが、非常に動作が重いゲームの一つ。ウォッチドッグス レギオンと同じ傾向だ。RTX 2080 SUPERのフレームレートを大きく上回っている。Resizable BARに注目すると、フルHD解像度で10%近く向上となかなかの効果を見せた。

 最後にゲームプレイ時のGPUクロックと温度の推移をチェックしていこう。サイバーパンク2077を20分間プレイしたときのGPUクロックと温度をモニタリングアプリの「HWiNFO64」で測定した。

Excelの温度とクロックシートを参照

 GPUクロックはおおむね1,770Hz~1,800Hzで推移。定格のブーストクロックを上回るクロックで動作していた。GPU温度はアイドル時はファンが停止するので、最初から温度は高めだが、ほぼ71度、たまに72度に上がる程度と十分冷えている。その辺りは、さすがZOTACの大型クーラー搭載モデルといったところだ。

熟成が進むRTX 30シリーズ、初期勢のカードも魅力がアップ!

 もともとモンスター級の性能を持つRTX 3080だが、Resizable BARをサポートしたことによって、対応タイトルでは小幅ながらもフレームレートのさらなる向上に成功している。Rocket Lakeの登場によってIntel環境でもPCI Express 4.0を利用できる環境が整ったこと(Z590などでResizable BARも利用可能)や、ドライバの成熟度(=各種ゲームや最新ハードへの対応)の高まりもあり、その魅力は増すばかりだ。

 現在、ビデオカードはハイエンドクラスからローエンドクラスまでもれなく品薄。RTX 30シリーズが欲しいけどまだゲットできていないという人は、引き続き「見つけたら買う!」という意気込みで探したいところ。安定動作、かつ高性能を期待できる「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 Trinity」も順次出荷が続けられるとのことなので、手に入る状況になるのが楽しみだ。

[制作協力:ZOTAC]