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USB接続SSDの20Gbps化が約1万円で! USB 3.2 Gen.2x2は今が狙い時かも
M.2対応ケース「ineo C2598 III」で外付SSDが実測2Gbps超、ゲーム起動も高速化 text by 日沼諭史
2021年6月29日 00:01
写真・動画の高画質化、ゲームのクオリティ向上とともに、PCで扱うデータサイズは肥大化の一途だ。それにともなって機器間通信の規格も進化し、より高速なデータ転送が可能になってきている。現在のところ比較的導入しやすく高速な規格は、USB 3.2 Gen.2の最大10Gbps。USB接続のストレージを利用するさいには、この速度の恩恵は計り知れない。
それでも、将来のことを考えればもっと高速な環境を常に追求していきたいもの。そこでおすすめしたいのが、新たな規格であるUSB 3.2 Gen.2x2対応機器へのアップグレードだ。まだあまり耳なじみがない名称かもしれないが、実は既存の10Gbps環境に1万円ほど投資するだけで、最大20GbpsのUSB 3.2 Gen.2x2環境を整えられる。
USB 3.2 Gen.2x2にアップグレードすることでどんなメリットがあるのか、そして実力はどれほどのものなのか、ベンチマークも交えてチェックしてみたい。
USB 3.2 Gen.2x2は高速なのに安価!対応機器も徐々に増えて導入も簡単に
USB 3.2 Gen.2x2は、従来のUSB 3.2 Gen.2を拡張し、10Gbpsを2レーン接続することで最大20Gbpsのデータ転送速度を実現した規格だ。対応するインターフェースとデバイスの組み合わせであれば従来の2倍の速度でデータをやりとりできる。コネクタ形状はType-Cが使われており、以前のUSBデバイスとの互換性も確保している。インターフェースとデバイスのどちらかが古くても、その古い規格の速度で利用可能だ。
しかし、さらに高速でUSBとの互換性ももった、最大40GbpsのThunderbolt 4(USB 4、またはThunderbolt 3)という規格もある。極限まで高速な環境を整えたいならThunderbolt 4にすればいいではないか、という指摘はもっともだが、ネックとなるのはコストだ。
Thunderbolt 3/4に対応するPCは(特にノートPCで)増えてきてはいるものの、いかんせん周辺機器が高価。たとえば1TBの外付SSDを例にとると、USB 3.2 Gen.2(最大10Gbps)対応製品は2万円程度から手に入るが、Thunderbolt 3(40Gbps)対応となると4万円を下ることはない。
パフォーマンスは理論上4倍なので、2倍程度ならその価格差にも納得する人もいるかもしれない。とはいえ、本当に価格差を埋めるほどのメリットが得られるのか、というところまで考えると、投資に二の足を踏みたくなるのも事実だ。
USB 3.2 Gen.2の10Gbpsでも十分に高速ではある。しかし、Thunderbolt 3/4の40Gbpsほどではないにしても、もう少しリーズナブルに、より高速なデータ転送を実現する方法はないものか。そうしたときにおすすめしたいのが、今回のUSB 3.2 Gen.2x2なのである。
USB 3.2 Gen.2x2をおすすめする理由は、なんといっても拡張カードで導入するなら低コストな点。2021年6月現在、USB 3.2 Gen.2x2に対応するデスクトップPC(マザーボード)やノートPCは上位モデルなど一部に限定されているが、PCIeインターフェースカードと、外付ストレージ、または外付ストレージ用ケースなら、数は少ないものの比較的安価なものを見つけられる。
たとえば、すでにUSB 3.2 Gen.2の外付ストレージ(M.2 NVMe SSD内蔵)を利用しているのであれば、PCIeカードと外付SSDケースを追加するだけでUSB 3.2 Gen.2x2化をあっさり実現できる。そのコストはトータルで1万円ほど。10Gbpsから20Gbpsへ2倍に高速化できることを考えれば、コストパフォーマンスはかなり高いと感じるのではないだろうか。
6/29 3:45更新 USB 3.2 Gen2x2のコネクタ形状に関する説明に誤りがあったため訂正しました。
ユニークな冷却機構を備えるUSB 3.2 Gen.2x2対応SSDケース
実際に筆者が買いそろえたUSB 3.2 Gen.2x2対応機器は下記の写真にある製品。
購入時の価格はPCIeカードの「iDsonix PE20-1C」が4,699円、外付SSDケースの「ineo C2598 III(20Gbps対応版)」が5,399円。合計10,098円で、Amazonで購入したところ決済時に500円割引が適用され、9,598円となった。既存環境でM.2のNVMe SSDを使っていて、それを流用するという前提にはなってしまうけれども、それでも1万円程度で20Gbps化できてしまうのはちょっと驚きだ。
ちなみに「ineo C2598 III」は、外付SSDケースとしてはユニークなギミックをもつ製品だ。高速アクセス時に発熱しやすいNVMe SSDを効率的に冷やすため、放熱フィンが付いたアルミ筐体とし、さらに小型ファンが内蔵されている。内部が一定の温度(公式ウェブサイトでは40度と表記されている)に達すると、自動でファンが回転して放熱を促進する仕組みで、より安定した高速動作が期待できる。
持ち運びにも便利な小型サイズで、ノートPCと一緒に携帯するのも楽ちん。USB 3.2 Gen.2x2インターフェースのないノートPCでも、そのまま接続して5Gbpsや10Gbpsの速度で使える柔軟さもある。書き込み防止の物理スイッチがあるのも便利で、好きな場所で働くテレワークスタイルでも活躍するだろう。
使用中に冷却ファンがどれだけのノイズを出すのかは気になるところかもしれない。40度というのはNVMe SSDなら普通に使っているだけですぐに到達する温度で、常時ファンが回転しているのだとすれば、騒音で気が散って仕方がない、なんて可能性もある。
ところが実際に使ってみると、たしかにほぼ常時回転してはいるものの、ファンノイズはほとんど聞こえない。耳を近づけてようやく羽虫程度の音が聞こえるくらい。PCファンの音の方がよっぽど大きいので、煩わしく感じることはないはずだ。そして何より、気軽に20Gbpsを実現できてしまうSSDケースであり、熱の問題をほとんど気にせずそのパフォーマンスを最大限に活かせるのは、大きな魅力だ。
なお、今回使用したUSB 3.2 Gen.2x2インターフェースを追加するPCIeカードは、試した限りではマザーボード上のPCIe 3.0x4以上のスロットに対応する。より高速なx8のスロットでも、あるいはx16のスロットでも、特に速度が変わることはなかったので、とりあえず空いているなかで最も低速な(x4以上の)スロットにセットするのが良さそうだ。
20Gbpsの実力はかなり良好!データ転送はきっちり2倍速に
では、USB 3.2 Gen.2x2の実力はどれほどのものなのか、ベンチマークテストで検証してみることにしよう。USB 3.2 Gen.2x2(20Gbps)に加えて、比較用に、同じストレージとPCを用いて、USB 3.2 Gen.1(5Gbps)とUSB 3.2 Gen.2(10Gbps)の各インターフェースに接続したときのパターンも計測した。
こういった動作検証では定番の「CrystalDiskMark」はもちろんのこと、より実用時に近い性能を測るために、写真と動画のレンダリング、ゲームの起動といったシチュエーションも用意してみた。
まずはCrystalDiskMarkだ。下記の結果を見るとわかる通り、USB 3.2 Gen.2x2はUSB 3.2 Gen.2の2倍以上となる2000MB/s超のシーケンシャルリード・ライト性能を叩き出している。場合によっては(ちょっと遅めの)PC内蔵NVMe SSDにも迫りそうな勢いだ。これなら実用性能や体感速度の向上にも期待がもてるというもの。
というわけで、続いては実用を想定したテスト。50枚のRAW画像(6.000×4.000ドット)を処理するもので、1つは現像ソフト「DxO PhotoLab 4」で一括で現像処理(JPEG化)するときにかかる時間。もう1つは「Adobe Photoshop CC」を使い、現像したJPEG画像50枚を順次読み込んで再保存する自動化スクリプトを実行し、処理がすべて完了するまでの時間だ。
RAW画像の現像処理は、5Gbps接続と比較すると、20Gbpsは21秒高速な結果となった。10Gbps接続と比較するとマイナス8秒で、割合で言うと3~8%の差は劇的というほどではない。けれど、このテストはおそらく時間のほとんどがCPUやGPUの処理に費やされ、ストレージ速度の影響は限定的なはず。そんな状況であってもしっかり高速化につながっているのは、さすが20Gbpsと言える。
次に、「DaVinci Resolve」で編集した約5分25秒のフルHD(1,920×1,080ドット)動画のタイムラインを、MP4形式でレンダリングしたときにかかる時間を計測した。こちらも、ストレージの読み込み・書き込み速度はそこまで大きく影響しないようで、残念ながら期待したほどの時間短縮ではない。が、それでも5Gbps接続と比べて10秒、10Gbps接続と比べて3秒それぞれ短縮しており、着実に速度アップしている。タイムラインに入れ込むアセットが多くなればなるほど、この差が広がっていくのは間違いない。
最後はゲームのローディング時間。外付ストレージに「ASSASSINS CREED VALHALLA」の全ゲームデータを格納し、そこからゲームを起動するようにした。計測したのは、メニューから「ベンチマーク」を選んだ後、ベンチマークテストがスタートするまでにかかる時間だ。
5Gbps接続と10Gbps接続ではほとんど差は見られなかったが、20GbpsのUSB 3.2 Gen.2x2ではそれより約12秒、割合にして30%以上もの高速化が図られた。ゲームデータを外付ストレージにインストールして、いつでもどこへでも持ち運んで遊べるようにする、という使い方も、このスピードなら快適に実用できそうだ。
これから10Gbpsを目指すくらいなら、スキップして20Gbpsへ
従来のUSB 3.2 Gen.2からUSB 3.2 Gen.2x2にすることで、ベンチマークソフト上ではきっかり2倍の速度アップを果たし、ある程度容量の大きなデータを扱う場面においても、大幅ではないにしろ明確な速度改善が見られた。間違いなくアップグレードの効果はあり、それが1万円程度の出費で手軽に実現できるというのは、なかなかに注目すべきことではないだろうか。
デスクトップPCを利用しており、PCIeスロットに空きがあって、外付ストレージにNVMe SSDを使っている、というような人はそう多くないのかも……なんて気持ちも正直なところある。が、これから外付ストレージをUSB 3.2 Gen.2化してスピードアップしようと思っている場合でも、一足飛びにUSB 3.2 Gen.2x2化を目指してもいいくらいには、拡張が簡単だし、追加コストも最小限だ。
ただし、1つだけ頭に入れておきたい注意点もある。インターフェースが高速になっているためか、デバイスやケーブルの相性もかなりシビアになっているようで、場合によっては20Gbpsや10Gbpsで接続できなかったり、正常なデータ転送が行なえない場合もある。信頼の置けるメーカーのケーブルを使うのはもちろんのこと、エラーが出やすいときは接続する端子の向きを変えてみたりするなどして、試行錯誤が必要なこともあるかもしれない。
とはいえ、小型筐体でストレージの増設スペースが少なく、外部ストレージに頼らざるを得ないようなPC環境でも、USB 3.2 Gen.2x2による20Gbps化のテクニックは活かせるはず。仕事の作業データやゲームデータを丸ごと外付ストレージで管理して、自宅でも出先でも同じデータに高速アクセスできるようにする環境を作り上げてみてはいかがだろうか。