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799g軽量ノート「LIFEBOOK U938/S」を1TB NVMe SSDに換装、Windows 11移行も考え強化

SSD換装大全、ノートPCの分解からデータ移行まで徹底解説 text by 佐藤岳大

 今回SSD換装の事例として紹介するのは、第8世代Coreプロセッサーを搭載する富士通「LIFEBOOK U938/S(FMVU14001)」だ。

 2018年に発売されたモデルで、約799gの超軽量設計かつ持ち運びに適した薄型デザインが特徴。用意したのはCore i5/8GBメモリ/SATA SSD 128GB仕様のモデルで、これを1TBのNVMe SSDへ換装し、大容量化と高速化を狙う。

 換装の手順と合わせ、換装の前後でどれだけの変化があるのかを紹介しよう。

※ノートPCの分解行為やパーツの換装はメーカー保証外の行為となります。この記事を読んで行った行為によって、仮に損害が発生しても弊誌および、メーカー、販売ショップはその責を負いません。

軽量モバイルノート「LIFEBOOK U938/S」のSSDをアップグレード

 今回使用するLIFEBOOK U938/S(FMVU14001)は、2018年に発売されたモデル。第8世代のモバイルCoreプロセッサ(Kaby Lake-R)を搭載し、約799gの軽さと堅牢性を両立したモバイルノートPCだ。

 中古品として入手しているので、新品の時から若干の変更があるかもしれないが、CPUに4コア8スレッドのCore i5-8350U(ベース1.7GHz/ブースト時3.6GHz)、メモリにDDR4-2133 8GB、ストレージにSATA SSD 128GBを備えるモデルで、ディスプレイは13.3インチ/1,920×1,080ドット。

 そのほか、IEEE 802.11ac無線LAN/Bluetooth、Webカメラなどの機能も搭載している。OSはWindows 10 Pro 64bit。

LIFEBOOK U938/S(FMVU14001)
CPUCore i5-8350U(4コア/1.7GHz/ブースト時3.6GHz)
メモリDDR4-2133 8GB
ストレージSATA SSD 128GB
GPUIntel UHD Graphics 620
ディスプレイ13.3インチ/1,920×1,080ドット
OSWindows 10 Pro 64bit

搭載されていたのはSATA接続の128GB M.2 SSD「SanDisk SD9TN8W-128G-1016」

 LIFEBOOK U938/Sに搭載されていたSSDだが、今回の個体には128GBのSanDisk SD9TN8W-128G-1016が装着されていた。M.2型のSATA SSDで、容量は128GB。

PCに搭載されていたSanDisk SD9TN8W-128G-1016。
CrystalDiskInfoによるステータス。SATA 6Gbps対応。

換装に使うのは1TB/NVMeのSamsung SSD 970 EVO Plus

 今回換装に使用するSSDは、Samsung SSD 970 EVO Plusの1TBモデル「MZ-V7S1T0B/IT」。最大速度リード3,500MB/s・ライト3,000MB/sのNVMe接続モデルで、インターフェイスはPCIe 3.0 x4レーン。

Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB(MZ-V7S1T0B/IT)。
CrystalDiskInfoによるステータス。

 Samsung SSD 970 EVO Plusは250GB~2TBまでの4製品がラインナップされているので、SSD換装に使用する際は予算や使用する容量に合わせて選ぶと良いだろう。

注意点その1

 ノートPCでM.2 SATA SSDからM.2 NVMe SSDへ換装を行う際に相性が出ることがある。このため、SSD換装の際には事前に下調べを行い、動作実績のあるモデルから選ぶことをお勧めしたい。

 また、ノートPC側のM.2スロットは製品により仕様が異なり、大きく分けると、SATAのみ対応、SATAとNVMe両対応、NVMeのみ対応といった3パターンが存在する。SATA SSDからNVMe SSDに換装する場合、ノートPC側がSATA/NVMe両対応である必要があるので注意しよう。

 このほか、ノートPC側のM.2スロットはモデルによりPCI Expressのレーン数や世代が異なり、モデルによってはSSDの公称値通りの性能が出ないケースもある。これは故障では無いので覚えておこう。

ドライブを暗号化するBitLockerに注意!

「デバイスの暗号化」設定を確認し、データのクローンを行う前に暗号化を解除しよう。表示上はBitLocker無効だが、実際にはデータが暗号化されている場合もあるので注意。

 今回の換装では、作業前にWindows Updateを実施したが、その過程でCドライブ領域がBitLockerによる暗号化が行われていたため、事前に解除する作業を行っている。

 パーティションが暗号化されているのかどうかは、Windows設定内の「デバイスの暗号化」から状態で確認できる。暗号化されている場合はデータをクローンする際に解除してから行おう。暗号化されたままではデータのクローンは行えない。

 今回のように、Windows 10の大型アップデートを適用した際に「BitLocker暗号化は完了していないがデータは暗号化されている」状態になることがある。

BitLockerを解除してしまえばSamsung Data Migrationで正常にクローンを完了できる。

古いSSDから新しいSSDに引っ越し、データの移行からPCの分解まで一式紹介

 ここからは実際にSSD換装を行う際の手順を紹介しよう。換装する際はSSD外付けケースとデータ移行ソフトを用意すると簡単だ。

 NVMe SSD用の外付けケースは税込4千円前後で入手可能、データ移行ソフトは大手メーカーのSSDであれば付属していることが多い。両方事前に準備しておこう。

換装するSSDをUSB外付けケースに搭載、データコピーの準備をしよう

 PCのデータを丸ごと引っ越し先のSSDにコピーするため、換装用SSDを外付けケースに搭載しよう。

 今回使用しているSSD外付けケースはAOTECHのAOK-M2NVME-U31G2。NVMe SSDに対応したUSB 3.2 Gen2接続のケースで、SSDの取り付けも比較的簡単だ。

●1 SSD外付けケース「AOK-M2NVME-U31G2」と換装するSSDを準備。
●2 SSD外付けケースのネジを外し中の基板を取り出す。
●3 SSDを基板のM.2スロットに装着する。
●4 基板にSSDをネジで固定する。「AOK-M2NVME-U31G2」は裏側からネジで固定する仕組みになっている。
●5 基板にSSDを装着したらケースの中に収納し、ネジでふたを閉める。
●6 PCに接続すれば準備完了。
注意点その2

 M.2 SSD用の外付ケースは、NVMeのみに対応したモデル、SATAのみに対応したモデル、NVMe/SATA両対応のモデルがある。購入時には使用するSSDに合わせ対応したモデルを購入しよう。

データの移行はSSD付属ソフトが便利、Samsung Data Migration 4.0なら簡単

 今回データ移行ソフトには「Samsung Data Migration 4.0」を使用した。Samsung製SSDで利用できる専用のユーティリティで、操作もかなり簡単だ。

 Samsungのサポートページからダウンロード可能で、項目を選択していくだけで作業は簡単に終わる。

●1 Samsung公式サイトのSSDツールとソフトウェアのページから「Samsung Data Migration 4.0」をダウンロードする。
●2 Samsung Data Migrationをセットアップし、起動させる。
●3 画面下側にあるターゲットドライブの項目を指定する。移行先のSSD(今回はSamsung SSD 970 EVO Plus 1TB)を選択しよう。
●4 移行先のドライブのデータが全て消去される旨のダイアログが表示されるのでOKを選択。なお、安全にデータ移行を行うため、他のアプリケーションを起動したり、ながら作業をするのはやめよう。
●5 進行状況はプログレスバーで表示される。ちなみに、一時ファイルなどを除いたSamsung Data Migration上の移行前SSD使用容量は28GBだったが、データのコピーは約6分半ほどで終了した。
●6 データのコピーが完了すると自動的にPCはシャットダウンされる。
注意点その3

 USB接続の外付けケースを用いたSSD換装の注意点になるが、先述のBitLockerの使用の有無に加え、移行ソフトとの相性などによりデータのコピーが正常に行えないときがある。そうした際は、大概外付けケース側のUSBコントローラとの相性に問題がある可能性が高いので、ケースを替えるか、デスクトップPC上でデータのコピーを行うなどテストしてみてもらいたい。

 「Samsung Data Migration 4.0」を利用した際の外付けケースとの相性に関しては別記事で紹介しているので、そちらも参照してもらいたい。

分解工具はプラスドライバーのみ、LIFEBOOK U938/Sの分解難易度は低め

 ここからはLIFEBOOK U938/Sの分解になるが、工具は通常のプラスドライバーのみで問題ない。事前に準備しておこう。

 SSD換装時はPCを必ずシャットダウンした状態で行う必要があるので注意。機器の破損や故障を防ぐため、誤って休止などの状態で分解しないように気を付けてほしい。それではLIFEBOOK U938/Sの分解作業に入ろう。

 本機の場合、分解作業は背面パネルを固定しているネジを外すだけだ。

●1 背面パネル。取り外すネジは12本。
●2 ネジを外す。
●3 パネルを外したところ。
●4 基板右のM.2スロット。固定用ネジを取り外しSSDを外す。

 パネルを開けるとM.2スロットに直接アクセスでき、SSDの換装は簡単に行える。なお、SSDはスロットに挿してからネジで固定するタイプだ。

●5 データをコピーした換装用のSSDに挿し替える。
●6 ネジで固定する。
●7 装着が済んだら背面パネルを元に戻そう。
●8 換装後のSSDで起動を確認できたら作業は終了だ。

 冒頭にも記載しているが、基本的にノートPCの分解行為はメーカー保証外の行為となるため、これにより故障した場合は保証が受けられない。今から新品のノートPCを購入する場合は元々ストレージ容量の多いモデルを選択するのが無難だ。

 保証が切れている使い込んだノートPCなどであれば、SSDの換装は投資に見合った効果が得られやすいので、PCを買い換える前に試してみる価値はある。

大容量SSDへの換装で空き容量は約10倍、最新世代へ換装で速度も最大約4倍に快適に使えるノートPCへリフレッシュ

 実際にSSD換装を行い得られたメリットも紹介しておこう。今回は容量と速度の2点を紹介する。

1TB SSDで空き容量は一気に拡大、より扱いやすいPCに

 まずは容量の面だが、LIFEBOOK U938/Sには128GBのSSDが搭載されており、回復領域などを除いたシステム上から見た容量は約118GBだ。

 空き容量は約90GBに限られ、普段使いでも空き容量のなさに困る。容量の大きいアプリケーションなどをインストールすると空きが無くなってしまうのはもちろん、こまめにファイルの削除したりしなければWindowsの大型アップデートに対応するのも難しい。

 これが1TB SSDに換装すると空き容量は約10倍となり、使い勝手の良さもかなり向上する。音楽や写真などのライブラリを構築したり、多数の仕事のファイルを置きっぱなしにしてもかなりのゆとりがあり、空き容量を気にしながら使うシーンがほぼなくなる。また、Windows 11へのアップグレードなども考えているのであれば、空き容量があるに超したことはないので、なるべく大容量のSSDを使いたいところだ。

換装前の128GB SSD「SanDisk SD9TN8W-128G-1016」。
空き容量は90GBで、Windowsアップデートなどでも考慮するとゆとりはない容量だ。
換装後の「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB(MZ-V7S1T0B/IT)」。
空き容量は897GBで、大容量ファイルなどを置いても空き容量は十分。多くのデータを入れっぱなしにできるゆとりがある。

SSD換装で速度は全体的に向上、シーケンシャルリード/ライトともに5倍以上高速に

 速度の方だが、SATAからNVMeへの換装ということもあって、Crystal Disk Markの実行結果からも見て分かる通り、大幅に速度が向上。接続もPCIe 3.0 x4となっており、LIFEBOOK U938/SはSamsung SSD 970 EVO Plusの速度をしっかり引き出せていると言える。

換装前の128GB SSD「SanDisk SD9TN8W-128G-1016」のCrystal Disk Mark 8.0.4測定結果
換装後のSamsung SSD 970 EVO Plus 1TB(MZ-V7S1T0B/IT)のCrystal Disk Mark 8.0.4測定結果
USB 3.2 Gen 2接続時で最高1,050MB/sをうたう「Samsung Portable SSD T7 Touch」。

 ベンチマーク結果で大幅に速度が向上しているのはもちろん、外付けドライブとのデータの転送も換装の前後で変化している。

 ポータブルSSD「Samsung Portable SSD T7 Touch(1TBモデル)」に50GBのデータファイル(Windows 10のfsutilコマンドで作成/実体化)を用意し、これを内蔵ストレージへ書き込みする際の速度や時間を計測してみた。

 換装前のSanDisk SD9TN8W-128G-1016に50GBのファイルを転送するのに約7分30秒かかったのに対し、換装後のSamsung SSD 970 EVO Plus 1TBへ50GBのファイルを転送する時間は約3分だった。転送時の速度も換装前のSanDisk SD9TN8W-128G-1016が110MB/s前後だったのに対し、換装後のSamsung SSD 970 EVO Plus 1TBは300MB/sと数倍の差がみられる。

 LIFEBOOK U938/Sの場合、接続がUSB 3.1 Gen1のため5Gbpsが上限になるとはいえ、これだけ差があれば普段外付けドライブを使う際の快適さも変わってくるだろう。

換装前の128GB SSD「SanDisk SD9TN8W-128G-1016」
50GBのデータを外付けドライブから転送した際の時間は約7分30秒で、110MB/s前後の速度が出ていた。
換装後のSamsung SSD 970 EVO Plus 1TB(MZ-V7S1T0B/IT)
50GBのデータを外付けドライブから転送した際の時間は約3分で、300MB/s前後の速度が出ていた。

Windwos 11への対応もOK

 ちなみに、今回使用しているLIFEBOOK U938/SはWindows 11の要件を満たしており、将来的にWindows 11にアップグレードすることも可能だ。SSDへのアップグレードを行っているので、Windows 11へOSをアップグレードした際も快適に使えるだろう。

 現在利用しているPCがWindows 11へ対応しているかは、Windows 11の公式サイトで公開されている「PC 正常性チェック アプリ」を利用して確認できる。

Windows 11の公式サイトでは「PC 正常性チェック アプリ」が公開されており、使用中のPCがWindows 11の要件を満たしているか確認できる。
今回使用しているLIFEBOOK U938/SはWindows 11の要件を満たしており、SSD換装も行ったことでWindows 11へ将来的にアップグレードする際も安心だ。

 ノートPCのSSD換装はメーカー保証外の行為となることが多くリスクはあるものの、換装によって得られるメリットは大きい。

 今回とりあげたLIFEBOOK U938/Sは、ストレージにゆとりがあればまだまだ使える性能をもったモデルだ。4コア/8スレッドの十分な性能と軽量設計による持ち運びの容易さで、ビジネス用途にもってこいと言える。

 本モデルのように、Windows 11へのアップグレードに対応したモデルであれば将来的にも長く使えるため、SSD換装の意義も大きいだろう。

 PCを買い換えるほどではないといった場合や、予算を抑えて環境を快適にしたいというユーザーは、ノートPCのSSD換装もPCを快適にする選択肢の一つとして考えてみてはいかがだろうか。

[制作協力:Samsung]