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15.6型/Core i5-8250搭載の「ThinkPad L580(2018)」をSSDに換装、まだまだ使える1台に

SSD換装大全、ノートPCの分解からデータ移行まで徹底解説 text by 白倉甲一

 今回SSD換装の事例として紹介するのは、Lenovoのビジネス向けノートPC「ThinkPad L580(2018年モデル)」。

 第8世代Coreプロセッサー搭載モデルで、指紋認証やThinkPad独自のトラックポイントによるカーソル操作などに対応しており、根強い人気のあるシリーズの内の1機種だ。

 性能的にはまだ十分使えるモデルだが、今回の個体は手遅れになる前にストレージを換装しなくてはならない事態が発生しており、トラブルを解消しつつ快適性を向上させる事例となっている。発売から3年以上たっているPCを使用しているユーザーは、自機の状態を確認しつつレビューを見てもらいたい。

※ノートPCの分解行為やパーツの換装はメーカー保証外の行為となります。この記事を読んで行った行為によって、仮に損害が発生しても弊誌および、メーカー、販売ショップはその責を負いません。

ThinkPad L580をHDDからSSDに換装

 今回のThinkPad L580はThinkPadシリーズ特有のさまざまな利用環境での耐久テストをクリアした高い設計品質と、トラックパッド+トラックポイントや打鍵感にこだわったキーボードなど操作性に直結する部分にも配慮がなされたノートPCだ。

 今回使用している個体は型番「20LX-S0B700」で、第8世代CPU intel Core i5-8250U(4コア/1.6 GHz/ブースト時3.4GHz)を搭載し、メモリにSO-DIMM DDR4-2400 8GB、ストレージに2.5インチHDD 500GBを備える。ディスプレイは15.6インチ/1,366×768ドット。

 OSはWindows 10 Pro 64bitで、インターフェイスはUSB3.0 x2、USB Type-C x2、有線LAN、映像出力ポートにHDMI、オーディオ用の3.5mmコンボジャックなどを搭載。トラックポイント、指紋認証、無線LAN(IEEE802.11ac)、Bluetooth、microSDカードリーダーなどノートPCを便利に使うために必要な機能は全て盛り込んだという印象だ。

 その他、独自のドッキングコネクターへ専用ドッキングステーションを装着することで大幅なI/F拡張が可能な所も面白いポイントだろう。

lenovo ThinkPad L580(20LX-S0B700)
CPUCore i5-8250U(4コア/1.6GHz/ブースト時3.4GHz)
メモリDDR4-2400 8GB
ストレージSATA HDD 500GB
GPUIntel UHD Graphics 620
ディスプレイ15.6インチ/1,366×768ドット
OSWindows 10 Pro 64bit

搭載されていたのは500GBのSeagate Barracuda Pro「ST500LM034-2GH17A」

 今回使用しているThinkPad L580なのだが、動作はしているものの不安定になったり、レスポンスが急激に悪くなることがあった。状態を調べていたところ、どうやらストレージが壊れかけていたようで、S.M.A.R.T.情報を確認すると代替処理済みのセクタ数に警告が出ており、CrystalDiskInfoでも注意喚起される状態になっていた。

 搭載されていたのはSATA接続の2.5インチHDD「Seagate Barracuda Pro 500GB(ST500LM034-2GH17A)」。使用時間も1,533時間なので寿命が来るにはまだ早いといった印象だが、発売から4年前後経過しているモデルなので、止む無しといったところかもしれない、

PCに搭載されていたSeagate Barracuda Pro 500GB(ST500LM034-2GH17A)。
CrystalDiskInfoによるステータス。代替処理済みのセクタ数に異常が出ており、不良セクタ―が発生している状態だ。

 速度的な問題が出ていないかもベンチマークで見てみたが、CrystalDiskMarkでは速度がかなり低下してしまっていることが分かった。Seagate Barracuda Pro 500GBの公称値が最大データ転送速度160MB/sなので、異常な値であることがわかる。AJA System Testで計測したところ、リード104MB/s・ライト114MB/sとなったので、用途によってはまだ速度が出るといった状態のようだ。

CrystalDiskMarkのベンチマーク結果。故障しているのがわかる値だ。
AJA System Testのベンチマーク結果。こちらはリード104MB/sで、速度はある程度出ていることがわかる。

 OSが立ち上がるだけましだが、起動不能になる前に早急に対処しなくてはならない。ストレージはいつか必ず寿命が来るPCパーツなので、定期的に状態は確認したい。

換装に使うのは1TBのSamsung SSD 870 QVO

 今回換装に使用するSSDは、Samsung SSD 870 QVOの1TBモデル(MZ-77Q1T0/IT)。最大速度リード560MB/s、ライト530MB/s。SATA接続の2.5インチSSDだ。

換装に使用するSamsung SSD 870 QVO(MZ-77Q1T0/IT)。
CrystalDiskInfoによるステータス。

 Samsung SSD 870 QVOは1TB~8TBまでの4製品がラインナップされているので、SSD換装に使用する際は予算や使用する容量に合わせて選ぶと良いだろう。

古いHDDから新しいSSDに引っ越し、データの移行からPCの分解まで一式紹介

 ここからは実際にSSD換装を行う際の手順を紹介しよう。換装する際はSSD外付けケースとデータ移行ソフトを用意すると簡単だ。

 2.5インチSSD用の外付けケースは税込千円前後で入手可能、データ移行ソフトは大手メーカーのSSDであれば付属していることが多い。両方事前に準備しておこう。

換装するSSDをUSB外付けケースに搭載、データコピーの準備をしよう

 PCのデータを丸ごと引っ越し先のSSDにコピーするため、換装用SSDを外付けケースに搭載しよう。

 今回使用している外付けケースはORICOの「2020U3-BK-EP-JP」。2.5インチストレージに対応したUSB 3.0接続のケースで、ネジを回す必要が無くツールレスで容易にストレージを取り付ける事ができる。

●1 SSD外付けケース「2020U3-BK-EP-JP」と換装するSSDを準備。
●2 SSD外付けケースの蓋を外す。
●3 SSDを装着しスライドして基板に差し込む。
今回のSSD外付けケースはツールレスなのでネジ止めする必要は無い。
●4 基板にSSDを装着したらケースのふたを閉める。
●5 PCに接続すれば準備完了。
2.5インチドライブ用外付けケースの注意点

 2.5インチ用の外付ケースの場合、厚みに関わらず利用可能な物がほとんどだが、ごく稀に7mm厚のものしか入らなかったりするなど、物理的な相性が出る場合もある。使用するSSD/HDDが何mm厚なのか、ケース側の対応状況も念のため確認してから購入しよう。

データの移行はSSD付属ソフトが便利、Samsung Data Migration 4.0なら簡単

 今回データ移行ソフトには「Samsung Data Migration 4.0」を使用した。Samsung製SSDで利用できる専用のユーティリティで、操作もかなり簡単だ。

 Samsungのサポートページからダウンロード可能で、項目を選択していくだけで作業は簡単に終わる。

●1 Samsung公式サイトのSSDツールとソフトウェアのページから「Samsung Data Migration 4.0」をダウンロードする。
●2 Samsung Data Migration 4.0をセットアップし、起動させる。
●3 画面下側にあるターゲットドライブの項目を指定する。移行先のSSD(今回はSamsung SSD 870 QVO 1TB)を選択しよう。
●4 移行先のドライブのデータが全て消去される旨のダイアログが表示されるのでOKを選択。なお、安全にデータ移行時を行うため、他のアプリケーションを起動したり、ながら作業をするのはやめよう。
●5 進行状況はプログレスバーで表示される。コピーされるデータ量は78GBほどで、実際に要した時間は20分程度だった。今回の個体はHDDにディスク不良が発生しているが、読出しの速度はある程度出たようだ。
●6 データのコピーが完了すると自動的にPCはシャットダウンされる。
ストレージコピー時の注意点

 USB接続の外付けケースを用いたSSD換装の注意点になるが、ソフトとの相性などによりデータのコピーが正常に行えないときがある。そうした際は、大概外付けケース側のUSBコントローラとの相性に問題がある可能性が高いので、ケースを変えるか、別のソフトでテストしてみると良いだろう。

 「Samsung Data Migration 4.0」を利用した際の外付けケースとの相性に関しては別記事で紹介しているので、そちらも参照してもらいたい。

ドライブを暗号化するBitLockerに注意!
データのクローンを行う前に暗号化を解除しよう。表示上はBitLocker無効だが、実際にはデータが暗号化されている場合もあるので注意。

 今回の換装では、当初はSamsung Data Migrationのクローンができなかった。原因はBitLockerで、ドライブが暗号化されていたためだ。

 パーティションが暗号化されているのかどうかは、Windowsのコントロールパネル内の「BitLocker ドライブ暗号化」から状態で確認できる。暗号化されている場合はデータをクローンする際に解除してから行おう。

 原因は不明だが、「Windows 10上の表示はBitLockerが有効化されていないが、データは暗号化されている」という厄介なケースも存在し、今回の個体はこの状態だった。解決策としては、一旦BitLockerをOS上で有効化し、その後無効化することで暗号化を解除できる。解除してしまえばSamsung Data Migrationも正常にクローンを完了できた。

ThinkPad L580の筐体部分は分解しやすいが内部のストレージ周辺はやや注意、工具は精密ドライバーだけでストレージ換装可能

 ここからはThinkPad L580の分解になるが、工具は精密ドライバー(プラス)とヘラが必要なので準備しておこう。

 SSD換装時はPCを必ずシャットダウンした状態で行う必要があるので注意しよう。バッテリーが外せるモデルの場合は外し、取り外せないモデルもBIOS上からバッテリーを無効化できるモデルは念のため作業中のみ無効化しておこう。ThinkPad L580は後者の方だ。

●1 BIOSメニュー内の「Config」の「Power」を選択。
●2 「Power」項目内の「Disable Built-in Battery」の項目に合わせ「Enter」を選択すると内部バッテリーがオフになり電源も同時に落ちるが、念のためACアダプタを接続していないとバッテリーがオフになった瞬間に電源が落ちるので注意。

 背面パネルのネジを精密ドライバーで全て外し、外周に沿ってヘラを浅く入れて軽く持ち上げるとプチプチとツメが外れていく。力はそれほど必要ないので1周ぐるっと外したらカバーは簡単に持ち上がる。

 パネルを外したらまずはバッテリーパックのコネクタを外しておこう。またカバー部分のネジは脱落しないようになっているがストレージは特にネジなどで固定されてないのでうっかり落としてコネクタを傷つけないように気を配ろう。

●3 ThinkPad L580の背面パネル側。
●4 ネジは全て精密ドライバー一本で外せる、回しきらなければ脱落しない設計になっているが紛失しないように注意。ゴム足に隠されたネジなどは無い。
●5 ネジを外したら周囲に沿って浅めにヘラを入れつつカバーを持ち上げていこう、数は多いが力はさほど必要なくツメが外れていく。内部は余裕があり左下がストレージ部。
●6 念の為バッテリーパックのコネクタを抜き、SATAコネクタも断線しないように一度基板側から外しておこう。

 取り外し自体は難しくないのだが、両面テープ止めされているので無理に引き剥がすとコネクタが傷んでしまうので気を付けよう。バッテリーパックのコネクタはやや固めだが布製のつまみがついているので左右に揺らしながら引き抜けば簡単だ。

 コネクタ類を元に戻しカバーを閉めれば作業は完了。起動確認を行おう。

●7 ラバータイプのマウンタを外し、SATAコネクタを引き抜く。アルミカバーは両面テープで貼り付けられているので着脱は出来ない。
●8 換装するSSDにマウンタとSATAコネクタを装着して元の位置に納める。
●9 基板側のSATAコネクタも戻し、バッテリーパックのコネクタを装着。
●10 カバーのツメをはめてネジを締め直して完了。

 冒頭にも記載しているが、基本的にノートPCの分解行為はメーカー保証外の行為となるため、これにより故障した場合は保証が受けられない。今から新品のノートPCを購入する場合は元々ストレージ容量の多いモデルを選択するのが無難だ。

 とはいえストレージ以外の部分に不満が無いのであれば、PCを買換えるよりも、SSD換装はコストパフォーマンスが高いアップグレード方法になる。また、今回のようにメンテナンスが容易なモデルであれば換装そのものも容易なので試してみる価値はあるだろう。

無事ストレージコピーも完了し容量も速度も大幅に向上動作も正常化され体感的にも快適さUP

 実際にSSD換装を行い、前後でどのように変わったのかも紹介しよう。今回は各ストレージのベンチマークの他、外部ストレージからのデータ転送速度もそれぞれ比較してみた。

空き容量は2倍に増加、データの持ち運びも快適

 まずは容量の面だが、空き容量は386GBから853GBとなっており単純に約2倍以上に増えた。

 これによりソフトウェアなど、SSDへインストールすることで起動速度や動作に大きく影響のあるものを保存する際に気兼ねなくインストール可能になり、その他データファイルなども外部ストレージを用意せずともある程度は本体内に保存することが可能になる。

 また、今後Windows 11へアップグレードする場合などにもシステム容量が大幅に増加することが見込まれるので、大容量のSSDを搭載し空き容量には余裕を持っておくのが大切だ。

換装前の500GB HDD「Seagate Barracuda Pro ST500LM034-2GH17A」。
空き容量は386GB。システムのみなのでまだ余裕はあるが、大きめのデータなどを入れるとすぐ一杯になってしまう。
換装後の1TB SSD「Samsung SSD 870 QVO(MZ-77Q1T0/IT)」
空き容量は853GBになり、ソフトウェアやデータファイルも気にせず保存できるようになった。

SSDへの換装で一気に速度向上、ストレージの動作も正常化し安定性と快適さがUP

 OS起動時間はHDD時に30秒前後、SSD換装後は14秒前後とさほど大きな差は無かったのだが、元々搭載されていた2.5インチHDDにS.M.A.R.T.情報に警告が出てしまっていた関係上、HDD時にはストレージにアクセスする際やその他にも定期的に動作が詰まるような感覚があった。

 Samsung SSD 870 QVOへの換装後にそれらは全て改善され、ベンチマーク結果もシーケンシャルリード/ライトともに500MB/s以上出ており万全な状態。数値はもちろん体感的にも大幅なレスポンス向上を得ることが出来た。

換装前の500GB HDD「Seagate Barracuda Pro ST500LM034-2GH17A」。
ストレージに障害が発生しているため、CrystalDiskMarkは異常に数値が低くなってしまい、体感以上に低い数値しか出ていない。
AJA System Testではリード104MB/、ライト114MB/sの速度が出ていた。
換装後の1TB SSD「Samsung SSD 870 QVO(MZ-77Q1T0/IT)」
CrystalDiskMarkはリード/ライトともに500MB/s以上の数値が出て、万全のパフォーマンスを発揮できている。
AJA System Testではリード493MB/s、ライト464MB/sを記録した。

外部ストレージからのデータ転送も快適に

Samsung Portable SSD T7 Touchからのデータ転送速度を計測。

 SSDへ換装したことにより外部ストレージから内蔵ストレージへ大容量のデータを移す際の書き込み速度も大幅に改善されたはずだ。

 今回は、ポータブルSSD「Samsung Portable SSD T7 Touch(1TBモデル)」に50GBのデータファイルを用意し、これを内蔵ストレージへ書き込みする際の速度や時間を計測してみた。

換装前の500GB HDD「Seagate Barracuda Pro ST500LM034-2GH17A」。
60~100MB/s前後の書き込み速度は出ているものの、途中でエラーが出てしまい最後まで書き込みが出来なかった。
換装後の1TB SSD「Samsung SSD 870 QVO(MZ-77Q1T0/IT)」
最大で約420MB/s前後の書き込み速度、書き込み完了までは約10分ほどかかった。

 今回の個体のHDDはエラーが発生してしまっていたので、テスト中に落ちてしまいデータ転送が完走しなかったが、確認できた範囲では書き込み速度は60~100MB/s前後でていた。SSDへの換装後は最大時に約420MB/s前後ほど出ており、転送速度が大幅に向上しているのがわかる。

 今回はHDD側に障害があったため単純な速度比較のみになってしまうのだが、数値を見る限りSSDへ換装することで大幅に時間短縮が図れそうなことはわかる。バックアップなどで外部ストレージにデータをコピーする際にも、これまでより短時間かつ快適に行うことが出来るはずだ。

Windwos 11への対応もOK

 ちなみに、今回使用しているThinkPad L580はWindows 11の要件を満たしており、将来的にWindows 11にアップグレードすることも可能だ。SSDへのアップグレードを行っているので、Windows 11へOSをアップグレードした際も快適に使えるだろう。

 現在利用しているPCがWindows 11へ対応しているかは、Windows 11の公式サイトで公開されている「PC 正常性チェック アプリ」を利用して確認できる。

Windows 11の公式サイトでは「PC 正常性チェック アプリ」が公開されており、使用中のPCがWindows 11の要件を満たしているか確認できる。
今回使用しているThinkPad L580はWindows 11の要件を満たしており、SSD換装も行ったことでWindows 11へ将来的にアップグレードする際も安心だ。

 ノートPCのSSD換装はメーカー保証外の行為となることが多くリスクはあるものの、換装によって延命などを図れるメリットは大きい。特に今回のようにストレージに問題が発生している場合は、修理と延命を同時に行えて効果は大きい。

 ThinkPad L580の2018年モデルは、キーボードの操作性は良く特徴的なトラックポイントも備えており、CPUの世代もそれほど古くないことなどから、乗り換えるにしてもコストをかけた分の変化を感じられるような機種を探すのは難しい。

 Windows 11へのアップグレードにも対応しているので、今回のように大容量SSDに換装し、次に乗り換えるべきPCが見つかるまでのつなぎとして使用を継続することも検討してみてはいかがだろうか。

[制作協力:Samsung]