特集、その他
13インチビジネスノート「Dell Latitude 7390」を500GB NVMe SSDへ換装、容量&速度アップで快適に
SSD換装大全、ノートPCの分解からデータ移行まで徹底解説 text by 白倉甲一
2022年6月3日 00:00
今回SSD換装の事例として紹介するのは、2018年に発売されたDellのビジネス向けノートPC「Latitude 7390」。
13インチで持ち運びに適した設計ながら、フルHD(1,920x1,080)解像度に対応したディスプレイや、映像出力ポートなどの多彩なインターフェースを詰め込んだ、出先でパワフルに扱える小型ビジネスノートだ。
用意したのは、Core i5-8250U(4コア/8スレッド)と16GBのメモリ、128GBのSATA接続M.2 SSDを搭載した型番「P28S002」のモデル。換装用には500GB NVMe SSDを用意し、高速化と大容量化を図ってみた。
※ノートPCの分解行為やパーツの換装はメーカー保証外の行為となります。この記事を読んで行った行為によって、仮に損害が発生しても弊誌および、メーカー、販売ショップはその責を負いません。
Dell Latitude 7390の128GB M.2 SATA SSDを500GBのM.2 NVMe SSDへ換装
今回の「Latitude 7390」はコンパクトな13インチビジネスノートPC。持ち運びに最適な設計になっており高い強度の筐体にはラバーコーティングが施されている。
なお同シリーズにはタッチディスプレイ搭載モデルもあるが、今回のマシンは通常ディスプレイ搭載モデルだ。タッチパッドは左右クリックボタンがはっきり押し分けの出来るタイプで、操作性は良好。
中古品として入手しているため新品時から若干の変更点はあるかもしれないが、大まかなスペックは、CPUがIntel Core i5-8250U(4コア/1.60GHz)、メモリがSO-DIMM DDR4-2400 16GB、ストレージが128GBのM.2 SSD。ディスプレイは13.3インチ/1,920x1,080ドットで、OSはWindows 10 Pro 64bit。
搭載インターフェイスはUSB Type-C x1、USB 3.1 Gen1x2、有線LANポート、オーディオコンボジャック。また、映像出力にHDMIとDisplayPort over USB Type-Cが利用可能。その他、指紋認証、無線LAN(IEEE802.11ac)、Bluetooth、microSDカードリーダーなどの他にSIMカードスロットやICカードリーダーも備え、小さめの筐体ながらもビジネスノートらしくインターフェイスは豊富だ。
なお、天板側の写真を見てもらえばわかるようにかなり酷使されており、バッテリーにも劣化が見られる状態だった。ただし、CPUやメモリの性能的にはまだ十分なパフォーマンスがあるので、SSD換装でPCを延命してみようといったところだ。
Dell Latitude 7390(P28S P28S002) | |
---|---|
CPU | Core i5-8250U(4コア/1.6GHz/ブースト時3.8GHz) |
メモリ | DDR4-2400 SO-DIMM 16GB |
ストレージ | M.2 SATA SSD 128GB |
GPU | Intel UHD Graphics 620 |
ディスプレイ | 13.3インチ/1,920×1,080ドット |
OS | Windows 10 Pro |
換装に使うのは500GBのNVMe SSD「Samsung SSD 980」
今回換装に使用するSSDは、Samsung SSD 980の500GBモデル(MZ-V8V500B/IT)。最大速度はリード3,100MB/s、ライト2,600MB/s。NVMe接続モデルで、インターフェイスはPCIe 3.0 x4レーン。
Samsung SSD 980は250GB~1TBまでの3製品がラインナップされているので、SSD換装に使用する際は予算や使用する容量に合わせて選ぶと良いだろう。
ノートPCでM.2 SATA SSDからM.2 NVMe SSDへ換装を行う際に相性が出ることがある。このため、SSD換装の際には事前に下調べを行い、動作実績のあるモデルから選ぶことをお勧めしたい。
また、ノートPC側のM.2スロットは製品により仕様が異なり、大きく分けると、SATA接続のみ、SATA接続とNVMe接続両対応、NVMe接続のみ対応といった3パターンが存在する。SATA SSDからNVMe SSDに換装する場合、ノートPC側がSATA/NVMe両対応である必要があるので注意しよう。
このほか、ノートPC側のM.2スロットはモデルによりPCI Expressのレーン数や世代が異なり、モデルによってはSSDの公称値通りの性能が出ないケースもある。これは故障では無いので覚えておこう。
古いSSDから新しいSSDに引っ越し、データの移行からPCの分解まで一式紹介
ここからは実際にSSD換装を行う際の手順を紹介しよう。換装する際はSSD外付けケースとデータ移行ソフトを用意すると簡単だ。
M.2型のNVMe SSD向け外付けケースは2,500~4,000円前後で入手可能、データ移行ソフトは大手メーカーのSSDであれば付属していることが多い。両方事前に準備しておこう。
換装するSSDをUSB外付けケースに搭載、データコピーの準備をしよう
PCのデータを丸ごと引っ越し先のSSDにコピーするため、換装用SSDを外付けケースに搭載しよう。
今回使用している外付けケースはAOTECHの「AOK-M2NVME-U31G2」。NVMe SSDに対応したUSB 3.1 Gen2接続のケースで、SSDの装着も比較的容易にできるタイプだ。
M.2 SSD用の外付ケースは、NVMeのみに対応したモデル、SATAのみに対応したモデル、NVMe/SATA両対応のモデルがある。購入時には使用するSSDに合わせ対応したモデルを購入しよう。
データの移行はSSD付属ソフトが便利、Samsung Data Migration 4.0なら簡単
今回データ移行ソフトには「Samsung Data Migration 4.0」を使用した。Samsung製SSDで利用できる専用のユーティリティで、操作もかなり簡単だ。
Samsungのサポートページからダウンロード可能で、項目を選択していくだけで作業は簡単に終わる。
USB接続の外付けケースを用いたSSD換装の注意点になるが、移行ソフトとの相性などによりデータのコピーが正常に行えないときがある。そういった状況の場合は外付けケース側のUSBコントローラとの相性に問題がある可能性が高いので、ケースを替えるか、デスクトップPC上でデータのコピーを行うなどテストしてみてもらいたい。
Samsung Data Migrationであれば、代理店のITGマーケティングがNVMe SSD用の外付けケースの動作確認表を公開しているので、そちらも合わせて確認しよう。
Latitude 7390の分解はかなり容易、工具は精密ドライバーだけでストレージ換装可能
ここからは「Latitude 7390」の分解になるが、工具は精密ドライバー(プラス)が必要なので準備しておこう。カバーを開けるときのためにヘラなどもあるとなお良い。Dellのサポートページから確認できるオーナーズマニュアルには内部構造や分解手順も記載されているため、慣れていない場合には一読しておくのも良いだろう。
SSD換装時はPCを必ずシャットダウンした状態で行う必要があるので注意。機器の破損や故障を防ぐため、誤って休止などの状態で分解しないように気を付けてほしい。分解作業は背面パネルのネジを精密ドライバーで全て外せばカバーを少し浮かすだけで簡単に内部にアクセスすることが可能。
内部はそれほど複雑ではなく、M.2スロットに直接アクセスできる。なお、SSDはスロットに挿してからネジで固定するタイプだ。交換の際にはスロットにSSDがしっかりと刺さっていることを確認しよう。
冒頭にも記載しているが、基本的にノートPCの分解行為はメーカー保証外の行為となるため、これにより故障した場合は保証が受けられない。今から新品のノートPCを購入する場合は元々ストレージ容量の多いモデルを選択するのが無難だ。
とはいえストレージ以外の部分に不満が無いのであれば、PCを買換えるよりも、SSD換装はコストパフォーマンスが高いアップグレード方法になる。また、今回のようにメンテナンスが容易なモデルであれば換装そのものも容易なので試してみる価値はあるだろう。
大容量SSDへの換装で空き容量は約5倍にアップ、NVMe SSD化することで体感的な速度も向上
実際にSSD換装を行い、前後でどのように変わったのかも紹介しよう。今回は各ストレージのベンチマークの他、外部ストレージからのデータ転送速度もそれぞれ比較してみた。
空き容量は大幅に増加、データの持ち運びも快適
まずは容量の面で見ると、換装前の空き容量は81.9GB。ここにソフトウェアやデータを保存するとなると流石に厳しい。クラウドにデータを逃がすなどの工夫が必要になってくることだろう。
換装後の空き容量は、428GBと大幅アップ。これにより内部ストレージへデータを気兼ねなく置けるようになり、アプリケーションもよほど大容量の物でなければいろいろとインストール可能になる。ビジネス用途などであれば、あまり困ることはない容量と言えるだろう。
また、Windows 11へアップグレードする場合や、大型アップデートを適用する際などは、数十GB単位で空き容量が要求されることもある。PCを長く使うのであれば、大容量SSDを搭載し、空き容量には余裕を持っておくことが大切だ。
NVMe SSDへの換装で一気に性能向上、速度・容量共に大幅増
Crystal Disk Mark 8.0.4の実行結果。NVMe SSD化によってベンチマークの数値を見て分かる通り、いずれもリード/ライト共に大幅に向上している。
換装後のSamsung SSD 980 500GBは接続もPCIe 3.0 ×4レーンとなっており、「Latitude 7390」はPCIe 3.0×4レーン接続のSSDの速度をしっかり引き出せていると言える。
外部ストレージからのデータ転送も快適に、データ転送の待ち時間も約4分の1に短縮
SSDへ換装したことにより外部ストレージから内蔵ストレージへ大容量のデータを移す際の書き込み速度も大幅に改善されたはずだ。
今回は、ポータブルSSD「Samsung Portable SSD T7 Touch(1TBモデル)」に50GBのデータファイルを用意し、これを内蔵ストレージへ書き込みする際の速度や時間を計測してみた。
SATA接続のM.2 SSDの場合、データ転送元の外付けSSDが高速でも、書き込み速度は110MB/s前後が限界のようだ。NVMe SSDへの換装後は最大で約800MB/s以上、50GBのデータ転送が2分前後で済んでいるので、平均で420MB/s程度の速度は出ていることになる。換装前後で転送時間は4分の1近くに減少しているので、体感的にもかなりの速度向上が得られた結果になった。
Windwos 11への対応もOK、SSD換装でまだまだ使えるPCに
ちなみに、今回使用している「Latitude 7390」はメーカーサポートでWindows 11動作検証済みのため、将来的にWindows 11にアップグレードすることも可能だ。SSDへのアップグレードを行っているので、Windows 11へOSをアップグレードした際も快適に使えるだろう。
PCメーカーがWindows 11への対応状況を公開していない場合などは、Windows 11の公式サイトで公開されている「PC 正常性チェック アプリ」から確認しよう。使用しているPCがWindows 11へ対応しているのか、逆に対応していない部分はどの部分なのかを確認できる。
ノートPCのSSD換装はメーカー保証外の行為となることが多くリスクはあるものの、換装によって得られるメリットは大きい。
今回とりあげた「Latitude 7390」は13インチ小型ノートPCということもあり内部の拡張性は薄いものの、搭載されたCPU性能は十分でメモリも16GBと余裕がある。SSD換装によるストレージ容量の増加でこれまで以上に使い勝手も向上し、Windows 11へのアップグレードにも対応しているので将来的にも長く使える。
PCを買い換えるほどではないといった場合や、予算を抑えて環境を快適にしたいというユーザーは、ノートPCのSSD換装もPCを快適にする選択肢の一つとして考えてみてはいかがだろうか。
[制作協力:Samsung]