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13インチビジネスノート「Dell Latitude 7390」を500GB NVMe SSDへ換装、容量&速度アップで快適に

SSD換装大全、ノートPCの分解からデータ移行まで徹底解説 text by 白倉甲一

 今回SSD換装の事例として紹介するのは、2018年に発売されたDellのビジネス向けノートPC「Latitude 7390」。

 13インチで持ち運びに適した設計ながら、フルHD(1,920x1,080)解像度に対応したディスプレイや、映像出力ポートなどの多彩なインターフェースを詰め込んだ、出先でパワフルに扱える小型ビジネスノートだ。

 用意したのは、Core i5-8250U(4コア/8スレッド)と16GBのメモリ、128GBのSATA接続M.2 SSDを搭載した型番「P28S002」のモデル。換装用には500GB NVMe SSDを用意し、高速化と大容量化を図ってみた。

※ノートPCの分解行為やパーツの換装はメーカー保証外の行為となります。この記事を読んで行った行為によって、仮に損害が発生しても弊誌および、メーカー、販売ショップはその責を負いません。

Dell Latitude 7390の128GB M.2 SATA SSDを500GBのM.2 NVMe SSDへ換装

 今回の「Latitude 7390」はコンパクトな13インチビジネスノートPC。持ち運びに最適な設計になっており高い強度の筐体にはラバーコーティングが施されている。

 なお同シリーズにはタッチディスプレイ搭載モデルもあるが、今回のマシンは通常ディスプレイ搭載モデルだ。タッチパッドは左右クリックボタンがはっきり押し分けの出来るタイプで、操作性は良好。

 中古品として入手しているため新品時から若干の変更点はあるかもしれないが、大まかなスペックは、CPUがIntel Core i5-8250U(4コア/1.60GHz)、メモリがSO-DIMM DDR4-2400 16GB、ストレージが128GBのM.2 SSD。ディスプレイは13.3インチ/1,920x1,080ドットで、OSはWindows 10 Pro 64bit。

 搭載インターフェイスはUSB Type-C x1、USB 3.1 Gen1x2、有線LANポート、オーディオコンボジャック。また、映像出力にHDMIとDisplayPort over USB Type-Cが利用可能。その他、指紋認証、無線LAN(IEEE802.11ac)、Bluetooth、microSDカードリーダーなどの他にSIMカードスロットやICカードリーダーも備え、小さめの筐体ながらもビジネスノートらしくインターフェイスは豊富だ。

 なお、天板側の写真を見てもらえばわかるようにかなり酷使されており、バッテリーにも劣化が見られる状態だった。ただし、CPUやメモリの性能的にはまだ十分なパフォーマンスがあるので、SSD換装でPCを延命してみようといったところだ。

Dell Latitude 7390(P28S P28S002)
CPUCore i5-8250U(4コア/1.6GHz/ブースト時3.8GHz)
メモリDDR4-2400 SO-DIMM 16GB
ストレージM.2 SATA SSD 128GB
GPUIntel UHD Graphics 620
ディスプレイ13.3インチ/1,920×1,080ドット
OSWindows 10 Pro

搭載されていたのは128GBのM.2 SATA SSD「SanDisk X600(SD9SN8W-128G-1122)」

 「Latitude 7390」にはM.2 SSDの「SanDisk X600(SD9SN8W-128G-1122)」が搭載されていた。SATA接続で容量は128GB。速度が必要十分なものの他にストレージは搭載されておらず、ドライブ内にいろいろとデータを保存する運用方法ではやや心許ない容量。

PCに搭載されていたSanDisk X600 128GB(SD9SN8W-128G-1122)。
CrystalDiskInfoによるステータス。

換装に使うのは500GBのNVMe SSD「Samsung SSD 980」

 今回換装に使用するSSDは、Samsung SSD 980の500GBモデル(MZ-V8V500B/IT)。最大速度はリード3,100MB/s、ライト2,600MB/s。NVMe接続モデルで、インターフェイスはPCIe 3.0 x4レーン。

換装予定のSamsung SSD 980(MZ-V8V500B/IT)。
CrystalDiskInfoによるステータス。

 Samsung SSD 980は250GB~1TBまでの3製品がラインナップされているので、SSD換装に使用する際は予算や使用する容量に合わせて選ぶと良いだろう。

●M.2 SATA SSDからM.2 NVMe SSDへ換装する際の注意点

 ノートPCでM.2 SATA SSDからM.2 NVMe SSDへ換装を行う際に相性が出ることがある。このため、SSD換装の際には事前に下調べを行い、動作実績のあるモデルから選ぶことをお勧めしたい。

 また、ノートPC側のM.2スロットは製品により仕様が異なり、大きく分けると、SATA接続のみ、SATA接続とNVMe接続両対応、NVMe接続のみ対応といった3パターンが存在する。SATA SSDからNVMe SSDに換装する場合、ノートPC側がSATA/NVMe両対応である必要があるので注意しよう。

 このほか、ノートPC側のM.2スロットはモデルによりPCI Expressのレーン数や世代が異なり、モデルによってはSSDの公称値通りの性能が出ないケースもある。これは故障では無いので覚えておこう。

古いSSDから新しいSSDに引っ越し、データの移行からPCの分解まで一式紹介

 ここからは実際にSSD換装を行う際の手順を紹介しよう。換装する際はSSD外付けケースとデータ移行ソフトを用意すると簡単だ。

 M.2型のNVMe SSD向け外付けケースは2,500~4,000円前後で入手可能、データ移行ソフトは大手メーカーのSSDであれば付属していることが多い。両方事前に準備しておこう。

換装するSSDをUSB外付けケースに搭載、データコピーの準備をしよう

 PCのデータを丸ごと引っ越し先のSSDにコピーするため、換装用SSDを外付けケースに搭載しよう。

 今回使用している外付けケースはAOTECHの「AOK-M2NVME-U31G2」。NVMe SSDに対応したUSB 3.1 Gen2接続のケースで、SSDの装着も比較的容易にできるタイプだ。

●1 SSD外付けケース「AOK-M2NVME-U31G2」と換装するSSDを準備。
●2 SSD外付けケースのネジを外し中の基板を取り出す。
●3 SSDを基板のM.2スロットに装着する。
●4 基板にSSDをネジで固定する。「AOK-M2NVME-U31G2」は裏側からネジで固定する仕組みになっている。
●5 基板にSSDを装着したらケースへ収納し、ふたを閉めてネジ止めする。
●6 PCに接続すれば準備完了。
●M.2 SSD用の外付ケースの注意点

 M.2 SSD用の外付ケースは、NVMeのみに対応したモデル、SATAのみに対応したモデル、NVMe/SATA両対応のモデルがある。購入時には使用するSSDに合わせ対応したモデルを購入しよう。

データの移行はSSD付属ソフトが便利、Samsung Data Migration 4.0なら簡単

 今回データ移行ソフトには「Samsung Data Migration 4.0」を使用した。Samsung製SSDで利用できる専用のユーティリティで、操作もかなり簡単だ。

 Samsungのサポートページからダウンロード可能で、項目を選択していくだけで作業は簡単に終わる。

●1 Samsung公式サイトのSSDツールとソフトウェアのページから「Samsung Data Migration 4.0」をダウンロードする。
●2 Samsung Data Migration 4.0をセットアップし、起動させる。
●3 画面下側にあるターゲットドライブの項目を指定する。移行先のSSD(今回はSamsung SSD 980 500GB)を選択しよう。
●4 移行先のドライブのデータが全て消去される旨のダイアログが表示されるのでOKを選択。なお、安全にデータ移行時を行うため、他のアプリケーションを起動したり、ながら作業をするのはやめよう。
●5 進行状況はプログレスバーで表示される。コピーされるデータ量は37GBほどで、実際に要した時間は約4分程度だった。
●6 データのコピーが完了すると自動的にPCはシャットダウンされる。
●外付けSSDケースとクローンソフトの相性に注意

 USB接続の外付けケースを用いたSSD換装の注意点になるが、移行ソフトとの相性などによりデータのコピーが正常に行えないときがある。そういった状況の場合は外付けケース側のUSBコントローラとの相性に問題がある可能性が高いので、ケースを替えるか、デスクトップPC上でデータのコピーを行うなどテストしてみてもらいたい。

 Samsung Data Migrationであれば、代理店のITGマーケティングがNVMe SSD用の外付けケースの動作確認表を公開しているので、そちらも合わせて確認しよう。

ドライブを暗号化するBitLockerに注意!
データのクローンを行う前に暗号化を解除しよう。表示上はBitLocker無効だが、実際にはデータが暗号化されている場合もあるので注意。その際は「Bitlockerを有効にする」を選択し、その後無効化すれば解除される。

 今回の換装では不要であったが、Windows Updateの過程でCドライブ領域がBitLockerにより暗号化されている場合がある。そういった場合にはクローン作業の前に暗号化の解除が必要だ。

 パーティションが暗号化されているのかどうかは、Windows設定内の「デバイスの暗号化」から状態で確認できる。暗号化されている場合はデータをクローンする際に解除してから行おう。暗号化されたままではデータのクローンは行えない。

 暗号化を解除すれば、Samsung Data Migrationで正常にクローンを完了できる。

Latitude 7390の分解はかなり容易、工具は精密ドライバーだけでストレージ換装可能

 ここからは「Latitude 7390」の分解になるが、工具は精密ドライバー(プラス)が必要なので準備しておこう。カバーを開けるときのためにヘラなどもあるとなお良い。Dellのサポートページから確認できるオーナーズマニュアルには内部構造や分解手順も記載されているため、慣れていない場合には一読しておくのも良いだろう。

 SSD換装時はPCを必ずシャットダウンした状態で行う必要があるので注意。機器の破損や故障を防ぐため、誤って休止などの状態で分解しないように気を付けてほしい。分解作業は背面パネルのネジを精密ドライバーで全て外せばカバーを少し浮かすだけで簡単に内部にアクセスすることが可能。

●1 PCをシャットダウンし、Latitude 7390の背面パネル側のネジ位置を確認。
●2 ネジは全て精密ドライバー一本で外せる、ネジは背面パネルから脱落しないようになっている。一部のネジが筐体に合わせて斜めについているので、回す際にネジ山を潰さないように力の入れ方には気を付けておこう。
●3 ネジを全て外し、ヘラなどで少し浮かせばパネルは簡単に外れる。
●4 筐体内部、ストレージは画像右下の部分。
●5 バッテリーの接続コネクタの位置を確認。
●6 バッテリーのコネクタを抜き、完全に電源が断たれた状態にする。若干わかりにくい部分なので、メーカーのサポートページにあるオーナーズマニュアルの内容も確認しておこう。

 内部はそれほど複雑ではなく、M.2スロットに直接アクセスできる。なお、SSDはスロットに挿してからネジで固定するタイプだ。交換の際にはスロットにSSDがしっかりと刺さっていることを確認しよう。

●7 ストレージ用のスロットは1つだけなので、固定しているネジを外し換装前のSSDを取り外す。ここのネジは完全に外れる上、小さいので紛失には注意しよう。
●8 データをコピーした換装用のSSDに挿し替え、固定用ネジを取り付ける。
●9 装着が済んだら背面パネルを元に戻そう。前方側のツメを合わせパネルをネジ止めする。
●10 換装後の起動確認をし作業完了。

 冒頭にも記載しているが、基本的にノートPCの分解行為はメーカー保証外の行為となるため、これにより故障した場合は保証が受けられない。今から新品のノートPCを購入する場合は元々ストレージ容量の多いモデルを選択するのが無難だ。

 とはいえストレージ以外の部分に不満が無いのであれば、PCを買換えるよりも、SSD換装はコストパフォーマンスが高いアップグレード方法になる。また、今回のようにメンテナンスが容易なモデルであれば換装そのものも容易なので試してみる価値はあるだろう。

大容量SSDへの換装で空き容量は約5倍にアップ、NVMe SSD化することで体感的な速度も向上

 実際にSSD換装を行い、前後でどのように変わったのかも紹介しよう。今回は各ストレージのベンチマークの他、外部ストレージからのデータ転送速度もそれぞれ比較してみた。

空き容量は大幅に増加、データの持ち運びも快適

 まずは容量の面で見ると、換装前の空き容量は81.9GB。ここにソフトウェアやデータを保存するとなると流石に厳しい。クラウドにデータを逃がすなどの工夫が必要になってくることだろう。

 換装後の空き容量は、428GBと大幅アップ。これにより内部ストレージへデータを気兼ねなく置けるようになり、アプリケーションもよほど大容量の物でなければいろいろとインストール可能になる。ビジネス用途などであれば、あまり困ることはない容量と言えるだろう。

 また、Windows 11へアップグレードする場合や、大型アップデートを適用する際などは、数十GB単位で空き容量が要求されることもある。PCを長く使うのであれば、大容量SSDを搭載し、空き容量には余裕を持っておくことが大切だ。

換装前の128GB SSD「SanDisk X600 128GB(SD9SN8W-128G-1122)」。
空き容量は81.9GB。システムのみなのでまだ余裕はあるが、資料や画像データをストレージへ保存しているだけでもすぐに一杯になってしまう。
換装後の500GB SSD「Samsung SSD 980(MZ-V8V500B/IT)」。
空き容量は428GBになり、データファイルを容量に気兼ねなく保存できるようになった。

NVMe SSDへの換装で一気に性能向上、速度・容量共に大幅増

 Crystal Disk Mark 8.0.4の実行結果。NVMe SSD化によってベンチマークの数値を見て分かる通り、いずれもリード/ライト共に大幅に向上している。

 換装後のSamsung SSD 980 500GBは接続もPCIe 3.0 ×4レーンとなっており、「Latitude 7390」はPCIe 3.0×4レーン接続のSSDの速度をしっかり引き出せていると言える。

換装前の128GB SSD「SanDisk X600 128GB(SD9SN8W-128G-1122)」。
十分な速度は出ているもののSATA接続なので一般的なSSDレベル。
換装後の500GB SSD「Samsung SSD 980(MZ-V8V500B/IT)」。
ほぼ公称値通りの結果となり、換装前に比べると大幅な速度向上が期待できる。

外部ストレージからのデータ転送も快適に、データ転送の待ち時間も約4分の1に短縮

USB3.2 Gen2接続対応で最大転送速度 1,050MB/s、指紋認証機能付きのポータブルSSD「Samsung Portable SSD T7 Touch(1TBモデル)」を使い、データ転送の速度をSSD換装の前後で比較してみた。

 SSDへ換装したことにより外部ストレージから内蔵ストレージへ大容量のデータを移す際の書き込み速度も大幅に改善されたはずだ。

 今回は、ポータブルSSD「Samsung Portable SSD T7 Touch(1TBモデル)」に50GBのデータファイルを用意し、これを内蔵ストレージへ書き込みする際の速度や時間を計測してみた。

換装前の128GB SSD「SanDisk X600 128GB(SD9SN8W-128G-1122)」。
50GBのデータ転送時は110MB/s前後の書き込み速度となった。書き込み完了までの時間は約8分ほど。
換装後の500GB NVMe SSD「Samsung SSD 980(MZ-V8V500B/IT)」。
50GBのデータ転送時は平均420MB/sほどの速度が出ており、書き込み完了までの時間は2分前後と大幅に短縮された。

 SATA接続のM.2 SSDの場合、データ転送元の外付けSSDが高速でも、書き込み速度は110MB/s前後が限界のようだ。NVMe SSDへの換装後は最大で約800MB/s以上、50GBのデータ転送が2分前後で済んでいるので、平均で420MB/s程度の速度は出ていることになる。換装前後で転送時間は4分の1近くに減少しているので、体感的にもかなりの速度向上が得られた結果になった。

Windwos 11への対応もOK、SSD換装でまだまだ使えるPCに

 ちなみに、今回使用している「Latitude 7390」はメーカーサポートでWindows 11動作検証済みのため、将来的にWindows 11にアップグレードすることも可能だ。SSDへのアップグレードを行っているので、Windows 11へOSをアップグレードした際も快適に使えるだろう。

 PCメーカーがWindows 11への対応状況を公開していない場合などは、Windows 11の公式サイトで公開されている「PC 正常性チェック アプリ」から確認しよう。使用しているPCがWindows 11へ対応しているのか、逆に対応していない部分はどの部分なのかを確認できる。

Windows 11の公式サイトでは「PC 正常性チェック アプリ」が公開されており、使用中のPCがWindows 11の要件を満たしているか確認できる。
今回使用している「Latitude 7390」はWindows 11の要件を満たしており、SSD換装で容量を増やしたことでWindows 11へ将来的にアップグレードする際にも安心だ。

 ノートPCのSSD換装はメーカー保証外の行為となることが多くリスクはあるものの、換装によって得られるメリットは大きい。

 今回とりあげた「Latitude 7390」は13インチ小型ノートPCということもあり内部の拡張性は薄いものの、搭載されたCPU性能は十分でメモリも16GBと余裕がある。SSD換装によるストレージ容量の増加でこれまで以上に使い勝手も向上し、Windows 11へのアップグレードにも対応しているので将来的にも長く使える。

 PCを買い換えるほどではないといった場合や、予算を抑えて環境を快適にしたいというユーザーは、ノートPCのSSD換装もPCを快適にする選択肢の一つとして考えてみてはいかがだろうか。

[制作協力:Samsung]