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14型の「パナソニック レッツノート CF-LV8」を1TB NVMe SSDへ換装、容量&速度を大幅アップ
SSD換装大全、ノートPCの分解からデータ移行まで徹底解説 text by 白倉甲一
2022年7月25日 00:01
今回SSD換装の事例として紹介するのは、2019年夏に発売されたパナソニックのビジネス向けノートPC「レッツノート CF-LV8」。
14型筐体にフルHD(1,920x1,080)解像度に対応したディスプレイや、光学ドライブを始めとした各種機能、映像出力ポートなどの多彩なインターフェースを詰め込みつつも、頑丈(タフ)さや軽量設計などを実現しているシリーズ。
用意したのは、Core i5-8365U(4コア/8スレッド)と8GBのメモリ、256GBのSATA接続M.2 SSDを搭載し、Intel vPRO対応の型番「CF-LV8RDAVS」のモデル。換装用には 1TB NVMe SSDを用意し、高速化と大容量化を図ってみた。
※ノートPCの分解行為やパーツの換装はメーカー保証外の行為となります。この記事を読んで行った行為によって、仮に損害が発生しても弊誌および、メーカー、販売ショップはその責を負いません。
レッツノート CF-LV8の256GB M.2 SATA SSDを1TB NVMe SSDへ換装
今回の「レッツノート CF-LV8(CF-LV8RDAVS)」はコンパクトな14インチビジネスノートPC。14型筐体に様々な機能を盛り込みつつも軽量で頑丈な設計になっており可搬性と機能性を兼ね備えている。使用状態も悪くなく外装に目立った傷などはない。
中古品として入手しているため新品時から若干の変更点はあるかもしれないが、大まかなスペックは、CPUがIntel Core i5-8365U(4コア/1.60GHz)、メモリがLPDDR3 SDRAM 8GB、ストレージが256GBのM.2 SATA SSD。ディスプレイは14インチ/1,920x1,080ドットで、OSはWindows 10 Pro 64bit。型番「CF-LV8RDAVS」はvPro対応とされているので、おそらく機能を利用可能なはずだ。
搭載インターフェイスはUSB Type-C(Thunderbolt 3/USB 3.2 Gen2/USB Power Delivery対応) x1、USB 3.2 Gen1 x3、有線LANポート、オーディオコンボジャック。また、映像出力にHDMIとVGAが利用可能。その他、無線LAN(IEEE802.11ac)、Bluetooth、SDカードリーダー(UHS-II対応)やスーパーマルチドライブも内蔵しており軽量・堅牢ながらも機能も豊富なモデルとなっている。
パナソニック レッツノート CF-LV8(CF-LV8RDAVS) | |
---|---|
CPU | Core i5-8365U(4コア/1.6GHz) |
メモリ | LPDDR3 SDRAM 8GB |
ストレージ | M.2 SATA SSD 256GB |
GPU | Intel UHD Graphics 620 |
ディスプレイ | 14インチ/1,920×1,080ドット |
OS | Windows 10 Pro |
搭載されていたのは256GBのM.2 SATA SSD「Samsung MZNLN256HAJQ-00007」
「レッツノート CF-LV8」にはM.2 SATA SSDの「Samsung MZNLN256HAJQ-00007」が搭載されていた。SATA接続で容量は256GB。速度は必要十分なものの他にストレージは搭載されておらず、多少のデータであれば気にせず保管しても良いが、今後のWindows Updateなども見据えるとやや心許ない容量だ。
換装に使うのは1TBのNVMe SSD「Samsung SSD 980」
今回換装に使用するSSDは、Samsung SSD 980の1TBモデル(MZ-V8V1T0B/IT)。最大速度はリード3,500MB/s、ライト3,000MB/s。NVMe接続モデルで、インターフェイスはPCIe 3.0 x4レーン。
Samsung SSD 980は250GB~1TBまでの3製品がラインナップされているので、SSD換装に使用する際は予算や使用する容量に合わせて選ぶと良いだろう。
ノートPCでM.2 SATA SSDからM.2 NVMe SSDへ換装を行う際に相性が出ることがある。このため、SSD換装の際には事前に下調べを行い、動作実績のあるモデルから選ぶことをお勧めしたい。
また、ノートPC側のM.2スロットは製品により仕様が異なり、大きく分けると、SATA接続のみ、SATA接続とNVMe接続両対応、NVMe接続のみ対応といった3パターンが存在する。SATA SSDからNVMe SSDに換装する場合、ノートPC側がSATA/NVMe両対応である必要があるので注意しよう。
このほか、ノートPC側のM.2スロットはモデルによりPCI Expressのレーン数や世代が異なり、モデルによってはSSDの公称値通りの性能が出ないケースもある。これは故障では無いので覚えておこう。
古いSSDから新しいSSDに引っ越し、データの移行からPCの分解まで一式紹介
ここからは実際にSSD換装を行う際の手順を紹介しよう。換装する際はSSD外付けケースとデータ移行ソフトを用意すると簡単だ。
M.2型のNVMe SSD向け外付けケースは2,500~4,000円前後で入手可能、データ移行ソフトは大手メーカーのSSDであれば付属していることが多い。両方事前に準備しておこう。
換装するSSDをUSB外付けケースに搭載、データコピーの準備をしよう
PCのデータを丸ごと引っ越し先のSSDにコピーするため、換装用SSDを外付けケースに搭載しよう。
今回使用している外付けケースはAOTECHの「AOK-M2NVME-U31G2」。NVMe SSDに対応したUSB 3.2 Gen2接続のケースで、SSDの装着も比較的容易にできるタイプだ。
M.2 SSD用の外付ケースは、NVMeのみに対応したモデル、SATAのみに対応したモデル、NVMe/SATA両対応のモデルがある。購入時には使用するSSDに合わせ対応したモデルを購入しよう。
データの移行はSSD付属ソフトが便利、Samsung Data Migration 4.0なら簡単
今回データ移行ソフトには「Samsung Data Migration 4.0」を使用した。Samsung製SSDで利用できる専用のユーティリティで、操作もかなり簡単だ。
Samsungのサポートページからダウンロード可能で、項目を選択していくだけで作業は簡単に終わる。
USB接続の外付けケースを用いたSSD換装の注意点になるが、移行ソフトとの相性などによりデータのコピーが正常に行えないときがある。そういった状況の場合は外付けケース側のUSBコントローラとの相性に問題がある可能性が高いので、ケースを替えるか、デスクトップPC上でデータのコピーを行うなどテストしてみてもらいたい。
Samsung Data Migrationであれば、代理店のITGマーケティングがNVMe SSD用の外付けケースの動作確認表を公開しているので、そちらも合わせて確認しよう。
暗号化されたままではデータのクローンは行えない。パーティションが暗号化されているかどうかは、Windows設定内の「デバイスの暗号化」から状態を確認できる。
暗号化されている場合はデータをクローンする際に解除する必要がある。暗号化解除後は上記手順でSamsung Data Migrationから正常にクローンを完了できる。
現在のWindowsはHomeやProといったエディションを問わずデバイスの暗号化が自動で適応されていることがあり、データのクローンを行う前に必ずドライブの状態を確認してから行おう。外付けケースとデータクローンソフトの相性と合わせ、押さえておくべきポイントだ。
レッツノート CF-LV8の分解はネジが多いものの、そこさえ越えれば容易にストレージ換装可能
ここからは「レッツノート CF-LV8」の分解になるが、工具はドライバー、精密ドライバー共にプラスの物が各1本必要なので準備しておこう。
また、SSD換装時はPCを必ずシャットダウンした状態で行う必要があるので注意。機器の破損や故障を防ぐため、誤って休止などの状態で分解しないように気を付けてほしい。今回の場合はバッテリーパックが外部から取り外せるタイプなのでやや安心といったところだ。
分解作業は背面パネルのネジを全て外すだけではあるが、堅牢さが特徴の一つな為かネジがかなり固めなため勢い余ってネジを紛失してしまわないように気を付けよう。
内部はそれほど複雑ではなく、M.2スロットに直接アクセスできる。なお、SSDはスロットに挿してからネジで固定するタイプだ。交換の際にはスロットにSSDがしっかりと刺さっていることを確認しよう。
冒頭にも記載しているが、基本的にノートPCの分解行為はメーカー保証外の行為となるため、これにより故障した場合は保証が受けられない。今から新品のノートPCを購入する場合は元々ストレージ容量の多いモデルを選択するのが無難だ。
とはいえストレージ以外の部分に不満が無いのであれば、PCを買い換えるよりも、SSD換装はコストパフォーマンスが高いアップグレード方法になる。また、今回のようにメンテナンスが容易なモデルであれば換装そのものも容易なので試してみる価値はあるだろう。
大容量SSDへの換装で空き容量は4倍強にアップ、NVMe SSD化することで速度も大幅向上
実際にSSD換装を行い、前後でどのように変わったのかも紹介しよう。今回は各ストレージのベンチマークの他、外部ストレージからのデータ転送速度もそれぞれ比較してみた。
空き容量は4倍強と大幅に増加、大容量データなども気にせず保存可能に
まずは容量の面で見ると、換装前の空き容量は187GB。少なくはないもの大量のデータやソフトウェア本体をいくつも保存するとなるとやや足りず、クラウドや外部ストレージになるべくデータを移す必要が出てしまう。
換装後の空き容量は、846GBと大幅アップ。これにより内部ストレージへデータを気兼ねなく置けるようになり、大容量の動画データや解像度の高い写真なども内部ストレージへラクラク保存できる。
また、Windows 11へアップグレードする場合や、大型アップデートを適用する際などは、数十GB単位で空き容量が要求されることもある。PCを長く使うのであれば大容量SSDを搭載し、空き容量には余裕を持っておくことが大切だ。
NVMe SSDへの換装でシーケンシャル速度は5倍以上高速に
Crystal Disk Mark 8.0.4の実行結果。NVMe SSD化によってベンチマークの数値を見て分かる通り、いずれもリード/ライト共に大幅に向上している。
換装後のSamsung SSD 980 1TBは接続もPCIe 3.0 ×4レーンとなっており、「レッツノート CF-LV8」はPCIe 3.0×4レーン接続のSSDの速度をしっかり引き出せていると言えるだろう。
外部ストレージからのデータ転送も快適、データ転送の待ち時間も4分の1に一気に短縮
SSDへ換装したことにより外部ストレージから内蔵ストレージへ大容量のデータを移す際の書き込み速度も大幅に改善されたはずだ。
今回は、Thunderbolt 3接続のポータブルSSD「Samsung Portable SSD X5」に50GBのデータファイルを用意し、これを内蔵ストレージへ書き込みする際の速度や時間を計測してみた。
換装前のMZNLN256HAJQ-00007に50GBのファイルを転送するのに約2分40秒かかったのに対し、換装後のSSD 980 1TBへ50GBのファイルを転送する時間は約38秒だった。転送時の速度も換装前のMZNLN256HAJQ-00007が315MB/s前後だったのに対し、換装後のSSD 980 1TBは1.37GB/sほどと大きな差がみられる。
ここまでの差があると体感でもかなり速いと感じることができるので、Thunderbolt 3接続やUSB 3.2 Gen2/Gen2x2接続などの高速な外付けSSDを使用するユーザーには、換装の効果は大きい。
Windwos 11への対応もOK、SSD換装で長く使える多機能PCに
Windows 11の公式サイトで公開されている「PC 正常性チェック アプリ」を実行したところ、今回使用している「レッツノート CF-LV8」はアップグレードのシステム要件を満たしていることを確認できた。同アプリでは使用しているPCがWindows 11へ対応しているのか、逆に対応していない部分はどの部分なのかを確認できる。NVMe SSDへの換装を行った事でWindows 11へOSをアップグレードした際も快適に使えるだろう。
ノートPCのSSD換装はメーカー保証外の行為となることが多くリスクはあるものの、換装によって得られるメリットは大きい。
今回とりあげた「レッツノート CF-LV8」は軽量、堅牢な14型ノートPCということでインターフェイス周りも充実しているので長く使用するのに最適なモデルだ。基本性能も十分で、SSD換装によるストレージ容量の増加でこれまで以上に使い勝手も向上し、Windows 11へのアップグレードにも対応しているので将来的にもまだまだ活躍が見込める。
PCを買い換えるほどではないといった場合や、予算を抑えて環境を快適にしたいというユーザーは、ノートPCのSSD換装もPCを快適にする選択肢の一つとして考えてみてはいかがだろうか。
[制作協力:Samsung]