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【偽造SDカードを使うとこうなる】ラインナップにない容量のモデルを確認! マトモに使えないので注意せよ
SamsungのSDカードを例に本物と偽物の違いを調査 text by 芹澤 正芳
2022年11月24日 00:00
スマホやカメラの高画質化にともなって、静止画も動画も撮影データの容量は肥大化する一方だ。そのため、大容量のSDカードが人気になっているが、2022年末になっても悲しいことにSDカード黎明期から続く“偽物カード”の存在は消えていない。
通販サイトやフリマサイトでは、以前から有名ブランド品の見た目を似せたコピー品が出回っているが、その中には、そもそも使えない、容量や速度がスペック通りではないといったきわめて悪質なものが存在する。その状況は、Nintendo Switchや一部スマホが1TBの大容量microSDカードに対応したことで悪化していると言ってよい。
そこで今回はSamsungのSDカードを例に、どのような偽物が出回っているのか、偽物と本物は何が違うのか、偽物と見分ける方法はあるのか、偽物を使った場合はどうなってしまうのかを紹介していきたい。
「存在しない1TB版」がなぜか流通!? 買う前の対策としてラインナップの確認を
偽物のSDカードを買う前に回避する手段として、まず簡単にできるのが正規品のラインナップを確認することだ。分かりやすい例が、512GBモデルまでしかないSamsungの「microSD EVO Plus」と「microSD PRO Plus」の1TBと銘打っているもの。ラインナップにない容量なので、当然その時点で偽物。妙に安い大容量モデルを見つけた場合は、まずはメーカーのWebサイトでその容量がホントにあるのか確かめるようにしたい。
本物ではあるのだが、ちょっと注意したいのが、市場には「並行輸入品」という“国内正規品ではないメーカー純正品”も流通していること。海外版などを独自に輸入して販売しているケースが該当するが、純正品なので性能面の問題はない。
しかし、販売特約店である「ITGマーケティング株式会社」が販売する日本国内版とは異なり、日本での正規サポートは受けられない。故障などのトラブルが発生した場合の対処が難しいという点は覚えておきたい。ITGマーケティング取り扱いの日本正規品はWeb通販に関しては「国内正規保証品」や「国内正規品」と表記されている。店頭で購入する場合は、裏面に「ITGマーケティング株式会社」のシールが貼られているので、すぐに国内正規品か確認が可能だ。
なお、任天堂の公式オンラインストア「My Nintendo Store」で販売されているSamsung製のSDカードは例外でITGマーケティングのシールはないが、こちらは商品ページ内で10年保証やサムスンのサポートセンターの情報が表記されており、メーカー保証のある国内正規品となっている。
本物と偽物では見た目が大違い! 偽物判定ツールも存在
今回検証するのは、Samsungの「microSD EVO Plus」と「microSD PRO Plus」だ。ラインナップに存在しない1TB版を入手し、正規版の512GB版と比べて容量表記以外に何が違うのかチェックしていきたい。もちろん、ラインナップにある容量の偽物も存在している。本物と偽物を見分ける手段も詳しく紹介するので、もし買ったSDカードが怪しいと思ったらチェックしてみてほしい。
今回入手したものは、まず本物とパッケージが全然異なっていた。過去には細かな違いはあるものの、非常に似たパッケージとなっていた偽物もあっただけに、似せる気がゼロという大胆な行為に驚くばかりだ。
ここまで違うパッケージだと、フリマサイトなどではカード単体で出品されていることも考えられる。正規品と偽物のカードをチェックしてみよう。どちらも偽物はザラッとした見た目で文字の印字が粗いのが特徴だ。microSD EVO Plusに関しては、「EVO」と「Plus」のロゴの位置が違うなどハッキリとしたデザインの違いもある。microSD PRO PlusもV30やA2など対応規格部分の色が異なっている。
また、正規品と偽物では付属するSDカードとして使うためのアダプタも異なる。偽物は下段が黒く印刷も粗く、裏面には何も書かれていない。正規品は白色のデザインで裏面にはメーカーロゴやロット番号といった印字がある。
このほか、裏面の印字で判別する方法もある。正規品はMB-Mxxxxxという型番に加え、㋹マークが記載されている。一方の偽物は型番の記載がなく、㋹マークも存在しない。書かれている文字の向きも内容も異なる。
さらに、Samsungでは同社カードの真偽を判定するWindows向けのユーティリティ「Samsung Card-UFD Authentication Utility」を無償で公開している。使い方は簡単でmicroSDカードのドライブを指定するだけ。正規品であれば、「Genuine Samsung Product」と正規品であること示すメッセージが表示、偽物は「Either not a Genuine Samsung product or cannot authenticate product's software」と正規品ではないとメッセージが表示される仕組みだ。
なお、正規品でも2018年以前の古い製品には㋹マークがなく、ユーティリティに対応していないものもある。㋹マークがないだけで、現在の製品とそのほかの見た目は同じ。文字の配列や実際の性能で偽物と判別してほしい。
速度も容量もウソだらけ! でもカメラやSwitchで(何となく)動作しちゃうのが悪質……
次は、microSD EVO Plusの正規品(512GB版)と偽物(1TB版)を実際に使用して比較しよう。まずは、PCでデータ転送速度を測定する。インターフェースがボトルネックにならないように、USB 3.2 Gen2(10Gbps)のポートに、転送速度が最大170MB/sの高速カードリーダーを使用してPCと接続している。
ソフトはストレージの最大速度を測定できる定番ベンチマーク「CrystalDiskMark 8.0.4c」を使用した。
CPU | Intel Core i5-12600K(10コア16スレッド) |
マザーボード | Intel Z690搭載マザーボード |
メモリ | DDR5-4800メモリ 32GB (PC5-38400 DDR5 SDRAM 16GB×2) |
ビデオカード | NVIDIA GeForce RTX 3070搭載カード |
システムSSD | Samsung 980 PRO MZ-V8P1T0B/IT(PCI Express 4.0 x4、1TB) |
データSSD | M.2 NVMe SSD(PCI Express 4.0 x4、1TB) |
CPUクーラー | 簡易水冷クーラー(36cmクラス) |
電源 | ATX電源(1,000W、80PLUS Gold) |
OS | Windows 11 Pro |
結果は、正規品がシーケンシャルリード131.36MB/s、シーケンシャルライト123.99MB/sとほぼ最大130MB/sという公称どおりの性能を出しているのに対し、偽物はシーケンシャルリード5.66MB/s、シーケンシャルライト23.67MB/sしか出ていない。リードは23分の1以下と強烈な遅さだ。
Nintendo Switchでは、筆者がこれまで常用していたmicroSDカードのデータを丸ごと偽物(exFAT形式でフォーマット)にコピーし、それを接続した。しかし、結果は「このSDカードはデータが壊れているので使えません」と表示されて使用できず。また、偽物をNintendo Switchでフォーマットすると、ぱっと見は認識するようになるのだが、試しにゲームをダウンロードしたところ「エラーが発生しました。」と表示され、ゲームは起動できず、どちらにしても使い物にならなかった。
デジカメに関しては、筆者が普段使用しているソニーのα6000で使用してみたが、「メモリーカードがロックされています」と表示されて正しく認識できなかった。正規品と使い勝手を比較することすらできない状態だ。
偽物カードの典型的な例が、パッケージなどに記載がある容量どおりに使用できない、いわゆる「容量偽装」だ。今回入手したサンプルは、ここまで見ただけでも完全に偽物なのだが、実際にその偽装ぶりを見てみよう。ここでは、SDカードやUSBメモリなどのストレージにデータを書き込み、そのデータが正しく読み込めるかテストするソフト「H2testw」を使って検証している。
このテストは実はものすごく時間がかかるので、1TBすべての領域でテストをすると数日かかるため、まずは128GBの領域のみに絞ってテストを行なった。しかし、書き込まれたデータのうち正しく読み込めたのは、先頭部分のたったの31.8GBのみ。容量偽装が行なわれている証拠である。
この容量偽装がいやらしいのは、正しく読み込めた31.8GB分は普通に使えてしまうことだ(遅いけど……)。ファイルを保存しても問題なく読み込みできる。動画ファイルなら再生可能というわけだ。しかし、31.8GB以上データを書き込むと、書き込めたように見せかけて、読み込みはできなくなる。偽物と知らずに大容量データを記録した場合、読み込むまでその問題に気づけないのが恐ろしいところだ。
また、Nintendo Switchやデジカメでは使えない偽物でも、スマートフォンではPCと同じく認識してしまうことが多い。筆者が手持ちのXiaomi Redmi 9TとOPPO Reno5 Aで試してみたが、問題なく認識して書き込みも行なえた。スマートフォンの場合、31.8GBしか使えないことになかなか気づけない可能性が高いので、組み込む前に真偽のチェックを忘れずにやっておきたいところだ。