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UMPC「AYANEO AIR」の増設に高速microSDはあり?PCゲームがちゃんと遊べるのか試してみた

microSD・内蔵SSD・外付けSSDでゲームロード時間を比較 text by 坂本はじめ

 AYANEOの「AYANEO AIR」は、携帯ゲーム機のようなルックスでありながらWindowsを搭載する5.5型ゲーミングUMPC(Ultra-Mobile PC)だ。このAYANEO AIRのスタンダードモデルには、512GBのSSDが内蔵されているのだが、内蔵SSDの容量だけでは足りないユーザー向けにmicroSDカードスロットも用意されている。

 とはいえ、内蔵SSDとmicroSDカードではかなりの速度差があるので、microSDカードがゲーミングUMPCの内蔵ストレージとして通用するのか否かが気になってくる。そこで今回は、高速なmicroSDXCカードである「Samsung microSD EVO Plus」の512GBモデルを使って、microSDカードでも実用的な性能が出るのか、AYANEO AIRの内蔵SSDや外付けSSDとゲームのロード時間を比較してみた。

速度とコストパフォーマンスに優れたmicroSDXCカード「Samsung microSD EVO Plus」

 今回テストに使用するSamsung microSD EVO Plusは、記憶素子であるNANDフラッシュメモリを製造しているSamsungが販売しているmicroSDXCカード。最大転送速度は130MB/sで、64~512GBまでの記憶容量がラインナップされている。

 特に128GB以上のモデルは、UHS-I Speed Class 3(U3)のほか、アプリケーションパフォーマンスクラス「A2」や、ビデオスピードクラス「V30」に対応しており、携帯ゲーム機やスマートフォンの増設用SDカードに好適なスペックを備えている。今回使用する512GBモデルの実売価格は9,000円前後で、高性能品としては手の出しやすい価格帯であることも魅力だ。

Samsung microSD EVO Plusの512GBモデル。
Samsung microSD EVO Plusの製品パッケージ。SDカードアダプタが付属している。

軽量でWindowsベースの5.5型ゲーミングUMPC「AYANEO AIR」

 AYANEO AIRは、5.5型のフルHD有機EL(OLED)ディスプレイを搭載したゲーミングUMPC。

 今回用意したのはスタンダードモデルで、携帯ゲーム機ライクのコンパクトな筐体には、6コア12スレッドCPUと6コアGPUを組み合わせたAMDのAPU「Ryzen 5 5560U」や、16GBのLPDDR4Xメモリ、512GB SSDなどが内蔵されている。OSはWindows 11 Home。重量は約398g。

5.5型ゲーミングUMPC「AYANEO AIR」。

 冒頭でも触れた通り、AYANEO AIRはmicroSDカードスロットを利用することでストレージ容量の増設が可能なほか、USB 5Gbps対応USB Type-C端子を2基備えているので、USB接続のSSDなどを使って容量を増やすこともできる。

本体下部にmicroSDカードスロットを搭載している。
USB 5Gbpsに対応するUSB Type-C端子を本体の上下に各1基ずつ搭載。USB接続のストレージを利用した記憶容量の増設も可能だ。

microSDカードはWindowsベースの携帯ゲーム機のストレージとして通用する?microSDカード、内蔵SSD、外付けSSDでゲームのロード時間を比較

 今回は、AYANEO AIRに内蔵されている512GBのSSDと、SDカードスロットに挿入したSamsung microSD EVO Plusの512GBモデル、USB接続のSSD「Samsung T7 Shield(1TB)」にそれぞれゲームをインストールし、ゲーム中のロード時間がどの程度変化するのかをチェックする。

 テスト時は、AYANEO AIRは満充電かつUSB給電状態で、動作モードはパフォーマンス優先のゲームモードに設定している。

AYANEO AIRのmicroSDカードスロットにSamsung microSD EVO Plus(512GB)を挿入。
USBポートに接続した外付けSSD「Samsung T7 Shield(1TB)」。SSD自体はUSB 10Gbpsに対応しているが、AYANEO AIRの仕様によりUSB 5Gbps接続となっている。

 ゲームのロード時間を比較する前にAYANEO AIR上でCrystalDiskMarkを実行し、各ストレージの速度を計測した結果が以下の通り。

 もっとも高速なのは2GB/s弱のリード性能を記録した内蔵ストレージで、次点はUSB 5Gbps接続の外付けSSDが記録した最大リード約419MB/s。microSDカードの最大リード速度は約93MB/sで、リード速度では内蔵SSDの20分の1程度しか出ていない。内蔵SSDとmicroSDカードの間には非常に大きな速度差がついているが、この差がゲームのロード時間ではどうなるのかに注目だ。

microSDカードの計測結果。AYANEO AIRのSDカードスロットはUHS-I(SDR104)対応のようで、最大速度はリード約93MB/s、ライト約84MB/sとなっている。
AYANEO AIRの内蔵SSDの計測結果。リード速度は最大2GB/s弱に達しており、microSDカードとは桁違いの速度を実現している。
USB外付けSSDの計測結果。USB 10Gbps接続なら1GB/s程度の速度を実現するSSDだが、AYANEO AIRの仕様によりUSB 5Gbps接続となっているため、400MB/s程度で頭打ちになっている。

ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク

 ロード時間の計測機能も備えるゲームベンチマーク「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」では、シーン1~5のロード時間を合計した「ローディングタイム」を比較してみた。テスト時の画質設定は「標準品質(ノートPC)」で、画面解像度は「1,280×720ドット」。

ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク。
AYANEO AIRでやや快適の評価が獲得できる「1,280×720ドット/標準品質(ノートPC)」でテストを実行した。

 ローディングタイムの計測結果では、最速が内蔵SSDの「16.22秒」で、次点が外付けSSDの「20.81秒」、microSDカードはもっとも遅い「31.30秒」だった。

 microSDカードのロード時間は内蔵SSDの2倍近いものとなっているものの、20倍ほどの差がついていたCrystalDiskMarkの結果からすると、microSDカードがかなり健闘しているように見える。

エルデンリング

 エルデンリングでは、祝福への転送(ファストトラベル)を使ったさいのロード時間を計測した。テスト時の画質設定は「低」で、画面解像度は「1,280×720ドット」。

エルデンリング。
祝福への転送(ファストトラベル)を実行したさいのロード時間を計測した。

 ロード時間を計測した結果、最速は外付けSSDの「9.26秒」で、次点が内蔵SSDの「9.48秒」、microSDカードは「12.26秒」だった。

 内蔵SSDと外付けSSDの差は計測誤差レベルなので同等と言って差し支えないが、microSDカードはロードが完了するまでに内蔵SSDより3割ほど多くの時間がかかっている。とはいえ、その差は3秒前後であり、ゲームをプレイする上でそこまでストレスを感じるほどの差ではない。エルデンリングはmicroSDカードでも十分にプレイできると言って良いだろう。

モンスターハンターライズ:サンブレイク

 モンスターハンターライズ:サンブレイクでは、クエストを選択して探索に出発し、フィールドに入れるまでのロード時間を比較した。テスト時の画質設定は「中」で、画面解像度は「1,280×720ドット」。

モンスターハンターライズ:サンブレイク。
大社跡への探索に出発するさいのロード時間を比較した。

 ロード時間を計測した結果、最速は内蔵SSDの「5.70秒」で、次点が外付けSSDの「5.78秒」、microSDカードは「8.94秒」だった。

 ここでも内蔵SSDと外付けSSDのロード時間はほぼ同等で、microSDカードだけ5~6割ほど多くの時間が掛かっている。エルデンリングよりも差が大きい分、microSDカードでのプレイ中の体感ロード時間も長く感じられるが、せいぜい数秒程度の差ではある。当然、ロード時間は短いにこしたことは無いが、内蔵SSDの容量が不足しているような状況であれば妥協できなくはないレベルだろう。

ゲームのデータファイルを転送する際はベンチマーク通りの性能差にmicroSDと外付けSSDのファイル転送速度を比較

 今回テストしたゲームのうち、Steamで提供されているエルデンリングとモンスターハンターライズ:サンブレイクのインストールフォルダを移動したさいの転送時間と転送速度を計測してみた。

 転送するファイルの容量は合計82.43GBで、内蔵SSDからmicroSDまたは外付けSSDに移動した場合(書き込み)と、逆にmicroSDまたは外付けSSDから内蔵SSDに移動した場合(読み出し)の2パターンを計測した。

Steamのゲームインストールフォルダを移動したさいの転送時間と速度を計測する。インストール容量はエルデンリングが49.86GBで、モンスターハンターライズ:サンブレイクが32.57GBなので、合計は82.43GB。

 内蔵SSDから移動(書き込み)したさいの転送時間と速度は、microSDが18分(78.1MB/s)、外付けSSDが4分43秒(298.2MB/s)で、外付けSSDの方が約3.8倍も高速だった。内蔵SSDへ移動(読み出し)したさいの転送時間と速度についても、microSDが16分51秒(83.5MB/s)。外付けSSDが4分10秒(337.4MB/s)で、こちらも外付けSSDが約4倍も高速な結果となっている。

 ゲームプレイ中のロード時間についてはそこまで大差がついたわけでは無かった一方、ファイルの転送ではCrystalDiskMarkの計測結果と同じように大差がついた。

 シーケンシャルアクセス速度の違いはこのようにファイル転送で効いてくる訳だが、microSDカードでのゲームインストールフォルダの移動速度についても、1Gbpsクラスのネット回線で再ダウンロードするのに掛かる時間といい勝負にはなるだろう。

携帯性を重視するなら、UMPCの容量増設にmicroSDカードは有効ゲーム性能も期待するならSamsung microSD EVO Plusのような高速な製品を

 CrystalDiskMarkやファイルの転送速度ではSSDに桁違いの速度差をつけられていたmicroSDカードだが、実際にインストールしたゲームのロード時間を計測してみると、内蔵SSDとよりやや遅いものの、プレイに支障が無いレベルのパフォーマンスを発揮していた。大容量ファイルの転送には適さないが、ゲーミングUMPCの増設用ストレージとして、Samsung microSD EVO Plusは十分に通用する性能を備えていると言える。

 microSDの比較に用いた外付けSSDは、増設ストレージとして性能面ではmicroSDを明確に上回っていたものの、UMPCの携帯性を大きく損なうという物理的なデメリットが非常に大きい。逆に、本体に内蔵できるmicroSDカードは携帯性を一切損なわないので、AYANEO AIRの容量不足を緩和する増設用ストレージとして第一の選択肢となるのはmicroSDカードだろう。

 もっとも、microSDカードと言っても性能は製品によって大きく異なる。ゲーミングUMPCの容量増設を狙うなら、Samsung microSD EVO Plusのように高速なカードを選択することが重要だ。

[制作協力:Samsung]