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Samsung SSD 980 PRO×4枚で20,000MB/sオーバー!浪漫あふれる超高速SSD環境を作ってみた
マザーボードのRAID機能と変換カードで意外と簡単!? by 芹澤 正芳
2020年12月26日 00:00
PCI Express 4.0対応のハイエンドNVMe SSDとして大きな注目を集めるSamsungの「SSD 980 PRO」。公称7,000MB/sの圧倒的なシーケンシャルリード速度に加えて、実アプリのレスポンスも良好と長年SSDを手掛けてきたSamsungの技術力が光る完成度だ。
コントローラにはSamsungの8nmプロセスで製造された自社開発の「Elpis」が採用されている。ハイエンドクラスでも12nmプロセス製造が多いNVMe SSD向けのコントローラにおいて、これは大きなアドバンテージ。高性能でも発熱が小さく、扱いやすい。
そんなSSD 980 PROを複数枚用意し、RAID 0(ストライピング)を構築したらどこまで速度が出るのか。実用性云々はともかくとして、それに浪漫を感じる人もいるだろう。しかし、NVMe SSDの複数搭載に対応した本格的なRAIDコントローラを搭載する拡張カードはとても高価でハードルは高い。
手軽にRAID 0を構築するならマザーボードのRAID機能を利用するのが一番だ。現在のチップセットは、IntelのComet Lake-S世代ならZ490/H470/B450でRAID構築をサポート(H410にはない)。AMDのX570/B550/A520やX470/B450と現役世代のチップセットはほとんどがRAID構築に対応している。
一応解説しておくと、RAID 0(ストライピング)は、複数のストレージをまとめて高速な仮想ドライブを構築する技術。このドライブに読み書きを行うと、実際には複数のドライブに処理が分散され、1台で利用するときよりデータ転送速度が速くなる。ストレージの容量をすべて使えて高速化できるのがメリットだが、複数あるストレージのうちどれか一つでも故障すると仮想ドライブが使えなくなってしまうため、単体で使うより故障リスクは高まる。
というわけで、ここではSSD 980 PROの500GB版を4枚用意。1枚だけで使用する場合の速度をはじめ、2枚、3枚、4枚使用時のそれぞれでRAID 0を構築し、どこまで速度が向上するのか挑戦してみたい。テスト環境は以下のとおりだ。このほか、OS起動用に別途Serial ATA SSDを1台使用した。
CPU | AMD Ryzen 9 5900X(12コア24スレッド) |
マザーボード | ASRock X570 Taichi(AMD X570) |
メモリ | Micron Crucial Ballistix RGB BL2K8G36C16U4BL (DDR4-3600 8GB×2、※DDR4-3200で動作) |
ビデオカード | MSI GeForce GTX 1650 AERO ITX 4G OC(NVIDIA GeForce GTX 1650) |
OS | Windows 10 Pro 64bit版 |
RAID 0の構築にはX570チップセットに搭載されている「RAIDXpert2」を使用する。ASRock X570 TaichiはM.2スロットが3基しかないので、マザーボードだけでは4枚装着の環境は作れない。そのため、NVMe SSD対応のM.2スロットを備えたアイネックスのPCI Expressカード「AIF-10」を二つ用意した。
X570 Taichiは3基あるM.2スロットのうち、CPUソケット側にある2基がCPU直結。3本あるPCI Express 4.0 x16スロットも、CPUソケット側の2本がCPU直結。つまり、CPU直結のM.2スロットにSSD 980 PROを2枚、AIF-10にSSD 980 PROを2枚取り付けて、同じくCPU直結のPCI Express 4.0 x16スロットに挿せば、すべてのSSDをCPU直結のPCI Expressレーンに接続できる、というわけだ。CPU直結のPCI Express x16スロットのそれぞれにカードを挿すとレーン分割が行なわれ、動作はPCI Express 4.0 x8になってしまうが、SSD 980 PROはPCI Express 4.0 x4接続なので、帯域が不足する心配もない。
なお、X570は、チップセット接続のM.2スロットもPCI Express 4.0対応だが、チップセット経由だと若干ではあるが、NVMe SSDのデータ転送速度が落ちることがある。可能な限り、CPU直結のPCI Expressレーンに接続したいということで、今回はこのような構成にした。なお、この構成にするとビデオカードは必然的にチップセット接続のPCI Express 4.0 x16スロット(x4動作)に取り付けることになる。そうなると帯域不足でビデオカードの性能を十分引き出せない可能性はあるが、今回はあくまでSSDの速度テストなのでそこは目をつぶってほしい。
マザーボードのRAID機能をセットアップする
早速、テストを試していきたい。まずは、X570 TaichiでRAID 0を構築する手順を紹介しよう。ポイントは、UEFIメニューで「SATA Controller(s)」を「RAID」に設定、「NVMe RAID mode」を「Enabled」に、「CSM」を「Disabled」にすることだ。あとは、「RAIDXpert2 Configuration Utility」でRAID 0を構築すればよい。
なお、チップセットのRAID機能を有効すると、そのままではWindows 10をインストールできない。Windows 10のインストーラにRAIDドライバが含まれていないためだ。Windows 10をインストールするためのUSBメモリにあらかじめRAIDドライバを保存しておこう。
4枚時には22,000MB/s超! 単体では得られない浪漫あふれる数値にシビレる!!
さて、ここからは実際のテスト結果を見ていこう。1枚だけ(RAID構築をしていない状態)に加え、2枚、3枚、4枚でそれぞれRAID 0を構築した状態でテストを行なっている。キャッシュタグサイズはデフォルトの「256KB」だ。
まずは、ストレージの最大速度を測れるベンチマークの定番「CrystalDiskMark 7.0.0h」から。シーケンシャルリードとライトは枚数を増やすごと、順調に速度アップ。4枚時にはシーケンシャルリード22,723.75MB/sという爆速ぶりだ。連続した読み書きであれば、とてつもなく高速になったことがお分かりいただけるだろう。8Kの動画編集のような巨大なファイルを扱う作業であれば、その違いを体感できる局面もあるはずだ。
とはいえ、すべてが大成功というわけでもなかった。実は枚数が増えるほどにランダムリードとライトは低下してしまうのだ。これはRAIDの仕組上、ある程度は仕方がない。
CrystalDiskMarkは4KB単位でランダムリードとライトを実行する。RAID 0でデータの読み書きする際のデータの大きさは設定したストライプサイズで決まる。今回はキャッシュタグサイズを256KBにしているので、アレイに対しては256KB単位で読み書きすることになる。つまり、4KB単位のランダムアクセスではRAID 0の枚数が増えるほどムダが多くなり、パフォーマンスが下がってしまうというわけだ。RAID 0なら何でも速くなるわけではないということは覚えておきたい(今回の例はいささか極端な事象ではあるけれど……)。
もう一つ、SSD向けのベンチマークソフトとして定番の「AS SSD Benchmark」も試した。シーケンシャルリードとライトは枚数が増えるごとに順調にアップしているが、ランダムアクセスの4K-64Thrdは、枚数が増えるほど遅くなっている。CrystalDiskMarkと同じ傾向だ。
ゲームだとどうだろうか? ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマークのローディング時間とウォッチドッグス レギオンの起動およびロード時間を比較してみた。ウォッチドッグス レギオンはUSB CONNECTのプレイボタンを押してからタイトル画面が表示されるまでを“起動”、キャンペーンの「続ける」を押してからプレイ画面になるまでを“ロード”とし、ストップウォッチで3回計測したときの平均値を掲載した。
このテストに関しては、大きな差は見られなかった。ゲームの起動やロードはシーケンシャルリードも多いと思われるため、ウォッチドッグス レギオンは枚数が増えるほど少しだけ速くなっているが、若干の差というレベルだった。RAID 0にしても、さらに枚数を増やしても、ゲームのパフォーマンスに大きな影響がないということは分かる結果だ。
自作PCと最新パーツだからこそトライできる“最速・最高峰”へのチャレンジ!
このようにSSD 980 PROでRAID 0を構築するのは、マザーボードのRAID機能を使えば、それほど難しくはない。少なくともシーケンシャルリードとライトはとんでもないモンスター速度を達成することができる。自作好きなら「オレのマシン、ストレージの速度20,000MB/sオーバーなんだぜ!」と言いたくなるってもの、なのである。ゲームのロードが速くなる、パーツの組み合わせの結果コスパが優秀になる、といった“実利”ばかりではなく、こういうある種の“浪漫”を追い求めるのも自作の醍醐味と言えよう。
[制作協力:Samsung]