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新SoC「RTX Spark」でPCを再び革新!COMPUTEX開幕前日に開催された「GTC Taipei 2026」ジェンスン・フアン氏基調講演レポート
1PFLOPS AI性能と128GB統合メモリをノートPCへ text by 芹澤 正芳
2026年6月2日 00:00
NVIDIAのCEOジェンスン・フアン氏は、台北で開催されたGTC Taipei 2026の基調講演に登壇。AIエージェント時代に向けた新たなWindows向けSoC「NVIDIA RTX Spark」を発表した。Microsoftとの協業により、Windows上でAIエージェントを安全に動作させる仕組みを整え、従来の「アプリを起動して、クリックし、入力する」PCから、ユーザーの意図を理解して作業を進める“パーソナルAIコンピューター”へ進化させるという。
RTX Sparkは、Blackwell世代のRTX GPU、MediaTekと協力して開発した20コアのGrace CPU、最大128GBの統合メモリを組み合わせた強力なSoCだ。AI性能は1PFLOPS(ペタフロップス)に達し、ノートPCや小型デスクトップでローカルAIエージェント、大規模言語モデル、クリエイティブ作業、ゲームまでをカバーする。
「有用なAI」が到来し、PCにもエージェントが入る
フアン氏は講演の冒頭で、現在のAIを「有用なAI」、すなわち実際に作業をこなすAIの段階に入ったと位置付けた。これまでの生成AIは文章や画像などを生成する存在として語られることが多かったが、現在の焦点は、観察し、推論し、計画し、ツールを使って行動する「エージェント」へ移っているという。
このエージェントとは、大規模言語モデルだけで成立するものではない。モデルを動かすハーネス、利用するツールやスキル、安全に実行するランタイム、短期記憶や長期記憶を扱うメモリ管理が一体となって初めて、実用的な作業をこなせるとしている。フアン氏はこの新しい計算パターンが、クラウドやデータセンターだけでなく、企業内、ロボット、そしてPCにも広がると説明した。
この流れで登場したのが、今回の目玉であるRTX Sparkだ。フアン氏は、Windows 95がPCを企業の道具から個人向けのコンシューマー機器へ広げた歴史を振り返りつつ、「40年後、MicrosoftとNVIDIAはPCを再び革新する」と述べた。NVIDIAがWindows向けSoCを投入するのは、Windows RT世代のSurface 2に採用されたTegra 4以来、実に約13年ぶりとなる。
RTX Sparkは1PFLOPS AI性能、128GB統合メモリを搭載
RTX Sparkの中核となるのは、20コアのNVIDIA Grace CPUとBlackwell世代のRTX GPUを組み合わせたSoCだ。CPUはMediaTekと協力して開発されたカスタム設計で、GPUとはNVLink C2Cで接続される。GPUは6,144基のCUDAコアと第5世代Tensor Coreを備え、FP4精度を活用することで1PFLOPSのAI性能を実現する。
メモリは最大128GBの統合メモリを備える。NVIDIAによると、RTX Spark搭載PCでは、120Bパラメーター規模の大規模言語モデルを最大100万トークンのコンテキストでローカル実行できるほか、90GBを超える大規模3Dシーンのレンダリング、12K 4:2:2動画編集、4K AI動画生成、レイトレーシングやDLSSを用いたAAAゲームの1440p/100fps超でのプレイなどを想定している。
フアン氏は講演中、RTX Sparkについて「NVIDIAが33年間で築いてきたすべてを1つのチップに凝縮した」と表現した。薄型ノートPCや小型デスクトップに、NVIDIAのAI/グラフィックス資産をまとめて持ち込む狙いだ。
Windows上で安全に動く「パーソナルエージェント」そのエージェントを支える「Nemotron 3 Ultra」も発表
RTX Sparkで重要なのは、単にAI性能を高めたことだけではない。MicrosoftとNVIDIAは、Windows上でAIエージェントを安全に動作させるための基盤も整備する。
その中心となるのが、Windows側の新しいセキュリティ/隔離機能と、NVIDIAの「OpenShell」ランタイムだ。OpenShellは、エージェントごとに隔離された実行環境を用意し、ポリシーや権限管理をシステム側で適用することで、エージェントが勝手に制約を回避したり、機密情報を漏洩させたりするリスクを抑える。
フアン氏は、新しいPCではOSに大規模言語モデルが加わり、従来のアプリケーションはエージェント型ランタイムに置き換わっていくと説明した。ユーザーはアプリを1つずつ起動して操作するのではなく、やりたいことを伝え、エージェントが必要なアプリやツールを使って処理を進める。NVIDIAはこれを、PCが「ツール」から「チームメイト」へ変わる流れとして示した。
エージェントを構築するためのソフトウェア基盤として示されたのが「NVIDIA Agent Toolkit」だ。その中で新たに発表された「NVIDIA Nemotron 3 Ultra」は、5,500億パラメーターのMixture-of-Experts(MoE)モデルで、コーディング、調査、エンタープライズワークフローなど、長時間実行されるエージェント向けに設計されている。同クラスのオープンなモデルと比較して、最大5倍高速な推論と最大30%のコスト削減を実現するという。
講演で示されたCadenceのチップ設計エージェントの例では、従来は数週間かかっていた検証サイクルを数時間に短縮できるとされる。
クリエイティブとゲームもRTX Sparkの柱に
基調講演では、RTX Spark上で動作するローカルAIエージェントのデモとして、住宅設計ワークフローが紹介された。エージェントがRhinoで敷地や建物形状を作成し、Blenderへエクスポートしてマテリアルを調整、さらに生成AIでフォトリアルなイメージを作成するという流れだ。ユーザーは途中で指示を追加したり、結果を承認したりしながら作業を進める。
AdobeもRTX Sparkに対応する。AdobeはPhotoshopとPremiereをRTX Spark向けに再設計し、AIおよびグラフィックス性能を最大2倍に高めるという。Premiereでは統合メモリ、Blackwell GPU、TensorRTを活用した新しい動画パイプラインを導入し、PhotoshopではGPUアクセラレーションを前提とした合成処理やAIネイティブな処理を強化するという。
講演ではゲームの映像も示され、薄型ノートPCで高いグラフィックス性能とAI処理を両立する姿がアピールされた。NVIDIAによれば、RTX Sparkは1,000以上のゲーム/アプリで使われているRTX技術を活用でき、DLSSやレイトレーシング、Reflexなども利用できる。Arm系CPUでのWindowsゲーム対応が加速することを期待したいところだ。
ノートPC、デスクトップ、ワークステーションまで展開
RTX Spark搭載PCは、ノートPCと小型デスクトップとして今秋より登場する予定だ。初期パートナーとしてASUS、Dell、HP、Lenovo、Microsoft Surface、MSIが挙げられており、AcerとGIGABYTEのモデルも後続で予定されている。
さらに、より大規模なAI開発向けには「NVIDIA DGX Station for Windows」も発表された。こちらはGB300 Grace Blackwell Ultra Desktop Superchipを搭載し、最大748GBのコヒーレントメモリ、最大20PFLOPSのFP4性能を備えるデスクサイドAIスーパーコンピューターだ。最大1兆パラメーター級のAIモデルをローカルで扱えるとし、RTX Sparkが個人向けのAI PCであるのに対し、DGX Station for Windowsは企業や研究開発向けの上位システムという位置付けになる。
AI PCの次は「エージェントPC」へ
NVIDIAは「AI PC」から一段踏み込んだ「エージェントPC」を展開してきた。ローカルで大規模モデルを動かし、ユーザーのファイルやアプリに安全にアクセスし、クリエイティブ、開発、調査、ゲームまでを支援する常駐型のパーソナルAIをPCに載せるという発想だ。
フアン氏は、将来のPCは現在のスマートフォンがかつての電話とまったく違う存在になったのと同じように、今のPCとは異なるものになると語った。RTX Sparkは、その変化の出発点として示されたSoCと言ってよいだろう。
また講演ではこのほか、AIデータセンターやAIファクトリーに関する話題にも多くの時間が割かれた。フアン氏は、AIが有用な作業をこなすようになったことでトークンが収益単位になり、AIファクトリーの建設需要が急拡大していると説明した。
その中核として示されたのが、エージェントAI向けの次世代システム「Vera Rubin」だ。Vera Rubinは単一のGPUではなく、GPU、Vera CPU、NVLink、BlueField、ConnectX、ストレージ、ネットワークを組み合わせたラック/ポッドスケールのシステムであり、すでにフル生産に入っているという。講演では、台湾のサプライチェーンによってVera Rubinの製造体制が支えられていることも強調された。










