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“打鍵感・打鍵音”の鍵はスイッチにあらず。キーボードの素材と構造の基礎知識
これからキーボードを買うなら知っておきたい“今どきのキーボード”の選び方【第3回】
2026年8月25日 10:00
“今どきのキーボード”の選び方を整理していく本企画。第2回目となる前回は、キースイッチの違いについて紹介しました。
キーボードの打鍵感を左右する要素としては、キースイッチ自体の押し心地だけでなく、「キーが底を打った衝撃をキーボードが受け止める感覚」も重要な要素です。第3回となる今回は、本体構造やケースについてご紹介します。
打鍵感は硬め?柔らかめ?打鍵音はカチカチ派?コトコト派?
カスタムキーボードにおける打鍵感は、底打ち時の指に返ってくる反発の質を指しており、“硬い”か“柔らかい”かで表現されるのが一般的です。
打鍵音は大別すると2種で、ピッチが高く硬質な打鍵音は、英語圏では“Clack”と呼ばれる“カチカチ”という打鍵音、ピッチが低くソフトな打鍵音は、英語圏では“Thock”と呼ばれる“コトコト”という打鍵音を指します。
打鍵感と打鍵音はある程度相関しており、基本的に硬い打ち心地はClackyな打鍵音、柔らかい打ち心地はThockyな打鍵音となります。
カスタムキーボードでは、一時Thockyな打鍵音がトレンドとなっていましたが、現在は好みに応じてClackyな打鍵音に調整するという愛好家も増えています。
キーボードの構造
メカニカルキーボードにおいて、キーボードは上から順にキーキャップ、トップケース、キースイッチ、スイッチプレート、PCB(基板)、ボトムケースの7つのパーツで構成されています(ケースはトップ/ボトムで分かれていない場合もある)。
このうち、昨今のキーボードではキーキャップとスイッチが交換可能な場合も多いため、カスタムキーボードの文脈においては、キーボード本体として扱われるのは「スイッチプレート/PCB/ケース」の一式を指します。
これらのキーボードパーツで、打鍵感や打鍵音に関わるのが、「全体の構造(マウント方式)」と「スイッチプレート素材とPCBデザイン」、そして「ケース素材と吸音フォーム」です。
マウント方式
キーボードの入力において、“重さ”はスイッチのバネによって変化する要素ですが、底打ちの“硬さ”はキーボードの構造によって左右されます。
具体的には、「ケースにPCBとプレートをどのように固定しているか」がポイント。マウント方式と呼ばれるもので、複数の分類があります。
大別すると、ネジなどを使ってケースへしっかり固定するものと、ウレタンやゴムなどを用いて固定する緩衝材系の固定方式の2つがあります。
ケースへネジ止めする方式としては、スイッチプレートの端をトップケースへネジ止めする「トップマウント」、PCBをボトムケースにネジ止めする「トレイマウント」などがあります。
これらのネジ止め式の場合、PCBまたはスイッチプレートがケースと一体化するため、底打ちの感触が硬くしっかりとしたものとなり、打鍵音は硬質で高い音(Clacky)になる傾向があります。
ケース素材の違いによる打鍵音の変化、スイッチ本来の打鍵感・打鍵音が分かりやすいのが特徴で、スイッチ特性の違いも分かりやすいため、タクタイルスイッチを好むユーザー向きといえます。
緩衝材系の固定方式としては、ゴムやフォーム素材でスイッチプレート端を支える「ガスケットマウント」、フォームの代わりに板バネでスイッチプレートを支える「リーフスプリングマウント」、ゴムリングで外周を覆って固定する「Oリングマウント」などがあります。
いずれも共通して、ネジによる完全な固定と異なり、柔軟性のある素材を用いることで底打ちの衝撃を吸収する仕組みとなっています。
底打ちに合わせてプレートとPCBが沈み込むため、打鍵感は柔らかくなります。とくにガスケットマウントやOリングマウントで顕著ですが、ケースとPCB/スイッチプレートが緩衝材によって分離されるため、打鍵時の振動がケースに伝わらず、Thockyな打鍵音となります。
柔らかいマウント構造の場合、リニアスイッチでは特性を損なわずに使える一方、タクタイルスイッチでは底打ちの感触だけでなくスイッチのタクタイル感もソフトになってしまう場合がある点には注意が必要です。
スイッチプレートの素材とPCBデザイン
スイッチプレートは、スイッチの位置固定をサポートするためのパーツです。
スイッチプレートの素材は様々で、代表例を挙げると、金属系ならアルミ/真鍮/ステンレス、樹脂系ならポリカーボネート/ポリプロピレン/POM、複合素材であればカーボン/FR4などがあります。
プレート素材による違いは主に硬さで、ポリカーボネートなどの柔らかい素材なら、プレート自体が変形するため柔らかい打鍵感とThockyな打鍵音、アルミなど硬い素材の場合は、そのまま硬い打鍵感とClackyな打鍵音となります。
敢えてスイッチプレートを省いた「プレートレス」ビルドを行う愛好家も存在します。
PCBについては、FR4が主流のため素材のバリエーションはありません。しかし、厚さを調整することで柔軟性に差をつけるという方法が取られています。
例としては、PCB全体の厚みを1.2mmに薄くしたもの(一般的なキーボードPCBは1.6mm厚)、切り込みを入れて曲がりやすくした“Flex-cut”と呼ばれるデザインなどがあります。
ケースの素材と吸音フォーム
打鍵感と打鍵音の最後のカギとなるのが、ケースの素材と吸音フォームです。
キーボードケースの代表的な素材といえば、ABSなどのプラスチック樹脂。市販されているキーボードのほとんどは射出成形された樹脂を採用しています。
プラスチックは安価で軽く扱いやすく、金属より柔らかいという特性があり、金属ケースに比べて安価に柔らかい打鍵感とThockyな打鍵音を実現できます。
一方で、吸音フォームを省いている場合など、ケース内部の空洞が大きいと、打鍵音が反響しプラ系素材特有の共鳴音が鳴ってしまうため、“安っぽく”感じられる場合がある点には注意が必要です。
そのほか、アクリルやポリカーボネートなどの樹脂素材も、半透明の外観を実現できるため人気の素材の1つです。
樹脂素材に次いでメジャーな素材が金属で、アルミ製のものが多くを占めますが、真鍮製ケースなども存在します。
樹脂ケースと比べて重く、打鍵時に位置が動かない安定感と、質感に優れた見た目が特徴。樹脂素材よりも硬いため、同じ構造なら打鍵感は硬く、打鍵音は高く澄んだ音になります。
ケース内部の空洞が大きいと、打鍵時の反響音に特有の“金属音”が鳴るため、樹脂ケース同様に、打鍵音には吸音フォームの有無が関与します。
吸音フォームは、文字通り打鍵音を吸収するためのパーツです。打鍵感には影響しませんが、反響音を抑える効果があるため、打鍵音の調整に用いられます。スイッチプレートとPCBの間、PCBとボトムケースの間へ配置するのが一般的です。
ウレタンやXPEなどのフォーム素材が一般的で、ケース内部の空洞を埋めて反響音を低減します。Thockyな打鍵音を実現する上では必須ともいえる存在ですが、ミュートされた音を好まず、Clackyな音を求めて敢えて除去するという愛好家も多くみられます。
各パーツの打鍵感と打鍵音への影響
ここまで紹介してきたように、好みの打鍵感・打鍵音を追求するうえで、キーボード本体の設計への理解は欠かせません。
目安として、打鍵感への影響は「マウント方式>スイッチプレートとPCB>ケース素材」の順に大きくなります。打鍵音の場合は、「ケース素材と吸音フォーム>マウント方式>スイッチプレートとPCB」の順で、ケース素材と吸音フォームによる変化が打鍵感と比べて大きくなります。
キーボードは、デスクワーカーやPCゲーマーならほとんど毎日使うものの1つ。そしてキーボードの打鍵感・打鍵音といった使い心地は好みによって異なるもので、“正解”も人それぞれ。
本稿が皆さんの「こだわりの1台」を選ぶ一助となれば幸いです。
















