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赤・茶・青の違いだけじゃない。多種多様なキーボードスイッチの世界

これからキーボードを買うなら知っておきたい“今どきのキーボード”の選び方【第2回】

 “今どきのキーボード”の選び方を整理していく本企画。第1回目となる前回は、キーレイアウトについて、定番および最新のトレンドをまとめました。

 さて、多くのユーザーの方がお気付きのとおり、同じ配列のキーボードでも、製品によって押し心地は大きく異なります。この押し心地の違いを「打鍵感」と表現するのが一般的です。ということで、第2回となる今回は「打鍵感」についてご紹介します。

キーボード選びのポイント: 打鍵感

 まず「キーボードの“打鍵感”とは何か?」という定義について、ここでは“物理的な押し心地”を指します。

 キーボードの押し心地というと、キースイッチによって変わるものと思われがちですが、実際にはスイッチだけの違いに限られません。「キーを押しこむ指先の感覚」と「キーが底を打った衝撃をキーボードが受け止める感覚」が合成された結果が“キーボードの押し心地”になります。

 とはいえ、打鍵感を左右する最大の要素がキースイッチであることも事実。ということで、まずはキースイッチの違いについて紹介しましょう。

代表的なキースイッチ構造

 打鍵感を決める要素といえば「キースイッチ」の違い。打鍵感そのものは、単純にスイッチだけで決まるものではありませんが、最も変化を感じられるのはスイッチの違いです。

メカニカルスイッチ

タクタイルメカニカルスイッチの「Kailh Speed Copper」

 メカニカルスイッチは、キーボードスイッチにおける代表格。スイッチが押されると金属接点が接触して動作する仕組みで、メーカー/製品数ともに多く、最も種類に富んだスイッチとなります。

 製品によって打鍵感も様々で、最もカスタムキーボード向きのスイッチですが、選択肢が広すぎる故に選ぶのが難しいのがネックと言えるかもしれません。

 現在主流のメカニカルスイッチは、独Cherry社の「MXスイッチ」が元祖となっており、「MX Red(通称:赤軸)」「MX Brown(茶軸)」「MX Blue(青軸)」が代表的なスイッチとして知られています。

 今ではオリジナルのMXスイッチから派生し、数多のMX互換スイッチとブランドが登場していますが、現在でもメカニカルスイッチの入力特性は、「リニア/タクタイル/クリッキー」の3つに大別されています。

 詳細は後述しますが、リニアは一貫した荷重変化、タクタイルは触覚のフィードバックがあり荷重が変化する特性、クリッキーは強いタクタイルフィードバックと作動音が特徴です。

Kailh Switch Socket
ハンダレスで挿抜できる
スイッチの金属ピンを挟む設計(遊舎工房)

 元々はピンをハンダ付けしてスイッチを固定するデザインでしたが、現在では、ハンダ付け不要で着脱も可能にするソケット固定式のキーボードも多く販売されています。そういったホットスワップ対応のキーボードを選ぶことで「好みに合わせて後からスイッチだけを交換できる」点も、カスタムキーボード向きのスイッチといえるでしょう。

静電容量無接点スイッチ

「REALFORCE GX1 Plus」の静電容量無接点スイッチ

 東プレ「REALFORCE」シリーズや、PFU「HHKB Professional」での搭載で知られているのが、静電容量無接点スイッチ。

 名前の通り静電容量の変化で入力を検出する仕組みで、メカニカルスイッチと異なり金属接点を持たないため、接点摩耗がなく長寿命とされています。

 ラバードームとコニカルスプリングを組み合わせた構造で、ラバードームによるソフトな感触となだらかなタクタイル感のある打鍵感が特徴。

 スイッチの選択肢が少なく、カスタムキーボード製品での採用例は多くありませんが、メカニカルスイッチのスプリングでは再現が難しい独特の入力特性から、愛好家も多いスイッチです。

磁気スイッチ

磁気スイッチの「Gateron Magnetic Jade Gaming」

 磁気スイッチは、メカニカルスイッチから派生して生まれたキースイッチです。

 磁気スイッチの入力検知方式にはいくつか種類がありますが、いずれもキースイッチ側に配置した永久磁石の位置をキーボード側のセンサーで検知する構造となっています。

 電圧や抵抗の変化を読み取る仕組みのため、静電容量方式と同じく金属接点がなくアナログ検知が可能で、任意の作動点(アクチュエーションポイント)設定や、リセット距離を設定してより速い連続入力を可能とするラピッドトリガーといった機能を実装できることから、ゲーミングキーボードで普及しています。

一見するとメカニカルスイッチと判別しにくいが、底面に金属ピンが存在しない

 Cherry MXスイッチをベースにデザインされているスイッチが多く、キーボード側もホットスワップ可能な設計の製品が多く存在します。軸ブレの低減や打鍵音のカスタマイズなどを目的に、スイッチを交換してカスタムしているユーザーも増えつつあるスイッチとなっています。

メカニカルスイッチの入力特性は3種類リニア(赤軸)、タクタイル(茶軸)、クリッキー(青軸)

キースイッチの種類(遊舎工房

 メカニカルスイッチの項目で軽く触れましたが、キースイッチの入力特性はいくつかの種類に区分されており、主にリニア/タクタイル/クリッキーの3つに大別されています。

リニアスイッチの「Cherry MX2A Red」と「Gateron Oil King」、「Durock Ice King Linear」

 リニアスイッチは、押し始めから打ち終わりまで滑らかに荷重が変化する特性で、スムーズな押し心地が特徴。

 具体的なスイッチの例としては「Cherry MX2A Red」や「MX2A Black」、「Gateron Oil King Linear」、「Durock Ice King Linear」など。

 スイッチの滑らかさを重視する人のほか、アクチュエーションポイントが可変の磁気スイッチのようにゲーム用途にも適した特性となっています。

タクタイルスイッチの「Cherry MX2A Brown」と「Sillyworks Type R」、「HMX Retro J」

 タクタイルスイッチは、作動点付近にこぶ(バンプ)があるような、押下圧が変化する特性のスイッチ。

 具体的なスイッチの例としては「Cherry MX2A Brown」や「Sillyworks Type R」、「Gateron Grape Smoothie」、「HMX Retro J」など。

 キー入力に物理的なフィードバックがある(荷重変化)ので、リニアと比べて“スイッチを押せたかどうか”が分かりやすく、文字入力がメインでキー入力を指で感じたい人、機械らしいオン/オフスイッチとしての操作感を求める人に適しています。

クリッキースイッチの「Cherry MX2A Blue」、「Gateron Harmonic」、「WS BigLucky Clicky」

 クリッキースイッチは、タクタイルスイッチよりも大きなバンプのクリック感と、大きな作動音が特徴。

 具体的なスイッチの例としては「Cherry MX2A Blue」や「Gateron Harmonic」、「WS BigLucky Clicky」など。

 荷重変化だけでなく動作音も大きいため、一つ一つのキーの入力を確実に把握したい、「音が鳴ってこそメカニカルスイッチ」という人にオススメです。明確な入力感で根強いファンもいるスイッチですが、入力音が大きくなるため使用環境を選ぶ点は注意が必要です。

打鍵感を変化させるメカニカルスイッチの中身

メカニカルスイッチの構造

 メカニカルスイッチは、樹脂製パーツ(ハウジング&ステム)とスプリング(バネ)、金属接点(リーフ)で構成されており、打鍵感に影響するのは「ステム」「スプリング」「ハウジング」の3パーツです。

ステム

ステム

 ステムはキーキャップを取り付けるパーツで、脚部分の形状によって、タクタイルやリニアといった荷重特性が決まるため、打鍵感への影響が大きいパーツです。

 またスイッチ内部の可動パーツであり、接触音や滑らかさにも影響します。構造上、ハウジングと接触するため、素材やルブ(潤滑剤の塗布)によってスイッチの滑らかさが変化します。

 いわゆる静音スイッチでは、ステムのレール部分にシリコンなどのクッションパーツを取り付けることで、底打ちおよび天付き(トップアウト)でハウジングとの衝突音を抑える構造となっている場合がほとんどです。

スプリング

スプリング

 スプリングはスイッチの重さを決定するパーツで、スイッチを押すのに必要な荷重(押下圧)が変化します。

 軽い押下圧は指への負担が小さくなりますが、指が触れてしまったなど意図しない入力の原因となる場合もあります。一方で重い押下圧は、長時間の使用で指の疲労の原因となることも。

 個々人に適した重さは、キーの打ち方や好みによって様々。MX互換のリニアスイッチでは45gfの製品が多いため、まずは45gfを基準に軽い方が好みか、重い方が好みかを確かめてみると良いでしょう。

 スプリングの長さも荷重特性に影響します。短いスプリングは「押すほど重くなる」特性で、押し始めと底打ち(ボトムアウト)の荷重差が大きく、長いスプリングは「最初から最後まで同じ重さ」寄りで、押し始めと底打ちの荷重差が小さくなるという特徴があります。

ハウジング

 ハウジングは、ボトムハウジングとトップハウジングの2つからなるパーツです。ステムと同様に、素材やルブによってスイッチの滑らかさが変化します。

 ステムやスプリングほど荷重特性への影響はありませんが、打鍵音への影響が大きいパーツとなります。

主なパーツの素材

 樹脂製パーツであるステムとハウジングの素材も、スイッチのキャラクターを決める要素の1つ。

 代表的な素材には、ポリアセタール(POM)、ナイロン、ポリカーボネート(PC)、超高分子ポリエチレン(UHMWPE)などがあり、いわゆるエンジニアリングプラスチックが使われています。

潤滑性や耐摩耗性に優れるPOMはステムへの採用が多く、他樹脂に比べ柔軟性があるナイロンはハウジング、ポリカーボネートはバックライト光を透過できることからトップハウジングへの採用が多い

 打鍵音や底打ちの感触は素材同士の組み合わせによって様々ですが、一般的にポリカーボネートは硬い感触と高く硬質な音、ナイロンは柔らかく丸い打鍵音になるとされています。

全POM製や全ナイロン製のスイッチも
Durock Full POK Mocha Tactile

 多くのスイッチはパーツごとに異なる樹脂が使われていますが、全パーツを同じ樹脂で統一したものや、複数の樹脂を組み合わせた独自配合の素材を採用したものもあります。

自分に合う打鍵感を選ぶには?用途と好みで決めよう

 紹介してきたように、スイッチの種類は多種多様であり、自分好みのスイッチ探しを楽しめるのもカスタムキーボードの醍醐味です。

 まずは好みの荷重特性を決めるところから初めて、荷重の重さ、静音か否か、好みの音の傾向で絞っていくのがスイッチ選びのコツ。

 例えば、文字入力中心で触覚がハッキリしたスイッチが好みならタクタイルスイッチ、ゲーム用途で初期入力の速度重視なら軽めのリニア磁気スイッチ、柔らかくソフトで静かなスイッチが欲しければ静音の静電容量スイッチなどが候補になります。

 今回は打鍵感の違いということでスイッチを中心に紹介しましたが、キーボードといえば打鍵音も大事な要素。次回は打鍵音にも関わってくるキーボード本体(ケース)やキーキャップについて紹介予定です。