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コレクターなら見逃せない!? 全銅製クーラー搭載のプレミアムなGeForce GTX 970をテスト

MSIの特別限定モデル「GTX 970 GAMING 4G Golden Edition」

GTX 970 GAMING 4G Golden Edition

 実性能、電力効率、そして費用対効果の高さで注目を集めるMaxwellアーキテクチャ採用GPU「NVIDIA GeForce GTX 970」。このハイエンドGPUに、全銅製ヒートシンクを採用したGPUクーラーを組み合わせた限定仕様のビデオカード「MSI GTX 970 GAMING 4G Golden Edition」が登場する。

 今回は、MSIがプレミアムモデルとして市場に投入した同ビデオカードをチェックし、その特色を紹介する。なお、実売価格は税込5万6千円前後で、日本での販売数は限定100枚だ。

数量限定、「GTX 970 GAMING 4G」のスペシャルモデル

 記事執筆時点で、日本で販売されているMSI製GeForce GTX 970搭載ビデオカードは2製品存在する。「GTX 970 4GD5T OC」と「GTX 970 GAMING 4G」の2製品だ。今回紹介する「GTX 970 GAMING 4G Golden Edition」は、GTX 970 GAMING 4Gの限定仕様として用意されたスペシャルモデルである。

 ベースとなった「GTX 970 GAMING 4G」との主な違いは、GPUの動作クロック、搭載GPUクーラー、基板裏面を覆うバックプレートの有無と言ったところ。搭載しているメモリのクロックや容量、画面出力ポートなどに違いは無い。

100mm径ファンを2基備えるMSIオリジナルGPUクーラー「TWIN FROZR V」。特別仕様で全銅製ヒートシンクを採用している。
基板上部のSLIコネクタは2基。3-way SLIに対応。
画面出力端子。HDMI 2.0×1、DisplayPort ×1、DVI-D×1、DVI-I×1。
補助電源コネクタ。6+8ピン仕様。
基板裏面を覆うバックプレート。金色のドラゴンが描かれている。

 GTX 970 GAMING 4G Golden Editionでは、GeForce GTX 970のGPUコアクロックを1,050MHzから1,165MHz(+115MHz)へ、Boostクロックは1,178MHzから1,317MHz(+139MHz)にオーバークロックしている。

 なお、GTX 970 GAMING 4G Golden Editionには3つの動作モードが用意されている。前述のGPUクロックで動作する「OC Mode」、1,140MHz(Boostクロック1,279MHz)で動作する「Gaming Mode」、リファレンス相当となる1,051MHz(Boostクロック1,178MHz)の「Silent Mode」、これら3つのモードを専用ユーティリティ「MSI Gaming APP」で切り替えることができる。

MSI Gaming APP。このユーティリティで動作モードを変更する。なお、GTX 970 GAMING 4G Golden Editionは、デフォルトでは「Gaming Mode」で動作する。
OC Mode時のGPU-Z実行画面。Boostクロックがスペックよりもやや低い数値となっている。
Gaming Mode時のGPU-Z実行画面。GPUクロック、Boostクロックともスペック通りの数字となっている。
Silent Mode時のGPU-Z実行画面。Boostクロックがスペックよりやや高い数値となっている。


貴重な全銅製ヒートシンク、TWIN FROZR Vの特別仕様モデルを搭載

TWIN FROZR V本体。

 GTX 970 GAMING 4G Golden Edition最大の特徴は、全銅製のヒートシンクを採用したMSIオリジナルGPUクーラー「TWIN FROZR V」だろう。

 形状はGTX 970 GAMING 4Gに搭載されているTWIN FROZR Vと同じだが、表面に防錆処理を施した銅色のヒートシンクと、黒と銅色でカラーリングされたカバーが目を惹く。

全銅製のヒートシンク。表面は防錆処理が施されているという。
ヒートパイプは6mm径2本と8mm径2本のハイブリッド仕様。
ヒートシンク側面。
表面フィン部分。
裏面フィン部分。

 GTX 970 GAMING 4G Golden Editionに搭載されたTWIN FROZR Vは、低負荷時にGPUクーラーの冷却ファンを停止して静音化を図る、MSI独自の「Zero Frozr Technology」をサポート。TWIN FROZR Vが備える2基の100mm径ファンはGPU温度と連動しており、GPU温度がおおよそ55℃を切る条件でファンが停止する。なお、ファンの回転数については、MSIのGPUチューニングユーティリティ「Afterbanner」で手動調整が可能。

GTX 970 GAMING 4G(通常仕様)とのヒートシンク外観比較。色以外は同じように見える。

 今回、比較用として通常仕様のGTX 970 GAMING 4Gを合わせて借用しているが、両ビデオカードの違いは手に持った時点ではっきりとわかる。通常仕様のGTX 970 GAMING 4Gの重量が814gであるのに対し、GTX 970 GAMING 4G Golden Editionの重量は1,170g。この356gの差が、ずっしりとした重みとなって感じられるのである。

 同じ形状のビデオカードでありながら、これほどの重量差が生じた理由はヒートシンクの材質にある。銅はアルミより高い熱伝導率を誇る金属だが、比重が大きく、同じ体積ではアルミより3倍以上重い。このアルミと銅の比重の違いがビデオカードの重量に影響を与えているという訳だ。

全銅版(左)と通常版(右)のヒートシンク重量比較。通常版もフルアルミという訳ではないが、放熱フィンがすべて銅になったことで、重量にはこれほどの差が生じる。

 かつては珍しくなかった全銅製ヒートシンクも、近年の銅価格高騰によるコスト面の問題と、大型化の枷となる比重の大きさにより、すっかり希少な存在となってしまった。アルミニウムを上手に使ったヒートシンクの方が、軽量で低コスト、それでいて冷却性能に決定的な差がつくとはいえないこともあり、全銅製ヒートシンクを採用するモデルは姿を消しつつある。

 それでも、ヒートシンクにこだわる人間としては、「全銅」というのは心惹かれる言葉だ。銅めっきで見栄えだけ銅製に見せかけたヒートシンクには無い、本物の銅製ヒートシンクならではの重みが味わえるこのヒートシンクは、GTX 970 GAMING 4G Golden Editionがプレミアムモデルであることを強く感じられる要素なのである。


3DMark Fire Strikeでパフォーマンス/消費電力をチェック

 GTX 970 GAMING 4G Golden Editionの実力をチェックすべく、3つの動作モードでベンチマークテストを実行してみた。また、参考データとして、通常版GTX 970 GAMING 4GのOC Mode(GPUクロック 1,140MHz/Boostクロック 1,279MHz)のベンチマークスコアも取得した。

3DMark Fire Strike

 3DMark Fire Strikeのスコアについては、リファレンスクロック相当の動作であるSilent Modeを基準にすると、OC Modeで総合スコアで約5%、Graphics Scoreで約6%の性能向上が確認できる。Gaming Modeや通常仕様版GTX 970 GAMING 4GのOC Modeからの性能向上は1~1.5%程度となっており、劇的という訳では無いが、クロック向上分なりに性能も向上しているようだ。

3DMark実行中の最高GPU温度

 ベンチマーク実行中の最高GPU温度は、GTX 970 GAMING 4G Golden Editionの各モードとGTX 970 GAMING 4G通常仕様のOC Modeが、64℃で綺麗に横並びになった。流石にまったく同じ数字になったのは偶然だが、この結果は「TWIN FROZR V」のファンコントロールが、上手く機能している証であると言えるだろう。なお、OC Mode動作時のGTX 970 GAMING 4G Golden Editionで、ファンをフル回転にしてベンチマークテストを実行したところ、GPUの最高温度は50℃だった。

3DMark Fire Strike(Graphics Test 1)実行中の最大消費電力

 消費電力については、GTX 970 GAMING 4G Golden Editionが通常仕様のGTX 970 GAMING 4Gより明らかに高めの数値となった。GPUやその他の構成部品の個体差が消費電力に影響を及ぼすため一概に言えることではないが、元々より高い動作クロックをサポートしているGTX 970 GAMING 4G Golden Editionが、GTX 970 GAMING 4Gより消費電力が高めである傾向があっても、なんら不思議ではない。

【テスト環境】
 CPU IntelIntel Core i7-4790K
 メモリ DDR3-1600 8GB×2
 電源 SilverStoneSST-ST85F-G-E
 OS 日本マイクロソフトWindows 8.1 Pro Update(64bit)
 ドライバ NVIDIAGeForce 344.65 driver
 GPU温度測定 GPU-Z 0.8.0(室温25℃)
 消費電力測定 サンワサプライワットチェッカー(TAP-TST5)

・GTX 970 GAMING 4G

 さて、今回、GTX 970 GAMING 4G Golden Editionと通常仕様のGTX 970 GAMING 4Gを比較してみた訳だが、ベンチマーク結果を見る限り、両製品にそこまで大きな差が無いように見えるのでは無いだろうか。

 それは実際その通りで、通常版GTX 970 GAMING 4Gも、MSI Gaming APPによる動作モードの切り替えや、Zero FrozrをサポートするTWIN FROZR Vを搭載している。より高クロックな動作モードが用意されている点と、全銅ヒートシンクやバックプレートなど、一部のプレミアム仕様が無いことを除けば、通常版GTX 970 GAMING 4Gもなかなか優秀なビデオカードであると言えよう。


手にした重厚感が所有欲を満たす、こだわり派のための限定モデル

 GTX 970 GAMING 4G Golden Editionを試してみての正直な感想として、通常版のGTX 970 GAMING 4Gに対する性能面での優位性はそれほど大きく無いように感じた。ベースとなった通常版GTX 970 GAMING 4G自体が優秀な製品であることと、静粛性を犠牲にしてでも性能を優先するような大幅なオーバークロックを施していないことが、そう感じられた要因だろう。チューニングに関しては比較的おとなしいので、ユーザー自身の手で全銅製ヒートシンクのポテンシャルをフル活用してみるという使い方も面白いかもしれない。

 GTX 970 GAMING 4G Golden Editionの真の魅力は、やはり「全銅製ヒートシンクを採用した限定仕様」であることではないかと筆者は考える。通常、拡張カードの重量は軽い方が良いのだが、銅製ヒートシンク特有のずっしりとした重みは、手にした際に思わずニヤリとしてしまう心地よさがある。1構成部品に過ぎないPCパーツでありながら、所有欲を満たしてくれる魅力がGTX 970 GAMING 4G Golden Editionには存在するのである。

瀬文茶