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思い出を保存する「堅牢PC」をSABERTOOTHで考えてみた

~ASUSのドライブレコーダーの実力もついでに検証~ text by 清水貴裕

 秋から年末、と言えば様々なイベントに旅行、食欲……と様々な「思い出」が残る季節だ。

 撮影した写真や動画を長期保存し、時に編集する、という観点では、やはり大容量かつ高性能なデスクトップPCが欲しいところ。

 そこで今回、「思い出保存」向けに堅牢性を重視したPC自作例を検討してみた。

 大切なデータを保存するのが目的なので、マシンに求められるのは何があっても壊れない「タフさ」だ。マザーボードやビデオカードなど耐久性にこだわるのはもちろんの事、データを保存するデータドライブの耐久性や信頼性にもこだわりたいところ。

 そこで、ASUSの堅牢マザーボード「TUFシリーズ」の最新作「SABERTOOTH Z170 MARK 1」(11月27日発売/実売価格42,000円前後)や堅牢ビデオカードなどを使い、長期間の使用に耐えうる「タフなPC」を自作してみた。

 パーツ選定の例として参考にしてもらえば幸いだ。

 なお、今回、同じASUSのドライブレコーダー「RECO Classic Car Cam」もお借りできたので、サンプルの「思い出」はこれでつくってみた。動画ファイルも掲載したので、気になる向きは確認して欲しい。

そもそも、PCが不調になる原因って?

長い期間使っているとトラブルのもとになるコンデンサ。最近では高耐久をうたうものもある

 なぜPCは不調になるのだろうか?その原因を考えてみよう。

その1:パーツの寿命になった

 まず考えられるのはパーツの寿命が来てしまった事。マザーボードや電源などはコンデンサなどの実装部品の寿命が不調の原因となる事が多く、高負荷時に突然シャットダウンしたり起動不良を起こしたりする傾向がある。

 特に電源が原因だった場合が厄介で、他のパーツを巻き添えにして壊れる事があるので注意が必要だ。高負荷時に突然シャットダウンする場合は、電源が不調をきたしている場合が多いので、巻き添え事故を防止するためにも早めに対処した方がいいだろう。マザーボードの電源回路がへたっている場合も似たような現象が起こる。

 ストレージもトラブルの原因になりやすいパーツのひとつ。HDDもSSDも長期間の使用で寿命が来てしまうと、書き込み時や読み込み時にエラーが発生しやすくなる。大切なデータを失ってしまう事になるので、金銭的なダメージだけでなく精神的にもダメージを受けてしまう。

その2:メンテナンス不足

 不調の原因として次に考えられるのがメンテナンス不足。ケース内にホコリが溜まっている状態だと様々なトラブルが発生するので要注意。静電気やショートによるトラブルの他に、溜まったホコリによってパーツが熱暴走をしてしまう事もある。

埃の処理にはエアダスター

 マザーボードやビデオカードの基板上が危険なのは言うまでもないが、意外と見落としがちなのが電源内部。ホコリが溜まっている場合があるので、メンテナンスの際はエアダスターで一緒に綺麗にしてあげたいところ。

 CPUやビデオカードのクーラーはヒートシンクにホコリが溜まっていると冷却力が低下する。また、クーラーのファンやケースファンのホコリにも注意したい。ホコリの重みでファンの回転が悪くなると、エアフローが悪くなるだけでなく、ファンが振動する原因にもなる。ファンやケースのダストフィルターなどにホコリが積もっている場合も、エアフローを阻害する原因になってしまうので要注意だ。

 頑丈なパーツを選んでPCを組めば、最低限「タフなPC」をつくることはできるが、トラブルレスで長期間使うなら、その後のメンテナンスも重要になる。要するに、「メンテナンスのしやすさ」も考えたパーツ選びが重要、ということだ。

「タフPC」を考えてみた重視するのは「耐久性」「信頼性」「メンテナンス性」

完成したPC

 というわけで、「パーツの頑丈さ」と「メンテナンス性」を重視して「タフなPC」の自作プランを考えてみた。今回使ったパーツは以下のようになっている。

 製品選びは製品本体の耐久性だけでなく、もしもの時も安心できるように保証期間も重視して選んでいる。

【耐久性と信頼性を重視したタフなPC】

■スペック
CPU:Intel Core i7-6700K(4.0GHz)
マザーボード:ASUS SABERTOOTH Z170 MARK 1(Z170、ATX)
メモリ:Crucial Ballistix BLS4K4G4D240FSA(DDR4-2400、4GB×4)
グラフィック:ASUS GTX750TI-PH-2GD5(GeForce GTX 750 Ti、2GB)
SSD:Intel SSD 530 Series 480GB
HDD:Western Digital WD60EFRX×2
電源:Seasonic SS-660XP2(80PLUS Platinum、660W)
PCケース:Cooler Master MasterCase Pro 5
CPUクーラー:Cooler Master Nepton 240M(12cm角ファン×2)
OS:Windows 10 Pro 64bit

PCMark 8 Homeの総合スコア
CINEBENCH R15のスコア

CPU:Intel Core i7-6700K

Core i7-6700K

CPUには4コア8スレッド動作でどんな作業もこなす「Core i7-6700K」を選んだ。

 定格動作クロックが4GHzと高く、最新アーキテクチャを採用するのでシングルスレッド性能は抜群。それに加えて、Hyper-Threadingに対応し合計8スレッドで動作するので、マルチスレッド処理も得意なオールラウンドモデルだ。

マザーボード:SABERTOOTH Z170 MARK 1

SABERTOOTH Z170 MARK 1

 マザーボードに採用したのは耐久性を重視した「TUFシリーズ」に属するZ170マザーボードである「SABERTOOTH Z170 MARK 1」だ。

 基板表面にはビデオカードの熱から基板を保護する「Thermal Armor」が装備されているほか、基板裏面には基板の反りを防止するための「TUF Fortifier」が装備されている。それだけに留まらず、使用しないコネクタやスロットを汚れから守るための「Dust Defenders」が付属しているので、今回のタフPCには最適なマザーボードと言える。

 コンポーネントの耐久性が高いのも特徴で、24時間365日の稼働を視野に入れてコンデンサやチョークコイル、MOSFETなどには米国軍事規格準拠の高耐久なものが採用されている。

高耐久コンポーネントを採用するVRM部分。ヒートシンクのカバーの銀色の部分をスライドさせる事で、カバー内のエアフローを調整する事ができる
基板の裏面に装着された「TUF Fortifier」は基板の反りを防止してくれる
コネクタやスロットのカバー、冷却ファン、温度センサーなどが付属。M.2 SSDを装着するための「Hyper M.2 x4 ミニカード」も付属している
「Dust Defenders」をスロットに装着してみた
背面ポート用の「Dust Defenders」を装着
内部Serial ATAコネクタ用の「Dust Defenders」も付属する

ビデオカード:ASUS GTX750TI-PH-2GD5

GTX750TI-PH-2GD5

 ビデオカードのファンやヒートシンクはケース内でもホコリの溜まりやすい場所のひとつ。そこで今回選んだのは、ホコリの多い環境に強い「ダストプルーフファン」を搭載した「GTX750TI-PH-2GD5」。従来品のファンと比べて25%も耐久性が高く、メンテナンスなしで長期間使用できるタフさが売りの製品だ。

 リファレンスデザインカード採用品と比較して2.5倍という耐用年数を誇る高耐久コンデンサ「Super Alloy Capacitor」や、対応電圧が30%拡大された「Super Alloy MOS」など、コンポーネントの品質や耐久性も高いので安心感は高い。

HDD:Western Digital WD60EFRX×2(ミラーリング)

WD60EFRX

 真にタフなPCを組みたいのならば、マザーボードやビデオカードだけでなくデータドライブにもこだわりたいところ。

 そこで今回は大切なデータを守る事を考えてデータドライブを2台用意し、Windows上で「記憶域のプール機能」を利用してソフトウェアRAIDを組んでみた。同じデータが両方のHDDに保存される「双方向ミラー」を選択したので、片方のHDDが故障した場合もデータを失う事はない。

 ミラーリング運用するために選んだHDDは、RAID構成に対応したWestern Digitalの「WD Redシリーズ」で、容量が6TBの「WD60EFRX」を2台用意した。常時稼働させるNAS向けの製品なので、MTBF(平均故障期間)一般的な製品よりも35%高く、動作可能温度域も広く設定されているのが特徴。保証期間も「WD Blueシリーズ」の2年間よりも長い3年間になっている。

 なお、システムドライブにはSSDをチョイス。SSDの容量単価が下がった現在、長く使う事を考えると400GBクラスの製品を選びたいところ。コストパフォーマンス重視で選ぶのならばSATA SSDがお勧めだが、パフォーマンス重視で選ぶなら「Intel SSD 750 Series」のようなMVMe規格に対応した製品を選ぶといいだろう。

記憶域の作成を行う場合は、「コントロールパネル」→「システムとセキュリティ」→「記憶域」→「記憶域の作成」と進めばOK
記憶域の作成が完了。今回は同じデータを2つのHDDに書き込むように「双方向ミラー」を選択した

電源:Seasonic SS-660XP2

SS-660XP2

 信頼性を大きく左右する電源には定評のあるSeasonic製の「SS-660XP2」を採用。

 容量660Wの80PLUS Platinum認証品で、コンデンサは一次側も二次側も日本メーカ製の105℃品が使用されているおり、変換効率も耐久性も抜群。低負荷時はファンが止まるセミファンレス仕様なので、ホコリが侵入しにくいというメリットもある。5年間の新品交換保証があるのも嬉しい。

CPUクーラー:Cooler Master Nepton 240M

Nepton 240M

 CPUクーラーに選んだのは、Cooler Masterの「Nepton 240M」だ。

 CPUに選んだ「Core i7-6700K」を安定して冷却するために、大型の240mmラジエータを備える本製品を選んだ。1時間当たり120Lという大流量を誇る高性能ポンプと、マイクロチャンネル構造を採用した水冷ヘッドによる冷却力の高さが特徴の製品だ。

 折り曲げても潰れないという高耐久なFEPチューブを採用しているほか、保証期間が5年と長い事も採用の理由だ。

ケース:Cooler Master MasterCase Pro 5

MasterCase Pro 5

 ケースにはCooler Masterの最新ケースである「MasterCase Pro 5」を採用。

 フロントパネル、トップパネル、サイドパネルなどの外装や、筐体内部のシャドーベイを交換可能な「FreeFormモジュラーシステム」を採用する事で、用途に合わせたスタイルを構築出来るのが特徴。

 電源を搭載するエリアとマザーボードを搭載するエリアが仕切られている上に、裏配線のスペースも十分あるので、エアフローの面でも有利な製品だ。フロントパネルやトップパネルにメッシュ加工が施されているだけでなく、筐体底面の電源ファンの吸気口にはダストフィルターが装着されているので、ホコリが侵入しにくくなっている。

メッシュ加工が施されているフロントパネル
トップパネルもフロントパネルと同様にメッシュ加工が施されている

ケースアクセサリー:ファン用ダストフィルター

ファン用ダストフィルター

 ケースへのホコリの進入を防ぐために有効なのがファン用のダストフィルターだ。「MasterCase Pro 5」のフロントパネルとトップパネルにはメッシュ加工が施されてはいるが、細かいホコリの進入を防ぐために別途ダストフィルターを装着した。

 装着したのは天板とフロントパネルの2カ所で、天板部分には取り外しやすいマグネットタイプを使用して、フロントファン部分には磁石が付かないのでネジ留めするタイプを使用した。

 ダストフィルターを装着する事でケース内へのホコリの進入を最小限にする事が出来るので、トラブルを最小限に抑える事ができるほか、メンテナンスも楽になる。

フロントファンに装着したダストフィルター。カバー同士がが干渉したため、ファンの間隔を広くして対処した
天板部分はホコリが積もりやすいので、ケース内へのホコリの進入を防止するためにダストフィルターを装着

ASUSのドラレコ「RECO Classic Car Cam」を試す

「RECO Classic Car Cam」パッケージ
本体と付属品一式

 タフなPCが無事に完成したところで、次はドライブレコーダーのセッティングだ。

 我々自作PCユーザーからすると「ASUS=自作PCパーツ」というイメージがあるが、今日では、タブレットやスマートフォン、ノートPCなどのジャンルでも高い評価を受けているメーカーだ。そして、それだけに留まらず今回借りたようなドライブレコーダーも発売していたりする。

 PCやモバイルデバイスで培われた技術がドライブレコーダーにどう活きているのか、まずは「RECO Classic Car Cam」のスペックをチェックしてみよう。

 ドライブレコーダーとして重要な記録画質だが、解像度はフルHD(1920×1080ドット)、フレームレートは30FPSに対応。HDR(High Dynamic Range)機能を搭載しているので、明暗差の強い逆光時や夜間など、シチュエーションを問わずに高画質での録画が可能とされている。レンズの画角が140度と広く、正面の広範囲を撮影できるのも嬉しい。

ドライブレコーダー本体。レンズの淵には「F/2.0 Fixed Lends」、「1080P FULL HD」と刻印されている。
本体には2インチのモニタを搭載。下部には5つのボタンが配置されている

 記録媒体はmicroSDカードで、製品には動作確認用として8GB Class 10というスペックのmicroSDカードが付属している。記録フォーマットはMOV(H.264)で、ファイルは5分毎に分割して保存されるようになっている。

筐体側面には給電ケーブル用とGPSセンサー用のコネクタの他に、Micro HDMIコネクタも備える
コネクタ類が実装されている反対側の側面にはMicro SDカードスロットが備えられてる

 本体の取り付けは付属のマウントホルダーを介して行う仕組み。本体設置後は、給電用のケーブルをシガーソケットに接続してGPSレシーバーを設置するだけでセットアップは完了。自動車の専門的な知識がない人でも取り付けは簡単に行える。

マウントホルダーは両面テープが装着済み
ボールジョイント式なので細かな角度調整が可能
付属のGPSレシーバー
シガーソケットに接続する給電用のケーブル
給電用のケーブルはシガーソケットに挿し込むだけでOK
ケーブルを車内に固定する時に使うケーブルクランプ。両面テープが装着済み

 機能面では、緊急時の録画機能や安全運転支援機能が搭載されているのが本製品の特徴だ。

 まず、緊急録画機能は、本体内蔵の3軸センサーが衝撃を検知すると自動で動作、録画するというもの。この時に録画されたファイルは、上書きされないように専用の保存領域に移動されるので、万が一の時も安心できる。

 安全運転をサポートするための機能としては、車線を逸脱した時に警告音を発してくれる車線逸脱警告機能や、前車との車間距離が近い場合に警告音を発してくれる前方衝突警報機能を備えている。

 車線逸脱や車間距離の警告機能は時速60km以上で働くので、一般道でお世話になる事はほぼないだろうが、高速道路では安全運転の役に立つ機能と言えるだろう。利用するためには、本体で機能を有効化して、カメラを適切なアングルに取り付ける必要がある。

 上記の機能以外では、地デジやワンセグなどの車載TVやカーナビ、ETCなどのシステムへの干渉を抑えるためのノイズ軽減機能の搭載が謳われている。これは、ドライブレコーダーのGPSが他の車載システムに干渉するトラブルを軽減する機能だと思われる。なお、今回のテスト中にカーナビの位置情報がずれたり、ETCが正常に機能しないようなトラブルは一度もなかった。

 さて、取り付けも完了したので、早速ASUS製ドライブレコーダーを試すためにドライブに出発だ。ドライブレコーダーで撮影した動画は、後のエンコードテストで使用している。

【ASUSのドライブレコーダー「RECO Classic Car Cam」の撮影例】
アップロードのため、動画は再エンコードしてあります。画角や明るさの参考にしてください

Skylake-Kは動画エンコードが速い?ドラレコで撮影した動画をH.265で高速エンコード

 ドライブから無事生還したので、撮影して来た動画ファイルのエンコードを試してみたいと思う。

 Skylake世代のCPUに内蔵される「Intel HD Graphics」のQSV(Quick Sync Video)機能は、H.264よりも動画ファイルのサイズを小さくできるH.265に新たに対応しているのが特徴。QSVによるハードウェア支援が有効化できるソフトでは、H.265エンコードがかなり高速になるという事なので検証してみた。

QSVによるハードウェア支援を使う場合は、設定欄の「ハードウェアアクセラレーション」欄で設定を行う必要がある
出力設定画面で「高速ビデオレンダリング技術」にチェックを入れ、「ハードウェアビデオエンコーダー」を選択すればQSVが利用できる

 使用したソフトはCyberLinkの「PowerDirector 14」で、動画ファイルはドライブレコーダー「RECO Classic Car Cam」で録画した5分間のMOVファイルだ。ハードウェア支援有効時と無効時の2通りで、動画をH.265形式のMP4動画に変換する際に掛かる時間を計測してみた。

QSV無効時はエンコードが5分23秒で終了
QSVを有効にすると、エンコードがわずか1分15秒で終了

 QSVによるハードウェア支援無効時に5分23秒掛かっていたエンコード時間が、QSVによるハードウェア支援を有効にした途端、1分15秒まで短縮されたのには驚き。QSV機能がH.265に対応しているSkylakeは、動画編集をする人にとってかなり魅力的なCPUではないだろうか。

「思い出保存」向けには、耐久性・メンテナンス性・そして性能が重要

 今回は高耐久パーツを使ってホコリ対策も万全にして組んだので、長期の使用でもトラブルが起こりにくい1台に仕上がったと自負している。ダストフィルターや内部の掃除さえマメにすれば、かなり長期間、活躍してくれるだろう。

 また、Windows 10は「Windows最後のメジャーバージョンアップ」とも言われており、ハードウェア/ソフトウェアの両面で「長期仕様」のPCになったと言える。

 自作PCには様々なアプローチの仕方があり、処理性能やコストパフォーマンスを重視したり、はたまたゲームに特化させたりと、があるが、耐久性や信頼性を重視した組み方も中々面白い。今回のプランが新規に組みたい人だけでなく、部分的なアップグレードを検討している人の参考にもなれば幸いだ。

[制作協力:ASUS]

清水 貴裕