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自作PCも“タフ”でなければ生きていけない!? 高耐久が自慢のASUS“TUF”シリーズで固めた2023年型高性能PCを作る

最新Core i7&B760マザーを軸に使いやすさも組みやすさも万全 text by 竹内 亮介

 最近のCPUやビデオカードは性能の向上が著しいが、その半面で消費電力が上昇しており、発熱もかなり増大している。必要とする大電流をしっかり制御し、負荷の高い状況でもそれぞれのパーツが安定して動作できる環境を整えてやらなけれれば、100%の性能を発揮することは難しいのだ。

 こうした背景もあり、パーツメーカー各社では耐久性の高い部品を採用する傾向が高まっており、軍用装備品レベルの耐久性を備える部品を使用したモデルもあるほどだ。こうしたパーツは性能はもちろん安定性や冷却性能にも優れているため、長く安心して利用できる。

 では、そうした高耐久パーツを集めて“高耐久PC”を自作したらどんなマシンに仕上がるのか。今回はASUSTeKの「TUF Gaming」シリーズの各種パーツでアッパーミドルクラスのゲーミングPCを作ってみた。TUF Gamingシリーズでは、PCケースやケースファンなどもラインナップしており、同一イメージで統一されたスタイリッシュなPCを作れる。

今回用意したパーツ一式。TUF Gamingシリーズの製品を軸に、アッパーミドルクラスのゲーミングPCを目指す

新世代のアッパーミドルクラスCPU/GPUかつ“タフ”なパーツを選べ!

 ASUSによると、シリーズ名の「TUF」は「The Ultimate Force」の略とのこと。前述したように軍用グレード仕様、あるいはそれに近いスペックを持つ部品を使用し、厳しいテストを行なうことで非常に高い耐久性と安定性を約束するPCパーツのシリーズである。それでいて機能やLED演出はシンプルに絞り込まれており、コストパフォーマンスに優れるという面もある。高性能で長く付き合えるPCを賢く作りたいときの目安とするべきシリーズと言ってよいだろう。

 他社でもこうした耐久性重視のブランド/シリーズを展開しているが、そのブランド/シリーズに属するPCパーツだけで1台のPCを作れるほど多彩なパーツは用意していないことがほとんど。その点、「TUF Gaming」を冠する製品のジャンルは広く、マザーボードやビデオカードなどのPCパーツだけではなく、ノートPCや液晶ディスプレイまで、幅広く展開している。もちろん基本コンセプトの“タフであること”は共通だ。

 さらにTUF Gamingシリーズのコダワリやデザインを共有し、互換性も確保した他社製品とも「TUF Gaming Alliance」というコラボレーションを行なっており、なかなかユニークな展開を見せている。

 今回の自作PCのベースとなるマザーボードには、このTUF Gamingシリーズから「TUF GAMING B760-PLUS WIFI D4」を選んだ。チップセットは下位グレードの「Intel B760」ながら、12+1の強力な電源回路や耐久性に優れたチョークコイルにキャパシタ、6層のPCBなどTUF Gamingシリーズにふさわしい部品を装備。最新の第13世代Coreシリーズの上位モデルも問題なく利用できる。

Intel B760を搭載するATX対応マザーボード「TUF GAMING B760-PLUS WIFI D4」

 PCI Express 5.0 x16対応の拡張スロットには、ステンレス製の補強材が組み込まれている。GeForce RTX 40シリーズ搭載モデルなど、重量のあるビデオカードを挿してもスロットの破損や故障を防ぐためのギミックだ。同じような補強材はメモリスロットにも組み込まれており、これも耐久性を重視するTUF Gamingシリーズのマザーボードらしいギミックといえよう。

強力な電源回路を搭載しており、上位CPUの性能も100%発揮できる

 組み合わせるCPUはIntelのCore i7-13700。Hyper-Threading対応の高性能コア(Pコア)を8基、高効率コアを8基搭載し、16コア24スレッドに対応する。オーバークロックには対応しないが、第13世代Coreシリーズの中では上位モデルなので基本性能は高く、オールラウンドで活躍してくれるはずだ。

 CPUの候補としては、オーバークロック設定が可能な倍率アンロックのいわゆる“K付き”であるCore i7-13700K、あるいは1ランク下のCore i5-13600Kも挙げられるが、Bシリーズチップセットは倍率変更オーバークロックには非対応。スペックや性能、コストを考えると、Core i7-13700がちょうどよいバランスだろう。ちょっとコストを削るなら、CPU内蔵グラフィックスを持たないCore i7-13700Fもアリ。

CPUは16コア24スレッド対応のIntel「Core i7-13700」

 CPU同様に、大きくPCの性能を左右するビデオカードだが、今回は2023年最新仕様のゲーミングPCを組み上げたいので、同じくTUF Gamingシリーズの「TUF Gaming GeForce RTX 4070 Ti 12GB GDDR6X OC Edition」を選んだ。最新GeForceの3番目のモデルで、RTX 40世代のアッパーミドルクラスとなるGeForce RTX 4070 Tiを搭載。アッパーミドルクラスとはいえ最新世代の性能は桁違い。ゲームによっては前世代の最上位モデルRTX 3090を凌駕する3D描画性能を発揮する。

GeForce RTX 4070 Tiを搭載する「TUF Gaming GeForce RTX 4070 Ti 12GB GDDR6X OC Edition」

 大きな電流をスムーズに供給して制御するため、軍隊仕様にもマッチする耐久性に優れるキャパシタを組み込んでいる。また基板やGPUクーラーにも頑強な素材を使用するなど、こちらもTUF Gamingシリーズらしいコダワリが随所に垣間見える作りだ。

3基のファンで冷却する強力なGPUクーラーを装備。PCI Express補助電源は最新仕様の12VHPWRで、対応電源ユニットならケーブル1本で接続可能

水冷クーラー、電源、PCケースもTUFで統一できるので一体感が秀逸

 このほかのパーツも順に見ていこう。TUF Gamingのステキなところは、CPUクーラー、電源ユニット、PCケースまでも同シリーズで揃えられる点だ。パーツにあしらわれたロゴマークやデザインの方向性など、ルックスの統一感も得やすいのもポイントだ。

 CPUクーラーは、24cmクラスのラジエータを備える簡易水冷型の「TUF Gaming LC 240 ARGB」。水冷ヘッドにはアドレサブルLEDが組み込まれたTUF Gamingシリーズのマークが刻まれている。

24cmクラスラジエータを備える「TUF Gaming LC 240 ARGB」

 電源ユニットは出力が1000Wで80PLUS Gold認証を取得した「TUF Gaming 1000W Gold」を選んだ。ATX 3.0に対応しており、今回のビデオカードでも利用する12VHPWRコネクタ用のケーブルが付属する。

定格出力1000WのATX 3.0対応電源ユニット「TUF Gaming 1000W Gold」

 PCケースとしては、最新の「TUF Gaming GT502」を組み合わせた。TUF Gamingシリーズのロゴとトレードマークを前面パネル右に配した質実剛健なデザインのATX対応PCケースで、右側面と前面パネル左は強化ガラスになっている。マザーボードやビデオカードなど、メインパーツのデザインをじっくりと眺めて楽しみたい。

 デュアルチャンバー構造を採用し、マザーボードベースで内部の領域が二つに分けられている。またさまざまな場所に水冷ラジエータやケースファンを組み込めるようにしており、冷却性能を強化しやすい。天板部分にキャリーハンドルを備えており、LANパーティなどでPCごと持ち運びたいときに便利だ。

内部を二つの領域に分けたデュアルチャンバー構造を採用する「TUF Gaming GT502」

 ただTUF Gaming GT502はケースファンが付属していないため、そのままでは冷却性能が不足する。そのため12cm角ファンを3基パックにしたASUSTeKの「TUF Gaming TF120 ARGB 3IN1」を追加した。

アドレサブルLED搭載の12cm角ファンを3基まとめ、LEDハブなども同梱される「TUF Gaming TF120 ARGB 3IN1」

 TUF Gamingシリーズの製品がないメモリとSSDはASUS以外から。マザーボードにDDR4メモリ対応モデルを選んでいるので、PC4-25600(DDR4-3200)対応で16GBモジュールの2枚組を使用。DDR4メモリであれば今まで使っていたものを流用することも簡単なのでお財布にもちょっとやさしい。今回は手元にあったMicron「Ballistix Elite」のDDR4-4000対応モデルがちょうどルックス的にマッチしていたので使用した(なお、定格設定でのPC使用を考慮し、後述のテストはすべてDDR4-3200設定で実施した)。

 ストレージはWestern Digitalの「WD_Black SN770 NVMe」の1TBだ。PCI Express 4.0 x4対応でシーケンシャルリードは5.15GB/s、シーケンシャルライトも4.9GB/sと高速なNVMe対応SSDである。もっと高速な製品もあるのだが、速度と容量、そして価格のバランスが絶妙な、いわゆる高コストパフォーマンスな製品だ。

メモリはMicron製のDDR4モジュールを使用。ピーク性能こそDDR5に譲るが、マザーしだいでは流用できるパーツので、予算を抑えたいときは活用したい
ストレージはPCI Express 4.0 x4対応のWestern Digital「WD_Black SN770 NVMe WDS100T3X0E」。NVMe SSDとしてはアッパーミドルクラスの製品

各パネルは簡単に着脱可能、水冷クーラーも取り付けやすい

 TUF Gaming GT502では、両側板や天板、前面パネルが簡単に外せるようになっており、内部にアクセスしやすい。マザーボードやビデオカードなどのメインパーツは左側、電源ユニットやストレージは右側と大きめのパーツを振り分けて組み込むデュアルチャンバー構造なので、パーツが干渉しにくいのも便利だ。

左側面から見た内部。大型のビデオカードを組み込んでも十分な余裕がある。今回は右側面方向から空気を取り込むようにファンを2基取り付けたが、もう1基12cm角ファンを追加することも可能。ここに36cmクラスのラジエータを取り付けることもできる

 マザーボードベース裏面は、電源ユニットを組み込むほどのスペースなのでかなり広い。今回の作例では合計で5基ものアドレサブルLED搭載ケースファンを組み込むため、かなりケーブルが多いのだが、キッチリまとめなくてもケーブルで右側板が閉じられなくなるようなことはないだろう。

右側面の様子。かなり広いスペースを確保していることが分かる。ただし前面近くに組み込んだファンに各種ケーブルが接触しないよう、うまくまとめていきたい
右側面の別カット。写真左は内部、右は側面パネルを取り付けた状態。エアフロー確保のため広範囲がメッシュ状になっている。右側面に水冷ラジエータを取り付けることも可能だ
本体前面(写真左)と背面。デュアルチャンバー構造なので横幅は一般的なケースよりも大きめ。奥行きと高さは45cm前後と意外と抑えめ

 簡易水冷型CPUクーラーのTUF Gaming LC 240 ARGBは、天板に排気方向で取り付けた。TUF Gaming GT502では天板とファンマウンタ部分が簡単に取り外せるようになっており、ラジエータやファンを取り付けてから中に戻す、といった組み込み方法が可能。またマザーボード上辺と天板の隙間が広いため、ケーブル接続に苦労することもない。総じて組み込みに苦労する場面はなかった。

天板とファンマウンタが着脱可能なので、このように水冷ラジエータを付けてから内部に戻す、といった作業が可能
背面のプッシュボタンを押すだけで、側板は簡単に外せる
磁石で底面に固定し、大きなビデオカードを支えるビデオカードホルダーを同梱する

 Windows 11のインストール後、デバイスドライバのインストールなどでは「Armoury Crate」を利用する。これはLED制御やファンの回転数制御、最新版へのアップデート、CPUやビデオカードのオーバークロックなどさまざまな設定で利用する統合ユーティリティなので、必ずインストールして活用したい。

Windows 11インストール直後にデバイスドライバをインストールするときだけではなく、システム状況の確認や各種設定で利用する「Armoury Crate」

 Armoury Crateに組み込まれた「Fan Xpert 4」から、今回利用する5基の12cm角ファンの初期設定を行なうと、アイドル時の回転数は600rpm前後となり非常に静かだった。ビデオカードも負荷が低い状況ではファンの回転数が停止するタイプなので、書類作成や情報収集といった軽作業時や動画再生時は、耳を近付けないとほとんど動作音は聞こえてこない。

マザーボードやケースファンなどが装備するLEDの制御もArmoury Crateの「Aura Sync」で行なう。TUF Gamingシリーズのビデオカードも同期して設定できる

4K解像度でも最新PCゲームがバリバリ動く

 ここからは、実際にベンチマークテストを利用して性能を検証していこう。

 日常的なアプリの使い勝手をScoreで示す「PCMark 10 Extended」では、13,000を超える圧巻の総合Scoreを記録した。ハイエンドではないにせよ上位モデルのCPUとビデオカードの組み合わせなので、Windows 11の各種操作や書類作成などの軽作業で不満を覚えるような状況はまったくなく、非常に快適だ。

 3D描画性能をScoreで比較できる「3DMark」でも、優れたScoreを示した。4K対応液晶ディスプレイを想定してテストを行なう「Fire Strike Ultra」や「Time Spy Extreme」でもフレームレートが60を切ることはなく、リッチな3D映像をスムーズに表示できることが分かる。

PCMark 10 Extendedの計測結果。全項目が非常にハイレベル。さらに細かいサブスコアを詳しく見てみたところ、アプリ起動(ストレージ性能)、表計算、写真編集、3D CGのレンダリングと処理、ゲーミング全般のスコアがとくに優秀だった
3DMarkの計測結果。これも文句なしの結果で、Core i9-13900K+RTX 3090環境に匹敵または上回るスコア

 実際のPCゲームでの状況を確認するため、UBIsoftの「ファークライ6」と、CD PROJEKT REDの「サイバーパンク2077」をインストールし、ベンチマークテストモードを実行してみた。どちらのタイトルも最近のPCゲームの中では描画負荷が高いタイトルであり、ゲームPCとしての適性をチェックしやすい。

 まずはフルHD解像度の設定でベンチマークテストを実行した。グラフィックスの設定は、ファークライ6が[画質:最高]、サイバーパンク2077では[プリセット:ウルトラ]と、グラフィックス設定はどちらも最高の状態だ。さすがにフルHD解像度ならどちらのゲームでの十分なフレームレートを確保しており、ゲームプレイ時の描画は非常にスムーズだ。

 とはいえここまで性能の高いPCなのに、フルHD解像度というのはもったいない。より精細な4K解像度でもベンチマークテストを実行したところ、ファークライ6では最小FPSでも75と、問題なくプレイできそうだ。また「FidelityFX Super Resolution」を有効にすると、設定によってはフルHD解像度時に近いフレームレートを叩き出す。

ファークライ6の計測結果
ファークライ6の詳細設定。FidelityFX Super ResolutionはここでONにする

 一方サイバーパンク2077では、かなり厳しい場面も出てくる。ベンチマークテスト中でも画面描画に引っかかりを感じる場面が多く、フルHD解像度のときのようなスムーズなプレイ感覚は得られない。描画負荷が非常に高いゲームの一つであることを考えると、やむを得ないところではある。

 ただサイバーパンク2077は、つい先日公開されたアップデートでNVIDIAの「DLSS 3.0」に対応した。これはGeForce RTX 4000シリーズで利用できる機能で、AIによる超解像技術やフレーム生成技術を組み合わせ、高解像度時でも高フレームレートでゲームを楽しめるようにする機能だ。

サイバーパンク2077の計測結果
サイバーパンク2077はついにDLSS 3.0(DLSS Frame Generation)に正式対応。有効にすることで大幅にフレームレートが向上する

 設定画面でDLSS、DLSS Frame Generationを有効にして、品質をFPS優先の[ウルトラパフォーマンス]にした場合、フレームレートはおおむね2倍以上に向上し、画面描画でカクつく場面はなくなった。表示品質優先の[クオリティ]に設定した場合はごく一部の場面で気になることもあるが、おおむね動作に支障はなさそうだ。どちらの設定でも表示クオリティの変化はほぼ感じないため、積極的に利用していきたい。

 このように非常に高性能なPCだが、それだけにCPUやビデオカードの発熱、そしてシステム全体の消費電力も気になるところだろう。これらをまとめたのが下のグラフだ。

 今回は起動してから10分後の最低値を「アイドル時」、1時間の動画再生中の平均的な数値を「動画再生時」、3DMarkの「Time Spy StressTest」を実行中の最大値を「高負荷時」とした。検証を行なった場所の室温は22.1℃。

各部の温度の計測結果

 簡易水冷型CPUクーラーのラジエータが24cmクラスなので、CPU温度はちょっと高めになるかもしれないという予想はあった。しかし実際には高負荷時でも80℃を超えることはなかった。またGPU温度もかなり低い。3基のケースファンを追加し、エアフローを強化したことも影響しているだろう。

 消費電力はアイドル時で86.3W、高負荷時で416.5Wだった。今回は余裕を見て定格出力が1000Wの電源ユニットを組み合わせたが、もうすこし出力が小さいモデルでも大丈夫かもしれない。ちなみにTUF Gaming Goldシリーズでは、定格出力が750Wと850Wのモデルも用意している。

システム全体の消費電力

用途を選ばず活躍できる、“タフ”なTUF Gaming作例

 冒頭でも述べたとおり、TUF GamingシリーズのPCパーツではミリタリーグレード基準をクリアできるほど耐久性の高い部品を多数使用しており、安定性に優れる。そうしたパーツを集めて作った今回の作例もまた安定性に秀出ており、長く安心して利用できるのは間違いない。デザイン面でもミリタリーテイストを強く意識したPCケースもまた、質実剛健なイメージに一役買っている。

 高い3D描画性能を活かしてゲームPCとして使い倒すもよし、CPUやGPUの演算機能を利用してクリエイティブワークに活用するのもよいだろう。また高性能ながらも負荷が低い状況では動作音は非常に小さく、軽作業時はまったく気にならない。幅広い用途で活躍できるなど、タフでパワフルな仕上がりに満足感も秀逸だ。