トピック
よく入ったな……25×12cmのボディにRTX 4070ビデオカードを搭載するZOTACの小型デスクトップPC「ZBOX Eシリーズ MAGNUS ONE ERP74070C」を試す
CPUもCore i7でパワフル&コンパクト!! text by 竹内 亮介
- 提供:
- ZOTAC
2023年11月27日 00:00
高性能なCPUやビデオカードを組み込んだ強力なPCがあれば、最新のPCゲームは快適に動作するし、動画編集や画像編集、AIによる画像生成などの作業の効率は目に見えて向上する。ただそうした高性能なPCは、サイズが大きくなりがちだ。今までコンパクトなノートPCを使っていたユーザーなら、いわゆる“タワー型”のデスクトップPCを見て腰が引けてしまうのもムリなことではない。
こうしたジレンマを解決してくれるのが、今回紹介するZOTACの「ZBOX Eシリーズ MAGNUS ONE ERP74070C」である。CPUには13世代Coreシリーズの上位モデル、ビデオカードもGeForce RTX 4070を搭載する高性能デスクトップPCながら、非常にコンパクトな筐体を採用している。今回はこのMAGNUS ONE ERP74070Cの魅力をさまざまな角度から検証していこう。
質感の高いボディで内部はデュアルチャンバー構造
ZOTACと言うと、自作PCユーザーならビデオカードメーカーとしてのイメージが強いだろう。しかし実は、さまざまなサイズの小型デスクトップPCを多数手掛けている。「ZBOX E MAGNUS ONE」シリーズは、そうしたZOTACの小型PCの中ではハイエンドに位置しており、強力なCPUやビデオカードを搭載することが最大の特徴となる。
CPU | Core i7-13700(16コア24スレッド) |
ビデオカード | ZOTAC製 NVIDIA GeForce RTX 4070搭載カード |
搭載メモリ | DDR5 SO-DIMM 16GB×1(空きスロット×1) |
搭載済みストレージ | M.2 SSD 512GB(PCI Express 4.0) |
ストレージ 空きスロット/ベイ | M.2×1、2.5インチシャドー×1 |
通信機能 | IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth v5.2 |
主なインターフェース | 2.5GBASE-T×1、1000BASE-T×1、HDMI×2(CPU内蔵GPU側×1、ビデオカード側×1)、DisplayPort×3(すべてビデオカード側)、Thunderbolt 4×1、USB 10Gbps×4、USB 5Gbps Type-C×1、USB 5Gbps×5 |
本体サイズ(W×D×H) | 126×256.5×249mm |
重量(実測値) | 4.89kg |
OS | Windows 11 Pro |
直販価格 | 291,000円 |
本体の幅は12.6cmで奥行きは26.55cm、高さは24.9cm。内部の容積は8.31Lだと言う。超巨大なものはもちろん、コンパクトを売りにしていてもそれなりに大きいのが一般的なタワー型のPCよりもはるかに小さく、ビジネスシーンでよく利用される縦置きのブックシェルフ型PCと比べても一回り小さい。このサイズに、Core i7-13700やその冷却システム、NVIDIAの最新のアッパーミドルクラスGPUであるGeForce RTX 4070を搭載するビデオカードを組み込んでいるというのだからスゴイ。
ボディカラーは精悍なブラックで、前面の化粧プレートや側板、天板などにはマットな質感の表面処理が施されており、高級感がある。また前面上部には電源ボタンを装備しており、電源を入れるとボタンの周囲にあるLEDのリングが光る。シンプルな仕掛けながらデザインのアクセントになっている。こうしたハデ過ぎないLEDの仕掛けも、高級感の演出に一役買っている。
両側面、天板は通気性の高いメッシュ構造を採用する。また設置してしまうと見えないが底面もメッシュ構造になっており、通気性は非常に高い。コンパクトな筐体で高性能なCPUやビデオカードをしっかりと冷却するには、こうした構造は不可欠とも言える。そのためこれらの通風口をむやみにふさがないよう、設置場所には十分注意したいところだ。
前面には、USB 5Gbps対応のType-CコネクタとType-Aコネクタを1基ずつ搭載するほか、SDメモリーカードスロットを装備する。背面には多くのUSBポートのほか、ディスプレイ出力端子としてはビデオカード側に3基のDisplayPortとHDMI、そしてマザーボード側にもHDMIを搭載しており、複数台の液晶ディスプレイを接続してマルチディスプレイ環境を構築するのも容易だ。
背面の手回しネジを2本外すと、天板を背面方向に引っ張って外すことが可能。この状態で両側板を上に引っ張ると、内部にアクセスできるようになる。ケース内部は中央で二つに分割されたデュアルチャンバー構造になっており、左側面のエリアにはビデオカード、右側面のエリアにはマザーボードが組み込まれている。
こうしたユニークな構造を採用することで、コンパクトな筐体内部のスペースをムダにすることなく利用し、高性能パーツを詰め込んでいるわけだ。また右側面のマザーボード近くには構造物はほとんどないため、マザーボード上のM.2スロットやメモリスロットがよく見える。マザーボードを見るとM.2スロットが1基空いた状態で、データドライブとしてM.2 SSDを追加するのも容易だ。
一般的に小型PCでは、パーツ同士が複雑に入り組んで内部へのアクセスが難しく、メモリやストレージの拡張が難しいモデルが多かった。しかしMAGNUS ONE ERP74070Cでは、デュアルチャンバー構造を採用することで内部が整理されており、メモリスロットやM.2スロットにアクセスしやすくなっている。拡張性を重視するユーザーにとっては、大きなメリットだ。
また外した天板を見ると、2基の9cm各ファンが排気方向に組み込まれていた。メッシュ構造の両側板や底面から給気した外気でパーツを冷却し、熱気は天板から排気するという合理的なエアフローとなっている。
高性能なCPUやビデオカードはPCゲーム以外にも「効く」
一通り外観と中身をチェックしたところで、使い勝手や実際の性能をチェックしていこう。CPUはCoreシリーズの上位グレード、ビデオカードもアッパーミドルクラスのGPUを搭載することもあって、Windows 11やインストールしたアプリの起動や操作感は非常に快適だった。
試用機のメモリはシングルチャンネル構成ながら、16GBモジュールなので不満を感じることもない。後述するベンチマークテストのような高負荷時にはファンの音がやや気になるが、Webブラウズや動画配信サービスの視聴、書類作成といった負荷の軽い軽作業時にはおおむね快適と言ってよい。
ここからは実際の性能を、いくつかの基本的なベンチマークテストで検証していこう。比較対象は、CPUにMAGNUS ONE ERP74070Cと同じ13世代Coreシリーズで1グレード下ながらK付きなのでi7-13700を上回るスコアを出すシチュエーションもあるCore i5-13600K、ビデオカードには一世代前のNVIDIA GeForce RTX 3070搭載カードを組み合わせた自作PCを用意した。
CPU | Intel Core i5-13600K(14コア20スレッド) |
マザーボード | Intel Z690搭載マザーボード |
メモリ | DDR5-4800 16GB(PC5-38400 DDR5 SDRAM 8GB×2) |
システムSSD | M.2 NVMe SSD 1TB(PCI Express 4.0 x4) |
CPUクーラー | 空冷クーラー |
電源 | 850W(80PLUS Gold) |
冒頭でも述べたようなタワー型のPCケースで運用するタイプのPCであり、コンパクトなMAGNUS ONE ERP74070CがそうしたPCにどこまで迫れるか、あるいは凌駕するのかといったところが見どころになる。
まず「PCMark 10」は、日常的によく利用されるアプリを実行し、その使用感をScoreで示すベンチマークテストだ。Scoreが高いほど性能が高いことを示している。MAGNUS ONE ERP74070Cでは11,000を超えるScoreだが、これは筆者が今まで検証してきた小型PCと比べても、なかなかのScoreだ。比較対象の大型の自作PCと比べても遜色がないどころか、ビデオカードの世代が新しいこともありGamingのように大きく勝ち越している項目もある。
「3DMark」は、3D描画性能を計測するベンチマークテストで、やはりScoreが高いほど性能が高い。今回はDirectX 12対応で描画負荷の高い「Speed Way」、比較的負荷の低い「Time Spy」、DirectX 11対応の「Fire Strike」の三つのテストを行なった。主にビデオカードの性能に影響を受けやすいテストだけに、GeForce RTX 4070を搭載するMAGNUS ONE ERP74070Cの強さが光る。
Time SpyとFire Strikeの詳細スコアを見てみると、CPU性能がスコアに大きく反応される項目の“CPU”や“Physics”では比較対象がリードするものの(1ランク下とはいえK付きであること、大型CPUクーラーを使用したことがプラスに働いたものと思われる)、GPU性能が重視される項目の“Graphics”では世代の新しい本機が大幅に逆転する。ゲームのフレームレートにより大きな影響を与えるのは“Graphics”のほうだ。一般的なタワー型PCよりもはるかに小さいサイズながらも最新のアッパーミドルGPUを搭載しているからこその強みと言える。
実際のPCゲームでも、こうした傾向は確認できる。現状の環境では比較的描画付加の低い「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク」を実行したところ、フルHD解像度(1,920×1,080ドット)ではどちらのPCでも評価は「非常に快適」で、問題なく動作した。
ただ4K解像度(3,840×2,160ドット)では明暗が分かれた。自作PCだと[最高品質]では評価は「とても快適」ながら、最低フレームレートが48で、わずかにカクつく場面が見られた。一方でMAGNUS ONE ERP74070Cだと[最高品質]時の評価は同じく「とても快適」だが、最低フレームレートは61になり、非常にスムーズな描画に。GPU性能の世代差がここでも大きく影響した。
描画負荷の高い「サイバーパンク2077」でも同じような傾向が見られる。グラフィックスのプリセットを[レイトレーシング:ウルトラ]に設定した場合、フルHD解像度ならどちらの環境でも平均FPSは60を超えた。しかし4K解像度では、MAGNUS ONE ERP74070Cは50、自作PCでは40とどちらの環境でもそれなりにカクつきが見られる。
ただMAGNUS ONE ERP74070Cが搭載するGeForce RTX 4070では、NVIDIA独自のフレーム補間機能「DLSS3」に対応する。これを有効にした状態だと平均FPSで70、最低FPSも60と大きく改善される。ベンチマークテスト中の動きを見てもスムーズで、コマ落ちを感じる場面はない。DLSS3に対応するゲームなら、MAGNUS ONE ERP74070Cのほうがより有利、ということだ。
以上のように、最新世代のGPUが搭載されていることからゲーミング性能の高さが目立つのだが、近年高性能GPUの活躍の場はAI分野で劇的に広がっており、AIに関するアクセラレーション機能を持つ高性能なGPU、とくにNVIDIAのAI技術が組み込まれた最新GPUを搭載している本機もその恩恵を強く受けている。そこで、より実環境に近い形でAI性能評価を行なえる「UL Procyon AI Inference Benchmark」を利用して比較してみた。
まず、MAGNUS ONE ERP74070Cと比較対象PCとの比較をNVIDIA TensorRTベースのテストで行なった。32bitの浮動小数点演算(float32)、整数演算(ineger)ともにGPUの世代差が大きく影響し、前者は30%以上、後者は10%弱の差が付いた。
次に、Windows MLベースのテストで、MAGNUS ONE ERP74070Cが搭載するCPUおよびGPUのAI処理性能を比較してみた。結果はGPUがいずれもCPUの性能を圧倒。CPUと比べるとGPUによる処理性能は整数演算の場合は約3倍、32bitの浮動小数演算だと10倍近いという結果に。“AI処理にはGPU”というコンピューティングの現在の状況がうかがえるものとなった。
最近増えてきた小型PCの中でも抜きん出た存在
容積が8.31Lというコンパクトな筐体ながら、性能でタワー型のPCに勝るとも劣らないMAGNUS ONE ERP74070Cは、最新PCゲームを快適に楽しむためにも性能には妥協したくないユーザーにとって、魅力的な選択肢になることは間違いない。
また小型PCは、基本的に机の上に設置して利用することが多い。それだけに、主張の少ないシンプルで高級感のあるデザインもまた訴求ポイントになり得る。パワフルさと優美さを兼ね備える本機は、デザイン業務やAI関連のクリエイティブワークを主体とするユーザーにも向いている。
軽作業はもちろん負荷の高い業務を軽々とこなし、AIに関する業務などにも対応できる本機は、さまざまなメーカーがラインナップしているさまざまな小型PCと比べても、頭一つ、あるいは二つ抜けた存在と言ってよいだろう。