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GPU搭載でゲームもAIも普段使いもこなせるミニPC!ZOTAC「ZBOX Eシリーズ MAGNUS EN374070C」

GeForce RTX 4070 Laptop GPUのハイパワーを21×20×6cmの超コンパクト筐体に text by 竹内 亮介

 最近、コンパクトで場所を取らない小型のデスクトップPC「ミニPC」が人気だ。ただしサイズの制限もあり、基本的にはCPU内蔵GPUを利用するシンプルな構成のモデルが多いため、PCゲームやクリエイティブワークといった負荷の高い作業もラクラクこなせる、というモデルは少ない。

 そんな中、今回紹介するZBOX Eシリーズの最新モデル「ZBOX Eシリーズ MAGNUS EN374070C」は、ノートPC向けの高性能なCPUやNVIDIAの最新GPUを採用することで、高い処理能力を求められる高度な作業にもハイレベルで対応できることを最大の特徴とする。ここではこのMAGNUS EN374070Cの魅力を、さまざまな方向から検証していこう。

CPUに「Core i7-13700HX」、外部GPUとして「GeForce RTX 4070 Laptop GPU」を搭載するZBOX Eシリーズ MAGNUS EN374070C。幅は20.3cm、奥行きは21cmで、おおむね正方形

メッシュ構造を多用したデザイン、インターフェースも多彩

 ZOTACでは自作PC向けのビデオカードだけではなく、ミニPCのカテゴリーに分類されるコンパクトなデスクトップPCも多数ラインナップしている。そうした中でも「ZBOX Eシリーズ」は、高性能なCPUやビデオカード、GPUを搭載したハイエンドなミニPCのブランドである。

ZOTACのミニPC「ZBOX Eシリーズ」。左がノートPC向けCPU/GPUを中心に構成された今回紹介する「ZBOX Eシリーズ MAGNUS EN374070C」。右は性能重視の超小型タワー型「ZBOX Eシリーズ MAGNUS ONE ERP74070C」。詳しくはこちらでレビューしている

 MAGNUS EN374070Cが搭載するCPUは、Intelの13世代Coreシリーズ「Core i7-13700HX」。これはノート/モバイルPC向けのCoreシリーズの中でも高性能ゲーミングノートPCに搭載されることが多いモデルで、16コア24スレッドに対応している。デスクトップPC向けの「Core i7-13700」と同等のコア/スレッド数であり、ノートPC向けCPUの枠にはとどまらない活躍が期待できる

 GPUはNVIDIAの「GeForce RTX 4070 Laptop GPU」、こちらも高性能なゲーミングノートPCに搭載されることが多い最新世代のアッパーミドルGPUである。DLSS3によるフレーム補間機能や、高度なAI演算機能に対応するなど、別途GPUを搭載しない一般的なミニPCに比べると非常に高性能で、最新のPCゲームもグリグリ快適にプレイできそうだ。このほかのスペックについては、スペック表を参照してほしい。

【ZBOX E MAGNUS EN374070Cの主な仕様】
製品名ZBOX E MAGNUS EN374070C
OSWindows 11 Pro
CPUCore i7-13700HX(16コア24スレッド)
搭載メモリDDR5 SO-DIMM 16GB×1(空きスロット×1)
搭載済みストレージ512GB(PCI Express 4.0)
ストレージ
空きスロット/ベイ
M.2×1
通信機能IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth v5.2
主なインターフェース2.5GBASE-T×2、DisplayPort×2、HDMI×1、Thunderbolt 4×1、USB 10Gbps×5
本体サイズ(W×D×H)203×210×62.2mm
重量(実測値)1.55kg
直販価格261,800円

 筐体は横起きスタイルで、幅は20.3cm、奥行きは21cm、高さは6.22cmと、小型のブロードバンドルーターを横起きにしたようなサイズ感だ。外部GPUを搭載しない超小型PCと比べればやや大きめではあるが、デスクトップPCとして一般的なタワー型はもちろん、ブックシェルフ型PCと呼ばれるスリムデスクトップPCなどよりもはるかに小さく、卓上での設置場所の自由度は非常に高い。

27型の液晶ディスプレイ、アイ・オーデータ機器「GigaCrysta LCD-GDQ271JA」およびビーボード/マウスと合わせて設置みた例。本体サイズが非常にコンパクトなので、PC周りはスッキリまとまる

 ノートPCと比較する場合、液晶ディスプレイやキーボードが一体化しているため、最終的な設置スペースや結線の手間はノートPCのほうが有利だろう。しかし、より快適な作業環境を追求するため、大型のディスプレイやキーボード/ディスプレイを接続して利用する、ということになると様子が一変する。

 たとえば、PC本体のサイズに着目して筆者の手元にある13~14型のノートPCと比較すると、幅はMAGNUS EN374070Cのほうが狭く、奥行きはほぼ同等か、MAGNUS EN374070Cのほうが短かい。また15型ノートPCとの比較だと、MAGNUS EN374070Cのほうが幅も奥行きも短くなる。こうしたことを考えると、ディスプレイやキーボード/マウスを含めた設置面積ではMAGNUS EN374070Cのほうが有利という状況もあり得るのだ。

 筐体は、つや消しブラックを基調とした精悍なデザインだ。また天板や側面、背面には多数の空気穴を備えて通気性を高めたメッシュ構造を採用している。CPUもGPUも高性能なモデルを搭載していることもあり、冷却性能を高めるための工夫といえそうだ。ちなみに前機種の「ZBOX Eシリーズ MAGNUS EN173070C」でも、ほぼ同じデザインを採用する。

本体左右側面。側板や天板には通気性に優れたメッシュ構造を採用している
本体前後面。電源ボタンの周囲にはリング上のLEDが組み込まれており、電源が入ると光る。熱気は主に背面に流れていくエアフローなので、背面付近にものを置いて風の流れを遮るのは避けたい

 前面には大きな丸い電源ボタンのほか、Thunderbolt 4、USB 10Gbpsポート、マイクとヘッドホン端子、そしてSDメモリーカードスロットを備える。このSDメモリーカードリーダーは、「UHS-Ⅱ」という高速な規格に対応していることが特徴となる。同じくUHS-Ⅱ規格に対応するSDメモリーカードと組み合わせれば、最高で312MB/sという速度でファイルをコピーできる。

 クリエイティブワークでは、高性能なデジタルカメラやデジタルビデオカメラから、大容量の画像データや動画データをコピーする機会が増える。そうした際にもMAGNUS EN374070Cなら、UHS-Ⅱ対応の高速なメモリカードリーダーを用意しなくてもスムーズにデータをやり取りできる。

前面にはThunderbolt 4とUSB 10Gbpsポート、SDメモリーカードスロットなどを装備。カードスロットは高速なUHS-Ⅱに対応する

 背面にはディスプレイ出力端子として2基のDisplayPort、HDMIを装備する。そのほかにもUSB 10Gbpsポートを4基、2.5Gigabit イーサネットポートを2基を装備するなどインターフェースは多彩だ。一般的なデスクトップPCと比べても遜色はなく、周辺機器が接続できなくて困る、ということはないだろう。欲を言えば、Thunderbolt 4が背面にもう1基欲しかったところではある。

背面にはディスプレイ出力端子として2基のDisplayPortとHDMIを装備。どのポートも8K解像度(7,680×4,320ドット)でリフレッシュレート60Hzの出力が可能。2.5Gigabit イーサネットの有線LANポートも2基装備する
無線LAN接続で利用する場合は、付属する無線LANアンテナを接続しよう

 ACアダプタは何と330Wに対応するモデルが付属する。ゲーミングノートPCなどでも使われるなり大きめなタイプだ。机の下などに熱がこもらないようなACアダプタ置き場を設けて目立たないように置くとスマートかも。せっかくの超コンパクトPCなので、すっきりとしたPC環境を作ってみたいところだ。

超小型PCとはいえ高性能CPU/GPUを搭載するため、出力330Wの大型ACアダプタが付属する

高性能ながら動作音は静か、高負荷時の消費電力も低い

 一通り外観をチェックしたところで、実際にMAGNUS EN374070Cを動かしてみよう。高性能なCPUやGPUを搭載しているため、動作音はそれなりに大きいのではないかと予想していたのだが、アイドル時やWebブラウズ、書類作成、音楽再生や動画配信サイトの視聴と言った軽作業時の動作音は、非常に小さい。

 またWindows 11の起動や基本的な操作、各種アプリの起動などはスムーズで、キビキビとした動きだ。CPUにCore i7-13700HX、外部GPUとしてGeForce RTX 4070 Laptop GPUを搭載するシステムであることを考えれば、これは当然の結果とも言える。

 MAGNUS EN374070Cでは、前述したとおり各部にメッシュ構造を採用した通気性に優れるデザインを採用。また高性能なCPUやGPUをしっかりと冷却するために、大型で冷却性能の高いクーラーを搭載している。こうした冷却性能へのこだわりが、安定動作や軽作業時の動作音の低さにつながっているのだろう。

本体天板(上部)。天板はほぼ全面がメッシュ構造、前後左右各面にもメッシュやスリットが配されており、十分な通気性を確保している

 もちろんベンチマークテストなど、負荷の高い作業時はそれなりにファンの動作音は大きくなる。ただし、動作音の印象としては、上位CPU/GPU搭載のゲーミングノートよりはかなり控えめ。ゲーミングノートに比べると内部空間にゆとりがあるぶん、冷却・放熱の面には動作音も含めて余裕がある作りになっているようだ。ベンチマークテストが終わるとファンの回転数がすぐに低下して普段の静かな状態に戻るのもゆとりがあればこそだろう。

 ここからは、いくつか基本的なベンチマークテストを実行して実際の性能を検証していこう。比較対象は、CPUにIntelの「Core i5-13600K」、ビデオカードはGeForce RTX 3070搭載カードという構成の自作PCだ。

 CPUの世代こそ13世代で同じだが、デスクトップ向けとノート/モバイルPC向けという大きな違いがある。比較してみると、コア/スレッド数はCore i5-13600Kは14/20スレッドでCore i7-13700HXの16コア24スレッドよりも少ないものの、ベースクロックとブーストクロックは3.5GHz/5.3GHzとCore i7-13700Hzの2.1GHz/5GHzで上回り、その分消費電力も倍以上だ(いわゆるTDPはi5-13600Kが125W、i7-13700HXが55W)。

 まずは一般的なアプリを利用した際に総合性能をScoreで計測する「PCMark 10 Extended」の結果を比較してみよう。このテストはScoreが高いほど性能も高い。MAGNUS EN374070Cの総合Scoreは10,000にはギリギリ届かなかったものの、コンパクトなデスクトップPCとしては十分以上の性能を確保している。

PCMark 10 Extendedの計測結果

 自作PCとの比較ではMAGNUS EN374070Cがややおよばない結果になったが、日常的な使用感を反映しやすいEssentialsやProductivityは、ほぼ同等と言ってよい結果だ。逆にビデオカード/GPUの性能が反映されやすいDigital Content CreationやGamingでは、比較対象のデスクトップPCのScoreのほうが高い。

 MAGNUS EN374070Cが搭載するノートPC向けのGeForce RTX 4070 Laptop GPUと、デスクトップPC向けでフルスペックのGeForce RTX 3070搭載カードで比べると、CUDAコアの搭載数や動作クロック、メモリバンド幅などはGeForce RTX 3070搭載カードのほうが高い。そうした違いが、Scoreの違いに反映されていることが予想される。

 グラフィックス性能を検証できる「3DMark」や、実際のPCゲーム上での性能を検証できる「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク」、グラフィックスの負荷が重いPCゲームの一つである「サイバーパンク2077」の結果にも、こうしたGPUの性能差が反映されている。

3DMarkの計測結果
ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマークの計測結果

 ただしサイバーパンク2077のように、GeForce RTX 4000世代がサポートする新機能である「DLSS3」が利用できるタイトルの場合、比較対象PCを超える性能を発揮できることも分かった。こうした最新機能への対応は、MAGNUS EN374070Cを選ぶ理由の一つになるはずだ。

サイバーパンク2077の計測結果

 またMAGNUS EN374070Cでは、ノートPC向けのコンポーネントを利用しているため消費電力が低い。たとえば軽作業時のモデルとなるアイドル時の消費電力は、比較対象PCが65Wだったのに対し、MAGNUS EN374070Cは39W。PCゲームをプレイ中の高負荷時を想定した3DMarkの「Speed way」を実行中の最大消費電力は、自作PCが320Wであったのに対し、MAGNUS EN374070Cは206Wだった。

 デスクトップ用CPU/GPU搭載PCに対して善戦できる基本性能、最新世代の機能が使えるGPUの搭載、高負荷時の消費電力で100W以上の差が付いていることなどをトータルして考えると、MAGNUS EN374070Cの省電力性、電力効率のよさは期待通りのものと言ってよいだろう。

 また、最新のPC分野ではAI活用の拡大が注目されているわけだが、クリエイティブ用途や研究・開発分野でとくに重要となっており、現場のクライアント環境として利用されるノートPCや本機のようなコンパクトPCでも今後重視されることは確実だ。本機には、NVIDIAのAI技術が組み込まれた最新GPUが搭載されているため、きわめて小さなサイズながら、この点にも抜かりがない。ここではAI演算能力を「UL Procyon AI Inference Benchmark」で検証してみた。

UL Procyon AI Inference Benchmarkの計測結果(MAGNUS EN374070C vs. 比較対象PC)

 まず、NVIDIA TensorRTベースのテストでは、デスクトップ向けCPU/GPU搭載の自作PCに迫るものに。GPUの消費電力がフルスペックのRTX 3070のおよそ半分ということを考えれば、スコアも効率も十分な結果だ。

UL Procyon AI Inference Benchmarkの計測結果(CPU vs. GPU)

 また、Windows MLベースのテストでMAGNUS EN374070CのCPUおよびGPUのAI処理性能を比較してみたところ、結果は32bit 浮動小数点演算(float32)、整数演算(integer)のいずれでもCPUの結果をGPUが大幅に上回り、とくに浮動小数点演算は10倍に迫る差となった。

 いずれのテストともに本体サイズを考えれば大健闘の結果。ゲームと同様にフルスペックのGeForceとノート/モバイル向けGeForceで差が付くのは仕方のないところだが、CPU内蔵GPUではここまでの成果は期待できない。小ささだけを追求した超ミニPCには出せないスコアだ。

 MAGNUS EN374070Cが搭載するCore i7-13700HXは、ノートPC向けCPUの中ではハイエンドに近いモデルである。しかしAI処理をはじめとするクリエイティブワークでは、GPUによる処理が非常に効果的な局面が増えており、そんなときには、CPU内蔵GPUではGeForce RTX 4070 Laptop GPUのようなパワフルな外部GPUにはまったくかなわない。こうした「使い分け」も、CPU内蔵GPUを利用する一般的なミニPCにはない利点の一つである。

底面からメモリやM.2 SSDを拡張可能ノートにはない使い勝手が魅力

 性能検証の結果を見れば分かるとおり、性能面ではミドルレンジの自作PCにも勝るとも劣らない、優れたPCであることが分かる。このサイズ感のPCがここまでの性能を発揮できることには、正直驚くほかはない。

 また拡張性も高い。底面からアクセスできる基板面には、メモリスロットやM.2スロットを備えており、必要に応じて容量を拡張することでさまざまな業務に対応できる。システム用のSSDのほか、PCI Express 4.0 x4対応の高性能なM.2 SSDを1基「増設」できるため、大容量のファイルを扱う機会が多いクリエイティブ業務では、とくにメリットは大きいと感じられるはずだ。

背面で底面を固定している2本の手回しネジを外す
底面パネルを指で押すようにスライドさせて取り外す
底面が外れて内部にアクセスできるようになる。底面にはケーブルは接続されていなかった
底面からアクセスできる基板上にはメモリスロットやM.2スロットがある。DDR5 SO-DIMMスロットとM.2スロットが両方とも1基開いており、拡張は容易

 軽作業時は静かで使いやすく、そして負荷の高い作業では圧倒的な性能で業務をスピーディにこなすMAGNUS EN374070C。ノートPCのような外出先での利用は想定せず、可搬性は不要/最低限で大画面かつ高解像度のディスプレイとの組み合わせでより快適なPC環境を整えたい、コンパクトなPCを活かしたすっきりとしたワークスペースを構築したいが性能にも妥協したくない、ゲームやクリエイティブワーク、AI活用も想定したPC利用を考えている、などなど、幅広いユーザーにお勧めしたい“小さくても多芸多才”なデスクトップPCと言ってよいだろう。