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最新/最強のクリエイター用PCならRyzen 9 9950X搭載モデル、デュアル水冷の「サイコム Lepton Hydro WSX670A」

Ryzen 9 5950X搭載PCから買い替える価値あり、最新ワークステーションの実力 text by 坂本はじめ

サイコムのウルトラハイエンドワークステーション「Lepton Hydro WSX670A」。

 サイコムのLepton Hydro WSX670Aは、Ryzen 9000 シリーズとGeForce RTX 4080 SUPERを搭載した最新のワークステーション。CPUとGPUを独立した水冷クーラーで冷却する「デュアル水冷システム」を採用しており、その強力な冷却性能によってCPU/GPUのパフォーマンスを極限まで引き出すことをコンセプトとしている。

 今回はAMD最新のハイエンドCPUを搭載したデュアル水冷ワークステーションPCの実力を測るべく、Ryzen 9 5950XとGeForce RTX 3080を組み合わせた比較用PCを用意。数年前のハイエンドワークステーション相当の比較用PCに対し、サイコム最新モデルがどれほどの性能差を発揮するのか確かめてみよう。

AI・クリエイティブに強いワークステーション「サイコム Lepton Hydro WSX670A」

 サイコムのLepton Hydro WSX670Aは、ミドルタワーケースの「Antec P20CE」にサイコム独自のデュアル水冷システムを搭載したウルトラハイエンドワークステーション。

 AIやクリエイティブアプリでのパフォーマンスを重視して設計されており、AMD最新の16コア/32スレッドCPU「Ryzen 9 9950X」と、NVIDIAのハイエンドGPU「GeForce RTX 4080 SUPER」のほか、64GBのメインメモリを標準で搭載している。標準構成価格は580,280円。パーツ構成のカスタマイズ性はかなり高く、CPUやSSD、メモリなどはもちろん、マザーボードやCPU用水冷クーラーなどもリストから選ぶことができる。

筐体にはミドルタワー型ケースのAntec P20CEを採用。フロントパネル全面に通気口が設けられており、内部のファンで外気を取り込んでいる。
背面側。マザーボードやビデオカードのインターフェイスにアクセスできる。
左側面。通気口のない金属製パネルを採用。
右側面。左側面と同じく、通気口のない金属製パネルを採用している。

 Lepton Hydro WSX670Aのケースに採用されているAntec P20CEは、220×490×469mm(幅×高さ×奥行)のミドルタワーケース。E-ATX規格のマザーボードにも対応する収容能力に優れたPCケースで、黒を基調としたマットカラーで塗装された筐体にはハイエンドワークステーションにふさわしい重厚感がある。

 天板には電源スイッチやUSBポートが配置されており、USB 3.2 Gen 2接続に対応したUSB Type-Cポートも装備。マザーボードにASRock X670E Steel Legendを採用する標準構成では、USB Type-CポートでUSB 3.2 Gen 2x2接続(20Gbps)が利用可能。高速な外付けSSDやカードリーダーを使用する機会の多いユーザーは重宝するだろう。

天板。マグネット固定式ダストフィルターを備えた通気口が設けられている。
天板には電源スイッチとリセットスイッチのほか、USB Type-C、USB 3.2 Gen 1(Type-A×2)、音声入力、音声出力が配置されている。
ASRock X670E Steel Legendを搭載する標準構成なら、フロント側のUSB Type-Cポートで20Gbps接続(USB 3.2 Gen 2x2)が可能。外付けSSDなどと大容量ファイルをやり取りする機会の多いユーザーにはありがたい装備だ。
シーケンシャルの速度はしっかり2GB/s以上出ているので、性能面でも積極的に使っていける。
OSは標準でWindows 11 Proを搭載。
ゲーミングPCはWindows 11 Home搭載モデルが多いが、業務用途を想定してWindows 11 Proが採用されている点もワークステーションらしいポイント。

CPUとGPUを独立した水冷ユニットで冷却するサイコムの「デュアル冷却システム」ケースファンをNoctua製品で統一したサイコムのこだわり

 Lepton Hydro WSX670Aは、CPUとGPUにそれぞれ独立したオールインワン水冷クーラーを搭載するサイコム独自の「デュアル冷却システム」を採用している。

サイドパネルを外したLepton Hydro WSX670Aの内装。CPUとGPUが水冷化されている様子が確認できる。

 使用しているのは、オールインワン水冷クーラーのOEMメーカーとして名高いASETEK製の240mmラジエーター搭載ユニットで、サイコムはこのASETEK製水冷ユニットにNoctua製の冷却ファンを組み合わせた独自の構成でCPUとGPUを水冷化。静粛性と冷却性能の両方を追及したサイコムのこだわりが感じられる冷却システムだ。

CPUクーラーはASETEKの240mm水冷「624S-M2」を採用。ラジエーターはケースの天面に配置されている。
CPUクーラーのラジエーターは、Noctuaの12cmファン「NF-F12 PWM」を2基搭載。ケースの排気ファンを兼ねている。
GPUクーラーにもASETEKの240mm水冷「Hybrid GFX 240mm LCS」を採用。ラジエーターはケースの前面に配置されている。
GPUクーラーのラジエーターは、Noctuaの12cmファン「NF-A12x25 ULN」を2基搭載。ケースの吸気ファンを兼ねている。

 また、Lepton Hydro WSX670Aは、ケースの前面と背面にもNoctua製の冷却ファンを独自に搭載。合計6基のNoctua製ファンにより、ケースの前面から吸気して背面と天面から排気するエアフローが構築されている。

 けして安価なわけではないASETEKとNoctuaの製品を積極的に採用したLepton Hydro WSX670Aの冷却システムからは、冷却の「質」に対するサイコムのこだわりが感じられる。これがRyzen 9 9950XとGeForce RTX 4080 SUPERをどれだけ静かに冷やせるのかにも注目だ。

ケース前面には、Noctuaの12cmファン「NF-A12x25 LS-PWM」を搭載(最下段)。GPUクーラー用の2基とともに吸気ファンとして機能する。
ケース背面に搭載されているNoctuaの12cmファン「NF-A12x25 PWM」は、ケース内の空気を排出する排気ファンとして機能している。

サイコム最新のハイエンドワークステーションを旧世代PCと比較Ryzen 9 5950Xからの進化は如何ほど?

 ここからは、Lepton Hydro WSX670Aのパフォーマンスをベンチマークテストで検証する。

 冒頭でも紹介した通り、Ryzen 9 5950XとGeForce RTX 3080を搭載した比較環境を用意。数年前であれば「ハイエンドワークステーション」と呼ばれたであろうRyzen 9 5950X環境との比較を通して、Lepton Hydro WSX670Aが性能面でどれだけ進化したのか確かめてみよう。

 なお、今回のテストではLepton Hydro WSX670Aと比較環境の双方ともに、Ryzen系CPUのパフォーマンスが改善するとされるWindows 11のアップデート「KB5041587」を適用してテストを実行している。

Ryzen系CPUのパフォーマンスを改善するというWindows 11のアップデート「KB5041587」を適用している。
定番ベンチマークやクリエイター用アプリケーション、ゲームなどを使用して性能をテスト。

Cinebench 2024

 Cinebench 2024は、CPUとGPUの3DCGレンダリング性能を計測するベンチマークソフト。

 Lepton Hydro WSX670Aは、CPUのマルチコア性能を計測する「CPU (Multi Core)」で「2,155pts」、シングルコア性能を計測する「CPU (Single Core)」で「132」、GPUテストでは「27,813pts」を記録した。

 いずれのスコアもRyzen 9 5950XとGeForce RTX 3080を搭載する比較環境のスコアを圧倒しており、CPU (Multi Core)で約64%、CPU (Single Core)で約35%、GPUで約111%も上回っている。CPUの進化もさることながら、GPU性能もかなり向上していることが分かる。

Cinebench 2024「CPU (Multi Core)」
Cinebench 2024「CPU (Single Core)」
Cinebench 2024「GPU」

3DMark「CPU Profile」

 処理に使用するCPUスレッド数ごとに性能を計測する3DMark「CPU Profile」のスコアを、Ryzen 9 5950Xを搭載する比較環境を基準に指数化したものが以下のグラフ。

 Ryzen 9 9950Xを搭載するLepton Hydro WSX670Aは、比較環境を34.0~47.2%上回っている。極端な高負荷や低負荷だけでなく、中程度の負荷でもRyzen 9 5950Xを明確に上回るRyzen 9 9950Xは、そのような負荷の処理が発生しやすいクリエイティブアプリの編集処理などでも高いパフォーマンスが期待できそうだ。

3DMark「CPU Profile」

Blender Benchmark

 3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークテスト「Blender Benchmark」では、CPUとGPUでそれぞれテストを実行した。

 CPUを使ったテストの結果、Lepton Hydro WSX670Aが搭載するRyzen 9 9950XはRyzen 9 5950Xを58~71%上回るスコアを記録している。このテストはすべてのCPUコアを活用して処理を行うため、この結果はRyzen 9 9950Xのマルチコア性能がRyzen 9 5950Xを大きく上回っていることを示すものだ。

Blender Benchmark「CPU」

 GPUを使用してレンダリングを行った場合、Lepton Hydro WSX670Aが搭載するGeForce RTX 4080 SUPERは比較環境を63~109%も上回った。型番的には同じ80系で1世代の差しかないGeForce RTX 4080 SUPERとGeForce RTX 3080だが、パフォーマンスは型番から受ける印象以上に大きく向上している。

Blender Benchmark「GPU」

Adobe Camera Raw「AIノイズ除去」

 Adobe Camera Rawの「AIノイズ除去」は、デジタルカメラで撮影したRAWファイルに対してAIベースのノイズ処理を行うもので、その効果の高さが評価されている機能だ。今回は2,400万画素のRAWファイル×20枚に一括でAIノイズ除去を実行した際の処理時間を計測した。

 Lepton Hydro WSX670Aの処理時間は「71.3秒」で、「100.9秒」を要した比較環境の処理速度を約42%も上回った。AIノイズ除去は主にGPUで処理を行う機能であり、GeForce RTX 4080 SUPERのAI処理性能が前世代を大きく上回るものであることが示された結果と言える。

Adobe Camera Raw「AIノイズ除去」

UL Procyon「Photo Editing Benchmark」(Photoshop/Lightroom Classic)

 実際のアプリケーションを使用してPCの性能を計測できるベンチマークテスト「UL Procyon」で、AdobeのPhotoshopとLightroom Classicを使用する「Photo Editing Benchmark」を実行した結果が以下のグラフ。

 AdobeのアプリケーションでフォトレタッチやRAWのバッチ処理の性能を計測するこのテストにおいて、Lepton Hydro WSX670Aが記録したスコアは「10,007」で、比較環境の「7,654」を約31%上回った。

UL Procyon「Photo Editing Benchmark」

UL Procyon「Video Editing Benchmark/Video Editing Benchmark/GPU Acceleration」(Premiere Pro)

 UL Procyonの「Video Editing Benchmark」は、Adobeの映像編集ソフト「Premiere Pro」を使用して映像編集作業でのパフォーマンスを計測する。今回は、CPU処理がベースの標準テストに加え、GPUを積極的に活用する「GPU Acceleration」版のテストも実行した。

 標準テストにおいてLepton Hydro WSX670Aが記録したスコアは「11,610」で、比較環境の「7,970」を約46%上回った。一方、GPU Acceleration版のテストでLepton Hydro WSX670Aが記録したスコアは「57,809」で、比較環境の「42,847」を約35%上回った。映像編集の分野でも高いパフォーマンスが得られることは間違いない。

UL Procyon「Video Editing Benchmark」
UL Procyon「Video Editing Benchmark/GPU Acceleration」

サイバーパンク2077

 サイバーパンク2077はCPUとGPUへの負荷が高いことで知られるゲームの一つ。今回は4K/2160p解像度にて、グラフィックプリセット「レイトレーシング:ウルトラ」をベースにDLSS超解像を「パフォーマンス」に設定してベンチマークモードを実行した。なお、Lepton Hydro WSX670AではDLSS 3によるフレーム生成を有効にした際の結果の計測している。

 Lepton Hydro WSX670Aがベンチマークモードで記録した平均フレームレートは、フレーム生成なしで「84.15fps」、フレーム生成有効時は「122.04fps」だった。フレーム生成非対応の比較環境は「55.56」であり、フレーム生成なしでも約1.5倍、フレーム生成有効時は約2.2倍のフレームレートに達している。

 Lepton Hydro WSX670AはワークステーションであってゲーミングPCでは無いが、Ryzen 9 9950XとGeForce RTX 4080 SUPERの組み合わせはこのようにゲームでも高いパフォーマンスを得ることができる。

サイバーパンク2077

サイコムこだわりの「デュアル水冷システム」の冷却性能をチェック

 Lepton Hydro WSX670Aが搭載する「デュアル水冷システム」の冷却性能を確かめるべく、性能計測に用いたテストの中でも特に負荷の高いCinebench 2024の「CPU (Multi Core)」と「GPU」、「サイバーパンク2077」の3つで、CPUとGPUの動作温度を計測してみることにした。

 計測に用いるソフトは「HWiNFO64 Pro」で、テスト時の室温は約25℃。Cinebench 2024に関しては標準の「最低実行時間10分」で実行し、サイバーパンク2077は性能計測時と同じグラフィック設定で30分間連続実行した。

サイコムがこだわりを持って構築した冷却システムの性能を確認。

 動作温度の計測結果をまとめたものが以下のグラフ。Lepton Hydro WSX670Aにおいて、Ryzen 9 9950XとGeForce RTX 4080 SUPERの温度リミットはそれぞれ「95℃」と「83℃」に設定されているのだが、CPU温度は最大でも「88.9℃」、GPUも最大「62.8℃」にとどまっており、サーマルスロットリングは発生していない。

CPU/GPU温度

 消費電力と発熱が増大している最近のハイエンドCPU/GPUにおいて、高負荷時に温度リミットに到達してサーマルスロットリングが作動するというのは異常な動作ではないが、サーマルスロットリングが作動すれば動作クロックが引き下げられて性能が低下してしまう。

 その点、Lepton Hydro WSX670Aのデュアル水冷システムはCPUとGPUの動作温度をリミット以下に保つことで最大限の性能を引き出すことに成功している。また、CPU/GPUの両方に長時間にわたって高負荷をかけ続けるサイバーパンク2077でも安定した動作温度を維持している様子から、ケースファンによる換気能力を含めた冷却システム全体の冷却性能が優れたものであることが分かる。

Cinebench 2024「CPU (Multi Core)」実行中のモニタリングデータ
Cinebench 2024「GPU」実行中のモニタリングデータ
サイバーパンク2077実行中のモニタリングデータ

 これだけ優秀な冷却性能を発揮しながらも、Lepton Hydro WSX670Aの冷却システムは静粛性にも優れている。

 ケース本体から約40cm離れた位置に設置した騒音計で計測した騒音値をまとめたものが以下のグラフで、もっとも大きな音が発生したCinebench 2024「CPU (Multi Core)」実行中でも騒音値は40.6dBAで、CPU/GPUともに高負荷がかかるサイバーパンク2077実行中は39.8dBAだった。

 無音というほどではないものの、ハイエンド級のCPUとGPUからあれだけの性能を引き出している状況でこの程度の騒音値に抑えられているのは、デュアル水冷を核とするLepton Hydro WSX670Aの冷却システムが優れたものであることの証左だ。

騒音値

サイコムのBTO PCはカスタマイズ設定をURL保存可能SNSやメールでのシェアにも対応

 サイコムのBTO PCは、パーツの型番まで選べるカスタマイズオプションを提供しており、ハイエンドワークステーションであるLepton Hydro WSX670Aにも多数のカスタマイズオプションが用意されている。

豊富なカスタマイズオプションにより、細部にまでこだわったオーダーが可能

 選択したオプションに応じて合計金額が即座に計算されるため、予算と相談しながら構成を検討することができるのは便利なのだが、Lepton Hydro WSX670Aのように高価なPCを購入するとなれば時間をかけて構成を吟味したいところ。

 そんな時に便利なのがカスタマイズ状況の保存機能だ。サイコムのウェブサイトには選択したパーツ構成をURLで保存する機能が用意されており、クリップボードにURLをコピーしたり、XやメールアドレスにURLを送信したりできる。パーツ構成を後日再検討したい場合や、おすすめの構成をシェアするのに活用したい。

ページ最下部にカスタマイズ状況をURLで保存する機能が用意されている
Xでカスタマイズ設定URLをシェアできる
任意のメールアドレスにURLを送信できる

 また、今回レビューしている「Lepton Hydro WSX670A」を対象に特別な割引も実施。PCの構成を決めてカスタマイズ画面から確認画面に進んだ際にクーポンコードを入力する欄があり、この欄にクーポンコードの「APH_LPH2024」を入力すると、5,000円引きになる「Akiba PC Hotline特別割」が適応される。こちらの割引も、利用期限は12月1日(日)までとなっている。

※10/2追記
 本記事でレビューしている「Lepton Hydro WSX670A」のX870マザーボード搭載版にあたる「Lepton Hydro WSX870A」でもクーポンコードは利用可能。10月21日(月)まではメモリアップグレードキャンペーンも併用できる。

12月1日(日)までクーポンコードを入力することで、Lepton Hydro WSX670は5,000円引きになるAkiba PC Hotline特別割も適応可能。

デュアル水冷で最新CPU/GPUの性能を引き出すサイコムのワークステーションRyzen 5000シリーズからの乗り換えにも好適

 サイコムのLepton Hydro WSX670Aは、デュアル水冷システムによってRyzen 9 9950XとGeForce RTX 4080 SUPERを見事に冷やしきり、最大限の性能を引き出すことに成功している。静粛性も上々で、性能と品質の両面で優れたワークステーションであると言える。

 今回、比較環境としてRyzen 9 5950XとGeForce RTX 3080という、過去のハイエンドワークステーション級の機材を用意したが、Lepton Hydro WSX670Aはすべてのテストでこれを圧倒してみせた。この世代以前のPCを使っているクリエイターであれば乗り換えによる性能向上を実感できるだろう。

 また、Lepton Hydroシリーズは、Intel Core プロセッサー(第14世代)搭載モデルやAMD Ryzen Threadripper PRO 7000 WXシリーズ搭載モデルなど、採用CPUが異なるバリエーションモデルのほか、小型モデルの「Lepton Hydro Cube」などのラインアップも用意されている。クリエイター用のモデルを選ぶ際は、今回紹介したLepton Hydro WSX670Aと合わせチェックしてもらいたい。