トピック
低発熱&高性能で人気のCore Ultra 7 265Kにはこの白マザー!MSI「MPG Z890 EDGE TI WIFI」を試す
高負荷でも超安定動作、NPUオーバークロックの効果は? text by 芹澤 正芳
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- MSI
2024年12月13日 00:00
2024年10月25日より発売がスタートしたIntelの最新CPU「Core Ultra 200S」シリーズ。それに対応するZ890チップセットを搭載するマザーボードが多数発売されている。その中でもアッパーミドルからハイエンド構成かつホワイトカラーでの自作にピッタリなのがMSIの「MPG Z890 EDGE TI WIFI」だ。堅牢な電源回路、基板も付属のWi-Fiアンテナも白いというこだわり、パーツを着脱しやすいEZ DIYなど見どころは多い。
本稿では、ハードウェアの解説に加えて、Core Ultra 7 265Kをパワーリミットを定格の250Wと無制限で動作させたときの消費電力や電源回路(VRM)の温度、動作クロックの推移などを交えたテストの結果をお届けしよう。NPUのオーバークロック機能も試してみた。
16+1+1+1フェーズの堅牢電源のホワイトカラー
MSIの「MPG Z890 EDGE TI WIFI」は、Z890チップセットを搭載するマザーボードだ。最大の特徴は“アッパーミドル仕様でホワイトカラー”であること。最近ではホワイトカラーのマザーボードは増えているが、比較的ミドルからエントリーグレードの製品が多め。一方の本機は、16+1+1+1フェーズの堅牢な電源回路を採用するアッパーミドルクラスの製品。CPU用の16フェーズは90A SPSを組み合わせており、最上位CPUも安心してフルパワーで運用できる構成だ。
電源回路の冷却周りもヒートパイプで連結された巨大な二つのヒートシンクを搭載。接地面には7W/mKと熱伝導率の高いサーマルパッドが取り付けられており、効率よく電源回路の熱を伝えられるようになっている。サーバーグレードの8層基板に2オンス銅層を設けている点もハイエンド並と言えるポイント。ホワイトカラーでここまでゴージャスな仕様は珍しい。
また、ヒートシンクや基板に加えて、Wi-Fiアンテナやケーブルまでしっかりとホワイトカラーでまとめられている。ビデオカードやM.2 SSDを着脱しやすくしたり、簡単にUEFIを更新できるボタンを備えるなど、随所にMSIが掲げる“EZ DIY”を取り入れているのも特徴だ。
Core Ultra 7 265Kで挙動をチェックする
ここからは、Core Ultra 7 265Kを使ってUEFIメニューの注目機能や実際に動作させたときの温度、クロック、消費電力などをチェックしていこう。
Core Ultra 7 265Kは、最上位のCore Ultra 9 285Kに対してコア数はEコアが4基少ないが、これだけの差で価格は4万円以上安くなる。Core Ultra 200Sシリーズの中では一番の良コスパでは?と目されている存在だ。ビデオカードにはGeForce RTX 4070 Tiを選択し、アッパーミドル環境での利用を想定している。
CPU | Intel Core Ultra 7 265K (20コア20スレッド) |
メモリ | DDR5-6400 32GB (PC5-51200 DDR5 SDRAM16GB×2) |
ビデオカード | NVIDIA GeForce RTX 4070 Ti |
システムSSD | M.2 NVMe SSD 2TB (PCI Express 4.0 x4) |
CPUクーラー | 簡易水冷クーラー(36cmクラス) |
電源 | 1,000W(80PLUS Gold) |
OS | Windows 11 Pro(23H2) |
UEFIは、初回起動時に定格動作となる「Intel Default Settings」をはじめ、「MSI Performance Settings」、「MSI Extreme Settings」、「MSI Unlimited Settings」の4種類から選択する。それぞれ設定されるパワーリミットなどが異なる形だ。以前はCPUクーラーに合わせて選択する方式だったが変更となった。Intel Default Settings以外は不安定になるリスクがあることの警告文も表示される。この設定は後からでも変更が可能だ。
メモリはシングルランクが2枚ならDDR5-9200の超高クロックまでサポートしている。最大256GBまで搭載が可能だ。このほか、OSインストール後、ネットワークに接続されていると、自動的にマザーボードのドライバ類を導入できるユーティリティが起動する「MSI Driver Utility Installer」、NPUの性能を向上させる「AI Boost」と言った機能も備わっている。
では、Core Ultra 7 265Kを組み込んだ場合の挙動を追ってみよう。MSI Performance Presetは、定格250W(Intel Default Settings)と無制限(MSI Unlimited Settings)の2種類でテストする。メモリはDDR5-6400駆動、簡易水冷のファン設定はiCUEアプリで「最速」とした。「Cinebench 2024」のMulti Coreテスト、「サイバーパンク2077」(フルHD、画質“レイトレーシング:ウルトラ”、DLSS“バランス”)をそれぞれ10分間実行したときのCPU温度、VRM(電源回路)温度、Pコアの実行クロック、CPUの消費電力の目安となるCPU Package Powerおよびシステム全体の消費電力をチェックする。
なお、各データの取得には「HWiNFO Pro」アプリを使用し、CPU温度は「CPU Package」、VRM温度は「MOS」、Pコアの実行クロックは「P-core 0 T1 Effective Clock」、CPU Package Powerは同じ名称の「CPU Package Power」という項目を追った結果だ。システム全体の消費電力はラトックシステムの電力計「REX-BTWATTCH1」を使用している。室温は23℃だ。
Core Ultra 200Sシリーズは電力効率の高さを特徴としているだけに、全コアに負荷をかけるCinebench 2024でも平均で約71℃と低め。ポイントはパワーリミット無制限にしてもほとんど変化がないことだ。前世代(第14世代)はパワーリミットを無制限にすると性能が向上する代わりにCPU温度もリミットの100℃まで到達することが多かっただけに、かなり落ち着いた動作になったと言える。サイバーパンク2077は全コアがフルに動くわけではないので55℃前後で推移と、実に穏やかな値となっていた。
VRMの温度はどれもそれほど変わらない。定格動作のサイバーパンク2077が一番低いが、どれも最大で45℃以下と非常に低い。電源回路のヒートシンクに実際触ってもほんのり温かいかな? としか感じないレベルだ。Core Ultra 7 265Kは20コアもあるが、それがフルに動いてもビクともしない電源回路と言える。長時間負荷の高い状態が続いても余裕だろう。
次はPコアのクロック推移だ。Cinebench 2024はパワーリミットは定格でも無制限でも5.1GHz前後で推移とまったく変わらず。サイバーパンク2077はシーンによってCPU負荷が変わるのでちょっと安定しないが、それでも平均するとどちらも3.8GHz前後だ。MPG Z890 EDGE TI WIFIにおいては、パワーリミット無制限にしてもほぼ変わらないと言ってよいだろう。筆者の見た限り、Z890搭載マザーボードはこのような挙動が多い。ただ、今後のアップデートによってパフォーマンス向上の調整が入ると言われている。そうなった場合、どう変化するのかちょっと楽しみだ。
次に消費電力関連をチェックしよう。CPU Package PowerはCPU単体の消費電力の目安だ。HWiNFO Proでの数値ではあるが、Cinebench 2024は定格でも無制限でも170W前後で推移。全コアがフルに動いても上限の250Wに到達していない。定格だとリミットの上限近くで動作することが多かった前世代に比べると、かなり消費電力が下がったのが分かる部分だ。サイバーパンク2077では93W前後での推移となっている。
システム全体の消費電力で見ても定格と無制限でほとんど変わらなかった。注目はサイバーパンク2077時の消費電力だろう。GeForce RTX 4070 Tiとの組み合わせとしてはかなり低め。CPUの消費電力が低いことがここでも分かる。
5基のM.2スロットと3基の拡張スロットを搭載
そのほかの部分もチェックしよう。M.2スロットは全部で5基とストレージの拡張性は優秀だ。CPUソケットに近い2基はCPU直結で、1基はPCI Express Gen 5 x4、もう1基はGen 4 x4だ。残りはチップセット経由の接続でいずれもGen 4 x4対応。すべてのM.2スロットにヒートシンクが搭載されており、特にGen 5対応は両面にサーマルパッドを搭載、ヒートシンクも分厚く、冷却を強化している。
PCI Express x16スロットは2基あるが、CPUに近いほうがPCI Express Gen 5対応。もう1基はGen 4でx4動作だ。Gen 4対応のPCI Express x1スロットも1基あり、高い拡張性が確保されている。また、Gen 5対応のPCI Express x16スロットから、次のx1スロットまで3スロット分以上のスペースがあり、大型のビデオカードを取り付けても拡張スロットが埋まらないのはよいところだ。
バックパネルのUSBは、Thunderbolt 4が2ポート、USB 10Gbps(Type-C)が1ポート、USB 10Gbpsが4ポート、USB 5Gbpsが2ポート。内蔵GPU用の映像出力としてHDMIを搭載するほか、。Thunderbolt 4からも出力できる。また、PCケースのUSBポート用として、USB 20Gbps Type-Cが1ポート分、USB 5Gbpsが2ポート分、USB 2.0が4ポート分をUSBピンヘッダーでそれぞれ用意する。ネットワーク機能は、有線LANが5G LAN、無線LANはWi-Fi 7(最大5.8Gbps)でBluetooth 5.4もサポートする。
M.2、PCI Express拡張カード、USB、ネットワーク類の種類と数は、万全の拡張性と言ってよいものだろう。
Core Ultra 7 265Kでの性能をテスト! NPUのOCもやってみた
それでは、Core Ultra 7 265Kを使用した際の性能をベンチマークテストでチェックしておこう。温度やクロックのテストと同じく、パワーリミットは定格250Wと無制限の2種類でテストする。まずはCPUパワーを測る「Cinebench 2024」、PCの基本性能を測る「PCMark 10」、3D性能を測る「3DMark」を実行しよう。
Cinebench 2024は、Core Ultra 7 265Kとして順当なスコアだ。しっかりと性能を引き出せている。ただ、定格と無制限では誤差レベルの差だった。温度やクロックの推移がほとんど同じだったので、当然と言えば当然の結果。PCMark 10でも3DMarkでも同様の傾向だ。ちなみに、3DMarkはFire StrikeやTime SpyでGeForce RTX 4070 Tiのほぼアベレージスコアを出しているので、Core Ultra 7 265Kであれば、現行のアッパーミドルクラスのビデオカードの性能は問題なく引き出せると言ってよいだろう。
実際のゲームではどうだろうか。サイバーパンク2077のゲーム内のベンチマーク機能を利用してフレームレートを測定した。CPUの差を出やすくするため、画質は低く設定した。アップスケーラーやフレーム生成は利用していない。
こちらも誤差レベルの差だった。原稿執筆時点では、パワーリミット無制限するメリットは見られなかった。Intel Default Settingsで運用するのがよいだろう。
最後にUEFIに用意されているNPUの性能を向上できるという「AI Boost」を試してみよう(オーバークロック動作になるので利用は自己責任となる点には要注意)。ベンチマークとしては、複数のAI推論エンジンを使ってNPUの性能を測定できる「UL Procyon AI Computer Vison Benchmark」を用意した。
約7.8%のスコア向上とそれなりの効果があった。Core Ultra 7 265K搭載のNPUはそれほど高性能ではないが、今後NPU対応のアプリが増えて、処理速度をちょっとでもアップしたいというシーンが登場すれば、おもしろいかもしれない。
ホワイトカラーでスペック充実の希少な存在
20コアCPUをフルに動作させてもビクともしない強力な電源回路に5基のM.2スロットなど高い拡張性を持ち、SSDやビデオカードの着脱もしやすいとあらゆる面が充実しながら、さらにホワイトカラーと、性能/機能性の面でもデザイン/演出の面でもMPG Z890 EDGE TI WIFIは希少な存在だ。白統一でハイエンドなゲーミングPCを自作したいと考えているなら、真っ先に候補にしてよいマザーボードと言える。