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ゲームもクリエイティブもAIも!全方位に強い新時代ゲーミングノートPC、MSI「Stealth A16 AI+ A3XWシリーズ」

薄型ボディにRyzen AI 7 350とGeForce RTX 5070 Ti Laptop GPUを搭載 text by 芹澤 正芳

 “AI”が昨今のPC活用の重要キーワードだが、AI分野を支える機能として、多くのPCユーザーにはまだ若干浸透度が低いNPU。その一方で、最新のノートPCではNPU搭載が着実に進んでいる。今回紹介する「Stealth A16 AI+ A3XWシリーズ」もそんなNPU搭載ノートの一つだ。

 本稿では、NPU&RTX 50搭載で、AI、ゲーム、クリエイティブに強い、新世代PCを紹介する。

高性能なCPU、GPU、NPUの搭載で幅広い用途に対応できるMSIの新ゲーミングノートPC「MSI Stealth A16 AI+ A3XWシリーズ」。複数バリエーションのある本シリーズだが、今回はStealth-A16-AI+A3HWHG-6459JPを試用した。実売価格は38万7,000円前後

高性能NPU搭載のRyzen AI 7 350とRTX 5070 Tiで高い汎用性を実現

 MSIのゲーミングノートPCである「Stealth」シリーズは、薄型・高性能が大きな特徴。最新の「MSI Stealth A16 AI+ A3XWシリーズ」では、スリムなボディはそのままに、ゲーミング性能はもちろん、クリエイティブワークやAI処理にも強く、汎用性の高さを大幅に向上させてきている。用途を選ばず長く相棒になってくれる1台だ。

 まず、CPUにはAMD最新世代であるZen 5アーキテクチャを採用する「Ryzen AI 7 350」を搭載。8コア(Zen 5×4、Zen 5c×4)16スレッドで最大5GHz動作と、ノートPC用として十分以上に高性能なスペックを持ち、さらに50TOPSと高いAI処理性能を持つNPUを内蔵している。AI世代のWindowsノートPCの基準「Copilot+ PC」の要件である40TOPSを満たしており、これからのAI機能に対する備えも万全と言ってよいだろう。TDPは15~54Wで対応メモリはLPDDR5X-8000/DDR5-5600。今回試用したモデルにはLPDDR5X-7500が32GB搭載されていた。

CPU-Zでの表示。CPUには8コア16スレッドの「Ryzen AI 7 350」を搭載。ブーストクロックは5GHzだ
「Copilot+ PC」の要件(40TOPS)を満たす50TOPSの高性能NPUを内蔵
Microsoft 365 CopilotがNPUによるローカル処理に対応予定など、高性能なNPUを活用できるシーンは今後増えていく
Windowsスタジオエフェクトでは、NPUを活用してWebカメラの映像に対してCPU、GPUに負荷をかけることなく背景のぼかしなどを行える

 ゲーミングノートの心臓部と言えるGPUは、NVIDIA最新世代の「GeForce RTX 5070 Ti Laptop GPU」を搭載。アッパーミドルクラスの位置付けでCUDAコア5,888基、ビデオメモリGDDR7 12GB、AI性能992TOPSとなっている。前世代で近いグレードのGeForce RTX 4070 Laptop GPUがCUDAコア4,608基、ビデオメモリGDDR6 8GB、AI性能321TOPSだ。RTX 50シリーズはAI性能を強化しているのが特徴だが、それがよく分かる。また、最新のAAA級タイトルではビデオメモリが8GBでは足りないシーンが増えているだけに、高速なGDDR7を12 GB搭載しているのは非常に頼もしいところだ。

 なお、GeForce RTX 5070 Ti Laptop GPUはノートPCの設計に合わせてカード電力を50~115W、ブーストクロックを1,447~2,220MHzの範囲で調整できるようになっているが、本機は105W、1,762MHzとやや高めの設定になっていた。スリムボディだけに性能と冷却のバランスを取った調整と言えそうだ。

カード電力105W、ブーストクロックは1,762MHzに設定されていた。ビデオメモリが12GBとノートPC用としては大容量だ

 ストレージはPCI Express 4.0 x4接続のNVMe SSDで容量は1TBだ。CrystalDiskMark 8.0.6シーケンシャルリードで6941.82MB/s、ライト4480.23MB/sと十分高速と言える結果を見せた。ゲーム用途で不満を感じることはないだろう。

ストレージの速度を測るCrystalDiskMark 8.0.6の結果。PCI Express 4.0 x4接続のNVMe SSDとして十分高速と言える結果だ

 ディスプレイも注目だ。16型で解像度2,560×1,600ドットのOLED(有機EL)パネルを採用。リフレッシュレートは240Hzだ。色の再現性は広い色域を求められるデジタルシネマ向けの「DCI-P3」規格相当と非常に高いもの。さらに、きわめて暗い黒を求められるDisplayHDR True Black 600認証も取得しており、HDR対応のゲームや映像コンテンツを快適に楽しめる。また、True Colorアプリによって表示モードをsRGBやAdobeRGBなどに容易に変更できるため、クリエイティブワークに対応しやすいのもポイントだ。

ディスプレイは16型で解像度は2,560×1,600ドット
リフレッシュレートは最大240Hz
True Colorアプリによって表示する色域をsRGBやAdobeRGBに設定できる

 このほか、ディスプレイ上部にはシャッター付きのWebカメラ(207万画素)、マイクを搭載。インターフェースは左側面に2.5Gの有線LAN、HDMI出力、USB 3.2 Gen 2、右側面にUSB 3.2 Gen 2、USB4、ヘッドセット端子を用意。ワイヤレス機能は、Wi-Fi 7とBluetooth 5.4を搭載している。

上部には物理シャッター付きのWebカメラとマイクも搭載
ディスプレイはほぼ180度開く。対面での打ち合わせやプレゼンでも使いやすい
左側面に2.5Gの有線LAN、HDMI出力、USB 3.2 Gen 2
右側面にUSB 3.2 Gen 2、USB4、ヘッドセット端子

 キーボードは日本語配列。ゲーミングブランドとして知られるSteelSeries製のPer-Key RGB ゲーミングキーボードを採用しており、SteelSeries GGアプリによってRGBバックライトをキーごとにライティング制御が可能。各キーにマクロやショートカットの割り振りもできるとカスタマイズ性に優れている。ゲーミングキーボードらしいカチカチッとした打鍵感もナイスだ。

キーボードは日本語配列だ。テンキーも付属しているためビジネス用途にも対応しやすい
キーボードにはRGBバックライトも備わっている
ライティングはSteelSeries GGアプリによってキー個別に行うことも可能だ

 本体のサイズは、355.8×259.7×19.95mmで重量は約2.1kg。最も厚い部分でも20mmを切っているのはスペックから考えるとかなりの薄型ボディだ。ACアダプターは240Wと大出力だけにサイズはやや大きめではある。

 なお、本機はUSB4経由による給電/充電にも対応しているので、外出時の荷物を減らしたい(=スマホなどと共用にしたい)ということであれば、専用のACアダプターではなく、コンパクトなものもあるUSB PD対応のアダプターを持ち運ぶ、という選択肢もある。ただし出力には注意が必要で、バッテリーを充電するには、システム稼働中/スリープモード中で100W、休止状態/電源オフ中で65W以上のUSB PDが必要になる。

ACアダプターは240W出力ということもあって、そこそこ大きい

マルチフレーム生成に対応するRTX 5070 Ti Laptop GPUの性能に注目

 ここからはベンチマークテストに移ろう。本機はMSI Centerアプリに複数の動作モードが用意されている。ここでは、最上位のエクストリームに設定してテストを行った。

動作モードはMSI Centerアプリでエクストリームに設定してベンチマークを実行した

 まずは、CGレンダリングでCPUパワーを測定する「Cinebench 2024」、PCの基本性能を測る「PCMark 10」を実行した。

Cinebench 2024の計測結果
PCMark 10 Standardの計測結果

 Cinebench 2024のMulti Core、Single CoreのスコアともRyzen AI 7 350として優秀なスコアを出しており、性能をしっかり引き出せている。PCMark 10のスコアも総じて高く、特にクリエイティブ系のDigital Content Creationは高スコアだ。高性能なCPUとGPUの両方が効いている。クリエイティブワークも十分こなせると言ってよいだろう。

実ゲームに移ろう。今回はディスプレイが画面比率16:10の2,560×1,600ドットなので、それに合わせて2,560×1,600ドット、1,920×1,200ドットの2パターンで測定した。用意したのはアップスケーラーやフレーム生成を使わないタイトルとして定番FPSの「オーバーウォッチ2」、DLSSによるアップスケーラーとフレーム生成に対応したタイトルとして人気のハンティングアクション「モンスターハンターワイルズ」、DLSSによるアップスケーラーとマルチフレーム生成に対応したタイトルとして「サイバーパンク2077」だ。

オーバーウォッチ2はbotマッチを実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定した。モンスターハンターワイルズは公式ベンチマークを利用。サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を利用している。サイバーパンク2077はRTX 50シリーズだけで使えるマルチフレーム生成に対応したタイトルなので結果に注目したいところだ。

オーバーウォッチ2の結果
モンスターハンターワイルズ ベンチマークの結果
サイバーパンク2077の結果

 どのゲームも2,560×1,600ドットかつ最高画質設定で快適にプレイできるフレームレートを出している。モンスターハンターワイルズの最高画質設定はかなり描画負荷が高く、ビデオメモリ容量も要求されるが平均91.2fpsと高いフレームレートを出した。ここはビデオメモリを12GB搭載しているのが効いていると言ってよいだろう。また、サイバーパンク2077はすべての光源の経路(パス)を再現するパストレーシングを有効化した強烈に負荷の高い設定だがマルチフレーム生成の威力もあって平均109.9fpsとなめらかな描画で楽しめる。

 本機ならば、相当な描画性能を求めるゲームが登場しても当分は快適に遊べるパワーがあると言ってよいだろう。

 クリエイティブ系のベンチマークも試しておこう。動画編集では、実際にAdobeのPremiere Proを動作させてさまざまな処理を行うProcyon Video Editing Benchmark、画像編集ではAdobeのPhotoshopとLightroom Classicを動作させるProcyon Photo Editing Benchmarkを実行した。

Procyon Video Editing Benchmarkの結果
Procyon Photo Editing Benchmarkの結果

 RTX 5070 Tiは最新のハードウェアエンコーダーである第9世代NVENCを採用していることもあって高いスコアを出した。比較対象がないので分かりにくいが、H.264/H.265ともかなり高速にエンコードを完了できている。Procyon Photo Editing Benchmarkでは、CPUとGPUの両方で処理するImage Retouchingで高いスコアを出した。GPU性能の高さが効いている。

 AI性能はどうだろうか。AIはLLM(大規模言語モデル)の処理性能を見るProcyon AI Text Generation Benchmark、画像生成を行うProcyon AI Image Generation Benchmarkを実行した。

Procyon AI Text Generation Benchmarkの結果
Procyon AI Image Generation BenchmarkのStable Diffusion XL(FP16)設定での結果

 ここでも12GBのビデオメモリが活きている。Procyon AI Text Generation Benchmarkはパラメーターが多く、ビデオメモリ8GBの環境では動作しないLLMA 2でもテストを完了できている。Procyon AI Image Generation BenchmarkではStable Diffusion XLによる画像生成も問題なく完了できており、AI目的でも十分活躍が可能だ。

薄型ボディでも長時間プレイ安心の冷却力を確保

 冷却力や動作音も気になるところだ。サイバーパンク2077を10分間動作させたときの動作音を正面、右側面、背面のそれぞれ10cmの位置に騒音計を置いて測定、サーモグラフィでキーボード全体の温度をチェックしてみた。動作モードはターボだ。

サイバーパンク2077プレイ中の動作音
ゲーム動作中はキーボード中心は温かいという感じだが、上部は触るとハッキリと熱いと感じるほどになる

 本製品は高めのスペックかつ薄型ながら動作音は強烈にうるさい、というほとではない。もちろん静かではないが、ゲームプレイ中のゲーミングノートPCとしてはちょっとおとなしめと言ってよいだろう。それだけにキーボード上部の温度はやや高めだ。

最後にゲームプレイ中の温度をチェックしておこう。サイバーパンク2077を10分間プレイしたときのCPUとGPUの温度推移を「HWiNFO Pro」で測定している。CPUが「CPU Package」、GPUが「GPU Temperature」の値だ。

サイバーパンク2077を10分間プレイしたときのCPU/GPU温度の推移

 CPUは平均78.8℃、GPUは平均71.5℃と問題なく冷却できている。特にGPUの温度は低めだ。なお、ゲームプレイ中のGPUクロックは2,000MHz前後で推移。ブーストクロックの設定は1,762MHzだが、実際にはもう少し高めのクロックで動作していた。

本体底面。面積の半分に迫る領域がメッシュ加工で、内部にはCPU/GPUを冷やすためのヒートパイプとファンを組み合わせた強力な冷却機構「Cooler Boost 5」を備える(右の画像はMSIの製品情報ページより)

現在もこの先も快適に使って行ける高性能で薄型のゲーミングノートPC

 AMD、NVIDIA最新世代のCPUとGPUを組み合わせ、超重量級ゲームも最高画質&高解像度で快適にプレイできるパワー、12GBのビデオメモリ容量を活かして生成AIも活用しやすく、高性能なNPUを内蔵することによって今後増えていくと予想されるNPU対応アプリも快適に使えると未来への備えもできている。高い汎用性を持った持ち運べるゲーミングノートPCを求めているなら、ぜひともチェックしてみてほしい1台だ。

 なお、「Stealth A16 AI+ A3XWシリーズ」にはRyzen AI 9 HX 370/GeForce RTX 5090 Laptop GPUやRyzen AI 9 HX 370/GeForce RTX 5080 Laptop GPUを組み合わせた上位モデルもラインナップしている。それでも19.95mmの薄さやボディのサイズは同じ。より高いスペックを求めているなら合わせてチェックだ。