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第13/14世代Core用マザーにPCIe 5.0接続GPU対応モデル、最新ビデオカードもいける「GIGABYTE B760 GAMING X GEN5」

最新マイクロコードにも対応済み text by 坂本はじめ

 GIGABYTEの「B760 GAMING X GEN5」は、ひとつ前のデスクトップ向けプラットフォーム「LGA1700」に対応するマザーボードの新製品。約1.6万円という安価なマザーボードでありながら、PCIe 5.0に対応しており、最新鋭GPUを制限なく利用できるモデルだ。

 今回は、B760 GAMING X GEN5をベースにCore i7-14700KとGeForce RTX 5080を搭載したハイエンドゲーミングPCを構築。安価なマザーボードでハイエンド級パーツがどこまで動かせるのか確かめてみよう。

コスパに優れたLGA1700対応マザー「B760 GAMING X GEN5」

 GIGABYTE B760 GAMING X GEN5は、Intel B760チップセットを搭載するLGA1700対応マザーボードで、従来の13世代/14世代Core(Raptor Lake-S)および12世代Core(Alder Lake-S)に対応している。フォームファクターはATX。

 旧プラットフォーム/コスパ重視という製品ではあるが、AMDとNVIDIAの最新鋭GPUが採用するPCIe 5.0に対応した拡張スロットを搭載。また、13世代/14世代Coreの上位モデルで発生していたVminシフト問題に対して、根本原因とされる高電圧を修正したマイクロコードアップデートを初期BIOSから適用。さらに安定性を改善させたと言われているマイクロコードの「0x12F」や、脆弱性に対応するためのマイクロコード「0x3a」も適応された最新BIOS(F2c)が2025年6月上旬時点で公開されている。

新設計のLGA1700対応マザーボード「B760 GAMING X GEN5」
ビデオカード向けの拡張スロットがPCIe 5.0 x16に対応。GeForce RTX 50シリーズやRadeon RX 9000シリーズを制限なく利用できる
バックパネルインターフェイス。有線LANは2.5GbEに対応している

 電源回路はDrMOSを採用する8+1+1フェーズ仕様。ハイエンドCPUであるCore i9-14900Kもサポートリストに記載されている。Core I9-14900KSを除けばほぼすべて第13世代/第14世代CPUが利用可能なので、ほとんど制約はないと考えてよいだろう。

 SSD用のM.2スロットは3本搭載しており、いずれもPCIe 4.0 x4接続に対応。CPU内蔵PCIeレーンを利用する最上段のスロットにはSSD冷却用の専用ヒートシンクも搭載している。

 製品仕様としては、コストパフォーマンス重視のゲーミングPCの構築に不足の無い能力を備えたマザーボードといえるだろう。

DrMOSを採用する8+1+1フェーズのVRMを搭載
CPU用の電源コネクタはEPS12V(8pin)×1系統
VRM用ヒートシンクを取り外したところ
VRM用ヒートシンクはすべてのMOSFETをカバーしている
CPUに電力を供給するDrMOSはOnsemi「NCP302155」
VRMのPWMコントローラはOnsemi「NCP81530R」
PCIe x16スロット上部に配置されたM.2スロットは専用ヒートシンクを備えている
合計3本のM.2スロットを搭載。いずれもPCIe 4.0 x4接続に対応

Core i7-14700KとGeForce RTX 5080を搭載してハイエンド級の環境を構築

 ここからは、14世代Coreの準ハイエンドCPU「Core i7-14700K」と、NVIDIA最新のハイエンドGPUである「GeForce RTX 5080」を搭載するGIGABYTEの「AORUS GeForce RTX 5080 MASTER ICE 16G」をB760 GAMING X GEN5に搭載。

 約1.6万円のミドルレンジマザーボードが、ハイエンド級パーツのパフォーマンスをどこまで引き出すことができるのか確かめてみよう。

14世代Coreの20コア/28スレッドCPU「Core i7-14700K」
GIGABYTE製のハイエンドビデオカード「AORUS GeForce RTX 5080 MASTER ICE 16G」

ビデオカードはPCIe 5.0 x16のフルスピードで接続可能

 まずは、B760 GAMING X GEN5に搭載したCPUとGPUが問題なく動作するのか確かめてみよう。

 GPUのステータス情報を表示するGPU-Zを実行したところ、ビデオカードのAORUS GeForce RTX 5080 MASTER ICE 16GがPCIe 5.0 x16で接続されていることを確認できた。特にPCIe周りの設定をする必要もなく、最新鋭のハイエンドGPUをスペック通りのバスインターフェイスで動作させることが可能だ。

 PCIe 5.0で接続できるのか、PCIe 4.0接続になってしまうのかといった部分は、PCIe 5.0 x8接続のビデオカードなどでも性能に影響してくる部分になる。ハイエンドカードに限らず、最新GPUを使用するのであれば、マザーボード側がPCIe 5.0接続に対応しているのかはチェックしておこう。

GPU-Z実行画面
ビデオカードが「PCIe 5.0 x16」で接続されていることを確認できる

上位CPUを長時間利用する場合は電力リミットの調整がおすすめ

 Core i7-14700KをB760 GAMING X GEN5で使用した際のデフォルトの電力リミットは、「PL1=PL2=253W」という積極的なもので、これはIntelの標準設定(Intel Default Settings)において、Core i7-14700Kに許容されている最大の電力設定「Performance Power Delivery Profile」に準拠したものだ。

 Core i7-14700Kは高負荷をかけると実際に253Wの電力を消費するCPUで、長時間高負荷状態で使用する場合は、CPU自体の発熱が大きいことに加えVRMで発生する発熱も無視できないほど大きくなる。短時間の動作であれば多くのマザーボードで性能に影響するようなことはないが、長時間使用前提の場合はVRMがより作りこまれたハイエンドマザーボードが必要になる場合もある。

B760 GAMING X GEN5のBIOS画面。Core i7-14700Kに対してはIntel Default SettingsとPerformance Power Delivery Profileに基づく電力プロファイルが標準で適用されている。
HWiNFO64 Proで表示したCPUの動作設定。電力リミットは「PL1=PL2=253W」に設定されている

 コスト重視でゲーミングPCを構築するのであれば、上位CPUを使用する場合に電力リミットを調整することをおすすめしたい。極端な設定にしなければ性能が犠牲になる面は最小かつ、空冷CPUクーラーでも十分に冷やしきれるようになるので、コストパフォーマンスを高めることに大いに寄与する。

 B760 GAMING X GEN5と14世代Coreを組み合わせるのであれば、時間無制限の電力リミットであるPL1をIntelが定めるスタンダードの設定値「125W」に変更するのがおすすめだ。設定方法はBIOSの「Advanced Mode」からTweakerタブを選択し、Advanced CPU Settingsの項目に入りページ下部の「Turbo Power Limits」をAutoからEnabledに変更すると、「Package Power Limit1 - TDP(Watts)」が表示されるので、ここに「125」と入力することで標準的な電力リミット「PL1=125W/PL2=253W」が適用される。

BIOSのTurbo Power Limitsで「Package Power Limit1」をAutoから125に変更することで、長期的な電力リミットであるPL1を125Wに変更できる
BIOS設定後のHWiNFO64 Pro実行画面。PL1の値が125Wに設定されていることが確認できる

電力リミット設定の違いで性能差は出るのか、高負荷テストで動作をチェック

 ここからは検証結果の紹介となるが、B760 GAMING X GEN5がハイエンド級のパーツを安定動作させることができるのか、Core i7-14700Kを使用する際に先述したPL1=125W設定がおすすめとなるのか、CPUベンチマークテストの「Cinebench 2024」と、高負荷なゲームとして知られる「サイバーパンク2077」で確認してみた。

Cinebench 2024「CPU (Multi Core)」

 CPUのマルチスレッド性能を計測するCinebench 2024の「CPU (Multi Core)」テストを実行した場合のモニタリングデータが以下のグラフ。

PL1=125W設定時のモニタリングデータ(Cinebench 2024)
PL1=PL2=253W設定時のモニタリングデータ(Cinebench 2024)

 PL1=125W設定では、テスト開始後から1分弱ほどPL2のリミット値である253Wに近い電力を消費して動作したあと、PL1の125Wに制限された消費電力で終始安定した動作を維持し、1,603ptsのベンチマークスコアを獲得。CPU温度は平均64.9℃(最大97℃)、VRMのMOS温度も平均55.9℃(最大61℃)と、十分に低い温度をキープできている。

 一方、マザーボード標準のPL1=PL2=253W設定では、テスト中盤までは温度上限の100℃と電力リミットの253Wに触れながらも高クロック動作を維持できているが、テスト終盤になるとVRMのMOS温度が100℃に達することでサーマルスロットリングが発動、CPUのクロックや消費電力が大幅に低下する様子を確認できる。それでもなお、スコア自体はPL1=125W設定を上回る1,780ptsを記録した。

Cinebench 2024「CPU (Multi Core)」
Cinebench 2024「CPU (Single Core)」

 上記のグラフはスコア部分のみを抜粋したグラフだが、先述の通りMulti CoreではPL1=PL2=253W設定が優位なスコアを記録する一方、Cinebench 2024のSingle Coreでは全く同じスコアを記録しており差がついていない。これは1コアのみで処理を行うSingle CoreではCPU消費電力が125Wより低いことが影響している。

 Multi Coreのスコア差を大きいととるか影響は小さいととるかは用途次第になる。CPUの全コアに負荷がかかり続ける用途であれば、発熱や効率の面で不利にはなるものの、サーマルスロットリングが発生することを前提にPL1=253W設定で使用するのもありだ。

 ただ、大多数用途ではCinebench 2024のように常に100%の負荷が全コアにかかり続けるようなケースはまれなので、クリエイター向けの処理でもここまで全コアに負荷がかかるケースは多くなく、実用上はPL1=125W設定で使用しても明確な差が出ないケースが散見される。後述するが、特にゲームなどは誤差に収まることが多く、発熱や消費電力の面でのメリットも大きい。

 ゲーム用途であれば扱いやすいPL1=125W設定、多コニ最適化された用途や、一部のクリエイター用途などではPL1=253W設定と、より環境にあった設定を選択して使用してもらいたい。

サイバーパンク2077

 サイバーパンク2077において、グラフィックプリセットを「レイトレーシング:オーバードライブ」、超解像を「DLSS」、フレーム生成をDLSSのマルチフレーム生成(4x)に設定し、4K/2160p解像度で30分連続プレイした場合のモニタリングデータが以下のグラフ。

PL1=125W設定時のモニタリングデータ(サイバーパンク2077)
PL1=PL2=253W設定時のモニタリングデータ(サイバーパンク2077)

 PL1=125W設定とPL1=PL2=253W設定のVRM温度はいずれも60℃台をキープしており、VRMの過昇温によるサーマルスロットリングは発動していない。

 PL1=PL2=253W設定時のCPU消費電力は平均144.8Wとなっており、PL1=125W設定時はリミット値に達したことによるスロットリングでCPUクロックや消費電力がやや低下しているものの、このテスト中に計測された平均フレームレートについては、PL1=125W設定が192.2fps、PL1=PL2=253W設定が193.0fpsと誤差レベルの僅差となっている。

サイバーパンク2077

 上記はフレームレートだけに絞り、各解像度で電力リミットの影響がどれほどあるかを確認したグラフだ。ほぼ誤差といった状況なので、ゲーム用途であればPL1=125W設定は悪くない値であることがわかる。

複数ゲームでパフォーマンスを計測、電力リミットの違いで性能差は生じるのか

 CPUに高負荷を掛けるCinebench 2024では、電力リミットの違いによってスコアやVRM温度に顕著な差が生じた一方で、サイバーパンク2077では電力リミットの違いによる差が僅差にとどまるという結果が得られたわけだが、他のゲームではどのような結果になるのかフレームレートを計測してみた。

 実行したテストは、モンスターハンターワイルズ、エルデンリング ナイトレイン、アサシン クリード シャドウズ 。

モンスターハンター ワイルズ
エルデンリング ナイトレイン
アサシン クリード シャドウズ

 今回テストしたゲームタイトルでは、PL1=125W設定とPL1=PL2=253W設定はほぼ同等のパフォーマンスを発揮する結果となった。この理由はCinebench 2024のSingle Coreと同じようにCPU消費電力が125Wに満たないか、もしくはCPUに影響を与えない程度の電力リミットスロットリングしか発動していないためだ。

 ゲーミングPCの構築を目指すのであれば、無理をしてまでPL1=PL2=253W設定の最大負荷を冷やしきれる冷却システムを導入する必要はない。コストパフォーマンスに優れた空冷CPUクーラーでも安全な温度を維持できるPL1の引き下げという選択肢があることを覚えておくと良いだろう。

コスト重視でゲーミングPCを組むなら、枯れたパーツが使えるPCIe 5.0対応LGA1700マザーはアリ

 ゲームにおける性能に関しては最新世代にも引けを取らない14世代CoreとB760 GAMING X GEN5の組み合わせは、コストパフォーマンスを重視する場合や、ビデオカードに予算を集中する一点豪華主義でのゲーミングPC構築に好適だ。限られた予算の中でよりよいゲーミングPC構築を目指すユーザーにとって面白い選択肢となるだろう。また、手元にまだ十分なパフォーマンスが期待できる12~14世代Coreがあるなら、活用しがいのあるモデルになるはずだ。

 今回はCore i7-14700KとGeForce RTX 5080というハイエンド級のパーツを組み合わせたが、LGA1700対応CPUはいずれもPCIe 5.0をサポートしているので、PCIe 5.0 x8を採用するGeForce RTX 5060 Ti/5060とCore i5などを組み合わせ、ミドルレンジクラスのゲーミングPCを構築してみるのも良いだろう。