トピック

8TBのPCIe 5.0 SSDで転送速度6GB/sの外付けSSDを構築、Thunderbolt 5接続で最速を狙ってみた

ストレージの性能を引き出すFastCopyの改良版もテスト text by 坂本はじめ

 以前、最速の外付けSSD作成に挑戦した際に用いたACASISのThunderbolt 5外付けSSDケース「TB501Pro」がマイナーチェンジされ、非対応だったPCIe 5.0 SSDが利用可能となった。

 また、SamsungのPCIe 5.0 SSD「9100 PRO」もこのタイミングで最大容量となる8TBモデルが追加されたので、今回は新型TB501Proと9100 PRO(8TB)を組み合わせ、最速&最大級のThunderbolt 5外付けストレージを構築してみた。

 前回テスト時から、FastCopyもexFATの転送速度が改善されたバージョンがリリースされているので、改めて最速級外付けストレージの実力を確かめてみよう。

PCIe 5.0 SSDも利用可能になったThunderbolt 5外付けSSDケース「TB501Pro」、Samsung 9100 PRO 8TBを搭載して最強外付けSSDを作成

 ACASISのTB501Proは、Thunderbolt 5の採用により最大80Gbpsの速度に対応した外付けSSDケース。今回用意したものは、マイナーチェンジ版の「TB501Pro (PCIe Gen5 SSD Compatible)」だ。

 ACASISによれば、TB501Pro (PCIe Gen5 SSD Compatible)ではチップセットの更新により、従来モデルでは利用できなかったPCIe 5.0 SSDが利用可能になったとされている。なお、SSDケース内部のM.2スロットはPCIe 4.0 x4接続で、PCIe 5.0 SSDをPCIe 4.0で動作させた際の互換性を向上させたモデルといえる。

ACASIS TB501Pro (PCIe Gen5 SSD Compatible)。インターフェイスに80Gbps対応のThunderbolt 5を採用した外付けSSDケース
USB Type-C形状の80Gbps対応Thunderbolt 5ポートと、冷却ファンの強制稼働スイッチ
底面の蓋を開くとM.2スロットにアクセスできる。対応フォームファクターは2230/2242/2260/2280

 TB501Proが搭載するコントローラチップは、Thunderbolt 5対応の「JHL9480」と、USB 3.2 Gen 2対応の「RTL9210」。JHL9480が対応していないUSB 3.2との互換性をRTL9210が補うためのデュアルチップ構成だ。

 なお、マイナーチェンジ版であるTB501Pro (PCIe Gen5 SSD Compatible)では、JHL9480が最新の「B2チップ」に更新されたほか、JHL9480の発熱を筐体に伝導して放熱するためのサーマルパッドが追加されていた。基板に関しても従来のTB501Proとは異なるレイアウトとなっており、様々な部分で改良が図られているようだ。

コントローラチップは冷却ファンを備える表面側に配置されており、JHL9480はサーマルパッドで筐体と接続されている
従来モデルとは異なる基板レイアウトを採用しているようだ
IntelのThunderbolt 5コントローラ「JHL9480」。改良版のB2チップを採用しているとのことだが、外観的には区別がつかない
RealtekのUSB 3.2 Gen 2対応コントローラ「RTL9210」。JHL9480が非対応のUSB 3.2との互換性を補完する

 今回、TB501Pro (PCIe Gen5 SSD Compatible)に組み込むのが、SamsungのPCIe 5.0 SSD「9100 PRO」の8TBモデルだ。

 2025年10月に9100 PROのラインナップに加わったばかりの8TBモデルは、M.2型NVMe SSDとしては最大級の記憶容量と、リード14,800MB/s、ライト13,400MB/sという最速級の速度を兼ね備えている。

M.2型NVMe SSDとしては最高クラスの記憶容量と速度を実現した9100 PRO(8TB)
8TBの大容量を実現するために、基板裏面にもNANDチップを配置した両面実装となっている
Intel Z890環境(PCIe 5.0 x4接続)搭載時、リード・ライトともに10GB/sを大きく超える最大速度を実現している

 なお、今回のテストではThunderbolt 5外付けSSDの接続先として、Thunderbolt 5ポートを備えるASUSのIntel Z890マザーボード「ProArt Z890-CREATOR WIFI」で構築したテスト用PCを使用する。

 このPCには、OSをインストールしたシステムSSDとは別に、外付けSSDとのファイル転送テスト用としてSamsungのPCIe 4.0 SSD「990 PRO」の4TBモデルを搭載している。

Thunderbolt 5ポートを備えるASUSのIntel Z890マザーボード「ProArt Z890-CREATOR WIFI」
ASUS ProArt Z890-CREATOR WIFIは背面に2基のThunderbolt 5ポートを備えている
外付けSSDとのファイル転送テストに用いるSamsung 990 PRO(4TB)
990 PRO(4TB)のCrystalDiskMark実行結果

改良版TB501Proは前モデルの問題が解消されたのか互換性と冷却性をチェック

 前回のレビューでTB501Proをテストした際は、PCIe 5.0対応の9100 PROを搭載時にうまく認識できない、PCIe 4.0対応の990 PROを組み合わせた時にサーマルパッドの厚みが若干合わないといった問題があったが、そうした部分が解消されているのか見てみよう。

PCIe 5.0 SSDの9100 PROとの相性問題は解消

 まずは、PCIe 5.0 SSDに対応したTB501Pro (PCIe Gen5 SSD Compatible)と9100 PRO(8TB)の組み合わせが正常に動作するのか確認しよう。

9100 PRO(8TB)を搭載したTB501Pro (PCIe Gen5 SSD Compatible)

 結論から言えば、9100 PRO(8TB)を搭載したTB501Pro (PCIe Gen5 SSD Compatible)をThunderbolt 5ポートに接続すると、問題なくThunderbolt 5外付けSSDとして認識された。

 CrystalDiskInfoやSamsung Magicianで確認したところ、9100 PROの接続インターフェイスはPCIe 4.0 x4となっている。これは、ケースが搭載するThunderbolt 5コントローラのJHL9480とSSDが下位互換によってPCIe 4.0接続になっていることを示すもので、この下位互換が機能しなかった旧型の挙動が改善している。

CrystalDiskInfoやSamsung Magicianでは、Thunderbolt 5接続中の9100 PROのインターフェイスがPCIe 4.0 x4と認識される。JHL9480とSSDの間でPCIeの下位互換が正常に機能していることの証左だ

付属のサーマルパッドは9100 PROには厚み不足

 今回使用するTB501Pro (PCIe Gen5 SSD Compatible)には、SSDの放熱用として1.0mm厚と0.5mm厚のサーマルパッドが同梱されていた。

 取り扱い説明書によると、1.0mm厚のサーマルパッドをSSDに載せる形で貼り付けて使用し、もし厚みが足りないようであれば0.5mm厚のサーマルパッドを筐体側に貼り付けることで重ね張りの状態で使用するのが正規の方法とされている。

TB501Proには1.0mm厚と0.5mm厚のサーマルパッドが同梱されている
1.0mm厚のパッドをSSDに載せ、厚みが足りなければ0.5mm厚のパッドを筐体側に貼りつけて重ね貼りする

 9100 PRO(8TB)との組み合わせでは、標準のサーマルパッドを重ね貼りして1.5mm厚を確保しても筐体と十分に接触している手応えが得られなかった。前回の990 PROとの組み合わせの際と同じく、SSDによっては使用するユーザー自身が適切なサーマルパッドを用意する必要があることに変わりはないようだ。

 こうした状況なので、前回の検証と同じく熱伝導率7W/mKの1.0mm厚のサーマルパッドを用意し、2枚重ね(合計2.0mm厚)で今回のレビューでは運用している。標準のサーマルパッドと別途用意した別売りのサーマルパッドでどの程度性能が変わるのか、CrystalDiskMarkを実行した際の最高温度を比較した結果を紹介するので、確認してもらいたい。

熱伝導率7W/mKの1.0mm厚サーマルパッドを2枚用意
1.0mm厚のサーマルパッドを2枚重ね、2.0mm厚にして使用してみた

 標準のサーマルパッドを使用した1.0mm厚と1.5mm厚では、SSDのNANDメモリ温度が56~60℃となっており、コントローラ温度は67~71℃まで上昇した。一方、別売りのサーマルパッドを2枚重ねにした2.0mm厚では、NANDメモリ温度が47℃、コントローラ温度が48℃と、いずれも50℃以下という低い温度に抑えられている。

 厚みだけでなくサーマルパッド自体の性能が影響している可能性もあるが、実際に装着した際の手応えからしても、9100 PRO本体の厚みに対してTB501Pro (PCIe Gen5 SSD Compatible)付属のサーマルパッドの厚さが不足しているように感じられる。標準のサーマルパッドで十分な冷却が得られないようであれば、2.0mm厚程度のサーマルパッドへの交換を検討すると良いだろう。

Thunderbolt 5本来の性能を発揮するには「キャッシュの設定」が必要

 今回のモデルに限らずThunderbolt接続ストレージ全般に影響するので、基礎的な設定の話にはなるが、Windows PCに接続したThunderbolt 5外付けSSDが性能を最大限に発揮するためには書き込みキャッシュの設定が必要だ。

 デバイスマネージャーのディスク一覧から外付けSSDのプロパティを開き、取り外しポリシーを「クイック取り外し」から「高パフォーマンス」に変更し、「ディスクの書き込みキャッシュを有効にする」にチェックを入れた状態を適用すると、Thunderbolt 5外付けSSDは本来の性能を発揮するようになる。

ディスクのプロパティ。標準では取り外しポリシーが「クイック取り外し」に設定されており、Thunderbolt 5外付けSSDは本来の性能を発揮できない
SSDが本来の性能を発揮するには、取り外しポリシーを「高パフォーマンス」に変更し、「ディスクの書き込みキャッシュを有効にする」にチェックを入れる必要がある

 これはSSDとPC間をPCIeで接続するUSB4やThunderbolt 4でも必要な設定であり、書き込みキャッシュ有効時とクイック取り外しでは書き込み速度に極端な差が生じることが多い。速度が出ない場合はまず書き込みキャッシュの設定を確認しよう。

取り外しポリシー「クイック取り外し」時のテスト結果。ライト速度が極端に遅いことが見て取れる
書き込みキャッシュ設定後のテスト結果。ライト速度も最大で約6GB/sに達している

6GB/sを実現するThunderbolt 5外付けSSDのパフォーマンスをテストFastCopyを使った実ファイル転送もリード・ライトともに6GB/s前後の性能を発揮

 TB501Pro (PCIe Gen5 SSD Compatible)と9100 PRO(8TB)の組み合わせが正常に動作することを確認できたので、ここからは作成したThunderbolt 5外付けSSDのパフォーマンスをファイル転送テストで確認する。前述のとおり、外付けSSDには2.0mm厚の別売りサーマルパッドを装着してテストを行う。

 テストの内容は、231GiB(248,613,388,288バイト)の大容量ファイルを外付けSSDとPCの間で転送し、転送時間の確認と、その値を元に転送速度を計算する。ファイル容量をGiB(ギビバイト)で表記したのは接頭語による誤差を避けるためで、今回のテストでは転送速度に「SI接頭語」、ファイルサイズには「2進接頭辞」を用いている。

テスト用ファイルのプロパティ。Windowsはデータ容量において「2進接頭辞の数え方でSI接頭語を使う」という慣例に倣った適切でない表記を継続しているため231GBとなっているが、適切に表記するなら231GiBまたは248GBとなる
接頭語の違いによる誤差は数字が大きくなるほど拡大する。データ転送速度はSI接頭語を用いることと定義されているので、ファイルサイズの接頭語を誤解釈して計算すると大きな誤差が生じてしまう

 今回のファイル転送テストでも、Windows標準のエクスプローラーによるコピー&ペーストに加え、ファイルコピー&バックアップツールの「FastCopy」を利用した場合のパフォーマンスを計測する。

 FastCopyは非同期I/Oやバッファの活用により、NVMe SSDの性能をエクスプローラーよりも引き出せることが過去の検証で分かっている。今回のテストでは、画面右上の「特権」ボタンを押下した管理者モードと、標準の通常モードでテストを実行した。

FastCopy。この画像は右上の「特権」ボタンを押していない通常モードのもの
特権ボタンを押下すると管理者モードに移行し、タイトルバーに(Admin)と表示される

 なお、前回Thunderbolt 5外付けSSDのテストを行った際、ファイルシステムがexFATだとFastCopyを使用してもNTFS環境ほど速度が出ないことを紹介したが、その後リリースされたFastCopy v5.10.0では、exFAT環境での速度が向上したことがFastCopy作者の白水氏よりアナウンスされている。

 今回使用するFastCopyのバージョンはテスト時点の最新版であるv5.11.1なので、exFAT環境での速度向上を確認するべく、NTFS環境とexFAT環境の両方でパフォーマンスを計測してみることにした。

 ちなみに、NTFS環境とexFAT環境でベンチマークテストのCrystalDiskMarkを実行した結果は以下の通りで、ファイルシステムの違いによるパフォーマンス差はほぼ見られない。

NTFS環境で実行したCrystalDiskMark
exFAT環境で実行したCrystalDiskMark

NTFS環境でのファイル転送テスト

 先に、Thunderbolt 5外付けSSDのファイルシステムをNTFSでフォーマットした環境での計測結果から紹介しよう。

NTFS環境でのデータ転送時間

 最も短時間でファイル転送を完了したのは管理者モードのFastCopyで、外付けSSDからPCへの転送を約39.9秒、PCから外付けSSDへの転送を約41.4秒で完了した。Windowsのエクスプローラーによる転送ではそれぞれ約101.9秒と約98.5秒を要しており、管理者モードのFastCopyはエクスプローラーの半分以下にまで転送時間を短縮している。

 通常モードのFastCopyも外付けSSDからPCへの転送で約43.4秒、PCから外付けSSDへの転送で約53.2秒を記録しており、エクスプローラーより圧倒的に速いのは明らかだ。ただ、管理者モードのFastCopyと比べると、外付けSSDに対して書き込みが生じるPCから外付けSSDへの転送でそれなりの差がついている。

NTFS環境でのデータ転送速度

 データ転送時間から換算した転送速度については、最速を記録した管理者モードのFastCopyがリード・ライトともに6,000MB/sを超えており、CrystalDiskMarkで計測したThunderbolt 5外付けSSDの最大速度と同等のパフォーマンスを引き出せていることが分かる。

 一方、Windowsのエクスプローラーではリード・ライトともに2,500MB/s程度となっており、Thunderbolt 5外付けSSDのパフォーマンスを全く引き出せていない。なお、エクスプローラーが最新SSDの性能を十分に引き出せないのはThunderbolt 5に限ったことではないので、高速なSSD間で大容量ファイルを転送するならFastCopyを利用するメリットは大きい。

exFAT環境でのファイル転送テスト

 次に、Thunderbolt 5外付けSSDのファイルシステムをexFATでフォーマットした環境での計測結果を紹介する。

exFAT環境でのデータ転送時間

 最速を記録した管理者モードのFastCopyは、外付けSSDからPCへの転送を約39.9秒、PCから外付けSSDへの転送を約41.4秒で完了した。この速度はNTFS環境での最速タイムに限りなく近いものであり、同等と言って差し支えないパフォーマンスが得られた。

 通常モードのFastCopyとエクスプローラーの転送時間もNTFS環境と同程度であり、いずれの条件でもexFAT環境とNTFS環境で転送時間に大きな差はみられなかった。

exFAT環境でのデータ転送速度

 データ転送速度に換算してみても、exFAT環境がNTFS環境と同等のパフォーマンスを発揮していることは明らかだ。

 Windows以外のシステムに接続する可能性がある外付けSSDにとって、Windows標準のファイルシステムであるNTFSだけでなく、汎用性の高いexFATを利用できるメリットは大きい。Windowsユーザーが速度を犠牲にすることなくexFATでフォーマットしたThunderbolt 5外付けSSDを利用できる環境を整えてくれたFastCopyのアップデートに感謝したい。

最速級外付けSSDがより構築しやすく、利用環境も整いつつあるThunderbolt 5ストレージ

 マイナーチェンジによってPCIe 5.0 SSDが使えるようになったTB501Pro (PCIe Gen5 SSD Compatible)は、その名の通りPCIe 5.0対応のSSDであるSamsung 9100 PRO(8TB)を使うことができた。

 たとえPCIe 5.0 SSDを使用しても、ピーク速度は内部のPCIe 4.0 x4接続およびThunderbolt 5の80Gbpsに制限されてしまうが、Thunderbolt 5外付けSSDに最高の性能と最大級の容量を求めるエンスージアストには歓迎できるアップデートと言えるだろう。

 まだまだエンスージアストやチャレンジャー向けの製品であるThunderbolt 5外付けSSDケースだが、マイナーチェンジでPCIe 5.0 SSDとの相性が改善し、FastCopyの更新によりWindows環境でもexFATを高速に利用可能となるなど、徐々に実用性が増している。進取の気質に富むユーザーなら、そろそろThunderbolt 5の導入を視野に入れてもいい頃合いかもしれない。