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進化したMSIの裏面コネクターマザー&対応パーツたち!“ケーブルを見せない”を追求したら自作PCはここまで美しくなる!

最新「PZ」製品群で組む“映えるPC”の最先端 text by 芹澤 正芳

 ルックスにこだわる“映えるPC”は、パーツカラーの統一感向上、LEDによる発光演出、ホワイトパーツの隆盛とステップアップしてきたが、最後に残ったのがスッキリしきらないPC内部のケーブルという問題だった。そこで考案されたのが、マザーボードのほとんどのコネクターを裏面側に配置し、それに対応したPCケースと組み合わせることでケース内部から徹底して“ケーブルを隠す”というコンセプトだ。各社がさまざまな取り組みをスタートしているが、MSIが打ち出したのが、発表時に「PROJECT ZERO」と命名された一連の製品群、現在の「PZ」シリーズだ。

 初登場から1年が経過した2025年には、最大の難点と目されていた「どうしても目立ってしまう補助電源ケーブル」を見事に隠せる新デザインを採用したビデオカードも登場。そこで今回は、より美しく仕上げることが可能になった同シリーズの特徴と魅力を改めて解説したい。この秋冬に新たにPCを組みたい人で、特にドレスアップにとことんこだわりたいということであれば必見だ。

ケーブルを極限まで内部から見えなくできるMSI「PZ」シリーズの最新製品群で組み上げた1台。PZシリーズの組み合わせでは、水冷のパイプ以外にケース内を横切る目立つラインはなく、非常に美しい

ケース内を横切るラインはここまで減った!最新「PZ」でスッキリ美しいPC自作の魅力

 近年多くの製品がリリースされている、前面と側面をつなぐ支柱のない“ピラーレスケース”の登場で、いかに内部を美しく仕上げるかというPC自作におけるチャレンジは、新しいステージに入ったのではないかと思う。これに対する究極に近い答えと言えるのが“裏面コネクターマザーボード”だ。MSI「PZ」シリーズでは、ほぼすべてのコネクターが裏面にレイアウトされたマザーボード、裏面コネクターマザーに最適化されたPCケースを展開している。

CPU付近。水冷ヘッドの制御に必要なケーブルが見えているが、ケーブル自体が細く、マザーや周囲の色に合ったホワイトなので悪目立ちはしていない

 PZシリーズの柱となるマザーボードは現在、Z890、X870E、B850など現役のチップセットを搭載したモデルをラインナップしており、最新のスペックで最新のルックスのPCを組むことが可能だ。製品名の末尾に「PZ」が付いているので判別は簡単だ(たとえばPRO Z890-S WIFI PZなど)。

 ホワイトシルバーカラーに統一されており、表面にコネクター類がほとんどないのでスッキリとしたデザインに仕上がっているのが大きな特徴だ。裏面コネクターマザーボードは見た目のクオリティアップにも大きく貢献している。

MAG X870E TOMAHAWK MAX WIFI PZ
裏面コネクター対応のマザーボード「MAG X870E TOMAHAWK MAX WIFI PZ」。コネクター類がほとんどないので非常にスッキリした見た目だ
主要なコネクターがすべて裏面に配置されている。従来のマザーボードにはない構造だ
B850 GAMING PLUS WIFI PZ
AMD Ryzen向けのミドルレンジマザーボードとしては「B850 GAMING PLUS WIFI PZ」が発売中。グリーンの差し色が入り、TOMAHAWKよりも若干ポップな印象も受ける
12+2+1フェーズ電源回路、サーバーグレード6層PCB、Gen 5対応を含むPCIeスロット×4とM.2スロット×3、など必要十分な仕様を備える
PRO Z890-S WIFI PZ
Intelの最新プラットフォーム向けには、Z890搭載モデルのミドルレンジ機「PRO Z890-S WIFI PZ」が2025年5月に発売されている

 PCケースについてはMSIのMAG PANO 100R PZやMPG VELOX 300R AIRFLOW PZをはじめ、15社以上のPCケースメーカーが対応モデルを発売しており、選択肢は豊富だ。ピラーレスが中心でカラーはホワイトとブラックの両方から選べるものも多い。見た目にこだわりつつ配線をスッキリできるのが強みと言えよう。

裏面コネクターマザーボードに対応したPCケース。写真は「MAG PANO 100R PZ」
ケース側面から。裏面コネクター対応なので、マザーボードベースに開口部が多い

 さらにビデオカード用の補助電源コネクターを内側に配置して、汎用性を確保しつつ電源ケーブルを隠せる構造を実現した「GeForce RTX 5070 Ti 16G VENTUS 3X PZ OC」が登場。これにより、ビデオカードの電源ケーブルがどうしてもPCケースの内側から見えてしまう問題も解決し、ケーブルを限界まで隠せる環境が整ったと言える。

裏面でほとんどのケーブル処理作業できるのは思った以上にラク!

 それでは、実際のPZシリーズのパーツを使うことでどう仕上がるのか、どのようなメリットがあるのか紹介していこう。コネクターが裏面にあることは、ケーブルを隠せる以外にもさまざまな利点があるのだ。

マザーボードをPCケースに組み込んだところ。すべてのコネクターに裏側からアクセスできるのが分かる

 最大のメリットと言えるのが各種ケーブルをマザーボードのコネクターに接続しやすいことだ。通常のマザーボードであれば、電源ユニットの電源ケーブルをPCケースの裏面側(右側面)から表面(左側面)に引き出して接続を行うのが一般的だ。どこからケーブルを引き出すのがベストなのか、表面と裏面を何度も確認しながら作業する必要があり、自作PCの組み立てにおいてかなり手間のかかる部分だ。

 また、最近のPC内部の表面はフレームやドライブベイなどの障害物がほとんどない広い空間が確保されているのだが、それでもコネクターにケーブルを挿す作業の際には、マザーボード上のヒートシンクやそのほかの部品、取り付け済みのビデオカードやCPUクーラーなどで手狭になることもあり、単純なケーブルの着脱も意外に苦労する。

 そんな煩わしさの残る一連の作業を裏面側だけで完結できるので、ケーブル接続は今までよりもずっとスムーズに終えられる。PCの表面と裏面を行ったり来たりしながら作業しなくてよいのは思った以上にずっとストレスフリーだ。手元の見通しやコネクターへのアクセス性も良好で、ケーブルの着脱は非常に楽だ。

マザーボードへのケーブル接続は裏面側から行う。第2世代のPZケースであるMAG PANO 100R PZ、裏面側のスペースが深めに広がったため、従来モデルよりさらにケーブルの着脱や整理が容易になった

 それに付随してケーブル処理がしやすいのもメリットと言える。ピラーレスケースの場合は、側面に3基のファン、背面の1基のファンという構成が多い。そこに36cmクラスの簡易水冷クーラーが加わるとさらにラジエーターに3基のファンが追加され、合計7基のファンがPCケース内に設置される。それがLED対応なら、電源ケーブルとARGBケーブルで合わせて14本に。そこに水冷ヘッドのポンプ用ケーブルとARGBケーブルもある。それらを裏面側に集約できるので、数が多くてもまとめやすい。裏面配線も美しく仕上げやすいのも強みだ。

MAG PANO 100R PZはファン/LEDハブが用意されているとはいえ、LED付きファンが7基もあるとケーブル処理は大変。ただ、裏側で作業し、裏側に逃がしたケーブルを処理できるので、「表から見たときの美しさ」を最優先で作業しやすい
きれいにケーブルを整理し終えたところ。ケーブルの数が多くてもまとめやすい
シャドーベイを兼ねたカバーを閉めれば完成。裏面側も美しく仕上げられる
右側面カバーを閉めたところ。メッシュ状の開口部が広く、側面からの吸気を十分行えるようになっている

かつてないカッコよさで仕上がるPZルックスを重視したいすべてのファンにオススメ

 PZシリーズは対応するマザーボードの種類が増え、PCケースの選択肢も豊富だ。そこにビデオカードも加わっており、MSIの本気度が分かるというもの。裏面コネクターマザーボードによってPC内部をほぼケーブルレスで美しく仕上げられるのに加え、手間のかかるケーブル接続が裏面側に集中するのでスムーズに作業でき、一石二鳥かそれ以上と言える作りだ。

 これまでと“お作法”が多少変わるところがあるため、難易度が高そうにも見えるが、基本がまったく異なるわけではなく、従来よりもケーブル処理が楽になり、手元が見やすくなって作業性が向上している分、初心者にもオススメできる。ドレスアップにこだわりたいなら改めてチェックしてみてほしい。