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“ケーブルの見えない自作PC”を実現するMSI「PROJECT ZERO」。組みやすく美しい対応PCケースとマザーボードの最新モデルを試す
ケーブルがほとんど見えないPCの実現で“映え”がさらに進化 text by 竹内 亮介
- 提供:
- MSI
2025年6月30日 00:00
昔と比べるとCPUやGPUのパワーは大きく向上したが、PCケース内部のケーブル配線に関する機能も地味に進化している。マザーボードベース裏面にケーブルを回す“裏面配線”が一般化することで、各種ケーブルを美しくまとめやすくなり、透明なパネルを通して「PC内部のパーツを眺める・見せることを楽しむ」タイプのPCケースが増えた。
そんな中、このトレンドをさらに進化させるのが、MSIなどが進める“コネクター類も裏面に装備する”デザインだ。ケーブルだけでなく、マザーボード上のコネクターを裏面に移動してしまうことで、ほとんどのケーブルやコネクターを視界から隠し、各パーツをより美しい状態で眺められるようになる。
MSIではこのデザインを「PROJECT ZERO」と呼び、“PZ”型番の付いた対応パーツを2024年より展開。2025年も引き続き、新デザインのPCケースや最新チップセット搭載マザーボードをリリースしている。今回はこのPROJECT ZERO対応PCケースの最新モデル「MPG VELOX 300R AIRFLOW PZ / WHITE」に、同じく最新のPROJECT ZERO対応マザーボード「PRO Z890-S WIFI PZ」などを組み込みながら、その使いやすさや機能性をチェックしていく。
PROJECT ZERO対応パーツなら「ケーブルレス」なPCに
PROJECT ZEROのコンセプトは、美観を損ねる各種コネクターやケーブルをマザーボードベース背面に配置することと、乱雑に放置されたケーブルがケース内部のエアフローをジャマしないようにすることの二つだ。今回試用したMPG VELOX 300R AIRFLOW PZ / WHITEでは、マザーボードベースの周囲に裏面から各種コネクターを挿すための穴が設けられている。
フォームファクター | ExtendedATX(最大305×278 mm)、 ATX、Micro-ATX、Mini-ITX |
前面USB | USB 20Gbps Type-C 1基、USB 5Gbps Type-A 2基 |
標準搭載ファン | 16cm角 2基(前面)、12cm角 1基(背面) |
搭載可能ファン | 16cm角 2基または14/12cm角 3基(前面)、 12cm角 1基(背面)、14/12cm角 3基(天板)、 12cm角 3基(右側面)、12cm角 2基(電源カバー上)、 12cm角 1基(底面) |
搭載可能 ビデオカードの長さ | 40cm |
搭載可能 CPUクーラーの高さ | 16.5cm |
搭載可能 ラジエータの長さ | 36cmクラス(前面、天板、右側面) |
ベイ | 3.5インチシャドー 1基、3.5/2.5インチシャドー 1基、 2.5インチシャドー 4基 |
本体サイズ(W×D×H) | 235×485×518mm |
カラー | ブラック、ホワイト |
マザーボードのPRO Z890-S WIFI PZでは、マザーボードの裏面に各種コネクター類を装備する。この両者を組み合わせることで、表面にケーブルを極力見せないようにできる美しい配線が可能になるというわけだ。
PRO Z890-S WIFI PZの基本性能として注目したいのは、15フェーズの強力な電源回路して高性能なCPUを安心して利用できること、金属製のヒートシンクを多用して冷却性能を高めていることなどが挙げられる。またこの金属製のヒートシンクはホワイトで塗装されており、ホワイトづくしの美しいPCを作りたいユーザーに向いている。
この二つのパーツを中心に組み上げた作例がこちら。
普通の自作PCならあるはずの細いケーブルやマザーボード上のコネクター類はほぼ見当たらず、メインパーツのみをじっくりと眺めて楽しめる。またそうしたケーブルやコネクターがケースファンからの風を遮ることもないため、結果的に冷却性能も高まる。
ケーブル類はマザーボード裏面に集中する。MPG VELOX 300R AIRFLOW PZ / WHITEでは、前面にLED搭載の16cm角ファンを2基、背面に12cm角ファンを1基搭載するが、これらのケーブルはマザーボード裏面に装備するファン/LEDハブにすでに接続済みであり、ケーブルも空きスペースを使って出荷時点ですでにまとめられている。
ユーザーはファン/LEDハブから出ているファンケーブル、LEDケーブルをマザーボードに、電源コネクターを電源ユニットに接続すればよいだけだった。
マザーボードベース中央部にケーブルをまとめるための面ファスナーやフックをいくつも装備しており、各ケーブルをどうまとめるとキレイに整理できるかが分かりやすい。PCを作る際にユーザーが苦労しやすいポイントをあらかじめ解決しておき、組み立ての難易度を低くしていることに好感を覚える。
冷却重視型のPCケースで特殊な16cm角ファンを2基装備
ここからはMPG VELOX 300R AIRFLOW PZ / WHITEの機能を紹介しよう。前面と天板にメッシュ構造を採用し、大型のケースファンを搭載する冷却重視型のPCケースであり、ちょっとおもしろいのが前面に16cm角というユニークなサイズのケースファンを搭載することだ。
またユニークなのはファンのサイズだけではない。この16cm角ファンと背面の12cm角ファンの羽根は二重構造になっており、直進性を高めて各パーツに届きやすくなっていると言う。
ケーブルによってエアフローが遮られることがないPROJECT ZERO対応マザーボードとの組み合わせで最大の効果を発揮するだろう。また16cm角ファンに関しては、動作電圧をL/M/Hの3段階で調整することで、回転数や動作音を抑制できるなど、組み込むパーツに合わせた自由度の高い設定が可能だ。
メッシュ構造の前面パネルは金属製で高級感がある。そしてこの前面パネルと内部の防塵フィルターは、ツールレスで簡単に着脱できる。メッシュ構造の前面パネルはメインの吸気口として機能するため、どうしてもホコリがたまりやすい。しかし組み込んだ後でも簡単に着脱して清掃できるため、高い冷却性能を維持しやすいということだ。高性能な自作PCを安心して使いたいなら、こうしたメンテナンス性にも注目するべきだ。
簡易水冷型CPUクーラーは前面、天板、右側面に36cmクラスまでのモデルを組み込めるほか、右側板の一部に吸気性を高めるためのメッシュ構造を採用する。簡易水冷型CPUクーラーやケースファンによる冷却性能を高めるための仕組だ。
CPUクーラーは高さ16.5cm、ビデオカードは長さ40cmまでのモデルに対応する。空冷タイプならクーラーならハイエンドモデルを含むほとんどのCPUクーラーに対応するサイズだ。
またビデオカードに関しては、中央部分にビデオカードを支えるホルダーを装備する。またビデオカードと接触する先端部分をある程度動かし、ビデオカードのファンと干渉しないようにする機能もある。大型で重量級のビデオカードも安心して利用できるだろう。
組み込みでも役立つPROJECT ZERO機能
ここからは、MPG VELOX 300R AIRFLOW PZ / WHITEにPRO Z890-S WIFI PZなどのパーツを実際に組み込んだ際に感じたことを紹介する。パーツリストは下記の表のとおりで、比較的高性能なゲーミングPCと言ってよいだろう。またホワイトカラーのパーツを中心に選んだこともあり、高級感もある。
CPU | Intel Core Ultra 7 265KF (20コア20スレッド) |
マザーボード | MSI PRO Z890-S WIFI PZ (Intel Z890) |
メモリ | Corsair VENGEANCE RGB DDR5 CMH32GX5M2B6400C32W(PC5-51200 DDR5 SDRAM 16GB×2) |
ビデオカード | MSI GeForce RTX 5080 16G GAMING TRIO OC WHITE |
SSD | MSI SPATIUM M470 PCIe 4.0 NVMe M.2 [M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB] |
PCケース | MSI MPG VELOX 300R AIRFLOW PZ / WHITE (ExtendedATX) |
電源ユニット | MSI MAG A1000GLS PCIE5 (1000W、80PLUS GOLD) |
CPUクーラー | MSI MAG CORELIQUID I360 / WHITE (簡易水冷型、36cmクラス) |
奥行きは48.5cm、高さは51.8cmでExtendedATX対応マザーボードまで対応する比較的大きめなPCケースであり、内部は広くゆったりとしている。何よりメインパーツを組み込むエリアではケーブル接続の必要がないため、細かな作業は必要ない。
簡易水冷型CPUクーラーの「MAG CORELIQUID I360 / WHITE」は今回、天板に組み込んだ。前面の16cm角ケースファンによる吸気を活かした上で、天板から排気するエアフローだ。実際のCPU温度の状況は検証部分で紹介するが、十分冷却できていた。
また今回の簡易水冷型CPUクーラー「MAG CORELIQUID I360 / WHITE」は、ラジエーターにファンは組み込み済みで、ファンケーブルやLEDケーブルは接続と整理が済んだ状態になっている。マザーボードにはファンケーブルとLEDケーブル、水冷ヘッドのポンプケーブルを挿すだけでよいのは地味に便利だった。
ちなみに普段の検証では、天板とマザーボードベースの隙間をチェックし、大型の空冷CPUクーラーを付けた状態でもEPS12V電源ケーブルを挿しやすいか、ファンやLEDケーブルを通したり整理しやすいかなどを確認することが多い。
しかしよく考えるとPRO Z890-S WIFI PZはPROJECT ZERO対応マザーボードなので、すべてのケーブルはマザーボード裏面から接続する。そのためこの部分のケーブル接続に関するトラブルを想定する必要自体がない。ケーブルの隠蔽やエアフローの効率化だけではなく、組み立て時でも背面コネクターを便利だと感じる場面はあった。
パフォーマンス、冷却性能、見た目、使い勝手のいずれにも死角なし
今回組み込んだパーツの基本性能を簡単に検証してみた。PCMark 10 Extendedの総合Scoreは133,153、3DMarkの各種テストのScoreも、GeForce RTX 5080搭載のビデオカードを組み込んだ自作PCらしいScoreとなっている。
実際のゲームのベンチマークは、サイバーパンク2077とモンスターハンターワイルズで計測した。いずれも4K(3,840×2,160ドット)解像度のテストで、サイバーパンク2077のグラフィックス設定は[レイトレーシング:ウルトラ]と[レイトレーシング:オーバードライブ]、モンスターハンターワイルズでは[ウルトラ]と[高]に設定した。フレームレートは小数点以下を四捨五入している。


解像度や描画負荷の設定は最上位に近いクラスながら、フレームレートはほぼすべての設定で60fpsを超えている。フレーム生成機能を利用することで100fpsを超えるものも多く、4K解像度でも最新PCゲームを快適にプレイできる組み合わせと言ってよさそうだ。
CPU温度やGPU温度は、下のグラフにまとめたとおりだ。起動後10分間の平均的な温度を「アイドル時」、3DMarkのTime Spy Stress Test中の最高温度を「3DMark時」、モンスターハンターワイルズ ベンチマークを30分ループ実行したときの最高温度を「モンスターハンター時」、Cinebench R23実行時の最高温度を「Cinebench時」としている。温度計測ではOCCT 14.0.14を使用した。

今回は前面ファンの回転数設定を最小の「L」に設定しているが、CPUとビデオカードの温度は70℃を大きく超えることはなくかなり低い。3DMark時とモンスターハンター時は長時間のゲームプレイ、Cinebench時はCPUに高い負荷がかかるクリエイティブ業務を想定した負荷テストだが、どちらの状況でも安心して利用できそうだ。
こうした検証結果を踏まえて考えると、MPG VELOX 300R AIRFLOW PZ / WHITEでは、高性能でしかも冷却性能の高いPCを作りやすいことが分かる。そして冒頭で紹介した見栄えのよさ、実際の組み込み部分でも感じた使いやすさなどを合わせて考えると、PROJECT ZERO対応のMPG VELOX 300R AIRFLOW PZ / WHITEやPRO Z890-S WIFI PZの組み合わせは非常にメリットが大きい。PROJECT ZEROが今後のPCパーツ市場全体における新たなスタイルを確立していくことに期待したい。