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実はあったPCIe 5.0 x2接続SSDの使い道、X870EマザーのM.2スロットをSSDで全部埋めてみた

PCIe 5.0 x2にも対応するSamsung「990 EVO Plus」の使いどころ text by 坂本はじめ

 SamsungのNVMe SSD「990 EVO Plus SSD」は、接続したM.2スロットの仕様に応じて「PCIe 5.0 x2」または「PCIe 4.0 x4」で接続可能なインターフェイスを備えている。なかなか興味深い仕様だが、これを有効活用できる場面がすぐに思いつくユーザーは少ないだろう。

 自作PCであれば、AMD X870E/X870チップセット搭載マザーボードの一部でM.2スロットがPCIe 5.0 x2動作となるケースがあり、PCIe 5.0 x2接続のSSDが仕様上は選択肢としてフィットする場合がある。“USB4とM.2スロットがPCIe帯域を共有する”という仕様のマザーボード限定でレアな状況ではあるのだが、SSDを多く使用する用途でRyzen環境を選んだユーザーの中にはこうした仕様に気づいた人がいるかもしれない。

 マニアックではあるのだが、今回はMSIのX870EマザーボードのM.2スロット全てにSSDを搭載し、PCIe 5.0 x2接続のSSDは本当に有用なのか試してみた。また、マザーボードの全M.2スロットにSSDを搭載した際、現行のマザーボードはパフォーマンスをしっかり発揮できるのかといった観点でも内容を確認してもらえれば幸いだ。

PCIe 5.0 x2/4.0 x4両対応SSD「990 EVO Plus」の仕様をおさらい

 AMD環境での活用例を紹介する前に、まずはSSDの990 EVO Plusの仕様について改めて確認しておこう。

 990 EVO Plusは、Samsung自社製のSSDコントローラとフラッシュメモリ(V-NAND TLC)を採用したM.2型NVMe SSDのひとつ。PCのメインメモリをキャッシュメモリとして利用するHMB(Host Memory Buffer)に対応しており、リード最大7,250MB/s、ライト最大6,300MB/sを実現した。容量ラインナップは1TB、2TB、4TBの3種類。

990 EVO Plus (2TB)。キャッシュメモリ非搭載のHMB対応SSDで、最大速度はリード7,250MB/s、ライト6,300MB/s
1TB~4TBの全モデルで片面実装を採用。基板裏面にはヒートスプレディングラベルが貼り付けられている

 先述の通り、インターフェイスはPCIe 5.0 x2またはPCIe 4.0 x4に対応しており、接続したM.2スロットの仕様に適した接続が行われる。なお、PCIe 5.0 x2とPCIe 4.0 x4の帯域幅はどちらも約7.88GB/sであり、どちらで接続した場合でも990 EVO Plusはリード/ライトともに速度の面では同じパフォーマンスを発揮できる。

PCIe 5.0 x2接続時のCrystalDiskMark実行結果。シーケンシャルリード(Q8T1)は7,290MB/s、同ライトは5,831MB/sを記録した
PCIe 4.0 x4接続時のCrystalDiskMark実行結果。速度はPCIe 5.0 x2接続時とほぼ同等で、インターフェイスの違いは性能にほとんど影響していない

新設計のX870Eマザーで増えつつあるUSB4/M.2スロットの帯域共有仕様PCIe 5.0 x2対応SSDが効果的な環境

 PCIe 4.0 x4で十分に性能を発揮できるにも関わらず、PCIe 5.0 x2にも対応した990 EVO Plus。このPCIe 5.0 x2対応の恩恵が得られる事例として、MSIのX870Eチップセット搭載マザーボード「MAG X870E TOMAHAWK MAX WIFI PZ」での活用例を紹介しよう。

MSI MAG X870E TOMAHAWK MAX WIFI PZ。裏面配線に対応した白いマザーボードで、USB4とPCIe帯域を共有するM.2スロットを実装している

 AMDのSocket AM5向け上位チップセットであるX870EおよびX870は、40Gbps対応USB4の実装が必須要件とされている。この要件を満たしつつ、より多くのM.2スロットを実装する手段として新設計のマザーボードで導入されているのが「USB4とPCIe帯域を共有するM.2スロット」だ。

 今回用意したMSIの「MAG X870E TOMAHAWK MAX WIFI PZ」の場合、CPUが提供するPCIe 5.0 x4の帯域をM.2の2番スロット(M2_2)とUSB4が共有しており、USB4とM2_2スロットにそれぞれ2レーンを割り当てるか、どちらかを無効にして4レーン全てを割り当てるかを選択できる。

USB4とPCIe帯域を共有するM2_2スロットに搭載した990 EVO Plus
バックパネルに配置されているUSB4ポート。40Gbps対応のポートが2基用意されている
M2_2スロットとUSB4はPCIe 5.0 x4の帯域を共有しているため、両機能が有効な場合M2_2スロットはPCIe 5.0 x2までの対応に制限される
BIOSの「USB4/M.2_2 Switch」という項目で、USB4とM2_2スロットに対するPCIeレーン数の割り当てを変更できる

 ユーザーはUSB4とM.2スロットの必要性に応じてPCIeレーン数の割り当てを任意で変更できるのだが、MAG X870E TOMAHAWK MAX WIFI PZが備える4本のM.2スロットにSSDを満載し、USB4も使いたいというのであれば、USB4とM2_2スロットに割り当てるPCIeレーンは必然的に2レーンずつにせざるを得ない。

 このようなシチュエーションで、M2_2スロットに搭載するSSDとして最適と言っても過言でないのが、PCIe 5.0 x2に対応する990 EVO Plusだ。

MAG X870E TOMAHAWK MAX WIFI PZが備えるM.2スロット全てにSSDを搭載し、USB4も使用するという状況において、PCIe 5.0 x2/4.0 x4に対応する990 EVO Plusのユニークなインターフェイス仕様が有効に機能する

PCIe 5.0 x2対応のメリットはどのあたりにあるのかPCIe 4.0 x4対応SSDとPCIe 5.0 x4対応SSDを加えた3製品で比較

 ここからは、M.2型NVMe SSDを満載したMAG X870E TOMAHAWK MAX WIFI PZのM2_2スロットを使用して、PCIe 5.0 x2に対応する990 EVO Plusのメリットを検証する。M.2スロットの名称は、上から順にM2_1(PCIe 5.0)、M2_2(PCIe 5.0)、M2_3(PCIe 4.0)、M2_4(PCIe 4.0)となっている。

 比較用のSSDとして、PCIe 4.0 x4対応の「990 PRO SSD」と、PCIe 5.0 x4対応の「9100 PRO SSD」を用意した。990 EVO Plusを含め、いずれも記憶容量は2TBで揃えている。

PCIe 4.0 x4対応のハイエンドSSD「990 PRO (2TB)」。最大速度はリード7,450MB/s、ライト6,900MB/s
PCIe 5.0 x4対応のハイエンドSSD「9100 PRO (2TB)」。最大速度はリード14,700MB/s、ライト13,400MB/s

 また、今回はSSD満載というシチュエーションを再現するため、MAG X870E TOMAHAWK MAX WIFI PZが備える4本のM.2スロット全てにSSDを搭載するのだが、M2_1スロットに搭載した9100 PRO 4TB(PCIe 5.0 x4接続)については、990 EVO Plusをはじめとするテスト用SSDとのデータ転送テストに利用する。

M2_1スロットに搭載した9100 PROの4TBモデル。M2_1スロットは他の機能と帯域を共有していないので、常にPCIe 5.0 x4で接続できる
9100 PRO 4TB(M2_1)のCrystalDiskMark実行結果。PCIe 5.0 x4接続により最大限の性能を発揮している

 その他の機材や検証条件については以下の通り。CPUはRyzen 9 9950X、メモリはDDR5-5200 16GB×2の構成でテストを行う。

USB4無効で「M2_2 X4」モード(PCIe x4レーン動作)のパフォーマンス

 まずは、USB4を無効にしてPCIe 5.0 x4の帯域全てをM2_2スロットに割り当てる「M2_2 X4」モードで、各SSDのパフォーマンスを確認してみた。

「M2_2 X4」モードを選択した場合、USB4が無効になる代わりにM2_2スロットはPCIe 5.0 x4接続が可能になる
990 EVO Plusの情報をCrystalDiskInfoで表示したところ。「M2_2 X4」モードではPCIe 5.0 x2で接続されている(「対応転送モード」の項目の左の値が現在使用している転送モード)
990 EVO PlusのCrystalDiskMark実行結果(M2_2 X4モード)
990 PRO。「M2_2 X4」モードではPCIe 4.0 x4で接続されている
990 PROのCrystalDiskMark実行結果(M2_2 X4モード)
9100 PRO。「M2_2 X4」モードではPCIe 5.0 x4で接続されている
9100 PROのCrystalDiskMark実行結果(M2_2 X4モード)

 4レーン接続が可能な「M2_2 X4」モードにおいて、990 EVO PlusがPCIe 5.0 x2で接続されたのに対し、990 PROはPCIe 4.0 x4、9100 PROはPCIe 5.0 x4で接続されており、CrystalDiskMarkでは各SSDが本来の性能を最大限に発揮している様子が確認できる。

 実際のファイルを用いたデータ転送での速度を計測すべく、管理者モードのFastCopyを用いて、約123GiB(132,439,352,801バイト)の大容量動画ファイルをテスト用SSDとデータ用SSD(9100 PRO 4TB)間で転送。データ転送時間とデータ転送速度を計測した。

データ転送時間│「M2_2 X4」モード
データ転送速度│「M2_2 X4」モード

 各SSDのデータ転送速度はCrystalDiskMarkのシーケンシャル速度に近いものとなっており、最速はPCIe 5.0 x4接続の9100 PRO、次点がPCIe 4.0 x4接続の990 PROで、PCIe 5.0 x2接続の990 EVO Plusは990 PROにやや及ばない結果となった。

 各SSDのスペックにおおむね準じたパフォーマンスといえる結果となっており、それぞれのモデルが最大性能を発揮した際の値として参考にしてもらいたい。

USB4/M.2スロット帯域共有の「USB4 X2/M2_2 X2」モードのパフォーマンス

 続いて確認したのは、USB4とM2_2スロットにPCIeを各2レーンずつ割り当てる「USB4 X2/M2_2 X2」モードでのパフォーマンスだ。

「USB4 X2/M2_2 X2」モードを選択した場合、PCIe 5.0 x4はUSB4とM2_2スロットに2レーンずつ割り当てられる
990 EVO Plus。「USB4 X2/M2_2 X2」モードではPCIe 5.0 x2で接続されている
990 EVO PlusのCrystalDiskMark実行結果(USB4 X2/M2_2 X2モード)
990 PRO。「USB4 X2/M2_2 X2」モードではPCIe 4.0 x2で接続されている
990 PROのCrystalDiskMark実行結果(USB4 X2/M2_2 X2モード)
9100 PRO。「USB4 X2/M2_2 X2」モードではPCIe 5.0 x2で接続されている
9100 PROのCrystalDiskMark実行結果(USB4 X2/M2_2 X2モード)

 PCIeレーン数が2レーンに制限されるUSB4 X2/M2_2 X2モードでも、990 EVO PlusはPCIe 5.0 x2で接続されており、性能の変化もシーケンシャルライト速度が若干低下した程度にとどまっている。

 一方、990 PROはPCIe 4.0 x2接続、9100 PROはPCIe 5.0 x2接続となっており、レーン数が半減した。USB 4と帯域を分け合うことで単にピーク速度が半減するということではなく、レーンそのものを分け合ったことでピーク速度が半減する、ということなのだ。その結果、9100 PROは990 EVO Plusに近いパフォーマンスしか出ず、990 PROについては990 EVO Plusを大きく下回り、4.0 x4接続のピーク速度の半分の実力しか発揮できていない。

データ転送時間│「USB4 X2/M2_2 X2」モード
データ転送速度│「USB4 X2/M2_2 X2」モード

 FastCopyを用いたデータ転送テストでも、レーン数減少の影響がない990 EVO Plusが990 PROを大きく上回っており、最速の9100 PROに迫る速度を記録している。

 このように、PCIe 5.0 x4の帯域をUSB4とM.2スロットに2レーンずつ割り当てるシチュエーションでは、PCIe 4.0 x4対応SSDやPCIe 5.0 x4対応SSDが、PCIeレーン数の半減によりパフォーマンスが大きく低下するのに対し、PCIe 5.0 x2に対応する990 EVO Plusは本来の性能に近いパフォーマンスを発揮できる。

 MAG X870E TOMAHAWK MAX WIFI PZをはじめ、AMD X870E/X870チップセットを搭載する新設計のマザーボードで採用例が増えつつある「USB4とPCIe帯域を共有するM.2スロット」だが、こうした環境に無駄なくぴったりフィットするSSDが990 EVO Plusと言えるだろう。

USB4とM.2スロットの帯域共有はデメリット無し?「USB4 X2/M2_2 X2」/「USB4 X4」モードでUSB4外付けSSDの性能を比較してみた

 SSDを満載しつつUSB4も利用できる「USB4 X2/M2_2 X2」モードでも、本来の性能を発揮できるという990 EVO Plusのメリットを紹介したが、逆にM.2スロットと帯域を共有するUSB4のパフォーマンスはどうなるのだろうか。

 980 PRO (2TB)を搭載したUSB4外付けSSDを使用して、「USB4 X2/M2_2 X2」モードと「USB4 X4」モードでCrystalDiskMarkを実行してみた。

USB4外付けSSDに980 PROを搭載してパフォーマンスを計測する
USB4 X2/M2_2 X2モード
USB4 X4モード

 USB4に2レーンを割り当てる「USB4 X2/M2_2 X2」モードの最大速度がリード・ライトともに3,300MB/s前後である一方、M2_2スロットを無効にして4レーンを割り当てる「USB4 X4」モードの最大速度は3,600~3,740MB/s程度となっており、300~400MB/sほど「USB4 X4」モードの方が高速だ。

 USB4外付けSSDのデータ転送速度を計測すべく、M2_2スロットに搭載した990 EVO Plus 2TBおよび、M2_1スロットに搭載した9100 PRO 4TBとの間で、FastCopyを用いたデータ転送を行った結果が以下のグラフ。

 なお、「USB4 X4」モードではM2_2スロットが無効になるため、990 EVO PlusとUSB4外付けSSD間の計測は「USB4 X2/M2_2 X2」モードでのみ実施している。

データ転送時間
データ転送速度

 「USB4 X2/M2_2 X2」モードにおいて、USB4外付けSSDとのデータ転送速度は990 EVO Plusと9100 PROのどちらも3,300MB/s台で横並びとなっている。内蔵SSDの性能的にはPCIe 5.0 x4接続の9100 PROが圧倒的に上だが、USB4外付けSSDの上限速度で律速するため差がつかなかった格好だ。

 一方、「USB4 X4」モードにおけるUSB4外付けSSDと9100 PRO間のデータ転送速度は3,600MB/s前後となっている。「USB4 X2/M2_2 X2」モードより高速ではあるが、レーン数の半減で性能もほぼ半減していた内蔵SSDとは違い、そこまで大きな差がつくわけではないことが分かる。

 USB4とM.2スロットでPCIe帯域を共有する「USB4 X2/M2_2 X2」モードでも、最大40Gbpsを実現するUSB4のパフォーマンスはおおむね発揮できる。高速なUSB4外付けSSDの利用を望むユーザーにとっても、この程度の速度低下なら許容できるものではないだろうか。

帯域を共有するUSB4とM.2スロットを無駄なく活用する990 EVO Plus

 PCIe 5.0 x2/4.0 x4に対応する990 EVO Plusのユニークな仕様は、USB4とM.2スロットでPCIe 5.0 x4の帯域を共有するX870E/X870チップセット搭載マザーボードに見事にフィットする。このために作られたSSDではないかと思うほどだ。

 全てのX870E/X870チップセット搭載マザーボードが、USB4とPCIe帯域を共有するM.2スロットを備えているわけではない点に注意は必要ではある。ただし、990 EVO Plusをうまく用いればマザーボードの機能を最大限に活かしたPCを構築し、SSDが持つ本来の性能を無駄にすることなく引き出すことも可能になるだろう。。