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せっかく買ったオーバークロックメモリ、きちんと設定して性能を引き出していますか? ESSENCORE「KLEVV BOLT V」で学ぶ、初めてのOCメモリ

定格クロックより高速だけど誰でも安心して設定できて使い方は簡単! text by 芹澤 正芳

PCの処理性能の向上にはメモリの高速化が欠かせないが、使用するCPUによって定格のメモリ速度は決まっているため、基本はそこが上限になる。それを突破できるのが“オーバークロックメモリ”だ。ただし、オーバークロックメモリは購入してマザーボードに挿しただけでは本来の性能を発揮できず、UEFIメニューで設定を行う必要がある。オーバークロックと聞くと設定が難しい、トラブルが起きそうなどの不安があるかもしれないが、設定は比較的簡単だ。

そこで今回はESSENCOREのKLEVVブランドのメモリを使って、その設定方法とオーバークロックによる効果を紹介していく。特に、初めてオーバークロックメモリの導入を考えているということなら、買ったメモリの本来の実力を発揮させるために重要な情報を含むので、ぜひ参考にしてみていただきたい。

国内に再参入を果たしたESSENCORE

 今回、改めてオーバークロックメモリの使い方をチェックするにあたり、製品の例としてESSENCOREの「KLEVV」ブランドの製品を用意した。ESSENCOREは最大手メモリメーカーの一つであるSK Hynixと同じく、韓国「SKグループ」の子会社だ。しばらく日本国内であまり姿を見なくなっていたが、2026年より“再参入”を果たし、すでに複数のモデルがPCパーツショップで販売がスタートしている。AI需要によって世界的にメモリ不足が進み、自作PC市場でも高騰や品薄が心配される中、これは心強いニュースと言えるだろう。

ESSENCORE「KLEVV」ブランドのWebサイト。メモリモジュールのほか、SSD、USBドライブといった半導体メモリ製品を幅広く手掛けるメーカーで、DRAMやNANDで知られるSK Hynixと同じ、SKグループの企業だ

 そのESSENCOREのプレミアムブランドである「KLEVV」のメモリモジュールは、同じくSKグループの関連会社ということもあってDRAMにSK Hynixチップを採用。オーバークロック耐性の高さが評価されているSK Hynixチップだけに、この点は大きな安心ポイントだ。

 KLEVVでは現在、複数のオーバークロックメモリをラインナップしており、DDR5メモリとしては、RGBライティングに対応した「URBANE V RGB」や「CRAS V RGB」、LEDはなくシンプルなヒートシンクを採用する「BOLT V」や「FIT V」がある。もちろん、いわゆる“定格”仕様のスタンダードなU-DIMMやSO-DIMM、次世代高性能メモリであるCU-DIMM、CSO-DIMMもラインナップしており、用途に合わせて選択が可能だ。

 なお、メモリオーバークロックのキモとなる設定プロファイルとして、AMD EXPOおよびIntel XMP 3.0に準拠したものを搭載。さらに、各製品ともに制限付きの永久保証も付いている。

「URBANE V RGB」。RGB LEDを搭載するオーバークロックメモリ。ラインナップは動作クロック6,000MHz~8,400MHzの8種類(容量ラインナップはクロックにより異なる)、ジェットブラックとブリリアントホワイトのカラーバリエーションを用意。丸みを帯びた形状と華美になり過ぎないLEDを内蔵し、高さを42.5mmに抑えたヒートシンクを採用
「CRAS V RGB」。クロックやタイミングの設定とラインナップはURBANE V RGBと同等だが、6,000MHzモデルと6,400MHzモデルに64GB×2の大容量モデルが用意されている。2mm背が高く、直線的で近未来的なデザインのRGB LED内蔵ヒートシンクを搭載。カラーバリエーションはオブシディアン・ブラックとブリリアント・ホワイトの2種類
「FIT V」。高さを抑えたシンプルなヒートシンクを搭載するシンプルなオーバークロックメモリだ。クロックのラインナップは5,600MHz~6,400MHzの3種類、カラーはセラミックホワイトとジェットブラックの2種類。16GB×1のパッケージも用意
オーバークロックメモリを取り上げる企画なので今回は触れないが、KLEVVブランドからはUDIMM/SO-DIMMおよびCU-DIMM/CSO-DIMMの定格仕様メモリもラインナップしている

 本稿で使用する「BOLT V」はオーバークロックDDR5メモリ。動作クロックは6,000MHz~7,200MHzの4種類で、容量は16GB×2~32GB×2(クロックにより容量ラインナップは異なる)。効率的な熱伝導率を持つというアルミ製ヒートシンクを装備し、カラーはチャコールグレーとプアホワイトの2色。LEDによる発光機能は搭載せず外観はシャープかつシンプルだが、オーバークロックメモリとしての基礎能力は高いので、KLEVVのラインナップの中ではコストパフォーマンスも重視した製品、という位置付けと考えてよいだろう。

KLEVVブランドのひとつ「BOLT V KD5AGUA80-60A300H」。DDR5-6000の16GBが2枚セットになっている。これはチャコールグレーのモデルだ

 そんなBOLT Vのラインナップの中から今回は、動作クロックは6,000MHz、容量は32GB(16GB×2)、動作電圧は1.35Vのモデル「KD5AGUA80-60A300H」を使用した。メモリの応答時間の速度を示す指標であるメモリタイミング(CASレイテンシ)は30-36-36-76で、DDR5-6000メモリとしては低レイテンシとなっている。

製品のパッケージ
ヒートシンク付きメモリモジュールとしては背の低いデザインなので、CPUクーラーとの干渉の影響が比較的少ない
HWiNFO Proでメモリチップの情報を読み取ってみたところ、オーバークロック耐性が高いチップとして評価されているSK Hynixの“Aダイ”が採用されていた

 オーバークロックメモリは、一般的な定格動作のメモリに比べると発熱が大きくなる場合もあるため、熱対策(とデザインのアクセント)としてヒートシンクを装着していることが多い。ただ、このヒートシンクの分、モジュールの高さが大きくなり、メモリスロットから近い位置にあるCPUに取り付けるCPUクーラーと物理的に干渉する恐れがある。

 BOLT Vもヒートシンクを装備しているが、それでも高さは34mmに抑えられており、ヒートシンクなしの一般的なDDR5メモリモジュールと大きな違いはない。そのため、CPUクーラーと干渉するケースは少ない。近年はメモリとの干渉を意識する必要がほとんどない水冷クーラーの利用も多くなっているとはいえ、物理的にコンパクトに収まりつつも熱対策は万全ということであれば、幅広いユーザーが扱いやすいだろう。

中型CPUクーラーと組み合わせた場合
サンプルに使用したクーラーはそもそもメモリスロットにクーラーがかぶらない構造になっているため物理干渉を意識する必要はないが、横から見た写真でクーラーとメモリの高さの位置関係は分かるだろう。普及価格帯のクーラーのサイズ感はこのくらいのものが多いので、仮にスロット上空に重なる場合でも、メモリにファンが接触することはないだろう
大型CPUクーラーと組み合わせた場合
最近ではまれな例かもしれないが、性能は水冷並みに高いがサイズが非常に大きいタイプの空冷CPUクーラーの場合、本機のようにコンパクトなモジュールでもファンと干渉する場合がある(おそらくこのクーラーの場合、BOLT Vに限らず多くのメモリと干渉するだろう)。このような場合はファンの位置を上にずらして固定する必要がある

オーバークロックメモリは怖くないし誰にでも利用できる!

 PC用の一般的なメモリには、規格や容量、DRAMチップ、動作電圧などが書き込まれた「SPD」という情報が記録されており、それをマザーボードが読み取って動作する仕組みになっている。業界標準規格(JEDEC)に沿って作られたもので、“定格動作メモリ”や“JEDEC準拠メモリ”などと呼ばれる。この仕組みのおかげで、多くのユーザーが安全・確実にメモリを利用できているのだ。

 ではオーバークロックメモリとはどういうものなのだろうか? 先ほど、「SK Hynix製の高耐性チップ」という話をしたが、簡単に言うと、「定格よりも高いクロックで動作する設定を持つメモリ」ということである。ただ、“オーバークロック”という言葉のイメージから、「よほどの玄人じゃないと扱うのが難しそう」、「オーバークロックで使ったら壊しそう」と思う人がいるかもしれないが、実はそこまで難しいこと・危険なことはない。基本的には多くの人が、比較的安全かつ確実にオーバークロック設定でメモリを利用できるのだ。

 オーバークロックメモリは、前述のSPDとは別に、メーカーがより高速に動作できることを検証・設定したオーバークロック用の設定情報(=プロファイル)を持っている。SPDと同様で、この設定情報を利用することで、定格以上の動作クロックやメモリタイミング、電圧などの設定でメモリを動作させることが可能になる。ユーザーが自身でテストを繰り返しながら“最適解”設定や動作の限界を探る必要はなく、その過程でメモリを壊してしまうようなこともない、というわけだ。

BOLT Vのパッケージには、AMD EXPOおよびIntel XMP 3.0に対応していることを示すロゴマークが記載されている

 このオーバークロック用プロファイル規格には、Intel環境向けのXMP(Extreme Memory Profile)とAMD Ryzen環境向けのEXPO(Extended Profiles for Overclocking)の2種類がある。メモリ側は両方のプロファイルを持っているものもあれば、どちらか片方だけのものもある。製品のパッケージやWebサイトで確認が可能だ。今回検証するKD5AGUA80-60A300Hは、どちらのプロファイルも備わっている。

 なお、マザーボード側はIntel向けでもAMD向けでも、そのほとんどがどちらのプロファイルにも対応している。たとえば、XMPプロファイルしか持っていないオーバークロックメモリはAMD Ryzen用のマザーボードでも問題なく使える。XMPやEXPOが登場した頃は注意が必要だったが、最新世代のマザーボードでは、メモリがどちらのプロファイルを持っているかはあまり気にしなくて大丈夫になっている。

 定格動作メモリとオーバークロックメモリの“スペックの違い”にも触れておこう。ここでは同社のスタンダードメモリ「KD5AGUA80-56G460D」と今回検証に使う「KD5AGUA80-60A300H」のスペックを並べた。

【KLEVVメモリにおけるスペックの違い】
定格動作メモリオーバークロックメモリ
製品名KLEVV U-DIMMKLEVV BOLT V
型番KD5AGUA80-56G460DKD5AGUA80-60A300H
速度5600MT/s6000MT/s
容量32GB (16GB×2)32GB (16GB×2)
メモリタイミング46-46-46-9030-36-36-76
電圧1.1V1.35V/1.4V
対応プロファイルSPDSPD、Intel XMP 3.0、AMD EXPO
保証制限付きの永久保証制限付きの永久保証

 これはスペックの一例ではあるが、オーバークロックメモリは高速なのに加えて、メモリが応答するまでの待ち時間であるメモリタイミングが短いことが多く、その代わりに半導体メモリを高速に動かすために動作電圧を高めている傾向にある。また、オーバークロックメモリと言っても製品仕様通りの速度で使う分には、保証は変わらない。メモリに関しては、オーバークロック=即動作保証外ということではないので、安心して利用していただきたい。

マザーボードでプロファイルを読み込まなければ性能を発揮できない

 オーバークロックメモリで一番の注意点が、マザーボードのUEFIメニューでXMPやEXPOのプロファイルを設定しなければ、その性能を発揮できないことだ。これを忘れてしまうと、メモリのSPD情報での動作になってしまう。今回のKD5AGUA80-60A300Hならば、DDR5-6000対応でもDDR5-4800動作になる。

 そこでここではAMDとIntel両方のプロファイル設定例を紹介する。まずはAMD環境、マザーボードはASUS「ROG CROSSHAIR X870E HERO」での例をお見せしよう。UEFIメニューがEZ Modeなら「EXPO」の項目を「Enabled」して「F10」キーで保存するだけと非常に簡単だ。

 Advanced Modeの場合は上部メニューを「Extreme Tweaker」に移動し、「Ai Overclock Tuner」のプルダウンメニューを開いて「EXPO I」を選択する。これで同じく「F10」キーで保存すれば完了だ。

EZ Modeの場合
UEFIメニューがEZ ModeならEXPOをEnabledにして保存すればDDR5-6000での動作になる
Advanced Modeの場合
Advanced Modeでは上部メニューを「Extreme Tweaker」に移動し、「Ai Overclock Tuner」のプルダウンメニューを開いて「EXPO I」を選択
これでプリセットが読み込まれ、DDR5-6000設定が有効になる。あとは保存すればOKだ

 続いてIntel環境の場合だ。マザーボードはMSI「MAG Z890 TOMAHAWK WIFI」を例に取り上げる。UEFIメニューがEZ Modeでは、「Memory」の項目を「Standard」から「XMP1」に変更し、「F10」キーで保存すれば設定完了だ。

 Advancedの場合は、左側メニューから「OverClocking」を選択。DRAM Setting欄にある「Extreme Memory Profile(XMP)」を「Enabled」にする。これでプロファイルが読み込まれ、DDR5-6000に設定される。同じく「F10」キーで保存を行えば完了だ。

EZ Modeの場合
EZ Modeでは「Memory」の項目を「Standard」から「XMP1」にして保存を行う
Advancedの場合
Advancedでは、左側メニューから「OverClocking」を選択。「Extreme Memory Profile(XMP)」を「Enabled」にする
プロファイルが読み込まれ、DDR5-6000動作が設定される。あとは保存すれば完了だ

オーバークロックすることで性能はどこまで伸びるか検証

 ここでは「KD5AGUA80-60A300H」のオーバークロック用プロファイルを適用することで性能がどこまで変わるのか検証していこう。プロファイル適用前はDDR5-4800だ。検証環境は以下の通り。

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 7 9800X3D(8コア16スレッド)
マザーボードASUS ROG CROSSHAIR X870E HERO(AMD X870E)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 5080 Founders Edition
システムSSDM.2 NVMe SSD 2TB(PCI Express 5.0 x4)
CPUクーラー簡易水冷クーラー(36cmクラス)
電源1,000W(80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(25H2)

 まずは、メモリ帯域速度とレイテンシを測定できる「AIDA64 Cache&Memory Benchmark」と「SiSoftware Sandra 2021」を試そう。

AIDA64 Cache&Memory Benchmarkのリードとライト速度計測の結果
AIDA64 Cache&Memory Benchmarkのレイテンシ速度計測の結果
SiSoftware Sandra 2021のリードとメモリ帯域テストの結果
SiSoftware Sandra 2021のメモリレイテンシテストの結果

 DDR5-6000にすることで速度は向上、レイテンシは短縮と確かな効果を確認できる。とくにライト速度は約26%も向上を確認できた。レイテンシも20%以上短縮されている。

 CPU性能の影響が大きい「Cinebench 2026」ではどうだろうか。すべてのコアを使うMultiple Threads、コア単体を使うSingle Coreの2つを実行している。

Cinebench 2026の結果

 Multiple Threadsは約3.5%ではあるが、DDR5-6000のほうがスコアが上回った。Single Coreのスコアも向上しており、CPU性能がメインのテストではあるがメモリ帯域やレイテンシの影響はあると言える。

 クリエイティブ系のアプリも試そう。実際にAdobe PhotoshopとLightroom Classicを動作させてさまざまな画像処理を実行する「UL Procyon Photo Editing Benchmark」を用意した。

UL Procyon Photo Editing Benchmarkの結果

 総合スコアのPhoto Editingは約15%もスコアが向上した。さらに、主にLightroom Classicで処理を行い、CPU性能の影響が大きいBatch ProcessingではDDR5-6000のほうが約26%もスコアが高い。画像処理においてオーバークロックメモリの効果は大きいと言ってよいだろう。

 ゲームではどうだろうか。ここでは「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」と「オーバーウォッチ2」を実行する。オーバーウォッチ2はbotマッチを実行した際のフレームレートをCapframeXで計測している。

ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークの結果
オーバーウォッチ2の結果

ファイナルファンタジーXIV、オーバーウォッチ2ともフルHD解像度では約3%のスコア向上を確認できた。WQHD以上になるとGPUの影響が大きくなるため、スコアにほとんど変化が見られなくなる。フルHDで少しでもフレームレートを伸ばしたい、超高性能GPUのパワーを限界まで絞り出したい、という用途ではオーバークロックメモリの効果が見えてくる。フレームレートが勝負を分けるという対戦系ガチゲーマーなら最後の一押しになることもありそうだ。

オーバークロックメモリは効果あり! 設定を忘れずに

 オーバークロックメモリは、高クロック、低レイテンシ動作によってPCの性能を底上げしてくれる。ただし、それを発揮するためにはマザーボードでの設定が必須だ。これからオーバークロックメモリの導入を考えているなら覚えておこう。すでに使っている人は、プロファイルが読み込まれているかこの機会に念のため確認してはどうだろうか。

 また、使い方の作法は簡単とはいえ、オーバークロックで使用する以上、メモリ自体の品質は非常に重要だ。世界的にも高い評価を得ているSK HynixのDRAMを採用しており、熱対策や信頼性・安定性の高さなど、メモリに欠かせない重要な要素をクリアしているKLEVVブランドのメモリは、ベテランPC自作ユーザーはもちろん、これからオーバークロックメモリを導入してみようという人にも安心してオススメできる。