【 2009年5月2日号 】 | |
PC自作再入門!!:イマドキの自作PCはこんなに面白い 後編:HD動画編集もどんとこい!! なパワフルクアッドコアPCを作る Text by 橋本 新義 |
自作再入門企画の後編は、高性能PCの自作例を紹介しよう。こうした性格のPCはともすれば地味になりがちなのだが、実はここ数年のパーツ価格の低下により、驚くほどパワフルな仕様にできる。とくに2009年はCPUの価格下落が急速に進んだことで、高性能PCにおいてはクアッドコアCPUの搭載が当たり前になりつつあるのだ。
今回は、ヘビーユーザー向けPCとして人気の高いPCパーツを使いつつ、とくに2009年に大きく注目されるであろう「HD動画編集」を意識した構成例を紹介したい。
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【2009年4月25日】PC自作再入門!!:前編
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http://akiba-pc.impress.co.jp/hotline/20090425/sp_start1.htmlイマドキの人気パーツを組み合わせると
自然と超高性能PCができる!?後編となる今回は、構成に奇をてらわない(ある意味でスタンダードな)高性能なPCがテーマだ。前編で紹介した「超小型室内モバイルPC」が個性の強かった構成であるのに比べると、コンセプト的にははっきり言って地味ではある。
しかし、実は地味なのはコンセプトのみ。というのも、人気パーツを組み合わせて作ったこのPC、その外観や性能は、ある意味でかなり先鋭的だからだ。
ここ2〜3年加速しているPCパーツ価格の値下がりにより、自作PCユーザーに人気のある(=コストパフォーマンスの高い価格帯の)パーツを組み合わせると、ほとんどハイエンドと言える性能のPCができるためだ。
コンセプト的にはスタンダードでも、性能は並み居るPCを寄せ付けないほどのものができてしまう――これがイマドキの自作PCの凄いところでもあるのだ。
気がつけばデジカメのおまけ!?
ハイビジョン動画撮影が身近に
さて、こうしたイマドキの高性能PCと2〜3年前のそれを比較したときに、多くのユーザーにとって一番大きな違いとなりそうなのがCPUだ。
本文では紹介しなかったが、実はHD対応ビデオカメラも、旧機種であれば5〜6万円台で入手でき、店頭ではHD対応機が主力となっている。知らない間に非常に身近になっているのだ(写真はキヤノンの「iVIS HF100」)2〜3年前は、デュアルコアCPUがスタンダードになりつつあった時期だが、現在は早くもクアッドコアCPUがスタンダードになりつつある状態である。ともすれば、パワー過剰ともなりがちなクアッドコアCPUだが、最近はそうしたCPUパワーを活かすべく、ソフトウェア側の対応も(じわじわとではあるが)進んでいる。
とくにこれから大きく注目できるのが、HD(ハイビジョン)ビデオの編集だ。HDビデオ編集は、最近までビデオカメラが高価だった(10万円前後の製品が主力)ことから敷居が高かったのだが、この春からそうした状況が大きく変わろうとしているからだ。
その原因は、デジカメのHD動画対応が一気に進行している点にある。
2008年8月にニコンの一眼レフ「D90」が初搭載してから対応機種が大きく増加し、2009年春モデルではコンパクトデジカメの主力機種に飛び火。キヤノンやソニー、パナソニック、カシオといった大手メーカーの実売価格3万円台以上のモデルの多くにHD動画撮影機能(1,280×720ピクセル)が搭載されることとなった。つまり、「3万円台のデジカメを購入すると、おまけでHD動画撮影機能が付いてくる」といった状況なのである。
こうした動きが見えてきたところで自作PCを作るのであれば、少しでも興味のあるユーザーは、いますぐ手がけるかはともかくとしても、準備はしておきたいもの(また家族持ちの方は、家族がデジカメで撮影動画の編集をお願いされる……という機会が多くなるのではないだろうか)。
ということで、今回はスタンダードという範疇を出ることはないものの、HD動画の編集を意識したシステムを作成することにした。
パーツ選びは
CPUとPCケースがポイントこうしたコンセプトを実現するための条件として、今回は以下の3点を考えた。
(1)イマドキの自作PCのスタンダードらしく、現在単体で人気の高いPCパーツを組み合わせること
(2)HDビデオ編集を意識しつつも、最新ゲームタイトルまで対応できるほどの汎用性を持たせること
(3)高性能PCと言ってもむやみに高価なパーツを使うのではなく、高いコストパフォーマンスを実現することこうした条件から、パーツは以下の製品を選んでみた。
●CPU
●マザーボード●ビデオカード
●メインメモリ
CFD Elixir W2U800CQ-2GL5J (実売価格 4,000円前後)
メインメモリは、前編「超小型室内モバイルPC」と同じくこの製品を使用。PC2-6400(DDR2-800)タイプの4GBセット品(2GB×2枚)だ。クアッドコアCPUは複数のあプリケーションを同時に実行しても遅くなりにくい(4つのコアに処理が振り分けられる)ため、メモリを多く搭載して多数のアプリケーションを同時実行する使い方がお勧めだ。現在のようにメモリが安価な状況では、クアッドコアCPUと4GBメモリはほぼセットと考えてもよいぐらいである。
●HDD
Seagate Barracuda 7200.12 ST31000528AS [×2台] (実売価格 9,000円前後[1台])
HDDは、1TB/回転数7,200rpmタイプの製品では最高速となるBarracuda 7200.12を搭載。1プラッタあたり500GBという最新世代の部品を搭載しているため、速度だけでなく低消費電力・低発熱も実現している。
さらに今回はこれをRAID 0(2台のHDDを並列動作させること)を併用することで、快適な動作環境を狙う。
なお、Seagate社は前世代モデルであるBarracuda 7200.11ではファームウェアの改修が話題となったが、本製品は問題の対象外である。
●光学ドライブ
●PCケース
●電源
これらのパーツの合計での想定実売での合計価格は、128,000円前後といったところ(ただしOSは含まず)。高性能なPCとしてはちょっと贅沢な印象もあるが、性能からするとコストパフォーマンスは悪くないというところだ。組み立てはケースのレイアウトがポイント
Vistaインストール時には若干のポイントも
組み立て作業については、自作PC経験者であれば(前編のMini-ITXとは違い)あまり苦労するところはないだろう。ただし重要なポイントとしては、「ケースのマニュアルをよく読んでおくこと」が挙げられる。
Nine Hunderd Twoの内部に主要パーツを装着した状態。電源が最下段になるなど、従来一般的だったレイアウトとは異なった配置となるその理由は、今回使用したNine Hunderd Twoは、電源ユニットを最下段に配置するなど、数年前のPCケースとは若干レイアウトの常識が変わっている点があるからだ。これはNine Hunderd Twoだけでなく、最新のPCケースでは共通した問題。とにかく、イマドキの自作PCでは、ケースのマニュアルを読むのは最大のポイントとなっているのだ。
また、Nine Hunderd Twoの場合、フロントパネルは全面がドライブベイとなっているため、どこにドライブを配置したらよいのか迷うが、光学ドライブは最上段に、HDDは冷却ファンからの風が当たる位置に搭載するのが基本となる。ただしこれはあくまでも基本なので、要は使いやすい位置に合わせて変えてしまってよい。こうしたケースの自由度の高さは、2〜3年前とはひと味違った、イマドキの自作PCならではの要素と言える。存分に組み立てと活用の楽しみを味わっていただきたい。
なお、今回使用したマザーボードのチップセット(サウスブリッジ)であるSB750は、以下の条件下でWindows Vistaをインストールする際、ちょっとしたポイントがある。
Windows Vistaのインストール時に表示される「CD/DVDのドライバがない」旨のメッセージ。CD/DVDドライブとRAIDドライバは連想しにくいだけに、意外とやっかいな落とし穴だ(1)RAIDを有効にした状態であること
(2)光学ドライブがSerial ATA接続であること この条件でWindows VistaをDVDから起動すると、なんと途中でDVDドライブを見失ってしまう(認識できない状態となる)のだ(写真参照)。これは、Windows VistaのDVDにSB750のRAIDドライバが収録されておらず、さらに光学ドライブがRAIDコントローラの制御下に入るためだ。こうなってしまった場合、USB接続の光学ドライブを用意してマザーボード付属のDVDからドライバをインストールするか、別のPCでRAIDコントローラのドライバをUSBメモリなどにコピーしてインストールするハメになってしまう。
ただし、実は光学ドライブの接続ポートとBIOS設定でこれを回避する手段があるのだ。それは、光学ドライブを「SATA2_4(または5)」に接続し、BIOSセットアップで「Integrated Peripherals」→「OnChip SATA Port4/5 Type」という設定を「IDE」に設定すること。
この「OnChip SATA Port4/5 Type」設定を「IDE」に設定すれば、RAID有効時でも光学ドライブが問題なく認識されるようになるこれはSATA端子の5、6番ポートのみをIDEとして認識させる(=RAIDコントローラの制御下に置かない)設定なので、これを有効にしておけば、インストール時にRAIDドライバが必要になった際でも、Serial ATAの光学ドライブを見失うことはない。
Windowsインストール時に慌てないように、できればこの設定は覚えておくとよいだろう。
完成したPCの実力は
さすがの高性能
さて、完成した高性能クアッドコアPCの実力はどのようなものだろうか?
エクスペリエンスインデックスはご覧の通りオール5.9。非常に気分のいい画面である。まずは、Windows Vista Ultimate SP1でのエクスペリエンスインデックスを測定してみたが、こちらは文句なしのオール「5.9」となった。このクラスならではの実力と言える。
また、Futuremark社の総合ベンチマークソフト「PCMark05」と3Dベンチマークソフト「3DMark06」の総合スコアをそれぞれ測定してみたが、なんと両者とも「11,000」「11,122」と、11,000をオーバーしている。これは文句なく非常に高いレベルだ。さらにRAID 0で高速化を図ったHDDの転送速度を、ひよひよ氏作の「CrystalDiskMark 2.2」で測定してみたが、シーケンシャルリード速度は197.9MB/sと、低価格SSDを凌ぐ値を叩き出した。実際の操作感も非常に軽快で、RAID 0にしただけの効果は十分にある(データのバックアップには注意が必要だが)。
PCMark05の総合スコアはなんと「11,000」。文句なしに高性能PCと言えるレベルだ。
3DMark06の総合スコアはなんと「11,122」。最新ゲームでも十分対応できるレベルだ。
CrystalDiskMark 2.2のスコアはご覧の通り。スコアとしては「低価格SSDの結果」と言ってもあまり違和感のないレベルだ。
こうした結果に気分をよくして、HDビデオ編集もテストしてみた。
Super LoiloScope。独特の操作形態で、気軽に・楽しくビデオ編集ができる、注目のソフトだ。今回は、NVIDIAのCUDAに対応したLoilo社の「Super LoiloScope」を使ってHDビデオの編集を実行してみたところ、CPUとGPUが両方とも強力なこともあり、多数のファイルの繋ぎ合わせ編集やエフェクトも非常に快適。気軽なビデオ編集が可能であった。
また今回はピクセラの地上/BS/110度CSデジタル放送対応チューナー「PIX-DT090-PE0」(実売価格:24,000円前後)を組み合わせての地上デジタル放送の視聴と録画も実行してみたが、こちらも(当然ではあるが)非常に快適。HD動画を軽快に扱うPCという意味では、かなりの完成度ではないだろうか。
PIX-DT090-PE0はダブルチューナー搭載の高機能チューナー。接続スロットが(イマドキの自作PCでは空きの多い)PCI Express x1仕様なので便利だ。- PR - DOS/V POWER REPORT 5月号 ▼特集
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前編の「超小型室内モバイルPC」に続いて、こちらもイマドキの自作PCの面白さと、使う際の快適さを感じられる完成度となったと自負している。ご興味があれば、こちらもぜひとも自作PCプランのベースなどにしてほしい。
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【2009年4月25日】PC自作再入門!!:前編
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