【 2011年7月13日 】
最新パーツはどこまで省エネ? 「節電」をPC更新で考える
2007年 vs 2011年
              Text by 石川ひさよし


 今年の課題、といえば一番に出てくるのが「節電」。

 PCというと、ゲームPCでもなければ意外と電気を食う機械ではなくなったわけだが、それでも節電できることは間違いない。

 では、PCにできる節電ってなんだろう。例えばPCのスペックを下げることでも節電効果が期待できるが、メインPCをAtomやE-350クラスまで下げてしまうと今度は普段使いが快適でない。自分のタスクをサクサクこなしつつ節電できる方法があればベストといえる。

 そこで、今回は「PCの買い替えによる節電」を実験してみた。

 簡単に言えばエアコンの買い替えと同様だ。エアコンで言えば10年前の製品よりも最新の製品はもっと電力効率が良くなって、省エネ。これをPCに当てはめようというわけだ。弊誌読者なら、「ワットあたりパフォーマンスの向上と省電力機能の向上」を有効に活用しよう、といった方が早いかもしれない。

 今回は、日本ギガバイトとCFD販売にご協力をいただき、同じIntelプラットフォームにおいて2007年の定番構成から最新環境へと移行した際を想定したパーツを揃えた。各種のベンチマークとともに消費電力を計測してみたが、「おっ! これは乗り換えても良いかも?」と思える結果が出ている。以下、早速紹介しよう。

 
2007年代表「Q6600+G33」 vs 2011年代表「i5-2405S+Z68」

 今回はビデオカードは用いず、CPU+統合GPU、ベースとなるプラットフォームとしての消費電力と性能を計測していく。まずはそれぞれの構成を紹介していこう。

 さすがに2007年当時のものを新規に揃えるにもなかなか難しくなってきた。

 今回手こずりながら「2007年代表」として用意したのは、CPUがCore 2 Quad Q6600、マザーボードがGIGABYTE「GA-G33M-DS2R」、そしてメモリはDDR2 2GB×2枚のデュアルチャネルキット「Elixir W2U800CQ-2GL5J」だ。

 ピックアップしながら、そういえば「Q6600って値下げしてから大人気になったよな」とか「G35マザーって結局ほとんど世に出なかったよな」とか、当時を思い出すこともしばし。まずまず妥当な構成になったのではないだろうかと思う。


CPUはCore 2 Quad Q6600(2.4GHz)。当時としては少々高性能すぎる気もするが、比較的低価格だったクアッドコア

マザーボードは当時の統合チップセット「Intel G33 Express」を搭載したモデルGIGABYTE「GA-G33M-DS2R」を選択。当時、GPU統合マザーならマイクロATXというのが定番

メモリは当時の標準構成DDR2-800 2GB×2枚。デュアルチャネルキットの「Elixir W2U800CQ-2GL5J」を用意


 一方、最新環境として用意したのは、CPUがCore i5-2405S、マザーボードがGIGABYTE「Z68X-UD3H-B3」、そしてメモリはDDR3で現在の標準容量である4GB×2枚のデュアルチャネルキット「Elixir W3U1333Q-4G」を組み合わせた。


Core i5-2405S。高性能な95W版Coreもあるが、低消費電力を狙うのならば外せない。i5-2400Sと比べGPUがIntel HD 2000から3000に強化されているのもポイント

GIGABYTEのZ68マザーボード「Z68X-UD3H-B3」。P67とH67を足してプラスアルファを加えたZ68は、統合GPUで低消費電力にも外部GPUで高性能にも、どちらにも進化させられる。UD3Hという型番は同社の製品としてはメインストリーム向け。価格と機能のバランスの良いモデルだ

メモリはDDR3-1333 4GB×2枚。Windows 7で64bit OSへの移行が加速したことで例え2GB×2枚が低価格だったとしても選ぶ理由が無くなりつつある。今回使うのは「Elixir W3U1333Q-4G」




電源は500Wの「玄人志向 KRPW-L2-500W」で統一。とはいえこれも変換効率80%をうたう製品であり、当時流通していた標準的な製品よりも無駄が少ないと思われる
 さて、この両者で比較をしていく訳だが、Q6600は動作クロックが2.40GHz、クアッドコアでTDP 105W。そして、Core i5-2405Sは低消費電力版CPUであり、動作クロックが2.5GHzでTurboBoost時が3.3GHz、クアッドコア(HyprtThreading非対応)でTDP65W。両者の差は、既にこの時点で40Wある。

 また、その他のパーツはひとまず共通で計測した。

 ストレージは容量500GB/回転数7,200rpmのWesternDigital WD5000AAKS、電源は容量500Wの「玄人志向 KRPW-L2-500W」を利用している。OSはWindows 7 Ultimete SP1 64bit版。詳細なテスト環境は以下の表を参考にしてほしい。


テスト環境2007年仕様2011年仕様
CPUCore 2 Quad Q6600(2.4GHZ)Core i5-2405S(2.5/3.3GHz)
メモリDDR2-800 2GBx2(Elixir)DDR3-1333 4GBx2(Elixir)
マザーボードGIGABYTE GA-G33M-DS2RGA-Z68X-UD3H-B3
チップセットIntel G33 ExpressIntel Z68 Express
統合グラフィック機能Intel GMA 3100Intel HD 3000
ストレージWDC WD5000AAKS(500GB/7200rpm)
OSWindows 7 Ultimete SP1 64bit


 
マザーとメモリ、CPUの交換だけで
どこまで性能アップ&省電力になる?

 まずは、Windows Experience Indexのスコアとアイドル時の消費電力をチェックしよう。



Windows Experience Index

アイドル時消費電力

 Windows Experience Indexで見てみると、プロセッサとメモリに関してはQ6600も良いスコアであり、「7」以上の数値を示している。一方でグラフィックス及びゲーム用グラフィックスを見るとIntel GMA 3100とIntel HD 3000では大きな隔たりがある。

 また、こうした数値では表れにくいが、第2世代Core、というよりも第1世代からなのだが、メモリコントローラがCPUに統合された効果として、デスクトップのグラフィック描画レスポンスが大幅に向上している。例えばエクスプローラを起動するにしても、ワンテンポ待たされるQ6600+G33に対し、i5-2405S+Z68の方がより短時間で表示される。これは実際に触れてみないと分からない感覚だ。

 アイドル時の消費電力では、約18Wという差が生じた。もちろん最新のi5-25405Sの方がより低い。ゲーム目的のPCとなると違うかもしれないが、インターネットを見るとかプログラムを組むといった用途のPCである場合、PCの起動中におけるアイドルタイムというのはけっこう侮れない割合であるだろう。

 以降についてはベンチマークスコアと消費電力を比べながら説明していこう。今回計測に用いたのはFinal Fantasy XI Official benchmark、3DMark 06、PCMark 05、そしてMediaEspressoにおけるトランスコード速度である。



3D性能

3D時消費電力

 3D性能は一目瞭然。

 Final Fantasy XIではi5-2405Sの方が1.7倍前後高く、3DMark 06に至っては10倍以上の開きがある。消費電力はというと、こちらもi5-2405Sのほうが低い。Final Fantasy XIで25Wほど、3DMark 06では40Wほどの差が生じた。



システム性能(PCMark 05)

PCMark 05消費電力

 PCMark 05で測るシステム性能では、先の3D性能ほどではないにせよ大きな差がついた。

 個別に見ていくと、メモリで約2倍、グラフィックスは約3倍、CPUも無視できないスコア差だ。一方消費電力差は3DMark時よりもさらに広がり50Wもの違いが出た。もちろん「2011年版」の方が低消費電力だ。



MediaEspresso 6.5

トランスコード時消費電力

 トランスコードテストでは、i5-2405SのIntel Quick Sync Videoが利用できるため、これまで以上に大きな性能差となる。もしこれを利用しないとしても、CPU性能の違いなどから、i5-2405Sの方がかなりの時間短縮になるだろうことは想像できるだろう。消費電力に関しては、ここでも50W近い違いが出ている。

 また、肝心なのは、時間と消費電力の両方が効く、積算消費電力ではさらに大きな差になることだ。トランスコードを目的のひとつと捉えるのであれば、第2世代Core環境へと乗り換えることで、「時短」「節電」の両面が劇的に改善されると結論づけたい。

 なお、65W版のCore i5-2405Sでは差が出すぎたな、ということで、95WクラスのCore i7-2600Kでも計測してみたところ、i5-2405Sと比べ消費電力のピークは上がったものの、依然Q6600よりも10Wほど低く、アイドル時はi5-2405S並みとなった。性能面ではさらに差が広がる。CPUコスト的に見れば、2007年の7月時点でQ6600が266ドル、円高が進んだ現在のi7-2600Kが2万6000円前後と釣り合っているが、今回の趣旨である省電力として見るとi5-2405Sの方がおもしろいということで、i7-2600Kによる数値は割愛させていただく。


 
SSDと80 PLUS電源でさらに省電力化!

 さて、このように2007年プラットフォームから2011年プラットフォームに乗り換えることで、性能的にも消費電力的にも大きな効果があるわけだが、ここまでの計測で共通としてきたストレージと電源も技術は進歩している。

 そこで、先のi5-2405S+Z68環境をベースに、ストレージをSSD「Real SSD C-400(128GB) CFD CSSD-S6M128NM4Q」へ、電源を同容量の80 PLUS BRONZE製品「玄人志向 KRPW-SS500W/85+」に交換、さらにマザーボードに搭載されたGIGABYTE独自の省電力機能「Dynamic Energy Saver」を有効としてみたらどうだろう、というのが次のテストだ。



80 PLUS BRONZE電源として用意した「玄人志向 KRPW-SS500W/85+」。80 PLUS無印やBRONZEの電源であれば、今現在かなり安い。

Micron Real SSD C400を採用するSSD「CSSD-S6M128NM4Q」。HDDよりも低消費電力であるとともに静音性、そしてSATA 6Gbpsに対応した読み込み速度の速さなどもメリット

GIGABYTEのオリジナルユーティリティ「Dynamic Energy Saver」は、負荷に応じてCPUフェーズ数を切り替えることで変換ロスを削減するのが主な機能。さらに一定時間アイドル状態が続くとデスクトップテーマをAeroからベーシックに切り替えたり、GPUクロックの制御なども可能となる。Intel Turbo Boost同様にリアルタイムに可変するため、刻々と負荷が変化するベンチマークではピークとしての数値に表れにくいのが難点だが、積算消費電力ではしっかりとした差が生じるものと推測される



Windows Experience Index

アイドル時消費電力

3D性能時

3D時消費電力

システム性能(PCMark 05)

PCMark 05消費電力

MediaEspresso 6.5

トランスコード時消費電力

 まず、SSD+80 PLUS電源に交換しただけで消費電力は一律10Wほど削減できている。

 性能に関しては、Windows Experience Indexでプライマリハードディスク値が2ポイントも向上したほか、3D性能比較で若干の上積み、PCMark 05では各テストとも上積みされると同時にHDDテストの値が大幅に向上、PCMarksスコアを押し上げている。実際にはPCMarks値ほどの性能向上を体感できはしないわけだが、当然普段の操作におけるレスポンスは断然良くなる。SSDも80 PLUS電源も一般化してきた頃合いなので、システムまるごとリフレッシュを検討される方はこうした省電力パーツにも注目して欲しい。

 一方、Dynamic Energy Saverを効かせた場合はというと、若干の性能ダウンが見られる箇所もあるが、ピーク時の消費電力を数ワット削減できるようだ。若干の性能ダウンという点で使いどころが難しいとはいえ、例えばCPUパフォーマンス的に見て十分でかつ特定の負荷が一定の時間継続するような用途で効果を発揮するだろう。しかしトランスコードに限れば3倍近く処理時間が伸びており、消費電力値は確かに削減できるものの、積算消費電力ではデメリットとなる。トランスコード処理のように処理が終われば終了、という用途ではこの機能に頼る必要は無いだろう。

 なお、SSDが手頃になってきたと言ってもまだ比較的高価で容量的にも少ない。こうした点を気にするならば、Intel Z68 Expressで利用できる「Smart Response Technology」(SRT)を試してみるのも良いだろう。HDDにとインストールしたOSに対しSSDがそのキャッシュとして働くことで、HDDよりも高速なデータ転送とSSDの弱点である容量面をHDDでカバーするストレージが実現する。


GIGABYTEのユーティリティEZ Smart ResponseでSRTを構築してみる。まずはショートカットアイコンをクリック1発。

最初に表示されるのはこれからRAIDモードを適用するに際し、セットアップ完了後に再起動することの確認

接続されているSSDをSRTで利用する場合、内部のデータが破棄される旨の警告。ここまでの警告表示の後、Intel Rapid Storage Technologyも自動的に導入され、完了後にはSRTが利用できる情況が整っている
 このSRT、一般的なマザーボードでは、BIOSを設定し、ユーティリティを導入、そしてインストール手順に関しても注意があってなかなか大変な作業となる。

 しかしGIGABYTEのZ68マザーで利用できるEZ Smart Response機能を利用すると、まず通常どおりHDDにOSをインストール、電源を落としたところでSSDを接続した後、EZ Smart ResponseをクリックするだけでSRTが利用できる。BIOS設定やユーティリティの導入と適用といった一連の作業が全自動。セットアップトラブルから開放される。ここはGIGABYTEマザーの魅力と言えるだろう。

 なお、EZ Smart Responseユーティリティは同社Webサイトの各製品情報ページ、「ダウンロード」の箇所から入手する。今回例にした「GA-Z68X-UD3H-B3」であればこのURLから、「ユーティリティ」を指定すればよい。

 ストレージ機器が1台増えるぶん確かに消費電力は増えるが、たかだかSSD×1台分。そもそもプラットフォーム更新によって2007年環境から比べれば大幅な消費電力削減が実現しているわけで、その増加分は余裕でカバーできる。

 
PCアップデート=性能アップ&省電力化?

 ここまで調査してきたとおり、PCもエアコン同様、最新プラットフォームに乗り換えることで、大幅な消費電力削減効果が確認できた。エアコンと少し違うのは、設定温度まで冷えればOKなエアコンと違い、PCは時代とともにより高いパフォーマンスを求める点。その点でも十分な性能向上が確認できたわけだ。

 こうなると障害となるのは予算くらいだが、それも昨今の円高と値下がりによって敷居が下がってきている。省電力化によって月々の電気代を下げられればさらに吉。夏本番、停電によってPCゲームが楽しめないなんてことが無いように、インターネットに接続できないなんてことが無いように、消費電力需要がピークを迎える前に予算の神様の説得にチャレンジだ。


□日本ギガバイト
http://www.gigabyte.jp/
□CFD販売
http://www.cfd.co.jp/

GIGABYTE製品

[機材協力:日本ギガバイト/CFD販売]

※特記無き価格データは税込み価格(税率=5%)です。