あなたのPC大改造計画

「奥さんのストレス軽減用PC」はちゃんと安定して動くのか?(後編)

予算12万円でアップグレード text by 加藤勝明

PCの挙動を見守る依頼者のMさんと、熱くFF14プレイの様子を語るM奥さん。PCの自作やメンテナンスはMさんが行っているという。
FF14の画質は負荷を抑えるために、解像度を落としあらゆる視覚効果をオフにしてプレイしていたという。しかしそれでも落ちるというのだ。

 “AKIBA PC Hotline! 読者のデスクトップPCを今風にアップグレードします!”というASUS後援の連載企画「あなたのPC大改造計画」も第2回目。今回の依頼者は、千葉県在住のMさんだ。

 依頼のきっかけは奥さんが『ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア(以降FF14と略)』を遊ぶためのPCがプレイに支障をきたすほど不安定になっていたこと。

 FF14の画質設定を最低にしてみたり、ケース内にファン、ケース外にサーキュレーターという配慮を重ねても改善しないことから、今回の応募につながったという。

 さらに6月23日には拡張パック『蒼天のイシュガルド』が発売、同時にFF14自体も64bitやDirectX11に対応する(注:取材時は発売前)。安定したエオルゼアライフとリアル世界のストレス解消を両立できるような改造をご希望だ。

 今回のMさんが用意した予算は12万円。これにASUSTeKとAKIBA PC Hotline!編集部よりパーツの援助を加え、筆者が組み上げることになる。

 前編ではマシンの状況や要望、Mご夫妻の濃いなれそめ等をうかがったが、後編では実際の改造作業を中心にお届けする。

・「奥さんのストレス軽減用PC」はちゃんと安定して動くのか?(前編)
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kaizo/20150609_704666.html

あなたのPC大改造計画:記事一覧
第1回:「3万円で組んだスタイリッシュPC」は
「快適RAW現像+最新ゲームPC」になるか?
[前編後編]
第6回:「マインクラフトの実況PC」を快適に!
現役高校生の悲願は3万円+αで達成できるか?
[前編後編]
第2回:「奥さんのストレス軽減用PC」は
ちゃんと安定して動くのか?

[前編後編]
第7回:「ドラクエXをAPUで快適に!
ゲーム機を超える快適さを目指せ!!
[前編後編]
第3回:TITAN XのSLIで最強ゲームPCに!
ただでさえハイスペックなPCを
「フル水冷」のモンスターマシンへ強化
[前編後編道のり編]
第8回:勉強部屋でひっそりと使っていたPCを
ゲーミング&静音仕様に大改造!!
[前編後編]
第4回:Skylake + Win 10なPCはこう作る!
7万円で強化する「多趣味人のためのPC」
[前編後編]
第9回:女子高放送部に快適な動画編集用PCを!
快適環境で「目指せ全国!」
[前編後編]
第5回:6年前のCore 2 Duoマシンを
今風な快速マシンに大改造
[前編後編]

パーツ選びの方針はどうする?

 Mさん自身は応募時のメールに「FF14ベンチのスコアーで好成績を出したい」と記していたが、M奥さんはそれよりも「安定して遊べること」を熱望していた。

 つまり今回はFF14ベンチでワールドレコードに挑むような超性能ではなく、快適にプレイできつつ、耐久性とか信頼性を重視するパーツを選りすぐる、という方針に決定した。

 今回の予算は12万円と潤沢にあるようだが、流用できるパーツはPCケース+光学ドライブ位しかないため、実際にそう余裕があるわけでもない。マザーや電源、ビデオカードが動作の安定性を損ねている可能性が高いからだ。

 さらにメインメモリ4GB、OSもWindows 7の32bit版という点もひっかかる。FF14も64bit対応になることだし、今後使い続けることを考えたら、メモリもガッツリ載せておきたいので64bit版OSの購入も必須だ。

 様々な検討を重ねた結果、今回の改造では以下のようなパーツで構成することにした。ASUSTeKからはGTX960を搭載したビデオカード、編集部からは21:9のウルトラワイド液晶を提供させていただく。


アップグレード前購入予定パーツ想定購入価格(税込)
CPUCore i7-860(4C8T、2.8GHz、最大3.46GHz)Core i7-4790S40,000円
メモリDDR3-1333 2GB×2Corsair CML16GX3M2A1600C9(DDR3-1600 8GB×2)18,000円
マザーボードMSI Big Bang-Trinergy(P55・ATX)ASUSTeK H97-PRO GAMER(H97・ATX)14,000円
グラフィックスLEADTEK WinFast GTX 260 EXTREME+(GeForce GTX 260)ASUSTeK STRIX-GTX960-DC2OC-2GD5(GeForce GTX 960)※メーカーより提供
ストレージ
CFD販売 CSSD-S6T256NHG6Q13,000円
電源サイズ KMRK4-P-750A(750W、80PLUS Silver)EPM500AWT(500W、80PLUS Platinum)14,000円
CPUクーラーCPU付属サイズ SCKTT-10004,000円
OSWindows 7 Home Premium 32bit版Windows 8.1 64bit版(DSP)13,000円
液晶
ASUSTeK PB298Q編集部より提供
合計

116,000円

 上記パーツに対し、“それを選んだ理由”を解説するとしよう。

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CPU:Core i7-4790S

Intel Core i7-4790S

 いくらCore i7といえど、第1世代(Lynnfield)のものは消費電力も大きく、処理性能もいまひとつパッとしない。マザー交換に合わせてHaswell世代のCPUにしたい。

 FF14の負荷から考えて、Core i5の上位モデルでも十分耐えられそうだが、元々8スレッド処理が可能なCore i7を使っていたこと、最近のPCゲームはマルチスレッド処理も多用することからCore i7が将来性の面でも妥当と判断した。電源ユニットに余計な負荷をかけたくないため、TDP65Wの「Core i7-4790S」を選択した。

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マザー:H97-PRO GAMER

ASUSTeK H97-PRO GAMER

 旧PCのマザーが不具合の原因のひとつと考えられるため、マザーは交換前提。

 このマザー選択が今回多いに悩ませてくれた。耐久性重視ならASUSTeKの「SABERTOOTH Z97 MARK S」に代表されるTUFシリーズが適しているが、30,000円強という実売価格の高さがネックとなった。前述の通り今回は基幹パーツは信頼性重視で選んでいるため、マザーに予算を割きすぎると予算がもたないのだ。

 そこでゲーマー向けの「H97 PRO-GAMER」を選択。

 同社のR.O.Gファミリーのエッセンスを引き継いでおり、高品質なコンデンサの採用、背面USBやLANポート等には静電気防止用のダイオードなど、実売14,000円前後の製品ながら充実度は高い。時々ヒートシンクの下にもエアーを入れて掃除をすれば、長く働いてくれることだろう。

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ビデオカード:STRIX-GTX960-DC2OC-2GD5-SP

ASUSTeK STRIX-GTX960-DC2OC-2GD5-SP

 元々使っていたビデオカードはGeForce GTX 260。まだ現役で使えないこともないが、DirectX11に対応したFF14の拡張パックをこれから遊び込もうとする人にはやや性能も機能も足りない。

 だがGeForce GTX 960ならパワーの点でも省電力性能の点でもGTX 260を大きく上回る。GTX 970も良いがM奥さんの目的がFF14を快適にするということ、さらに消費電力を抑えれば電源ユニットへの負荷も軽減できるという点でGTX 960がベストだろう。

 そしてASUSTeK製を選んだのは冷却力の高いクーラーと信頼性の高さでは折り紙付きの基板設計があってこそ。基板裏面にはしっかりバックプレートが仕込まれているため、長期間使用しても基板が歪むリスクが低い。あらゆる意味で今回の案件にうってつけのパーツだ。

 ちなみに「METAL GEAR SOLID V:GROUND ZEROES」同梱版を選択したのはMさんだった。PC版はPS4版よりも画質が高いので、ぜひMさんにGTX 960上でプレイして頂きたいところ。

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SSD:CSSD-S6T256NHG6Q

CFD販売 CSSD-S6T256NHG6Q

 M奥さんがFF14をプレイしているのは子育てや家事のストレスを軽減するためというが、ならば起動ドライブをHDDのままにしておく訳にはいかない。ぜひともSSDを使うべきだ。

 筆者のように「GTAV」のような容量の大きい海外産AAAタイトルを遊びまくる人なら480GBクラスの大容量モデルをオススメするが、M奥さんが遊ぶのは現状FF14のみ。ならばコスパのよい256GBクラスのSSDで十分だ。今回選んだマザーにはM.2スロットも付いているが、予算面から普通のSATA3.0接続のものを選択。

 ただし今回は万が一フラッシュメモリの寿命が訪れても、リードオンリーモードになりデータを確実に読み出せるという東芝製SSDのOEMモデル「CSSD-S6T256NHG6Q」を選択した。

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メモリ:CML16GX3M2A1600C9

Corsair CML16GX3M2A1600C9

 元々使っていた4GB(2GB×2)でもメモリ不足でエラーが出ることはないだろうが、今どきのPCとしてはやや物足らない量。今後FF14の要求があがり、メモリ使用量が増大しないとも限らない。

 そこで思いきってメモリは8GB×2の16GBまで増やすことにした。これならFF14をプレイしつつ、Skypeでの通話や攻略情報の同時チェックといった並行作業に余裕が出るはず。

 ただ一口にメモリといってもピンキリ。安いメモリでも外れを引かないかぎり動作しないという心配はないだろうが、安定性重視という方針がある。そこでやや割高になるがCorsair製のモジュールを購入することにした。CL=9動作なので安定性が厳しいようならCL=11に下げて運用するという逃げが打てるのも選定のポイントとなる。

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電源:EPM500AWT

ENERMAX EPM500AWT

 電源の劣化もPCの安定性を損ねる大きな原因のひとつ。今回の改造対象PCも電源の劣化が疑われるため買い替えを決断した。

 電源もピンキリだが、今回は信頼性の高さには定評のあるENERMAX製を狙い打ち。前回が80PLUS Silverなので今回はGold以上にすることで変換効率の向上も狙いたい。ならばいっそ……ということで80PLUS Platinum認証済み電源を選択した。配線をスッキリできるプラグイン式であること、も決め手のひとつだ。

 電源出力はCPUがTDP65W、ビデオカードがGTX 960であることからそれほど大きなものは必要ない。メモリやOSにもそれなりに予算を割く必要があるので、手ごろ感のある500Wモデルを選択した。これでも今回のハード構成なら十分に余裕がもてるはずだ。

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液晶ディスプレイ:PB298Q

ASUSTeK PB298Q

 編集部からの追加要素として選んだのは液晶ディスプレイだ。

 M奥さんの液晶はフルHD液晶だが、FF14をプレイしながら攻略情報を同時表示させるにはデスクトップはもう少し広い方がよい。しかしM奥さんのPCデスクの両脇には本棚があるため、デュアルディスプレイは持て余すだろうと判断。

 そこで編集部が選んだのは21:9のウルトラワイド液晶「PB298Q」だ。これならウインドウモードでFF14を起動しつつ、隣に攻略情報を常に表示させておくことができる。戦闘中の動きが思いだせなくなった時、視線をスッと横に動かすだけで確認できるようになるはずだ。

 また、PB298Qはフリッカーフリー仕様なので眼にも優しい、M奥さんのストレス軽減に役立てば幸いだ。

いざ秋葉原!

取材した時は結構物静かな印象を受けたが、買い物時はアキバの魔力を吸収したためか、もしくは夜勤明けだったせいかせいかテンションの上がっているMさん。

 構成が決まったところでMさんとスケジュールを調整し、秋葉原へパーツの買い出しに繰り出した。

 メインの出資者がMさん自身とはいえ、やはり最終出費は安いことに越したことはない。ちょうど運良く「Windows 8.1 DSP版の特価セール」の品物が残っていたので迷わず捕獲。その後は各パーツを求めて秋葉原をしばし探索。

パーツは支払い後まとめて筆者宅へ直送。これに合わせ改造対象PCも送付されてきた。
届いたパーツの山。レビューで散々他社から借り物パーツを弄り倒している筆者だが、この改造企画は他人のメインマシンを弄るだけに、ものすごく緊張する。
パーツ到着に合わせ届けられたM奥さんのFF14プレイ用PC。ケースは全アルミ製だが、かなりしっかりとした作りだった。

改造前にちょっと検証

配線のゴチャつき感が今風でないのと、底面やベイ部分に細かいホコリが付着しているが、ホコリでファンが目詰まりしているような感じはない。ストレージは個人情報保護の観点から、抜いた状態で送っていただいている。
OCCTのPower Supplyテストを実行すると、すぐエラーを吐いて止まる。今回のような本格的な自作機でOCもしてないのに30分持たないのはかなり深刻だ。

 改造対象PCに改造用パーツも揃ったが、やはり元のPCのどこが不安定なのかを知りたいところ。今原因を探ったところで既に賽は投げられている状態だが、軽くチェックしてみることにした。

「Memtst86+」「FF14ベンチ」「OOCT Perestroika 4.4.1」の3種類のテストを実施したが、Memtest86+とFF14ベンチは何事もなく動作した。しかしOCCTの「Power Supply」テストでは負荷をかけて30分も経たないうちにエラーにより停止する。

 リテールクーラーがやや食いつきの悪いものなのが判明したため適当なサイドフロー式クーラーに交換。これによりOCCT実行中のCPU温度は90℃前後から70℃前後に下がったが、それでもエラーの頻度は変わらない。マザー、あるいは電源が原因のようだが、納品まで残り時間がないためこれ以上のテストは断念した。

 その後の分解で様々なことがわかってきた。前回取材時にPC内部を見た時は、底面等に細かいホコリは見えたものの、比較的キレイに見えた。しかしパーツを取り外しエアを吹いてみると、細くて短い毛の塊がボワッと出てくる。ファンの軸からは毛玉も出てきた。

 特にマザーのVRM部にかかるヒートシンクの下からは結構な量のホコリの塊が出てきた。パーツが劣化していたことに加え、ホコリ等で冷却効率が悪化し、これが落ちる原因になったと考えられる。
 さらにビデオカードも経年変化により若干歪んでいた。こうした細かいことの積み重ねが、安定度を落としていたと見るべきだろう。

CPUクーラーの裏側を見ると、標準で付いている熱伝導シートが川の字ほぼそのままの形で残っていた(写真は少し拭いた後)。今のクーラーなら川の字は完全に潰れるが、LGA1156の頃のリテールクーラーは接触が甘いものがあった。写真のクーラーもそれだろう。
CPUクーラーをリテールクーラーより冷えるもの(サイズ『SCYS-1000』)に変更して実験。CPUコア温度は最大73℃まで下がったが、それでも落ちる時は数分で落ちる。原因は発熱ではないようだ。
ビデオカードを真上から見ると、補助電源側がしなっていた。重力のほかにATXメインパワーケーブルの束に押されたことも変形の原因のようだ。ただ経験上、この程度なら十分セーフだが疑惑はのこる。
ファンブレードにはびっしりと目の細かいホコリが付着。軸から毛玉も出てきたので、潔く全て破棄することにした。
毛玉の原因は恐らくMさん宅の飼い猫だろう。細い毛はPCの隙間に入り込みやすい。

 それではいよいよ組み立てと、動作検証だ。

追加指令をどうクリアするか?

ドンガラだけになった状態。この後各部を無水エタノールで拭いてひたすら掃除。
ベースが分離するのでマザーやビデオカードの固定は非常に楽。前回のようにCPUクーラーが高くケースに入らないという凡ミスはしっかり回避した。

 今回の企画を進行させる中でMさんと様々なやりとりを進めていった結果、MさんはPC内部の配線をどうにかしたい、と考えていることもわかった。確かに今回流用するPCケースは工作精度はよいが、設計が古いゆえに配線を小奇麗にまとめることが難しい。

 しかし幸いなことに、流用するPCケースはケース内にファン固定用のネジ穴がいたる所に空けられている。これを利用すればなんとかなるはずだ。

 あとはひたすら結束バンドを駆使しつつ、ケーブルをまとめるだけ。流用するPCケースはマザーを固定するベース部分がケース本体から分離する設計だが、この設計を殺してしまわないよう、固定する場所に配慮している。

CPUやGPUが低発熱化しているので、ケース内部につけるファンは全部撤去できる。ファン固定用の穴を利用して様々なケーブルを固定する。今では使いようのない5インチベイもケーブル固定に動員してスッキリさせた。
ビデオカードの補助電源ケーブルの取り回しにはちょっと悩んだが、写真のようにケース上部から出し、ビデオカードに対して上向きに軽くテンションをかける形で固定。カードの自重で歪むことはある程度抑えられるだろう。
ホコリまみれのケースファンは破棄し、かわりに編集部予算でGELID製の12cmファン「Silent 12」を前に2基、背面に1基追加した。

FF14ベンチのスコアは2倍!消費電力は4割ダウン

 それでは改造前と後でどの程度性能が変化したかチェックしてみよう。性能評価に使うのは、もちろん「蒼天のイシュガルド」を先取りしたFF14公式ベンチだ。

 解像度は1,920×1,080ドット、改造前に使っていたGTX 260がDirectX11非対応であるため、DirectX9モードでの「標準品質(ノートPC用)」と「最高品質」を中心に見ていきたい。

FF14ベンチの結果

 GTX 260からGTX 960に変更することで、描画性能は2倍~3倍にアップした。GTX 260でもフルHD&最高品質で遊べないこともないが、要所要所でカクつきが激しい。その点GTX 960ならDirectX11の最高品質でも余裕でプレイできるはずだ。

 もうひとつ、消費電力の差もチェックしてみよう。OS起動10分後および「OCCT Perestroika 4.4.1」のPower Supplyテスト実行10分後の消費電力を「Watt Checker」にて計測した。OSは両方ともWindows 8.1 64bit版である。

システム全体の消費電力

 Haswell世代のCPU&第2世代MaxwellのGPUに80PLUS Platinum電源の組み合わせ効果は絶大。

 アイドル時の消費電力がほぼ4分の1に下がっているほか、高負荷時の消費電力も約40%も低くなった。CPUとGPUを全力で回しても250W以内で納まっているので、500W電源でも余裕をもって動かせることがわかる。

 しかしM奥さんが欲しいものは性能よりも安定性。

 そこでOCCTのPower Supplyテストを6時間連続で動かし、エラーが出ないことを確認して安定性は確保されたと判断した。さすがにFF14クライアントに起因する安定性までは担保できないが、重量級のPCゲームで遊んでもヘタれることはないだろう。

OCCTのPower Supplyテストで安定性を確認。6時間連続動作時におけるCPUパッケージ温度の最大値は62℃、GPU温度は69℃としっかり冷却できている。
OCCTのほかGTAV連続プレイ等の試練も無事パスし、晴れて完成となった。

納品の儀! 果たしてMご夫妻の反応は……?

 では新PCの納品の儀といこう。M奥さんの求める安定性は達成できたものの、FF14を高画質で見せても「ふーん」と一蹴されるのではないか……道中筆者の脳裏にはこんなマイナス思考が渦巻いていた。

さすがに本体+液晶+パッケージ+旧パーツが合わさると移動も開梱もひと仕事だ。
ちゃんと設置できるか心配だったウルトラワイド液晶も、いざ設置してみればPCデスクにピッタリ。
改造後PCをお披露目しつつ、Mさんにポイントを解説。そしてPCを定位置に戻し、M奥さんによる火入れの儀。もちろん何事もなく起動した。

 道中抱き続けていた不安感もFF14を実際にプレイして貰ったら一発で吹き飛んだ。

 GTX 960によって画質がぐっと向上したのはもちろんだが、液晶が新しくなったことで発色や陰影のキレが増したことにM奥さんが歓喜の声をあげる。以下淡々と記していくが、M奥さんのテンションは終始上がりっぱなしだった。

[加藤]改造する前と比較してどうですか?

[M奥さん]今まで画質とかエフェクトを全部落として遊んでいたので、遠くにいるキャラは近くによらないと表示されませんでしたが、このPCだと遠くから見えるのが凄くイイですね。

 すれ違ったキャラが魔法を使うと「こんなエフェクト出てたんだ!」とか、NPCの造形を見て「こんな風になってたんだ!」等しばしエオルゼア探検を楽しんで頂いた。PCをお預かりする間、ずっと編集部より貸与されたノートPCで低画質プレイしていたのだから、そのギャップたるや凄まじいことだろう。

ソロで行ける範囲でエオルゼア観光を堪能。これだけ喜んでいただければ、改造人冥利につきるというものだ。
デモ用システムを消しOSの再セットアップも終了。第3回目も請うご期待だ。

 輸送時にPC内部に詰め物をして振動対策したら、詰めものでSATAケーブルのラッチを押してしまい、光学ドライブのケーブルが抜けかかっていた、という情けないミスをしてしまったが、根底を揺るがす大きなトラブルはなし。安定性を確保し、FF14をストレスなくプレイするという目的は見事達成されたと評価してよいだろう。

 では最後に、メーカーならびに編集部の援助パーツがない場合、Mさんの提示した12万円でどういった強化が可能か考えてみよう。

 12万円もあれば、FF14を遊ぶPCを一台組むのは非常に簡単だ。ビデオカードはGTX 960に固定してもCPUはCore i5、メモリは4GB×2の普及品に……等とパーツのグレードを少し下げるだけでOS込みの11万円程度で全て仕上がる。ただし将来の負荷増大へのマージンは少なくなるし、万一トラブル発生時に“あのパーツをケチったからでは……”という疑念を心に植え付けることになる。これは精神衛生上非常によくない。

 さらに今回編集部枠で提供させて頂いたウルトラワイド液晶(+PCケースのファン)の予算まで確保できないため、FF14はやや古びた液晶で遊んで頂くことになる。フリッカーフリー機能がない時代の液晶だし、経年劣化による発色の衰えもあるため、眼に優しくなく、見辛い画面になることだろう。

 という訳で第2回目のPC改造計画は終了だ。PCをアップグレードしたいが、どこから手をつけていいかわからない、あるいは、久しく自作から遠ざかっているのでヘルプが欲しい、といった人の応募を編集部は待っている。どしどし応募して欲しい。

【あなたのPCも“大改造”してみませんか?】

 当企画では、アップグレード対象となるPCを随時募集しています。読者の皆さんが用意した予算と、ASUSからの提供パーツ(数万円相当)を組み合わせ、プロのライターが最適なアップグレードを検討、組み込み作業まで行います。

 募集要項と応募フォームへのリンクは、以下のページにありますので、内容をご確認の上、奮ってご応募下さい。

【詳細はこちら】

[制作協力:ASUS]

(加藤 勝明)