あなたのPC大改造計画
ドラクエXをAPUで快適に! ゲーム機を超える快適さを目指せ!!(後編)
text by 清水 貴裕
(2015/12/15 11:36)
AKIBA PC Hotline! 読者のPCが抱える問題を解決するため、ライター陣と編集部が知恵を絞って今風なPCにアップグレードするASUS後援の連載企画「あなたのPC大改造計画」の第7回目がスタート(7回目前半までの模様はこちら)。第7回目の依頼者は、神奈川県にお住いのMさん。
親戚や知人のPC環境構築やトラブルシューティングを請け負っている関係でWindows 10環境が必要になったMさん。CPUやメモリ、HDDを交換してマシンを強化してから無償アップグレードに臨んだものの、ビデオカードが正常に認識されないというトラブルに見舞われ、Windows 7に戻してマシンを使っていたのだという。
あなたのPC大改造計画:記事一覧 |
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第1回:「3万円で組んだスタイリッシュPC」は 「快適RAW現像+最新ゲームPC」になるか? [前編:後編] |
第2回:「奥さんのストレス軽減用PC」は ちゃんと安定して動くのか? [前編:後編] |
第3回:TITAN XのSLIで最強ゲームPCに! ただでさえハイスペックなPCを 「フル水冷」のモンスターマシンへ強化 [前編:後編:道のり編] |
第4回:Skylake + Win 10なPCはこう作る! 7万円で強化する「多趣味人のためのPC」 [前編:後編] |
第5回:6年前のCore 2 Duoマシンを 今風な快速マシンに大改造 [前編:後編] |
第6回:「マインクラフトの実況PC」を快適に! 現役高校生の悲願は3万円+αで達成できるか? [前編:後編] |
第7回:「ドラクエXをAPUで快適に! ゲーム機を超える快適さを目指せ!! [前編:後編] |
第8回:勉強部屋でひっそりと使っていたPCを ゲーミング&静音仕様に大改造!! [前編:後編] |
第9回:女子高放送部に快適な動画編集用PCを! 快適環境で「目指せ全国!」 [前編:後編] |
そんな最中本企画を知り、ストックしているパーツを有効に活用してマシンをアップグレード出来ないかと思い応募して下さったらしい。
前編記事ではMさん宅に伺って悩みを伺って来た。それを踏まえて後編記事ではマシンのアップグレード作業を行いたいと思う。
Windows 10環境を導入しつつ、Mさんがプレイしている「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」(以下、ドラクエX)がフルスクリーンで遊べるマシンへと仕上げるのが今回の目標だ。
今回の予算は3万円!ストックパーツをどう活用するかがカギ
今回、Mさんが用意して下さったアップグレード予算は3万円。一からパーツを揃えるとなると厳しい予算だが、Mさんのストックしているパーツを有効に活用する事でどうにかアップグレードを完遂したいところ。
前編で決定した目標は「Windows 10環境の導入」と「Windows版ドラクエXが快適に遊べるマシンにする」の2点のみ。更にMさんからの要望で手持ちの「A10-7870K」を使ってアップグレードする事も決まっている。
第一目標である「Windows 10環境の導入」だが、Mさんの手持ちのWindows 7は32bit版。アップグレードでメモリ容量が増えたとしても、32bit版は使えるメモリの量に上限があるためどこか釈然としない。Mさんと協議の結果、「せっかくなので64bit版にしたい」との要望を頂いたので、64bit版OSに買い替える事が決定。
第二目標の「ドラクエXを快適に遊ぶ」ためにキーとなる3D性能だが、APUはVRAMとしてメインメモリを使用するので、メインメモリの速度が3D性能に影響するようになっている。Mさんの手持ちのメモリはDDR3-1600のモデルなので少し心許ない。この点もMさんと協議の結果、DDR3-2133のモデルに買い替える事となった。
提供パーツに関してはASUSさんからはマザーを提供して頂く事になった。編集部からのプラスαだが、SSDの快適さを体感して頂こうという事で今回はSSDを提供する事にした。
アップグレード前 | 購入予定パーツ | 想定購入価格(税込) | |
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CPU | Core 2 Extreme X6800(2C2T、2.93GHz) | AMD A10-7870K(4C4T、3.9GHz) | Mさん手持ち |
マザーボード | ASUS P5VD2-MX(VIA P4M890) | ASUS A88X-GAMER(AMD A88X) | ※メーカー提供 |
メモリ | DDR2 2GB×2 | G.Skill F3-2133C10D-8GXM (DDR3-2133、4GB×2枚) | \6,700 |
グラフィック | XFX Radeon HD6450(AMD Radeon HD6450、1GB) | AMD Radeon R7(AMD A10-7870K内蔵) | APU内蔵グラフィック機能を利用 |
ストレージ | SEAGATE ST2000DM001(HDD 500GB) | Intel 535 Series 240GB(SATA3, 240GB) | ※編集部提供 |
電源 | ケース付属(300W) | 550W | Mさん手持ち |
サウンド | AUDIOTRAK PRODIGY HD2 | - | マザーボード搭載機能を利用 |
PCケース | KEIAN KT-MH803 | サイズ SARA3 | Mさん手持ち |
CPUクーラー | リテールクーラー | A10-7870K付属リテールクーラー | |
OS | Windows 7 Professional 32bit版 | Windows 7 Professional 64bit版(Windows 10へ無償アップグレード) | \14,000 |
光学ドライブ | - | 東芝サムスン SN-208FB(スリムタイプ) | \2,300 |
小物類 | - | Ainex Slimline SATA電源変換セットコネクタ | \800 |
小物類 | - | Ainex HDM-10 スリムドライブ&HDD変換マウンタ | \1,800 |
合計 | \25,600 |
今回の使用パーツをチェック
CPU:AMD A10-7870K
今回使用するのはMさんのストックパーツの中から発見したAMDのAPU「A10-7870K」だ。ちなみに、改造時の実売価格は18,500円前後だった。
内蔵GPUとして、Graphics Core Nextアーキテクチャの「Radeon R7 Series」を搭載しているので、解像度や画質の設定にもよるがビデオカードを増設する事なくゲームを動かす事が出来る。低コストにゲームマシンを組む際には打って付けの製品だ。
マザー:ASUS A88X-GAMER(AMD A88X)
2014年以降に発売したSocketFM2+/FM2に対応するASUS製マザーは6種類と意外にも少ない。さらに、MさんはサウンドカードやLANカードを別途実装するほどにこだわりのある人だ。となると、サウンドやLAN機能がしっかりしたモデルを選びたい。
今回はASUSさんからマザーを提供して頂けるとの事だったので、A88Xチップセットを搭載するSocketFM2+マザーである「A88X-GAMER」を選んだ。オーディオ向けコンデンサやヘッドホンアンプを搭載するサウンド機能「SupremeFX」や、Intel製のLANコントローラを搭載するゲーマー向けのモデルだ。
同社の検証でWindows 10への対応が確認されているモデルなので、今回の用途では最適なA88Xマザーだ。
メモリ:G.Skill F3-2133C10D-8GXM
APUのグラフィック性能を底上げするために高クロックなOCメモリを導入。ワンランク上のDDR3-2400の製品でも良かったのだが、在庫切れの製品が多く入手性が悪かったので、DDR3-2133の本製品を選んだ
容量は合計で8GBあれば十分との事だったので、4GB×2枚組にした。
SSD:Intel SSD 535 Series 240GB
念願のWindows 10環境を実現したとしても、ストレージがHDDのままでは起動速度やレスポンスの面でMさんのメインマシンであるMacBookには勝てない。せっかくアップグレードするのだからSSDの快適さを体感して頂こうという事で、編集部予算で「Intel SSD 535 Series 240GB」を提供する事にした。
240GBの容量があればドラクエXメインの使い方では十分だし、ゆくゆく他のゲームが遊びたくなった場合も安心だ。
OS:マイクロソフト Windows 7 Professional 64bit DSP版
32bit版OSだと利用出来るメモリ容量に上限があるために、64bit版を新たに導入。当初はWindows 10 Homeの64bit版を買う予定だったが、3,000円近く安かったのでWindows 7 Professionalの64bit版を購入。無償アップグレードを利用してWindows 10化する事にした。
ちなみにだが、最新のBuild 10586からは7/8/8.1のプロダクトキーを利用してのアクティベートに対応しているので、Windows 10を直接インストールする事が可能となっている。
思わぬトラブル発生もなんとか組み込み完了……
APUを使用したシンプルな構成をストックされていたケースに組み込むだけなので、作業は短時間で完了するはずだった。
しかし、ここで5インチベイに搭載する「スリムドライブ&HDD変換マウンタ」が牙を剥く。なんと、マウンタが干渉してフロントパネルが取り付けられないのだ。冷や汗ダラダラの状態なのは言うまでもないが、「取り付けられませんでした」では済まないのでまずは原因究明を行う。
干渉している部分を見付けるためにフロントパネルの内側を観察してみると、どうやらフロントパネル側の5インチベイカバーが干渉しているようだった。ネジを外せば分解できそうだったので、思い切ってネジを外してカバーを取り外すことにした。
するとこれがビンゴで、カバーを取り外すとギリギリではあるがフロントパネルの取り付けが可能になった。
5インチベイに搭載したマウンタの次に苦労したのが配線の処理。スリムタイプのケースに非プラグインタイプのATX電源の組み合わせなので、不要なケーブルを取り外す事が出来ない上に配線を逃がすスペースもほとんどなかった。
電源のケーブルがスリーブで束ねられていないタイプだったので、結束バンドを駆使して配線を束ねつつ、空いたスペースに纏める事でどうにか処理した。ケーブルをスリーブで束ねる事も考えたのだが、ただでさえ少ないスペースを圧迫しかねないので今回は結束バンドのみを使用した。
今回はDDR3-2133のOCメモリを使うので、完成後はマシンを起動させてOCメモリの設定を行う。XMP設定をロードしないと製品通りのスペックでは動作しない訳だが、XMPはIntelプラットフォームでしか利用出来ない。
しかし、ASUSのAMDマザーには「D.O.C.P.」という独自機能が搭載されているので、メモリ内に記憶されているXMP情報のロードが可能だ。
設定方法は、UEFI内の「Ai Tweaker」タブを開き、「Ai Overclock Tuner」をクリックして「D.O.C.P.」を選ぶだけ。XMP情報は、特定のIntelプラットフォームに最適なアクセスタイミングやメモリ電圧が採用されている場合が多いので、全てのメモリがAMD環境で動く訳ではないが、簡単にOCメモリの設定が出来る本機能はとても便利だ。
完成後は公式ベンチマークの「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4k」を実行して動作確認。消費電力値はOS起動10分後のアイドル時に32.8W、ベンチマーク中に153.1Wを記録。各部の温度はベンチマーク中にCPUが81℃、内蔵GPUが73℃を記録した。
そして、出来立てほやほやのマシンを車に積み込みそのまま納品に出発。致命的なミスをしているとは気付きもせずに……
いよいよ納品!ドラクエXは快適に動作するのか?!
実際のゲームがどこまで快適に動くのかは未知数なので、納品後にMさんと一緒に設定を試す事にした。
今回の目標はフルスクリーンでのプレイ。前マシンでは1,920×1,080ドットのフルスクリーンモードでドラクエX公式ベンチマークを実行すると、動作はカクカクでスコアは1,863ポイント、評価は「重い」となっていた。これがAPUマシンだとどこまで伸びて、動作がどのように改善されるのかは見物だ。
まずは公式ベンチマークを実行してスコアをチェック…… といきたい所だが、一同が異変に気付く。CPU-Zのメモリタブを開くと動作モードがなんとシングルチャンネルとなっているのだ。
筆者はAMDプラットフォームではメモリを内側から順番に挿すと思い込んでいたが、SocketFM2+/FM2ではIntelプラットフォームのように間隔を開けて挿すようになっていたのだ。メモリを挿し直す事で、動作モードはデュアルチャンネルになったので一安心。なんとも間抜けなミスだ……(苦笑)
気を取り直して公式ベンチマークを実行すると、アップグレード前のマシンのようなカクツキもなく動作はスムーズ。そして、スコアは7858まで伸びて評価は「とても快適」になった。ベンチマークの設定は前編記事と同じで、解像度は1,920×1,080ドット、グラフィック設定は標準品質、表示方法はフルスクリーンを選択している。
次にMさんに実際にゲームを遊んでチェックしてもらう。アップグレード後のマシンにMさんが満足してくれるのか、緊張する瞬間だ。
[清水]アップグレード前のマシンと比べて、ゲームの快適さはどうでしょう?
[Mさん]アップグレード前とは快適さが段違いですね。ゲームがフルスクリーンで遊べるようになったのもいいですし、SSDのお陰かゲームやWindowsの起動が速くなったのも嬉しいです。そして、念願の64bit環境が手に入ったのも嬉しいですね。
[清水]概ね50FPS前後で動いているので、快適に遊べそうですね。ただ、人が多い所に行くとFPSが24前後まで落ち込むのは気になりますね。
[Mさん]人が多い所が実は一番重いんですよね。ただ、これ以上を望むとなるとビデオカードを増設しないといけないので、コストパフォーマンスが悪くなると思います。プレイヤーが満員になるような過密サーバーに行かない限りは問題ないので、これ位の性能があれば満足です。
低コストゲームマシン向けに魅力的な「APU」
ドラクエXというゲームが「意外に重い」ことには驚いたが、超過密サーバーを避ければ、APUでもフルスクリーン環境で快適にプレイ出来そうな印象だ。解像度や画質にこだわらなければ様々なゲームに対応出来るので、低コストでゲームマシンを組みたい場合にはAPUは魅力的な選択肢といえる。
さて、「提供パーツなし」で考えてみた場合だが、APUの場合「APUとマザーを買い替えるだけ」であれば30,000円でも十分イケる。最上位のA10-7870Kを使ったとしても、残りの12,500円で購入出来るマザーは何枚もある。ASUSで言うと、下位のA68Hチップセットを搭載する「A68HM-E」は実売価格が8,000円前後、A88Xチップセットを搭載するmicroATXモデルの「A88XM-PLUS」は11,500円前後、下位モデルの「A88XM-A」は10,000円を切っており、選択肢は意外に多い。
APU性能を引き出すためにDDR3-2133クラスのOCメモリを購入すると、30,000円は超えてしまうが、それでも35,000円以下に抑える事は十分可能。3D性能を強化したいのならばメモリのアップグレードを検討する価値もあると言える。
予算を掛けずに「軽くゲームが遊べるアップグレード」をしたい人は、APUを使ったプランを候補に入れてみるのがいいだろう。
[制作協力:ASUS]