忍者増田のレトロゲーム忍法帖

「村正」、「手裏剣」、「聖なる鎧」 全部手に入れた?
『ウィザードリィ』の楽しさはアイテム収集にもアリ!

~ファミコン版『ウィザードリィ』編 弐ノ巻~

ファミコン版の初代『ウィザードリィ』のカートリッジを持つ忍者増田氏。

 前回は『ウィザードリィ』の魅力であるシビアな戦闘やキャラクターの育成について語ってもらった。今回はそれ以外の魅力である「アイテム収集」と「想像力がかき立てられる設定」について、持論を展開していく。



最終目的はボスの討伐ではなくレアなスーパーアイテムの回収?

戦いに勝利すると宝箱を開けることができる。中にはどんなアイテムが……。

 『ウィザードリィ』の魅力その3、アイテム収集! 『ウィザードリィ』には、宝箱からランダムで出現する数々のスーパーアイテムが存在します。固定で出現しないってことがポイントです。

 例えば、『ウィザードリィ』の三種の神器と言われる村正手裏剣聖なる鎧。こういったスーパーアイテムの出現確率はとっっっても低く、一度ラスボスのワードナを倒したぐらいのヤリコミ具合では、とても手に入れることはできません。でも、だからこそ、迷宮を何十回、何百回と歩き回り、レアなアイテムを手に入れたとき、まさに筆舌に尽くしがたい喜びを味わうことができるのでござる。

入手したアイテムを識別すると……「村正」だった!

 『ウィザードリィ』は、エンディングを見てハイ終了……という底が浅いゲームではありません。最終目的はボスの討伐ではなく、ダンジョンに眠るすべてのアイテムを回収し、ボルタック商店に並べること。そう言い切ってしまっても否定するファンはいないだろうと思います。前回お話ししたキャラ育成の要素も含めて、「長く遊べる」という点について、当時『ウィザードリィ』は他のゲームの追随を許しませんでした。

 そういえば、『ウィザードリィ』の6作目にあたる、『ウィザードリィ ベイン・オブ・ザ・コズミック・フォージ』では、村正が一定の場所で必ず手に入るようになっていて、ファンをビックリさせたことがありました。『ウィザードリィ』を愛する日本のゲームデザイナーならば、そんなプレイヤーの楽しみを奪うような作り方は絶対にしないはずで、このあたり、日本とアメリカでは『ウィザードリィ』の楽しみ方が違うのかもなーと当時思ったり思わなかったりした思い出……。

ビジュアルがシンプルであるからこそ自分の想像力を存分に働かせて楽しめる

シンプルなゲーム画面。ここから想像力を働かせ、プレイヤー独自の物語ができ上がっていく。ダンジョンは線画の選択も可能。
文字のみで表現される場面も自分の想像力で自由に補う。これも現代のゲームにはない部分である。それにしても、お金がないだけで背教者扱いとは。

 『ウィザードリィ』の魅力その4、想像力がかき立てられる設定! 拙者が『ウィザードリィ』を初めてプレイしたときの第一印象は、「暗いゲームだな」、「文字ばかりのゲームだな」というものでした。

 自分のパーティーやアイテムのグラフィック表示もなく、ダンジョンもPC版はシンプルなワイヤーフレーム表示。ファミコン版になってから、ダンジョンもモンスターも見栄えがしたけど、まぁそれでも、決してビジュアルの美麗さで勝負しているゲームではないですよね。

 でも、ビジュアル面がシンプルであるからこそ、『ウィザードリィ』は自分の想像力を存分に働かせて楽しむことができるゲームなのであります。キャラクターの姿やアイテムの形状などが決められた絵で固定されていないからこそ、自分の思い描いたものを自由にゲーム内に導入できるのが『ウィザードリィ』の良さなのでござるよ。

 さらに本作は、登場人物との長ったらしい会話もイベントもないし、物語すらも自分で思い描くことができます。実際に、自分の頭の中でオリジナルストーリーを作りながらゲームを楽しんでいたプレイヤーは多いはず。想像力が豊かな人ほど楽しめちゃうゲームなのです。

 さらにさらに、プレイヤーの想像力が成長すれば、再びゲームをプレイしても違う物語ができあがる可能性もあるわけでござる。同じ初代『ウィザードリィ』をプレイしても、子供のころより今のほうが面白くプレイできるかもしれません。ある意味、ズルいゲームなんだよねー。

時折見られた、真剣に画面を見つめる増田氏の様子。『ウィザードリィ』に対する「思い」を感じさせる一枚だ。

 アイテム収集の楽しさや、シンプルなビジュアルだからこそ想像力を存分に働かせられる点も魅力だと説く増田氏。

 この続きは17日(金)発売の『書籍版 忍者増田のレトロゲーム忍法帖』にて掲載していますので、続きが気になる方はぜひご購入ください。

 ※次回掲載は3月21日(火)を予定しています(次回はウィザードリィ編の対談を掲載します)。

 ※ 本日21:00から忍者増田氏出演の生放送「忍者増田のレトロゲーム忍法帳:生動画絵巻」を放送予定。  生放送は終了しました。

 当連載の書籍化が決定! 今回掲載している「ウィザードリィ」編の続きが読めるほか、書き下ろしタイトルを収録! レトロゲームに関する内容を全128ページに詰め込みました! 書籍の詳細については別記事で紹介中。

 なお、正式発売日は3月17日(金)ですが、BEEP 秋葉原店で3月11日(土)から先行販売しています!

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『ウィザードリィ』は今このプラットフォームで遊べる

初代『ウィザードリィ』を今遊ぶには?(参考価格/価格は税込表記)
ファミコン版(中古品/付属品無し)2,100円前後
ゲームボーイカラー版(中古品)15,000円~
PC-8801mkIISR版3,300円前後
MSX2版12,000円前後
ウィザードリィ・コレクション(Windows版)35,000円~
※2017年2月調べ

注釈

  1. アイテム収集
    ダンジョンにもぐり、敵を倒し、宝箱から出てくるアイテムを集める。これも『ウィザードリィ』の楽しさのひとつである。ゲットした武器が何なのか、想像するだけでワクワクしたもんです。
  2. 宝箱
    魔物を倒した際にドロップする。宝箱を開けるとお金が手に入り、たまに武器や防具などが「?つえ」「?よろい」という未鑑定状態で出てくる。とはいえ、宝箱にはかなりの確率で罠が仕掛けられているので、それを解除する必要アリ。無理やり開けたり、解除に失敗すると痛い目に。
  3. 村正
    『ウィザードリィ』シリーズおなじみの、侍専用の日本刀。その切れ味は本作の武器の中で最強。実際の村正は徳川家に祟る妖刀として知られているが、最初のAppleII版では「MURASAMA BLADE」となっていたのは、ファンの間では有名なトリビアである。
  4. 手裏剣
    『ウィザードリィ』シリーズおなじみの、忍者専用の武器。攻撃力が高いのはもちろんのこと、所持していればエナジードレインを防ぎ、毒にも抵抗力を持つというメリットがある。成長のために要する経験値が全職業中で最も高い忍者は、できればエナジードレインなんて受けたくないもんね。
  5. 聖なる鎧
    ロード専用の鎧。その鉄壁の防御力もさることながら、ドラゴン系などの敵の攻撃を緩和し、悪魔やアンデッド系などの敵への攻撃力が2倍になるというおいしい付加効果アリ。ヒーリング効果も備えているので、装備できないキャラクターにも、ヒーリングアイテムとして持たせていたプレイヤー多数。
  6. ワードナ
    まごうかたなきシナリオ1のラスボス。魔法使いのすべての呪文を使用することができ、4レベルエナジードレイン、クリティカルヒット、毒、麻痺、石化という様々な特殊攻撃を繰り出してくる容赦のなさ。ただ、呪文無効化率は、グレーターデーモンほど高くない。
  7. ボルタック商店
    地上にある、武器や防具などのアイテムの売買ができるお店。他にも、アイテムの鑑定や、呪われたアイテムの解除もしてくれる。冒険者が売ったアイテムはそのまま店頭に並ぶので、保管庫としての役割も果たす。もちろん、買い戻すときは料金がかかってしまうが。
  8. ワイヤーフレーム
    ここでは、線で描かれたダンジョンのことを指す。PC版『ウィザードリィ』はダンジョンが線のみで描かれており、実にシンプルでした。
  9. 長ったらしい会話もイベントもない
    主人公が自分語りをすることもないし、ある場所に行くと画面が切り替わってイベントを見るとかもない。出てくるメッセージを読んで、ドキドキワクワクするのはキャラクターではなくプレイヤーなのである。

増田厚(ペンネーム:忍者増田)

 茨城県生まれ。漫画『ゲームセンターあらし』や『マイコン電児ラン』の影響を受け、中学2年生のときにパソコンをいじり始める。東京の大学入学と同時に、パソコンゲーム誌『ログイン』にバイトとして採用され、6年間在籍。忍者装束を着て誌面に出る編集者として認知度が高まる。その後、家庭用ゲーム雑誌『週刊ファミ通』に3年在籍したあと、フリーライターとなる。現在はおもに、雑誌やWeb、攻略本などでゲームのレビュー記事や攻略記事を執筆しつつ、ゲーム以外のライティングも。得意なゲームは、『ポケモン』、『ウィザードリィ』、『サカつく』など。