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買取られたスマホはどこでどうなる?年間50万台を出荷するスマホ再生工場に潜入してきた

マジでこんなにお得なの!? スマホ買取の「今」 第4回 text by 日沼諭史

毎日数百台~数千台が運び込まれるイオシスのリファビッシュセンターに突撃!

 新しいスマホが欲しいけれど、懐はさみしい……。そんなときに、今使っている機種を現金買取してもらえる専門ショップのスマホ買取がお得で便利で簡単であることを、これまで3回に渡ってお伝えしてきた。なじみのない人にとっては謎の多いスマホ買取専門店だが、意外と気軽に利用でき、すぐに新機種の資金に充てられることがおわかりいただけたと思う。

 しかし、もっと謎が多いのは、買取に出した自分の(ものだった)スマートフォンが、その後「どこでどんな風に処理されているのか」というところ。個人情報が残ってしまっていないか、消したデータが復元されないようになっているかなど、不安な面もあるかもしれない。

 東京・秋葉原にあるイオシスの買取センターでは、買取後の端末は基本的に「リファビッシュセンター」へ送られ再生作業が行われる。

 リファビッシュセンターとは一体どういう施設なのだろうか。今回、東京・江東区にあるイオシスのリファビッシュセンターに潜入し、買取後のスマホの様子を追ってみた。

リファビッシュセンターには少ない月で2万台、多い月であれば6万台近い台数が入庫される。年間50万台ほどがここから出荷されているとのことだ。
データ消去や清掃が済んだモデルから順次店舗へ搬送される。秋葉原へはもちろん、大阪、名古屋、福岡にもここから配送される。

二重の電子錠と360度の監視カメラで万全のセキュリティイオシスのスマホリファビッシュセンターに潜入

ここがリファビッシュセンターだ!この中の一角が作業スペースになっており、床面積は約250坪/800㎡強とのこと。

 やって来ました! イオシスのリファビッシュセンター。かなり大きな建物だけれど、ここは倉庫などとして使われているところ。いくつかの会社が入居していて、その一角にリファビッシュセンターがある。店舗などで買取られた端末の多くや、宅配買取サービスを利用して個人から送られてきた端末は、このリファビッシュセンターに毎日続々と運び込まれるのだ。

 さっそく中に入ってみたいところだが、個人情報を扱う施設ということもあり、関係者でもそのまま建物に侵入することはできない。なので、受付で入館証を受け取り許可を得てから内部へ。リファビッシュセンターの入口手前には従業員が私物をしまっておくロッカーがあり、荷物は基本的にすべてここに置いていく。どうしても内部に持ち込みたい小物があるときは、必ず備え付けの透明の袋に入れ、携帯しなければならない。

従業員の手荷物を保管するロッカー
どうしても持ち込みたい私物はこの透明の袋に
中身が見える形で運ばなければいけない

 入口のセキュリティは電子錠。従業員1人1人がもつICカードで解錠するようになっている。入退室時は必ずICカードをかざさなければならず、その記録はすべてログとして残る。人の出入りは厳格にチェックされているので、めったなことはできない。もちろん、外部の人間が入る際もカードが人数分渡され、ログがとられる。

リファビッシュセンターの本当の入口
ICカードをかざして入退室する
入退室のログがすべて記録されている
「商品化されたアイテムの管理、出荷」をするエリア

 しかも、リファビッシュセンターの内部は「検品・クリーニング、商品化(梱包)」をするエリアと、「商品化されたアイテムの管理、出荷」を行なうエリアの2つに分けられ、そのエリア間にもう1つ同じセキュリティ扉が設けられている。1つのリファビッシュセンターのなかといえども、異なるエリアを自由に行き来できるわけではない。

個人情報などを扱うエリアに入るにはさらにセキュリティキーが必要
「検品やデータ消去、クリーニング、商品化(梱包)」を行うエリア

 また、各エリアには360度カメラが複数台設置され、常時内部を監視している。万一侵入者による盗難などがあっても、その証拠を死角なしに残しておける。リファビッシュセンター内はもちろんのこと、イオシスの別の拠点からも監視映像を常にチェックできる。セキュリティはかなりカッチリといった印象だ。

360度カメラで死角なしで全体を監視
要所には通常の監視カメラもある
監視映像はイオシスの他の拠点からもチェックできるそう

ADECの認証のデータ消去を徹底、売った後もユーザーが安心できる対応をFeliCaのデータ消去にも対応、出荷までの迅速さもウリ

イオシスのリファビッシュセンターは、店舗買取りや業者から仕入れしたスマホをリファビッシュするラインと、宅配買取したものをリファビッシュする2ライン体制になっている。

 このリファビッシュセンターにおける全体的な作業の流れは以下のような感じになっている。

1. 送られてきた端末の箱を開封する
2. 買取時や申し込み時の書類などと情報を突き合わせる(検品作業)
3. 検品作業と同時に細部のクリーニングも行う
4. 端末のデータを消去(初期化)する
5. イオシスの店舗在庫として情報登録し、梱包(商品化)する
6. 各店舗へ運ばれる

 イオシスでは複数の買取ルートがあり、そのルートによって大まかに2つのチームに作業が振り分けられている。たとえば店舗で買取した端末はAチーム、宅配買取で個人から送付されてきたものはBチーム、といった具合だ。

 スタッフは合わせて40名以上。個人以外に法人からの買取もあり、毎日数百台、多い時には数千台という単位で搬入されるとのことで、それぞれに適切なフローを構築したうえで並行作業しなければ間に合わない規模といえる。

店舗で買取られた端末が商品になるまで

 店舗で買取られた端末と宅配買取で送られてきた端末は査定作業の有無などがあるため、若干リファビッシュの工程が異なる。まずは店舗買取された端末がどう製品化されるのかを写真で紹介しよう。

1. 赤いプラスチックボックスに入ったものが、店舗からリファビッシュセンターに送られてきたばかりのもの。
2. 各店舗から送られてきた端末は一か所に集められる。
3. 箱のフタ部分はロックされ、輸送中に故意に空けられた場合は判別できるようになっている。
4. 店舗買取の端末は初期化作業からスタート。
5. 専用のデータ消去ソフトを用いて初期化。このソフトはデータが安全に消去されていることを証明する第三者機関「ADEC」による認証も取得している。
6. データの消去が終わったものは青色の箱に移される。
7. 端末の情報を確認しつつ細かなクリーニング作業へ。
8. イオシスの在庫として情報登録し、梱包された端末は出荷エリアへ移される。

宅配買取りで届いた端末が店舗に並ぶまで、1週間ほどで店舗に

 宅配買取りでリファビッシュセンターに届いた端末は査定作業もあるので、店舗買取りで届いた端末とは若干工程がことなる。こちらも写真で流れを追ってみよう。

1. 個人から直接送られてくる宅配買取。まずは開梱するところから。
2. Webからの申し込み情報と一致しているかどうかを確認する検品作業。
3. 機能などのチェックと合わせクリーニングも行われる。
4. ちょっとした汚れが傷に見えてしまうこともあるため、きれいにしてから検品する。
5. クリーニングにはこれらの道具を駆使、フィーチャーフォンの時代はクリーニングがかなり大変だったそうだ。
6. 検品が完了した端末。
7. 並んでいるのはすべて検品済みのもの。問題なければ正式な査定額をメールで申込者に通知し、同意されればすぐに振り込み処理が実行される。
8. 買取が完了した端末はデータ消去のステップへ。
9. もちろんADECの認証を取得したソフトで安全に処理される。
10. 宅配買取では個人の住民票も添付された形で送られてくる。その個人情報の扱い方もADECで規定されており、写真の専用ポストにいったん集められ、その後所定の手順で安全な場所に既定の年数保管される。
11. リファビッシュ作業が済んだ端末は個別のコードが割り当てられる。
12. イオシスの在庫として情報登録し、梱包(商品化)。

 イオシスで買取られたスマホは、ADECの認証を取得した安全・確実なデータ消去、情報管理が行なわれていることが特徴だ。

 宅配買取だと、端末がリファビッシュセンターに届いた後、検品、申込者の同意を得て振り込みされるまで通常は5日間ほど。早ければ即日ということもあるそうだ。端末自体はリファビッシュセンターに搬入されてから1週間程度で再び店舗に並ぶのだとか。

店舗への出荷を待つ端末たち
iPhoneシリーズは新旧取りそろえる
Androidタブレットも
スマートフォンだけでなく、さまざまなデバイスが生まれ変わっている
リファビッシュセンターで宅配買取を担当するエリアの責任者、山崎哲博氏

 宅配買取を担当するエリアの責任者である山崎氏によれば、この早さの秘訣は徹底した効率化にあるとのこと。端末の到着、検品・査定といったステップに応じて現場のシステムに情報入力することで、自動で申込者に確認メールが送られる仕組みになっており、省力化を実現している。宅配買取でも、店舗買取と同じレベルの迅速なサービスを提供したい、という思いがあるようだ。

 チャットツールのSlackなどを用いて従業員全員が最新の情報を共有し、円滑な検品作業につなげていることも大きい。最近ではiPhoneの端末初期化時における問題が新たに発覚し、即座に情報共有したことで査定時のトラブルを防ぐことができたという。

 その他、競合にはあまりないポイントとしては、FeliCa(おサイフケータイ)のデータ消去にも対応していること。店舗買取と宅配買取のいずれでも、スマホのストレージ内のデータ消去に加えて、おサイフケータイ対応端末についてはFeliCaチップ内部のメモリに記録された情報も削除する手順になっている。

FeliCaチップのメモリが使用されているかどうかをチェックし、消去できるツールをイオシスは導入している
一度でも使用されているFeliCaがあると「使用履歴あり」と判定される、データが消去されていない場合買取を拒否するショップもある
専用ツールを使うことで、ワンクリックでFeliCaの情報も消去可能
個人情報だけでなく、こうしたデータも完全消去して商品は店舗に並べられる

 このFeliCaチップのデータは、端末のデータとは別管理。ユーザーが端末をリセットしただけでは消えない仕組みで、買取業者でも消去できるところは少ない。このため、ショップによってはFeliCaのデータが残っているために買取不可とされるケースも珍しくないようだ。イオシスなら、その点気にすることなく気軽に買取に出せるのもユーザーとしてはメリットだろう。

FeliCaの使用履歴の有無を判定できる自社開発ツールもあり、検品作業時に使用されている

中古端末だからこその丁寧な情報管理売った側も買う側も安心できる環境構築に取り組むイオシス

 みなさんが店舗で買取ってもらったスマホや宅配買取で送付したスマホは、このようにリファビッシュセンターという場所で丁寧にチェック、クリーニングされ、梱包されたうえで、まるで新品のようになって改めて店舗に並べられることになる。

 毎日大量の端末が続々と届けられるなか、1台1台手間ひまかけて丁寧にクリーニングし、データ消去しているのが印象的。ここまできっちり処理されているのであれば、「リーズナブルな中古の端末もいいかもなあ」と改めて思った次第だ。

 ところで、今回初めて話題に上った「宅配買取」というサービス。これが具体的にどういうものなのかも気になるところだ。次回はそのあたりを詳しく紹介していきたい。

[制作協力:イオシス]