【不定期連載】レトロな○○ギャラリー

~ カラープリンタ内蔵のパソコン「MZ-700」 ~

MZ-700

 今回紹介するパソコンはシャープの「MZ-700」。「MZ-80K」シリーズの後継機として1982年11月に発表されたモデルです。データレコーダとプリンタの有無で、「MZ-711(本体+キーボード)」「MZ-721(MZ-711+データレコーダ)」「MZ-731(MZ-721+プロッタプリンタ)」の3モデルが用意されました。

 白黒に塗り分けられた本体の上部にデータレコーダとプリンタが、その下に明るい配色のキーボードが搭載されています。これまでのシリーズに搭載されていたディスプレイは外付けに変更となり、本体はコンパクトになりました。

 デザインの大幅な変更だけではなく、機能面も強化されており、動作クロックの向上や、メインメモリの最大容量の増加(48KB→64KB)、MZ-80Kには無かったひらがなや英小文字の表示といった機能のほかに、従来のモデルでは高価なオプションや専用ディスプレイが必要だったカラー表示も標準で搭載されました。

 また、本体にプリンタが内蔵できる点も特徴のひとつで、当時としては珍しかったカラープリンタを搭載していました。ちなみにこのプリンタが採用している印字方式は、ペンプロッタという現在ではあまり馴染みの無い方式です。

 高価なPC専用ディスプレイが無くても、家庭用テレビに接続すれば利用できる手軽さと、89,800円という手頃な価格は当時としては非常に魅力的で、当時、アルバイトが出来ない年齢だった筆者は、発売されてすぐに親に買ってもらいました。

 ちなみに、MZ-700は同社のパソコン「X1」とほぼ同時期(1982年末)に発売されたモデルです。MZ-700は、MZ-80Kとのソフトウェア互換が高かったため、買ってからすぐに楽しめた事を今でも思い出します。

スペック

・CPU:SHARP LH0080A(Zilog Z80A セカンドソース)
・動作周波数:3.6MHz(0.0036GHz)
・メインメモリ:64KB(0.000064GB)
・周辺IC:i8253互換 i8255互換
・同時発色数:8色 (文字8色、背景8色)
・テキストビデオメモリ:4KB(0.004MB) 表示可能文字 40×25
・解像度:320×200ドット ドット分解能力 80×50
・サウンド:1音モノラル
・記憶装置:データレコーダ
・記憶メディア:コンパクトカセット
・記憶装置容量/60分テープ装着時:約270KB(1,200ビット/秒)
・表示装置:デジタルRGB、コンポジットビデオ、RF(地上アナログ1ch、2ch対応)接続

本体正面の様子。MZ-721にオプションのプリンタを搭載してMZ-731相当にしてあります。
キーボードはASCII準拠のキー配列になっただけではなく、ファンクションキーも追加されました。ちなみに、打鍵感はMZ-80Kに比べて、大幅に改善しています。
ゲーム操作を意識したように見えるカーソルキー。このキーが追加された代わりに、飾り文字キーが25個減ったので、一部のソフトは設定の修正が必要でした。
データレコーダです。記録メディアはコンパクトカセットを使用します。
プリンタです。専用ロール紙に印字します。印字方式はインクジェットや熱転写ではなく、ペンプロッタと呼ばれる現在ではあまり馴染みの無い方式です。
プリンタカバーを開けた状態。中央の白いホルダーにプロッタペン×4色(黒/青/赤/緑)をセットします。残念ながら今回は用意することができませんでした。
白いホルダーが左右に、ロール紙が上下に動いて印字を行います。色の変更時は、白いホルダーが自動で回転して、中にセットしたプロッタペンが切り替わります。
背面の様子です。RF、コンポジットビデオ、RGB、外付けデータレコーダ、ジョイスティック、I/Oバス、プリンタの各端子と、リセットスイッチ、音量調整ボリュームが並んでいます。
プリンタと、データレコーダを外しました。MZ-721ではプリンタが、MZ-711ではさらにデータレコーダがオプションとなります。
プリンタの接続状態。写真ではわかりにくいのですが、幅の広い赤いケーブルの後ろに内蔵/外付けプリンタの切り替えスイッチがあり、どちらを使うのか選択することができます。
データレコーダの接続状態。コネクタの左に見える銀色のケースにRFモジュレータが収められています。
ケースの上部カバーを外した状態。システムボードやキーボードユニットが見えます。
電源ユニットです。出力は5V単一。自然対流で冷却されるため、ファンは搭載されていません。
本体の低価格化につながったカスタムチップ「M60719」です。
東芝のICはキャラクタ文字と色指定のSRAMです。1個で2KBの容量があります。基板上に「ROM(CG)」と書かれた場所のIC(写真 最上部左から2番目)は、キャラクタ256文字分が2セット入っているROMです。
CPUは4MHz動作対応の「Z80A」ですが、実際は3.6MHzで動作しています。基板上の「4164」と書かれた場所にある8個のICが64KBのメインメモリです。ちなみに、銀色のシールが貼られたICにはBOOT ROMが収められています。
左上から、I/Oバス、ジョイスティック端子、MZ-711用のデータ記録再生用のIN OUT端子です
一番下に見える黒いコネクタはキーボード接続用です。中央にあるNECのICは、キーボードとデータレコーダの入出力を行う「8255A」、刻印が消えかかっていますが、その左下のICは音を制御する「8253C」です。
オレンジのコネクタの下に見えるスライドスイッチは、プリンタの内蔵/外付け切り替え用です。上部のスイッチ類は、左上から、リセット、ボリューム。その隣がプリンタ端子です。
RGB、コンポジットビデオ、RFの接続を可能にしたユニットです。
FDD I/Fカードです。接続端子に近い部分の「14-A」と書かれたICは、ディスクBASIC付属のROMです。
手持ちのオプションを全て接続してみました。フロッピーディスクドライブ(FDD)はX1用を接続しています。
右下の拡張I/OボックスにFDD I/Fカードを取り付けて、FDDを接続しています。一緒にジョイスティックも取り付けました。

標準価格

・MZ-711(本体+キーボード) 標準価格:79,800円
・MZ-721(MZ-711+データレコーダ) 標準価格:89,800円
・MZ-731(MZ-721+プロッタプリンタ) 標準価格:128,000円
・MZ-1T01(内蔵データレコーダ) 標準価格:10,000円
・MZ-1P01(内蔵プロッタプリンタ) 標準価格:39,800円
・MZ-1U08(拡張I/Oボックス) 標準価格:25,000円
・MZ-1F07(FDD 2ドライブ) 標準価格:158,000円 (MZ-1E05 同梱)
・MZ-1E05(FDD I/Fカード) 標準価格:不明
・MZ-2Z009(ディスクBASIC) 標準価格:不明 (専用ROM付き)
・MZ-1X03(ジョイスティック) 標準価格:3,800円
・CZ-503F(FDD 1ドライブ) 標準価格:49,800円 ※今回接続したFDD

※当時の物価:はがき 1枚40円・国鉄(現JR)初乗 120円・タクシー初乗430円

(後藤 儀兵衛)