実践!今時PCの活用法

メモリ128GBで映像加工用PCを構築、快適なクリエイター向けPCを作ってみた

After Eeffectsが快適に使えるハイエンドPC、8コアにQuadro、SSD RAIDも text by 坂本はじめ

 「実践!今時PCの活用法」第四回目となる今回のテーマは、「クリエイター向けPC」だ。

 ひとくちにクリエイター向けと言っても、イラスト制作や3DCG、動画など色々ある。今回は、Adobeの動画加工・合成ソフトAfter Effects CC(2015)[以下、After Eeffects]の利用を想定し、プロとして活動するクリエイターでも快適に使えるPCを目指すこととした。

実践!今時PCの活用法 :バックナンバー
第一回
写真も音楽もマルチSSDで快適に、ベイ6基、しかも小型なPCを作ってみた
第ニ回
長く使う骨太ゲームPCの作り方指南、電源とマザーにはお金をかけろ!
第三回
小型PCを「快適・常用・頑丈・省電力」で作ってみた、Core i3で高コスパ

 Adobe After Effectsは、動画にさまざまな映像効果を加えるアプリケーション。動画分野のプロフェッショナルにも使われる高い機能を備える一方、Adobeのクリエイター向けアプリケーションの中では群を抜いて要求するスペックが高い。現行のPCであれば動作はするが、快適となるとかなりのハイスペックPCが必要だ。

 なお、筆者は映像クリエイターではないので、組み上げたPCの評価を映像クリエイターの瀬戸氏にお願いした。実際に快適なPCに仕上がったのか、プロの評価も合わせて紹介しよう。

128GBメモリと8コア16スレッドCPUを搭載!ハイエンド・クリエイターPC

Adobe After Effects CC(2015)

 Adobe After Effectsを出来るだけ快適に動かせるPCを目指し、選定したパーツが以下のリストだ。

 予算的にはかなり豪華なものになったが、プロが使っても問題ない性能になるよう信頼性の高いパーツでかためてみた。

 モデル価格(税込)
CPUIntel Core i7-5960X Extreme Edition135,000円前後
マザーボードASUS X99-E WS67,000円前後
メモリCrucial CT16G4DFD8213(DDR4-2133 16GB) ×8枚144,000円前後(8枚合計)
ビデオカードNVIDIA Quadro K4200120,000円前後
システムストレージCrucial CT500MX200SSD1(500GB)21,000円前後
作業用ストレージCrucial CT1000MX200SSD1(1TB) ×2台94,000円前後(2台合計)
データ用ストレージWestern Digital WD60EFRX(6TB)30,000円前後
ケースSilverStone SST-TJ04B-EW20,000円前後
電源SilverStone SST-ST65F-PT25,000円前後
CPUクーラーCRYORIG H5 UNIVERSAL7,500円前後
OS日本マイクロソフト Windows 10 PRO 64bit24,000円前後
  合計687,500円前後

 今回の構成で最も大きなポイントと言えるのが、128GBの超大容量メインメモリだ。After Effectsは、編集中の動画のプレビュー作成に大量のメインメモリを必要としており、メインメモリの容量は作業の快適性に直結する要素なのだ。

今回作成したクリエイター向けハイエンドPC。
ケースはSilverStone SST-TJ04B-Eを採用。6台の2.5インチドライブと9台の3.5インチドライブを搭載できる、ストレージ収容力に優れたミドルタワーケースだ。
マザーボードのASUS X99-E WS。DDR4メモリスロットを8本備えたIntel X99 チップセット搭載のワークステーションマザーボード。
80PLUS PLATINUM認証取得の650W電源SilverStone SST-ST65F-PT。24時間7日の連続出力にも対応する。
CPUクーラーにはCryorig H5 Universalを使用。LGA2011-v3向けCPUにはCPUクーラーが付属しないため、別途用意する必要がある。

 それでは今回選んだパーツの実際の効果を見ていこう。

メモリ128GB実装でリアルタイム処理時間を最大に複数アプリを立ち上げながらの作業も安心な大容量

今回用意したメモリの総容量は128GB。
After Effectsのメモリ設定画面では、「After Effectsが使用しないメモリ容量」を指定する。

 今回のPCでもっとも重視したメモリから効果を紹介しよう。

 メモリ容量はリアルタイムで確認できるプレビュー時間に直接影響する部分で、多ければ多いほどリアルタイムに画質調整やフィルターの効きを確認できる動画の長さが伸びる。リアルタイムプレビュー可能な時間が、快適に動画を加工できる動画の長さといえる。

 After Effectsの使用するメモリ容量管理は少々変わっており、自身が使用するメモリ容量を指定するのではなく、他のアプリケーションに割り当てるメモリ容量という形で設定を行う。After Effectsは空いているメモリを全て使うという思想で作られているようだ。

 それでは実際に128GBのメモリ容量がどれだけの効果を発揮するのか、After Effectsが使用できるメモリ容量が100GBと16GBになるようそれぞれ設定し、デジタルカメラで撮影した1,920×1,080ドット(60fps)の動画ファイルに対して、After Effectsのプレビュー時間がどう変化するのか紹介しよう。

プレビュー時間(フル画質)
After Effectsが使えるメモリ領域を100GBにした場合(左)と、16GBにした場合(右)のプレビュー時間(フル画質)の違い。100GBで2分14秒、16GBで19秒となった。タイムライン上部の緑色のラインが作成されたプレビューの時間を示している。
プレビュー時間(1/2画質)
After Effectsのプレビューの画質を2分の1に落とした場合のプレビュー時間。メモリ領域100GB時で8分43秒、16GB時で1分13秒。設定を2分の1よりも落とすと画質的に厳しくなるが、2分の1程度であれば許容できる範囲だろう。

 結果は、16GBのメモリ容量で作成できたプレビュー(フル画質)が19秒であったのに対し、100GBのメモリでは2分14秒のプレビュー映像を作成できた。想像以上に少ないと思われるかもしれないが、それだけAfter Effectsがヘビーだということだ。

 結果を見ると、1カット19秒に収まる動画であれば、16GBのメモリ搭載すれば快適に使えると言えるが、制約はかなり大きい。動画にタイトルロゴを入れたい場合など、PhotoshopやIllustratorなどを併用して使うこともあると思うが、同時に立ち上げてしまうとプレビュー時間は数秒程度しか確保できなくなる。

 かたや、100GBほどあれば長めのカットや、複数カットを繋げた状態でもリアルタイムに処理することが可能になり、自由度がかなり高くなる。これだけのリアルタイムプレビュー時間を確保できれば、編集中の動画の出来を連続した流れで確認することも可能で、他のアプリケーションを立ち上げながらでも快適に操作できるだろう。

瀬戸氏の評価

 128GBはHDDではなくメモリなんですよね、これは凄いですね(笑)。メモリ容量は16GBだと足りなくなることがあり、32GBや64GBが標準的なライン、128GBはかなり贅沢だと思いますね。

 プレビュー時間の目安としては1~2分程度、画質は1/2以上を維持したいところなので、メモリ容量は32GBくらいからが快適なラインになるのではないでしょうか。

 ただ、容量128GBとなるとAfter Effects単体ではなかなか使い切ることは無いと思うので、PhotoshopやPremiereなどを同時に立ち上げて使う場合に真価を発揮すると思いますね。そこそこのスペックのPCでも複数アプリケーションを立ち上げて作業を行う時はメモリが足りなくなることが多いので、プロの現場向きともいえます。

 また、プレビューの作成はメモリのバス幅も影響するので、メモリに関してはかなり速く快適といえるのではないでしょうか。

Crucial CT16G4DFD8213。DDR4-2133動作の16GBモジュール。動作電圧は1.2V。
搭載チップはMicronのメジャーチップ「D9SRJ」で、1枚8Gbit(1GB)のDRAMチップを16枚搭載している。今回はこれを8枚用いて128GB環境を構築した。

 これまで100GBを超えるような大容量メモリ環境はECC-Registered DIMMなどが利用できるサーバー向けPCなどに限られていたが、DDR4メモリからは一般的なUnbuffered DIMMでも16GBメモリが利用可能になり、コンシューマー向けの環境でも大容量環境を構築可能になった。

 今回使用しているメモリは、1枚で16GBの容量を実現したCrucialのDDR4メモリ「CT16G4DFD8213」で、これを8枚用意した。DDR4-2133で動作するCT16G4DFD8213は、Micronのメジャーチップ「D9SRJ」を採用した製品で、Haswell-EやSkylakeなどのコンシューマ向けのCPUで利用可能だ。

 大容量メモリ環境を構築しやすくなったDDR4メモリ採用プラットフォームは、動画加工向きのプラットフォームとも言えるだろう。

動画の加工にはコア数が多い方が有利8コア16スレッドのIntel Core i7-5960X Extreme Editionを搭載

Intel Core i7-5960X Extreme Edition。動作クロック3.0GHz(ターボ時最大3.5GHz)の8コア16スレッドCPU。

 CPUに採用したのは、Intel製コンシューマ向けCPUの最上位モデルである8コア16スレッドCPU「Core i7-5960X Extreme Edition」を搭載。

 PCで利用できるアプリケーションの中でも、映像編集系のアプリケーションはマルチコアCPUへの最適化が進んでいる分野だ。完成した動画の書き出しや、別形式のエンコード作業では、1基で8コア16スレッドの並列処理が可能なCore i7-5960X Extreme Editionが多いに役立つ。

 After Effectsでも、プレビュー作成時や書き出し時に、Core i7-5960X Extreme Editionの高い並列処理能力によって、レンダリング時間の短縮が可能だ。

 映像編集をこなすパソコンにとってCPUの性能は、いまでも作業の快適性を大きく左右しうる要素だ。今回のパーツ選択ではメモリに重きを置いたが、快適性を求めるならCPUも妥協せずに高性能なものを選びたい。

After Effectsは処理によってはかなり負荷が高く、16スレッド全てに高負荷がかかる場面もある。
TMPGEnc Video Mastering Works 6でH.265/HEVC形式に動画をエンコードしている際のCPU使用率。8コア16スレッドをほぼ使い切って処理を行っていることが確認できる。このように、動画処理には多コアCPUが真価を発揮する場面も多い。

瀬戸氏の評価

瀬戸氏には実際にピクセルモーションの処理の速度を確認してもらった。

 After Effectsを使うにあたり、気になるのがエフェクト処理のスピードです。1本のタイムラインに対していくつもエフェクトをかけることもあるので、エフェクト処理が早いと作業効率がかなり上がります。

 タイムワープのピクセルモーションを使ったエフェクトは、フレーム間の絵を演算で生成してスローモーションの映像を作成するものなのですが、演算処理が非常に重く、性能がかなり要求されます。この処理が速ければAfter Effects向きの性能をもったPCと言えるのではないでしょうか。

 今回の使用しているPCの処理速度を見る限り、かなり速い部類だと思います。普通のPCではこんなに速く処理できませんから。CPU性能のおかげで他の動作のレスポンスも良いと思いますしね。

 ただ、速いと言っても処理自体は重いので、動画編集アプリケーションのようにサクサクと動作するものではありません。このあたりが動画加工と動画編集の大きな違いで、要求される性能の違いにもなりますね。

レスポンスの良さに影響するSSD操作感を向上させるならデータソースはSSD置くのがお勧め

 今回のPCには、OSをインストールするシステム用、映像ソースを置く作業用、データの保管庫として利用する保存用、以上3つのストレージを備えた。システム用と作業用には、Crucial製SSDの中でも性能と耐久性を重視した上級モデルMX200シリーズ。データ用にはWestern Digitalの6TB HDD「WD60EFRX」をそれぞれ採用した。

システム用SSDのCrucial CT500MX200SSD1。容量は500GBでインターフェースはSATA 6Gbps。最大読み出し555MB/s、最大書き込み500MB/s。
作業用SSDのCrucial CT1000MX200SSD1。容量は1TBでインターフェースはSATA 6Gbps。最大読み出し555MB/s、最大書き込み500MB/s。
データ用HDDのWestern Digital WD60EFRX。SATA 6Gbps接続の6TB HDD。

 システム用とデータ用については、言葉のままの用途なので詳細は省くが、作業用のストレージを備えた目的は、映像編集中にソースファイルの読み出しが発生した際に生じる待ち時間を短縮し、作業をより快適にするためだ。

 映像編集用の作業用ストレージには、快適性のカギとなる高速な転送速度に加え、ファイルサイズの大きな映像ソースを保存しておける容量が必要となる。そこで、今回は1TB大容量SSDを2台用意し、これをストライピング構成とすることで、1,000MB/sec前後のシーケンシャルアクセス性能と、約2TBの大容量を実現した。

2台のSSDでダイナミックディスク(ストライピング)を構築したことで、シーケンシャルのリードとライトがともに1,000MB/secに達する2TBの作業用ストレージが完成した。
データ用HDD(Western Digital WD60EFRX)のベンチマーク結果。HDDとしては高速だが、SSD2台を束ねた作業用ストレージとの間には大きな速度差がある。

 現在のSSDなら、わずか2台でこれほど高速かつ大容量な作業用ストレージを構築できる。今回、大容量のデータ用HDDを別途搭載しているので、編集を終えたデータについては、データ用のHDDに移して保管し、作業用ストレージには編集中のファイルだけを置くという使い方も可能だ。

 After Effectsではないが、筆者も映像編集ソフトを使って動画を作成している際、複数のソースをタイムラインに並べていくにつれ、プレビューのレンダリングに掛かる時間だけでなく、ソースの読み出しにかかる時間によってシークが遅くなるという状況に直面したことがある。ソースを置くストレージのパフォーマンスは編集作業時の快適性にかなりの影響を与えるため、今回のように高速なストレージを利用する意義は大きい。

瀬戸氏の評価

 全体的に操作感が軽いですね。プレビューの作成なども速く感じますが、この辺りはSSDの速度やメモリのバス幅などが影響していると思います。

 自分の場合は、管理のしやすさから1プロジェクトに1ディスクを割り当てています。ディスクごとクライアントに渡す場合もあるので、元ソースも加工したファイルやプロジェクトファイルも同じ場所に置いていますね。理想を言うならアプリケーションインストール用、元ソースファイル置き場、ファイル書き出し用にそれぞれSSDを用意した方が良いといえるのではないでしょうか。

3D処理を行うなら対応GPUは必須、明らかに変わるレスポンス購入時は動作の確証が得られているこなれたモデルがお勧め

NVIDIA Quadro K4200。KeplerベースのGPUコアと8GBの大容量GDD5メモリを備えるプロフェッショナル向けGPU。
Quadro K4200はNVIDIAがAfter Effects向けの推奨GPUとしている製品だ。

 AdobeのCreative Cloud製品群は、積極的にGPUを活用するアプリケーションとしても知られており、After Effectsでもレイトレース3DのレンダリングにGPUを活用することで、より高速にプレビューの表示が可能となる。

 ただし、After Effectsでレイトレース3Dのレンダリングに問題なく活用できるとされているGPUは、Adobe側で検証が完了しているGPUのみとなっている。After Effects CCの最新版である2015年版では、Adobe側で検証が完了していないGPUについても、警告文に同意することでレンダリングに用いることが可能だが、その動作については保証されていない。

 実は、今回のPCに搭載したQuadro K4200は、Adobeのレイトレース3D対応リストには未掲載のGPUだ。ただ、このQuadro K4200については、GPUメーカーであるNVIDIAがAfter Effectsの推奨GPUとしているモデルであり、設定でレイトレース3DのGPUレンダリングを有効化すれば問題なく利用できる。

Quadro K4200のGPU設定画面。サポートされていないGPUである旨の警告文にチェックを入れれば、Adobeが正式にサポートしていないGPUでもレイトレース3Dのレンダリングに利用可能。
レンダラーをクラシック3Dからレイトレース3Dに切り替えることで、より高機能な3D機能を利用できる。
レイトレース3Dレンダラーは高機能だが、描画負荷はクラシック3Dよりはるかに重い。対応GPUによる高速処理が無ければ、シークバーを動かしてからプレビューが表示されるまで数秒を要する。
レイトレース3D機能の有効時/無効時で、シークバーを移動させた際のプレビューが表示される時間までの比較

 3D関連の機能を使わない際のレスポンスはGPUの有無で変わらないが、使用する処理に関しては非常に大きな差がある。快適な動作環境を求めるならAfter Effects対応GPUは必須といえるだろう。

 なお、余談となるが、NVIDIAに問い合わせたところ、After Effects用のGPUとしては、フルHDの映像編集であればQuadro K2000以上、4K解像度ではK5000以上のGPUを使うことを推奨するとのことだった。快適なパフォーマンスを得るのであれば、相応のGPUコアとVRAMを搭載したモデルを選びたい。

 今回は、NVIDIAから推奨GPUとしてのお墨付きを得ているQuadro K4200を利用したが、確実にAfter Effectsで利用できるGPUを選ぶ場合、Adobeの対応リストに掲載されているGPUや、GPUメーカーが対応をうたうGPU搭載カードを選ぶべきだ。

・After Effects 必要システム構成(Adobe)
https://helpx.adobe.com/jp/after-effects/system-requirements.html
・BOOST MOTION GRAPHICS WITH A SIMPLIFIED 3D WORKFLOW(NVIDIA)
http://www.nvidia.com/object/adobe-after-effects-cc.html

※2016年1月27日追記

アップデートによりMaxwell世代のビデオカードも対応に

 1月27日現在、After EffectsはAfter Effects CC 2015.1(13.6)にアップデートされ、最新世代のMaxwellアーキテクチャのGPUも正式にサポート。

 現行のQuadro/GeForce搭載カードであれば、ほとんどの製品でレイトレース3Dレンダリングの機能が利用可能になった。

・Adobe After Effects CC 新機能一覧(Adobe)
https://www.adobe.com/jp/products/aftereffects/features.html
・what’s new and changed in the After Effects CC 2015 (13.6) update(Adobe)
http://blogs.adobe.com/aftereffects/2015/09/whats-new-and-changed-in-the-upcoming-update-to-after-effects-cc-2015.html

瀬戸氏の評価

 3D制作アプリケーションならQuadroは必須ですが、After Effectsに関しては、投資した分の効果があるかは使い方による部分が大きいといえます。GPU支援が効くエフェクトをよく使うなら必須ですし、あまり使わないのであれば高価なモデルを投入してもメリットを感じにくいと思います。

 以前はエフェクトの詳細情報にGPU処理なのかCPU処理なのか記載があり、Quadroの効果がわかりやすかったのですが、現在のバージョンはどちらで処理しているのか表記が無く、高価なGPUの恩恵が受けられるのかわかりにくいというのが現状です。

 自分が使用している用途で効果があるなら高級なモデルを導入した方が快適ですし、それほどGPU支援を使わないのであればAfter Effects対応GPUが搭載された手頃なカードを選ぶのが良いのではないでしょうか。

プロからみた今回のクリエイターPC、性能以外にもプロが求めるポイント

 今回のPCに関して、瀬戸氏からみたトータルの性能評価、ここからさらに強化すべき点なども聞いてみた。

瀬戸氏の評価

映像クリエイターの瀬戸氏

 プロは様々な状況に対応する必要があり、そういったことを考えると性能にマージンが欲しいので、今回のPCを触ってみて改めてスペックの重要性を感じさせられましたね。性能面では魅力ある構成になっていると思いますよ。スペックはプロ向けと言えるものです。

 構成を考えると価格もメーカー製よりも安価ですし、今使用しているPCより明らかに高速なので、触ってみて素直に欲しいと思いましたね(笑)。

 ただ、完全にプロ向けとするならば、保守やメンテナンスの面も重要になるので、これで保守サービスが受けられたり、パーツ交換がしやすい構造になっているとさらに良いと思います。

 クリエイターはPC本体の知識が豊富な人は少ないので、性能と合わせ、保守サービスの有無も重要なポイントになります。気になるのはその点だけですね。なので、自作PCの知識があるなら、価格や性能面で魅力ある選択肢になると思いますよ。

 もしこれ以上の性能を求めるとするなら、128GBのメモリが最大限活用でききるようにGPUやCPUを強化すると良いのではないでしょうか。それと、ディスクが交換しやすいようにリムーバブルケースなどを追加するのも良いと思いますね。

これから本格的に動画を作りこんでみたい人向けにエントリー構成も考えてみた

 After Effectsは、以前であれば単体価格で10万円以上する高価なアプリケーションであったが、現在のAdobe Creative Cloudで提供されているAfter Effects CCは、単月契約で3,180円(税別)、年間契約なら月額2,180円(税別)で利用できるようになり、導入コストの壁はぐっと低くなった。

 それに対し、今回作成した128GBメモリ搭載の映像編集向けPCは、高いパフォーマンスを実現するが、PC本体だけの価格で70万円に迫る。相応のパフォーマンスは備えているが、導入コストの壁は高い。

 そこで、今回はもう一台、Intelのメインストリーム向けプラットフォームLGA1151をベースにPCを構築してみた。

 モデル価格(税込)
CPUIntel Core i5-640024,500円前後
マザーボードASUS H170M-PLUS13,500円前後
メモリCrucial CT16G4DFD8213(DDR4-2133 16GB) ×2枚36,000円前後(2枚合計)
ビデオカードNVIDIA Quadro K200068,000円前後
システムストレージCrucial CT500MX200SSD1(500GB)21,000円前後
データ用ストレージWestern Digital WD30EFRX(3TB)12,500円前後
ケースSilverStone SST-TJ08B-E12,000円前後
電源SilverStone SST-ST50F-ESB6,500円前後
OS日本マイクロソフト Windows 10 Home 64bit16,500円前後
  合計210,500円前後
映像加工エントリー向けに構成したPC。
ケースはSST-TJ08B-Eを選択した。
4コアCPUのCore i5-6400。映像編集用のPCであれば、最低限4コア以上のCPUを搭載したい。
DDR4-2133対応の16GBモジュールCrucial CT16G4DFD8213を2枚搭載して32GBのメモリ容量を実現。
GPUにはQuadro K2000を採用。AdobeのAfter Effects対応GPUリストにも記載されている正式対応GPUだ。
システム用ストレージには、MX200シリーズの500GBモデルCT500MX200SSD1を採用。After Effectsのディスクキャッシュとしても利用するため、容量と耐久性を重視した。
データ用HDDとして利用するWestern Digital WD30EFRX(3TB)。
SilverStone SST-ST50F-ESB。80PLUS BRONZE認証で安価な電源でありながら、24時間7日の連続出力に対応する電源ユニットだ。

 コストの関係から、作業用ドライブを用意することはできなかったが、4コアCPUのCore i5-6400、32GB(16GB×2枚)のメモリ、After Effects対応GPUのQuadro K2000を搭載することで、一定のパフォーマンスは確保した。

 microATXケースながら、5台の3.5インチHDDを組み込める拡張性を持つSilverStone SST-TJ08B-Eを採用したことで、将来的にHDDやSSDを追加してパフォーマンスの向上を図る余地も確保している。メモリについても、16GBモジュールを利用しているため、スロットには2本の空きがある。必要であれば、将来的にメモリ容量を64GBまで拡張することも可能だ。

瀬戸氏の評価

 ハイスペック機の快適さには及びませんが、作業をする上でこちらのPCでも困ることは無いと思います。映像加工をするPCとしては十分なスペックを持っているのではないでしょうか。

 メモリも32GBあるので、プレビュー時間などがある程度確保できる快適に動作するラインは満たしていますしね。

 これから本格的に映像加工をしてみたいという人には悪くない性能だと思いますよ。

DDR4メモリならコンシューマ向けでも超ハイスペック環境が構築可能に自宅にプロユースレベルのワークステーションが作成可能

 今回製作した128GBメモリ搭載PCは、快適な映像編集作業を実現できる高いパフォーマンスを実現できた。もちろん、価格もPCとしては相当に高価だが、128GBのメモリ容量、8コア16スレッドのCPU、1GB/secクラスの転送速度を持つ2TBの作業用ストレージという、ひと昔前なら非常に高価なワークステーションマシンでもなければ実現できなかった要素を備えている。

 パソコンという括りでれば高価だが、編集作業から書き出しまでを一貫してこなせる本格的な映像編集マシンとしてみれば、個人クリエイターでも手の届く身近な価格であるとみることもできる。

 この価格を実現できたのには、大容量かつ高速なSSDの低価格化と、DDR4時代になり身近な存在となった16GBモジュールの存在が大きい。手軽に大容量メモリが入手でき、高速なストレージデバイスへの対応が整ったIntelのDDR4対応環境は、クリエイター向けPCの自作に好適であると言えるだろう。

[制作協力:Crucial]

(坂本はじめ)