忍者増田のレトロゲーム忍法帖

明菜やキョンキョンの歌よりも『マッピー』の曲にヤられたでござるよ

~ナムコ『マッピー』編 壱ノ巻~

『マッピー』のファミコンカートリッジと忍者増田氏。
(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

 忍者増田氏が名作レトロゲームを紐解き、その作品にまつわるエピソードや、今改めてプレイしてみての感想を語る連載「忍者増田のレトロゲーム忍法帖」。約4ヶ月の充電期間を経て、満を持しての連載再開です。

 再開第一弾のタイトルは、バンダイナムコエンターテインメントのアクションゲーム『マッピー』。今回はファミリーコンピュータ版(以下、ファミコン版)およびPlayStation向けソフト『ナムコミュージアム VOL.2』収録版(以下、PlayStation版)の2つをプレイし、その魅力を語り尽くします。

(編集部)

ゲームより先に、軽妙なBGMを好きになった『マッピー』

『マッピー』のファミコンカートリッジ。

 今回のお題は『マッピー』でござる。

 『マッピー』といえば、その可愛らしくユニークなゲーム内容もさることながら、BGMの秀逸さで当時群を抜いた存在でした。拙者が1980年代に触れたアーケードゲームのBGMで、『マッピー』が最もお気に入りだったと言っていいでしょう。

 一番最初に「音楽」を感じたアーケードゲームは『ニューラリーX』ですが、好みでいえば、断然『マッピー』でした。実は拙者、『マッピー』はゲームより先にBGMと出会っているのでござる。

ファミコン版のタイトル画面。
こちらはPlayStation版のタイトル画面。

 まだ音楽に「ゲームミュージック」というジャンルが確立されていなかった当時、ナムコゲームのBGMを集めた『ビデオ・ゲーム・ミュージック』というLPレコードが発売され、ゲーム業界の話題をさらいました。日本初のゲーム音楽のサントラと呼ばれるこのアルバムに、ゲーム少年たちはみんな飛びついたものです。

 収録されていたタイトルは、『ゼビウス』、『ボスコニアン』、『パックマン』、『フォゾン』、『マッピー』、『リブルラブル』、『ポールポジション』、『ニューラリーX』、『ディグダグ』、『ギャラガ』の10作品。

松本伊代さんのCDをBOXで所有している忍者増田氏。ちょっとそれ今回関係なくないですか?

 アイドル全盛期の1980年代、拙者は明菜キョンキョンの歌には目もくれず、これらのピコピコなゲームサウンドを聴きまくっていたのです。いや、ちょっと嘘です。伊代ちゃんの歌だけは少し聴いてました。

 どの収録曲も素敵だったんだけど、拙者はこのなかで『マッピー』の曲に特にヤられました。ポップでノリが良い『マッピー』サウンドはとても耳当たりが良く、カセットテープに録音してはそれこそ擦り切れるほど聴いていたのでござるよ。

増田氏が最初にプレイした『マッピー』はファミコン版トランポリンを使った移動法が新鮮

 で、曲が気に入ったから当然ゲームも遊んでみたくなるわけですが、さすがは茨城の田舎町。どこを探しても『マッピー』の筺体が見当たりません。拙者が見つけられなかっただけかもしれないでござるが……。というわけで、拙者が初めてプレイした『マッピー』はアーケード版ではなく、ファミコン版となるのです。実際にファミコン版をプレイして、音楽同様、ゲーム内容も好きになるのでした。

 『マッピー』は、主人公のマッピーを操作して、敵キャラのニャームコやミューキーズが盗んだ品物(ターゲット)を集めて回るチェイスゲーム。敵に捕まらないように屋敷内を移動し、全部のターゲットを取り戻すとラウンドクリアーとなります。

主人公のマッピーを操作して、ニャームコ屋敷に散らばるターゲットを拾い集めよう。(画面はファミコン版)
キュートなキャラクターの面々
(画面はPlayStaion版)
マッピー:正義感に燃える警察官。本編の主人公。ニャームコたちに盗まれたターゲットを取り返すことが目的。
ニャームコ:ミューキーズの親。ターゲットの後ろに隠れる習性アリ。本当は臆病者らしい。少ないドットで表情を感じさせるところが素晴らしい。
ミューキーズ:ニャームコの子供たち。マッピーをわりと真っ直ぐに追ってくるので、ニャームコより怖い。「HURRY」のメッセとともに数が増える。
ご先祖様:ニャームコたちのご先祖。クリアーに時間をかけていると出現。トランポリン時に触れてもミスになるし、パワードアの衝撃波も通用しない無敵のキャラ。

 追いかけてくる敵たちには、通路の途中にあるドアを開けてぶつけ、気絶させることが可能。少しぶ厚いパワードアは、開けると衝撃波が発射され、敵をまとめて吹き飛ばせるのでござる。

敵たちは、パワードアから出る衝撃波で画面外に吹き飛ばすことができる。(画面はファミコン版)
別の階に行きたいときは、通路の切れ目にあるトランポリンでジャンプして移動する。(画面はファミコン版)

 特に新鮮だったのは、トランポリンを使った独特の移動法。別の階に移りたいときはトランポリンに乗り、上昇中に方向キーを入れればその階に着地できます。トランポリンはバウンドし続けると、色が緑→青→黄→赤と変化。赤の状態で触れると破れてミスとなるけど、どこかの階に着地すれば最初の緑色に戻すことが可能。

 トランポリンで跳ねている最中は敵に触れてもミスにならないし、ボヨーンと浮遊する感覚はとても新鮮で気持ち良かったのでした。


 『マッピー』の音楽やゲーム性に心を奪われた当時の増田氏。

 次回はファミコン版には意外な落とし穴があったお話や、改めてファミコン版をプレイした感想を語ります。お楽しみに!

 ※次回掲載は8月8日(火)を予定しています。

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『マッピー』を今遊ぶには?(参考価格/価格は税込表記)
ファミコン版(中古品)400円前後
PlayStation版『ナムコミュージアム VOL.2』(中古品)1,000円前後
PSP版『ナムコミュージアム VOL.2』(中古品)6,500円前後
ゲームボーイ版『ナムコギャラリーVOL.1』(中古品)900円前後
ゲームギア版(中古品)1,000円前後
ゲームボーイアドバンス版(中古品)2,600円前後
ニンテンドーDS版『ナムコミュージアムDS』(中古品)3,300円前後
ニンテンドー3DSダウンロード版463円
Wii Uダウンロード版463円
※2017年7月調べ

注釈

  1. マッピー
    1983年に稼働していたナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)のアーケードゲーム。追いかけっこをテーマとした可愛い動きや軽妙なBGMで、幅広い層に愛された。ゲームデザインは佐藤英治氏、プログラムは黒須一雄氏、音楽は大野木宣幸氏、グラフィックデザインは小野浩氏が担当。その後もPCや家庭用ゲーム機を問わず、様々な機種に移植された。元々マッピーとは、1981年、第2回全日本マイクロマウス大会にナムコが参加させた迷路脱出用ロボットだった。一方ニャームコは、それより1年早い、1980年の第1回マイクロキャット大会のデモンストレーション用に作られたロボットである。
  2. ニューラリーX
    1980年にナムコのアーケードゲームとして産声をあげたのが『ラリーX』で、その翌年に続編の『ニューラリーX』が登場。前作から難度が調整され、メロディアスなBGMも導入された。♪デデデデ、デッテデ……。
  3. ビデオ・ゲーム・ミュージック
    1984年にレコードとカセットテープで発売された、日本初のゲーム音楽のサントラ作品。プロデュースは細野晴臣氏。オリコンチャート初登場19位という快挙を成し遂げたアルバムである。1986年と2001年にはCD化もされている。
  4. レコード
    音声を記録した円盤。盤面に刻まれた溝の凹凸によって音が記録されており、レコードプレイヤーの針を落とすことで再生する。当時、サイズが大きく複数の曲が入ったLPレコードと、シングル盤であるEPレコードが存在した。1982年、CDの発売とともに徐々に衰退していった。
  5. 明菜
    中森明菜さんのこと。1982年に『スローモーション』でデビューした歌手。2枚目のシングル『少女A』が大ヒットした。キャッチフレーズは「ちょっとエッチな美新人娘(ミルキーっこ)」。1982年はアイドル大豊作の年で、「花の82年組」と呼ばれるアイドル達のなかでも、彼女は抜群に歌が上手だった。
  6. キョンキョン
    小泉今日子さんのこと。1982年に『私の16才』でデビューした歌手。「花の82年組」と呼ばれるアイドルの一人で、キャッチフレーズは「微笑少女。君の笑顔が好きだ」。当時のアイドルとして異例のショートヘアだったが、事務所の売り方に反抗して髪を切ったという説も。
  7. 伊代ちゃん
    松本伊代さんのこと。1981年にデビューした歌手だが、彼女も一般的に「花の82年組」の一人として認知されている。キャッチフレーズは「瞳そらすな僕の妹」。デビュー曲の『センチメンタル・ジャーニー』は、歌詞のなかに「伊代はまだ16だから」と自分の名前が入る斬新さで話題となった。
  8. カセットテープ
    当時は音楽を聴いたり、プログラムを記録したりする、カセットテープという媒体が存在した。もうすっかり見かけなくなりましたねえ……と思ったら、近年再評価されているとか!?
  9. ご先祖様
    トランポリンで上下移動中、マッピーはご先祖様を除く敵からは倒されない無敵状態となる。うまくトランポリンを使うとゲームが終わらなくなるので、このご先祖様というキャラが作られたらしい。

(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

増田厚(ペンネーム:忍者増田)

 茨城県生まれ。漫画『ゲームセンターあらし』や『マイコン電児ラン』の影響を受け、中学2年生のときにパソコンをいじり始める。東京の大学入学と同時に、パソコンゲーム誌『ログイン』にバイトとして採用され、6年間在籍。忍者装束を着て誌面に出る編集者として認知度が高まる。その後、家庭用ゲーム雑誌『週刊ファミ通』に3年在籍したあと、フリーライターとなる。現在はおもに、雑誌やWeb、攻略本などでゲームのレビュー記事や攻略記事を執筆しつつ、ゲーム以外のライティングも。得意なゲームは、『ポケモン』、『ウィザードリィ』、『サカつく』など。