忍者増田のレトロゲーム忍法帖

うる星あんず氏が考える『マッピー』の魅力は大野木サウンド! 大野木氏との意外な関係も明らかに

~ナムコ『マッピー』対談 後編~

忍者増田氏と大堀康祐氏。

 学生時代に「うる星あんず」のペンネームでゲーム業界で活躍されていた、株式会社マトリックス代表取締役 大堀康祐氏との対談の最終回をお届けします。

 今回は、大堀氏の考える『マッピー』の魅力と、大堀氏が所長として活動している「ゲーム文化保存研究所」について伺いました!



『マッピー』の魅力は軽妙なサウンドにアリ!なんと作曲者がのちに大堀氏の上司に!

高校生のころから「うる星あんず」のペンネームでゲーム業界で活動、同人誌『ゼビウス1000万点への解法』を発行する。マイコンBASICマガジンの別冊付録でも、『マッピー』や『ゼビウス』の攻略記事を担当した。その後、ゲームデバッガー、ゲームプランナーなどの職種を経験し、1994年にマトリックスを設立、代表取締役に就任。

[忍者増田](以下、忍増):大堀さんが思う『マッピー』の魅力をお聞かせください。

[大堀康祐](以下、大堀):大野木宣幸さんの、頭に残る軽快なサウンド……ですね。大野木節が効いています。また、初期ゲーム業界では珍しいタイアップものというところも魅力でした。

[忍増]:『マッピー』のBGMはどれも素敵ですが、拙者は、特にネームエントリーの曲が好きなんです。

[大堀]:あ、ネームエントリーの曲、僕も好きですよ。あれ最高ですよね! 大野木さんのサウンドは本当に頭に残って素晴らしいです。僕は、大学在学中にサイトロン・アンド・アート社へ就職することになるのですが、実は当時の上司が大野木さんだったんです。まさにご自身で作る曲のような明るい方でした。よくオーバーオールを着ていらしたのを覚えています。

[忍増]:かつてゲーム誌で『マッピー』の大攻略を担当され、『マッピー』のサウンドに惹かれていた大堀さんが、そののちに大野木さんの部下になるというのは、とても運命的な感じがします。

大堀氏には『ナムコミュージアム VOL.2』収録版『マッピー』と、ファミコン版の『マッピー』をプレイしていただきました。

[大堀]:びっくりしますよね。こんなことがあるんだ、と。サイトロン・アンド・アートに入る前は、ゲームスタジオでアルバイトさせていただいたこともあるんですけど、あのころは、遠藤さんや大野木さんに、よくナムコゲームのBGMの替え歌を教わっていたなあ。『ニューラリーX』で、「なーつのボーナス稼ぎ出せー、在庫を吐き出せラリーエックス♪」とか(笑)。

[忍増]:これ、読んでいる方に説明すると、始まりの「デデデデ デッテデ」の部分ではなく、途中の「チャーララ ララララ ラララララー、チャラララ ララララ ララーララー」の節で歌ってください。読者のみなさん、わかりますよ……ね?

[大堀]:サイトロン・アンド・アートでは、企画大堀・サウンド大野木さんで『サンリオカーニバル』というファミコンゲームを作らせていただいたのですが、そこで使われている曲も大野木節が効いていて、本当に耳に残ります。機会がありましたらぜひ聞いてみてください。

「20年以上やっていない」とのことでしたが、様々な技を披露していただきました。「こんなに難しいゲームだっけ? という感じですね(笑)」と大堀氏。特にアーケード版と感触が違うファミコン版は苦戦されていました。

現在、アーケードゲーム文化の保存に尽力する大堀氏

『マッピー』のポスター。マッピー、ニャームコ、ミューキーズと、登場キャラが勢揃い。(ゲーム文化保存研究所所蔵)

[忍増]:レトロゲームといえば、最後に、大堀さんが現在所長をされています、「ゲーム文化保存研究所」について教えてください。

[大堀]:昨年、ゲーム文化保存研究所(IGCC)を立ち上げて活動しております。今、ゲームのソフトは残されているんですけど、それに付帯するようなものってなかなか残されていないと思うんです。特に、アーケードゲームに関するものはどんどんなくなっていってしまう。ゲームのプログラムだけではなく、インストラクションカードなど含めて、様々なものをきっちり残していこうと。ゲームデータ以外にも、付帯する環境、制作者のインタビューなどを含めて、一生懸命残す努力をしています。

[忍増]:今回も、研究所で保存されている『マッピー』のポスターと、定期入れ、便箋をお持ちいただきました。

[大堀]:はい。定期入れや便箋など、当時からナムコは、こういうものをグッズ展開して販売していたようです。ゲームセンターの物販コーナーみたいなところに、当時はほかにもゼンマイプーカ、プーカ帽子、プーカボールなどが売っていましたね。今後もアーケードゲームにフォーカスした情報を集約して、公開していきたいと思っています。

[忍増]:今後の活動にも期待しております。今回はありがとうございました。

『マッピー』の便箋。デザインはわりとシンプルです。(ゲーム文化保存研究所所蔵)

『マッピー』の定期入れ。よく見ると、ロボット時代のマッピーとニャームコの写真が!(ゲーム文化保存研究所所蔵)


 『マッピー』の魅力はサウンドと語る大堀氏。当時『マッピー』のサウンドが抜きんでて優れていたというのは、増田氏との共通認識だったようです。

 ※次回掲載は9月下旬~10月上旬頃を予定しています。

注釈

  1. 大野木宣幸
    ゲーム音楽作曲家。1980年にナムコ入社。『ニューラリーX』、『マッピー』、『メトロクロス』、『リブルラブル』などの音楽を手掛ける。1985年にナムコを退社、ゲームスタジオに移籍。その後、サイトロン・アンド・アートの設立に関わる。大堀氏や増田氏をはじめ、いまだ軽妙な大野木サウンドのファンは多い。
  2. サンリオカーニバル
    1990年に発売された、サイトロン・アンド・アート開発のファミコンソフト。発売元はキャラクターソフト。サンリオのキャラクターが登場する落ち物パズルであり、1991年にはゲームボーイ版も発売された。ゲーム中で選べるBGM『あしたのてんき』は、大野木氏が作った「かーめが歌を歌ったら 明日は天気になるかしら?♪ 」という歌詞があるそうだ(大堀氏談)。

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『マッピー』を今遊ぶには?(参考価格/価格は税込表記)
ファミコン版(中古品)400円前後
PlayStation版『ナムコミュージアム VOL.2』(中古品)1,000円前後
PSP版『ナムコミュージアム VOL.2』(中古品)6,500円前後
ゲームボーイ版『ナムコギャラリーVOL.1』(中古品)900円前後
ゲームギア版(中古品)1,000円前後
ゲームボーイアドバンス版(中古品)2,600円前後
ニンテンドーDS版『ナムコミュージアムDS』(中古品)3,300円前後
ニンテンドー3DSダウンロード版463円
Wii Uダウンロード版463円
※2017年7月調べ

増田厚(ペンネーム:忍者増田)

 茨城県生まれ。漫画『ゲームセンターあらし』や『マイコン電児ラン』の影響を受け、中学2年生のときにパソコンをいじり始める。東京の大学入学と同時に、パソコンゲーム誌『ログイン』にバイトとして採用され、6年間在籍。忍者装束を着て誌面に出る編集者として認知度が高まる。その後、家庭用ゲーム雑誌『週刊ファミ通』に3年在籍したあと、フリーライターとなる。現在はおもに、雑誌やWeb、攻略本などでゲームのレビュー記事や攻略記事を執筆しつつ、ゲーム以外のライティングも。得意なゲームは、『ポケモン』、『ウィザードリィ』、『サカつく』など。