ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

PC-88とPC-98のハイブリッド型として誕生した「NEC PC-98DO」

外見はPC-88シリーズ寄りではなく、PC-98シリーズ寄りのデザインを採用しています。この年にはPC-9801RA21などの機種が登場していますが、それと似た雰囲気になっています。FDDが横に並んでいるのが、PC-88シリーズの名残と言えるかもしれません。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回はNECが1989年に発売した、PC-88とPC-98を1台で使うことができるという夢の(?)マシン「PC-98DO」を取り上げます。

 1989年は、12月にPC-8801型番シリーズとしては最後となったPC-8801MCとPC-8801FE2をリリースするNECですが、その半年前となる6月9日に発表されたのが、PC-88とPC-98のハイブリッド型、PC-98DOです。ちょうどこの時期、NECは「NECのパソコンはいま300万台」のキャッチフレーズと共に、PC-98シリーズとPC-88シリーズを合わせた累計出荷台数が300万台を達成したことも広告で宣伝していました。

広告では「98と88が握手した。ソフトの力で弾みをつける、PC-98DO(ドゥ)誕生」との見出しと共に、98モードや88モードの説明が書かれていました。98モードは「PC-9801VM11の機能をベースにしています」、88モードは「PC-8801MA2の機能をベースにしています」とあるのが分かると思います。

 PC-98DOの機能としては、98モードはPC-9801VM11とほぼ同じで、VM11ではオプションだったPC-9801-26K相当の音源を内蔵しています。88モードの場合、メインメモリは192kbytesが使用可能で、FDDは2HDと2Dの両メディアに対応しました。

 パンフレットなどではPC-8801MA2相当を謳っていましたが、PC-8801MA2が搭載していたRS-232Cや辞書ROM、サウンドボードIIの機能はサポートされていません。システムソフトウェアは、98モードで使えるN88-日本語BASIC(86)が付属したものの、88モードで使用できるN88-日本語BASICは別売りでした。また、88モードからは拡張スロットを使用することはできません。

本体正面には左から、キーボードコネクタ、マウスポート、ラインアウト端子、リセットボタン、CPUの8(左)/4(右)または10(左)/8(右)MHzクロック速度切り替えスイッチ、98(左)/88(右)モード切り替えスイッチ、ディップスイッチ、電源ボタンと並んでいます。

 キーボードは、PC-9801VM11と同じデザインが採用されていますが、右上には小さい“NEC PC-98”の文字と、一際大きな“DO”のロゴが入っています。この専用キーボードであれば、88モード時にGRPHキーを押しながら起動するとセットアップメニューが表示され、V1/V2モードなどが選択できました。キーボードコネクタの形状が同じPC-9801VF/VMシリーズ以降のキーボードを繋いで使うことも可能ですが、その場合は88モード時にGRPHキーを押しながら電源をオンにしても、セットアップメニューを表示することはできません。

キーボードですが、触った感触は“PC-9800SERIES”や“PC-9801R”と書かれたものとほぼ同じ、ふかふかした感じです。それらPC-98用キーボードとの違いは、右上にPC-98DOと書かれているところ、vfキーが無いこと、そして左下にCAPSキーとカナキーを押下した時に点くLEDと文字が省かれているところです。

 このような構成だったPC-98DOの本体価格は298,000円で、PC-9801VM11にPC-9801-26Kを搭載した値段より5万円安く同機能が得られました。弱点は、1989年に発売されたにもかかわらず98モードでのCPUがV30(8MHz/10MHz)という部分と、拡張スロットが1つしかないというところでしょう。

 同時期に登場していたPC-98シリーズは拡張スロットが4つ設けられていることがほとんどで、実際に使い始めると4つでも足りなくなってしまいます。ただし、そのあたりを割り切れるユーザーであれば、かなりお買い得な機種だったのではないでしょうか。

背面は、かなりスッキリした感じになっています。左に電源とサービスコンセント、右には拡張スロット×1の下にRS-232C端子、プリンタポート、アナログRGB端子のみが配置されています。

 日本の住宅事情を鑑みると、PC-88FH/MH以前の機種を持っている人がそれらを下取りに出し、新たにPC-98DOを手に入れた場合、従来と同じスペースでPC-88シリーズとPC-98シリーズのソフトを両方使うことができるという、占有空間的なメリットがあったと思われます。

 ただし当時の友人達は、それまで所有していたPC-88シリーズを手放すことなく新たにPC-98シリーズを買い増ししていた人たちが多かったので、それを考えると大多数のユーザーは、NECの目論見とは違った方向に動いたのではないでしょうか。ちなみに当時のNECは、PC-98DOを発売から1年間で5万台販売する計画を立てていたそうですが、現存している個体数の少なさから考えると、そのプランは上手くいかなかったのでは、と思われます。

 NECは翌年の1990年に、PC-98DOの弱点を克服した後継機種PC-98DO+をリリースしますが、その後は完全にPC-98シリーズへと舵を切るのでした。