ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

MZ-80Bシリーズの流れを汲む“スーパーMZ”こと「シャープ MZ-2500」

前機種に当たるMZ-2200では本体とキーボードが一体となっていましたが、MZ-2500では直方体の本体にキーボードを接続するという仕組みになっています。天面に描かれた“MZ-2500”のロゴが、その存在感を物語っています。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回はシャープが1985年に発売した、MZ-80Bシリーズの流れを汲む8ビットパーソナルコンピュータ・Super MZこと「MZ-2500」を取り上げました。

 MZ-80Bシリーズの系譜は、1981年に登場したMZ-80Bの後、翌年にはMZ-80B2とMZ-2000、さらに83年には従来の一体型ではなくコンポタイプを採用したMZ-2200が発売されました。その後はこれと言った音沙汰がありませんでしたが、年月を経ると最新機種となる“Z”が開発中という噂が一部に流れます。そして1985年10月1日に満を持して発売されたのが、月刊誌『Oh!MZ』誌上で“火の鳥”との愛称で呼ばれた、Super MZことMZ-2500でした。

 1985年8月18日に発売された『Oh!MZ』9月号では、本機発売2カ月前という時期にもかかわらず大特集記事「特集≪火の鳥は舞いあがる≫を掲載していることからも、非常に期待されていたことが分かるかと思います。用意されたモデルは、FDD1基を搭載したModel 20のMZ-2511(標準価格168,000円)と、FDDを2基内蔵したModel 30のMZ-2521(標準価格198,000円)の2種類でした。

本体正面にはカセットがあり、その右側には3.5インチFDDが縦に2基設置されています。下段のカンガルーポケット内には左からモード切り替えスイッチ、CRTラスタ数切り替えスイッチ(縦200ライン/400ライン)、ボリュームスライダ、リセットボタン、IPLボタンが並んでいます。正面から見て本体左側には、電源スイッチが配置されています。

 CPUにはZ80B(6MHz)を採用し、瞬足グラフィックと題して「精密なグラフィックスが圧倒的な速さと色彩感覚で迫ってきます(広告より)」と謳っていました。また、標準で320×200ドット256色同時表示を実現したほか、別売りのカラーパレットボードを使えば「4,096色のうち15色を表示させることができます(広告より)」とも記されています。当時、ベンチマークプログラムを走らせた記事を見ると、X1turboが45秒、PC-9801Eが16秒、FM-16βが17秒かかるところ、FM-16βSDと同じく9秒で完走させるという結果が掲載されていました。これについては月刊誌『Oh!MZ』9月号にて「グラフィックの早さについての競争相手はFM-16β/SDであり、77や98などは(turboも)相手になりません」と書くほど、とにかく早かったと纏められています。

1985年に当時の日本電信電話公社が民営化されることとなり、また、公衆電気通信法が電気通信事業法に改正されます。これを受けて、各社はパソコン通信(テレコミュニケーション)を新たなターゲットとしていくのですが、この広告もそれを反映しているのが分かります。
こちらは、1年後に発売されたMZ-2531登場時の広告です。メインメモリの増加などが行われ、Super MZ V2としてデビューしました。

 日本語処理能力に関しても、JIS第1水準漢字ROMに加えてJIS第2水準漢字ROMまでも標準装備し、同梱されているBASICにも強力な漢字BASIC(BASIC-M25/BASIC-S25)を採用していました。プログラム中の変数や配列名、ラベル名などに漢字が使えるので、自然な形でのプログラミングをサポートしていたと言えるでしょう。

 ボイスレコーダは2,000bpsでのデータのリード・ライトを行えるほか、音声の録再機能もついていました。別売りのモデムホンと同梱のテレホンソフトを利用すれば、留守中に電話がかかってきても内蔵のボイスレコーダに相手のメッセージを次々と録音出来る留守番電話機能が利用できただけでなく、行き先などをボイスレコーダに録音しておくことで電話がかかってくるたびに自動的に応答するテレサービス機能や、大事な話を録音しておく通話録音も可能となっています。

本体背面は上段左から拡張スロット、拡張FDDコネクタ、ジョイスティックポート×2、そして下段左からモノクロモニタ出力切換スイッチ、モノクロモニタ出力端子、カラーモニタ出力切換スイッチ、カラーモニタ出力端子、ディップスイッチ、CRT同期入力コントロール端子、プリンタポート、9ピン仕様RS-232Cコネクタ(MZ-2000用RS-232C機器をサポート)、25ピン仕様RS-232Cコネクタ、専用モデムホン接続コネクタ、音声入出力端子、その上にサービスコンセントと電源コネクタ、電話自動着信用のスタンバイ電源スイッチが設置されていました。

 サウンド機能としては、PSGとFM音源それぞれ8オクターブ3重和音の出力ができました。キーボードは手に馴染むシリンドリカルステップスカルプチャタイプのコンパクトなJISキーボードを採用し、BASICやテレホンソフト使用時に押すことで割り込みがかかるアルゴキーも左上に備えています。このキーボードは誌上でも絶賛されていて、「しなやかなカールコードで本体と接続されるセパレートタイプで、配色は白とグレーで落ち着きがあり、キータッチもしっかりしており、MZ-6500の高級なイメージをしっかりと受け継いでます」と書かれていました。

キーボードは全体的にコンパクトな造りとなっていますが、テンキーの上部に配置されたカーソルキーは他よりも一段階高くなっていたり、ファンクションキーの左端にはアルゴキーが設置されているといった特徴があります。スペースキーの隣に変換・無変換キーが追加されたのも注目点です。

 スイッチ一つで切り替えできるMZ-2200/2000モード、MZ-80Bモードを装備したことで、これまでにMZシリーズで培ってきた多くの資産継承も問題ありません。この切り替えスイッチは、本体前面に配置された“カンガルーポケット”と呼ばれる部分に設置されていて、音量調節やIPLリセットボタンなどもここに収められています。なお、MZ-80Bはグリーンモニタだったため表示は緑でしたが、本機のMZ-80Bモードでは白黒で表示されます。

 こうして大々的に登場した“火の鳥”ことSuper MZですが、翌年にはオプションだった辞書ROMと増設メモリを取り込んでテレビコントロールの機能を追加したSuper MZ V2ことMZ-2531(標準価格199,800円)と、MZ-2511/MZ-2521の仕様からボイスレコーダと互換モードを削除し辞書ROMを内蔵させたMZ-2520(標準価格159,800円)をリリースするものの、残念ながらメインストリームになることはできず、徐々に表舞台から姿を消していくこととなります。