ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち
“冒険者のためのMSXパソコン”のキャッチコピーで登場した「日立 H50」
2023年3月7日 07:05
想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、日立が1986年10月21日に発売したMSX(1)パソコンのH50です。
1985年に入りMSX2規格に則ったMSX2パソコンが登場しだすと、一部のMSX(1)パソコンはこれまで以上に次第に低価格化が進んでいきました。この時期、低価格MSX(1)パソコンで名を馳せたカシオは市場へMX-101を送り込みますが、同時期となる1986年10月21日に日立が発売したMSXパソコンが、キーボードセパレート型のH50です。広告では、日立のHシリーズではお馴染みの工藤夕貴さんが一段と大人びた表情でキーボードを抱え、「ゲームもいいけどちゃんとパソコンしましょ」とのフレーズと共に映っていました。
スペックとしては標準的なMSX(1)パソコンで、RAMは64KBを搭載しています。広告で推していたのは本体デザインで、“カッコよさに注目!”として「ポテンシャルを秘めた異次元デザイン。サウンドイルミネーションも光る精かんなブラックボディの<H50>」と書かれていました。確かに本体デザインを見るとわかるように、当時発売されていたどんなパソコンとも違ったデザインとなっています。黒を基調としたデザインはシックで大人びていて、人と違ったパソコンがほしいというニーズに応えていたのではないでしょうか。
おにぎり型のジョイパッドも付属していて、こちらも広告に「微妙なコントロール、高速連写がゲームキングの基本技。キミの指の感覚をすばやく正確に伝えるジョイパッドが標準装備だ」とあります。このジョイパッドは、パナソニックがFS-A1と同時に発売したものと同じで、違いはカラーリングと表面に書かれた文字だけでした。
セパレートキーボードはテンキーの無いコンパクトな大きさで、ケーブルが長いためレイアウトが自由なのがポイントです。最上段に配置されたファンクションキーの幅を長くせず、STOPキーやSELECTキーなど他のキーと同じにしてあるのも特徴と言えるでしょう。カーソルキーは上下キーの間に左右キーが挟まっているような形の配置で、ゲームなどで上キーを中指、下キーを親指で操作する人には非常に使いやすいのですが、筆者のように上下キーを中指で担うプレイヤーには少々厳しいものがありました。
本体はキーボードと同じ幅で、手前側にキーボードコネクタとジョイスティックポートを用意しています。ゲームをジョイパッドでプレイするのであれば、キーボードを接続せずにジョイパッドのみ繋げばOKでした。上面のデザインも凝っていて、特に右下にはCPUと各種システムがどのように繋がっているのかを簡易に解説したイラストまで描かれていて、この部分に興味をそそられた人もいたのではないでしょうか。
サウンドイルミネーションディスプレイは、通電すると1の部分が緑に光るほか、2-5までは音によって明滅するようになっています。また、BASICでセーブやロードを行えば、その部分のイルミネーションが光るようになっているなど、今風に表現するならば“中二心を微妙にくすぐってくる”仕上がりになっていました。この時期には、派手なライトや電飾のついたスポーツタイプの“カッコイイ”自転車が流行りましたが、いわばそれのパソコン版といえるかもしれません。
本体価格は24,800円と非常にお手頃で、同時期にカシオが発売したMX-101は19,800円でRAMが16KBだったことを考えると、悪くないお値段かと思います。しかし、ほぼ同じ頃にパナソニックがMSX2パソコンのFS-A1を29,800円でリリースしたため、どれを買うかで悩んだ人も多かったのではないでしょうか。
ちなみに、本機の約1ヶ月後に日立が市場へと投入したMSX2パソコンのMB-H70は、こちらもキーボードセパレート型でしたが、H50が低年齢層を狙ったのに対して高年齢層をターゲットとしていて、RAMは128KB、VRAMを128KB、JIS第1水準の漢字ROMと1基のディスクドライブを内蔵するという構成で、価格は138,000円でした。
H50やH70は、今ではあまり見かけることが少ない機種になってしまいましたが、実際に目にするとその変わったデザインに心惹かれると思いますので、ぜひ何かの機会にでも体験してみてください。