ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち
懐かしの通信機器「NEC PC-8268 パーソナルカプラ」
2023年4月18日 07:05
想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は少し趣向を変え、当時の周辺機器を取り上げる番外編として、この連載記事を読んでいる人なら一度はお世話になったことがあると思われる通信機器を取り上げていきます(計4回)。
先日、ADSLサービスが終了するという話題がニュースになりましたが、パソコンで通信を行うというアクションは1980年代からありました。その頃から、電話代に泣かされていたという話を耳にしたものです。
1980年代中頃から徐々にメジャーになり始めた“パソコン通信”では、それを行うために各種機器を用意する必要がありました。当初は、固定電話回線の電話網に接続するには制度的な制約が多かったため、そういったことを気にせずに済むなどの理由から、音響カプラと呼ばれるハードが使用されます。これは、受話器を機器に載せるだけで良い反面、周囲からの雑音なども拾ってしまうことがありました。また、速度もおおむね300bps程度と遅く、画面に文字が表示されていく様子を見て取ることができましたのを覚えている人もいるかもしれません。
そんななか、いわゆる通信の自由化が1985年に行われると、モジューラジャックを備えるなど技術基準適合認定条件を満たしたハードであれば、個人でも固定電話回線の電話網に接続することが可能になります。これによりモデムが登場し、速度も初期は300/1200bpsほどだったのが、最終的には56kまで進化していきました。モデムの速度によって、「にーよん」「くんろく」「いっちょんちょん」「にーぱっぱ」「ごーろっけー」といった呼び方をしていた人もいたのではないでしょうか。
その後、回線がISDNになるとターミナルアダプタ(TA)という機器が活躍し、パソコン通信からインターネットの時代になるとADSLモデムといったハードが登場します。今回は、そんななかから懐かしの機種を取り上げていきます。
NEC PC-8268 パーソナルカプラ
1982年末に、PC-8201と同時期に発表されたNEC製の音響カプラです。ただし、当時は通信機器を発売するには日本電信電話公社の許諾を得る必要があったため、同時発売とはなっていません。
翌年9月1日付けで、「電話機に結合しても差し支えありません」という表示と共に型式承認審査合格証を当時の日本電信電話公社からもらい受け、販売となった模様です。これを受けて、1983年11月発売の雑誌には、PC-8201を音響カプラと接続するという話が図によって解説されるようになりました。
このPC-8268は、PC-8201と同時に持ち出して使用することを考えられていたため、ニッカド電池で駆動するようになっています。当時数多く設置されていた公衆電話を利用しての、バッテリ運用での通信などが可能でした。内蔵バッテリは連続4時間使用に耐えられるようになっていたほか本体重量も650gと軽く、持ち運ぶには苦にならない重さだったといえます。ACアダプタも付属していますので、据え置いて使う場合には電池の残り容量を気にする必要はありません。もっとも、PC-8201と一緒に持ち運ぶとなると、それ相応の重さにはなりましたが……
パソコンとの接続方法はRS-232Cコネクタを介して行われるので、PC-8201以外の他のパソコンで使うといった汎用性もありました。交信中に何かの都合で中止したい場合に重宝するボタン、BREAKキーも備えています。なお、通信速度は300bps以下となっていましたが、時代を考えれば妥当ではないでしょうか。
これらの機能を備えておきながらも価格は48,900円に抑えられており、当時としては悪くないお値段でした。同時に、モデム機能を備えるものの通常のプッシュホンとしても使えるインテリジェントテレフォン、PC-8269も発売されています。