ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

FS-A1の影に隠れる形になってしまった、ワープロ・パソコン~1986年発売「ナショナル FS-4600F」~

本体は非常にコンパクトで、PS4の約半分ほどです。厚みも半分で、クリーム色の本体に緑色のキーボードが目立つ配色でした。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、1986年に松下電器産業がナショナルブランドで発売したワープロ・パソコンのFS-4600Fです。

 MSX(1)やMSX2パソコンは、ワープロ機能を盛り込んだ機種が好評を博していたようで、さまざまなメーカーからリリースされていました。それらいわゆる“ワープロ・パソコン”は「書けるパソコン、遊べるワープロ」として松下電器産業が最初に開発。“ワーコン”の愛称で第1弾となるFS-4000を1985年に発売しています。その第2弾としてFS-4500、第3弾にはFS-4700と続きましたが、最後となった第4弾の機種が、1986年末に発売されたFS-4600Fでした。

本体の上半分ですが、左上には緑色の電源スイッチが、その下にはプリンタリセットボタンと紙押さえのスライドスイッチが設置されています。「ワープロ・パソコン|FS4600F」と書かれた部分はフタで、取り外すことができます。その下には、カートリッジスロットが2つ、横並びに配置されていました。

 メーカーによると、本機の主なターゲットは「今日(こんにち)のワープロの機能アップおよびパソコンのゲームやパソコン通信への関心の高まりを背景としてヤングからファミリーまでの幅広い層」とあり、パソコン通信が流行することも見据えてのリリースだったのがわかります。しかし、この時期はPanasonicブランドにてFS-A1の宣伝が始まっていたためか、当時の各種パソコン雑誌で見られたのはFS-A1の広告ばかりで、残念ながら今回はFS-4600Fの広告ページを見つけることはできませんでした。

 FS-4600Fのスペックとしては、RAMを128KB、VRAM128KBを搭載し、2DD対応のフロッピーディスクドライブを1基内蔵。カートリッジスロットを2基備えていたほか、映像出力としてRF・ビデオ・アナログRGBとすべて揃っていたため、接続先のテレビを選ばないというのが特徴でした。

本体キーボード部分です。筆者所有のモデルは大学時代に先輩から譲り受けたもので、その時点で既にキーボードにはJIS配列でキーのシールが貼られていました。

 本機シリーズお馴染みの熱転写プリンタを装備するだけでなく、外部プリンタに接続できるようプリンタインタフェースも用意されています。第一水準の漢字ROM内蔵はもちろん、第二水準の漢字も付属のディスクを使うことで使用可能となっていました。さらには、背面に設置されているディップスイッチの設定を変えることで、キーボードのカナ50音配列がJIS配列に切り替わるという仕組みも用意されています。

 電源を入れて表示される「MSXワープロIII」の使い勝手も、当時としては良く出来ていました。起動すると画面の上半分左側はページのレイアウトが表示され、右側には各種情報が書かれています。画面下半分が文字入力を行う部分で、ここへカナもしくはローマ字で打ち込みスペースキーを押すと、漢字に変換されました。一度に32文字までを変換できる連文節変換方式を採用していましたので、それまでの単漢字変換と比べて大幅に変換効率が上昇しています。学習機能も搭載しているので、二度目からはより賢い変換も期待できました。

背面は左から、RGB出力端子、機能切替用ディップスイッチ、外部プリンタ接続ポート、プリンタ切替スイッチ、CMT端子、コンポジット出力端子、チャンネル切替スイッチ、RF出力端子が並んでいます。ディップスイッチに関しては、設定の説明書きも真上に書かれていました。キーボードのかな配列を50音順にするかJISにするか、プリンタ送りピッチをどちらにするかのほか、電源オン時に内蔵ソフトを起動するかどうかも選べます。

 全体を確認できるレイアウト表示機能としては、80字×19桁と40×12桁モードの2つを備えています。80文字モードでは漢字が“□”と表示されてしまうものの全体をとらえるることができ、40文字モードなら漢字1文字もわかる状態でのレイアウトを確認可能など、ワープロ専用機に迫るような使い勝手を持っていたのも便利なところでした。

 別売りでしたが、毛筆書体カートリッジをスロットに挿し込むことで4倍角以上の文字を48ドットの美しい筆文字で印字することもできます。さらに、同時期に発売されていたイメージスキャナFS-RS500を用いることで、手描きのイラストをスキャン後、文中にカットして入れることも可能で、この時期に登場していた最新のハンディワープロと比べても、遜色ない能力を備えていました。

本体正面右側には、ジョイスティック端子が2つとリセットボタン、フロッピーディスクドライブが備わっています。その上に見えるダイアル上のつまみは、用紙送り時に回します。本体左側には、印刷時の濃度を決めるためのダイアルがついていました。

 これだけの機能を備えていたにもかかわらず価格は138,000円と、1986年に発売されたプリンタ一体型MSX2パソコンとしては悪くないお値段だったのですが、やはり似たような時期に登場したFS-A1と、ソニーからリリースされたHB-F1がそれぞれ29,800円、32,800円という破格のプライスだったためか、残念ながら大きな話題になることはなかったようです。