ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

セガの低価格パソコン「SC-3000H」

キーボードがゴムからプラスチックに変更された以外は、基本仕様はほぼ同じです。オーソドックスなパソコンでは、Qキーの左側はTABキーが配置されている場合がほとんどですが、SC-3000シリーズはBASICのコマンドをショートカット入力するために使用するFUNCキーとなっていました。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、セガが最初に発売したパソコン・SC-3000のキーボードを改良して4ヶ月後にリリースしたモデル、SC-3000Hです。

 1983年7月21日に発売されたセガのオリジナルパソコンSC-3000は、29,800円という低価格なキディコンピュータとして登場しましす。CPUにクロック周波数3.5MHzのZ80Aを搭載し、32個のスプライト画面や256×192ドット16色のカラーグラフィックと38桁24行のテキスト表示を備え、キーボードにはシリコンゴムのキートップを採用。電源をACアダプタ化したことで、本体の重量は1.1kgと非常に軽量というのが特徴でした。

当時の広告では、本体と合わせて周辺機器を前面に打ち出していました。特にSF-7000はレアで、見かけることはなかなかないです。

 本体にはROMを一切持たず、RAMもビデオRAMを除けば2Kbytesしか実装されていませんでしたが、BASIC レベルIII Aカートリッジを使用すればROM32KB、RAM16KB(12,000円)、そしてレベルIII Bを挿せばROM32KB、RAM32KB(15,000円)が確保できるという仕様になっています。ちなみに、雑誌「マイコン」1984年1月号によると、採用されているBASICはマイクロソフト製ではなくマイテック製とのことでした。

 そんなSC-3000の機能をそのまま受け継ぎ、キーボードをプラスチック製に変更した新機種が、1983年12月9日に33,800円という価格で発売されたSC-3000Hです。基本的なスペックはSC-3000と同じで、キーボードとキートップが変更された以外には変わっていません。SC-3000ではキートップにセディーユ(ラテン語)やウムラルト(ドイツ語)、βなどのギリシャ文字が印刷されていましたが、SC-3000Hではそれらが無くなり、英語とカタカナまたは記号や数字といった他機種キーボードと同じくオーソドックスな刻印に変わっています。

「テクノポリス」1983年7月号に掲載された、マイクロコンピュータショウ'83レポート記事内には、SC-3000が7月1日発売予定と書かれていた写真の隣に、発売予定としてSC-5000が載っていました。多少の違いはあるものの外見はSC-3000Hに近いので、これが改良されて最終的にSC-3000Hとして発売されたのかもしれません。

 また、SC-3000ではキーの上に、FUNCキーと同時に押すことでショートカットで入力できる単語が記されていましたが、SC-3000Hではそのスペースがなくなったことで消えました。ただし、例えばFUNCキーを押しながらPでNEXTが入力されるというように、機能は残っています。

 本機またはSC-3000を1984年12月31日までに購入すると、『ロードランナー』がもれなくプレゼントされるというキャンペーンも行われていましたが、それとは別にSC-3000Hでは、周辺機器との接続を前面に出した広告で攻めていました。

本体背面は左から電源スイッチ、ACアダプタ端子、CMT用音声入力端子、CMT用音声出力端子、プリンタポート、ビデオ接続端子、RFチャンネル切替スイッチ、RF端子と並んでいます。

 多機能マルチ接続マシンとして登場したスーパーコントロール・ステーション「SF-7000」は、8Bパラレル端子/RS-232C端子を装備しているだけでなく、メモリを「大容量640KB内蔵(広告ママ・実際は64KB)」して3インチコンパクトフロッピーディスクを1基備えていたほか、ディスクベーシックを同梱して79,800円という価格で発売されています。当時の広告見出しには「パソコンファンは絶賛した。強力な周辺機器」とありましたが、まさにその通りだと言えるでしょう。しかも、MSXパソコンとの互換性もあったと広告には書かれていたので、潜在的なターゲットユーザー数は相当多く見積もられていたのではないのでしょうか。

 このSF-7000と合体させれば、SC-3000Hは見た目でも他のパソコンにひけを取らないどころか、それらを凌駕する性能を備えることになります。しかし、価格が本体に対して高かったことなどが原因で残念ながら出回り数は多くなく、今では非常に貴重なレベルになってしまいました。

本体右側面には、カートリッジを挿し込むためのスロットが設けられています。反対の左側面には、専用ジョイスティックを接続するためのポートが2つ用意されていました。

 そのほかの周辺機器としては、1983年12月中旬にはSC-3000シリーズ専用に開発された、レベル調整の必要が無い軽量コンパクトなデータレコーダSR-1000が9,800円で、SC-3000シリーズ専用の水性ボールペンタイプの4色カラープロッタプリンタSR-400Jが39,800円という価格で、それぞれ市場デビューしています。

 SC-3000Hが登場した1983年から84年にかけては、各社がこぞってオリジナルのパソコンをリリースしたり、83年に立ち上がったMSX企画に則った機種を発売するなどしたことでマーケットには数多くの種類のパソコンがあふれ、まさにパソコンカンブリア紀といえる時代を迎えています。この時期にパソコン雑誌を賑わせていたハードとしてはSONYのSMC-777やバンダイのRX-78、TAKARAのM5、TOMYのぴゅう太、MSXでは富士通のFM-XやナショナルのCF-2000、日立のH1、東芝のPASOPIA IQ、三菱のML-8000などがあり、それらにくわえてNEC、シャープ、富士通の御三家パソコンも存在感を見せつけていたタイミングでした。SC-3000シリーズのライバルと考えると、RX-78やm5(M5)、ぴゅう太などが挙げられると思いますが、このときにそれらの中からどれを買うかで悩んだ人も多かったのではないでしょうか。

キーボードを上部から見てみると、右上にある赤いリセットキーや、その隣のBREAKキー、ひときわ大きなCR(キャリッジリターン)キーが目立ちます。CTRLキーの上はTABキーではなく、ショートカット入力時に使うFUNCキーが配置されていました。カナキーは、スペースキーの左側に設置されています。

 SC-3000と比べると出回りが少なかったためか、オークションサイトやフリマアプリでは見かける頻度が少々下がります。しかし、そこまでレア度が高いというわけではないので、当時使っていたという人はこの機会に改めて入手してみるのも面白いかもしれません。