ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

初代デビューから1年後に誕生した「X68000 ACE-HD」

外見は、ロゴ以外は初代機とあまり変わりません。用意されたカラーリングはオフィスグレーとブラックで、初代機では後から追加されたブラックですが、ACE-HDとACEでは最初から選べました。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。

 今回取り上げたのは、初代X68000発売から1年後にリリースされた、20MBのHDDを内蔵した新機種、X68000 ACE-HDとなります。

 初代X68000は1987年3月22日に、369,000円という衝撃の価格でデビューを果たします。その8ヶ月後には、新たなカラーリングとしてブラックモデルを追加し、オフィスグレーとの2色で販売が継続されました。そして、その初代機がリリースされてからほぼ1年後となる3月20日に発売されたのが、20MBの3.5インチHDDを内蔵したX68000 ACE-HDでした。

本体を正面から見て左タワーには、5インチFDDが2基内蔵されています。右タワー上部には3つのインジケータ、下部左側にはヘッドフォン端子とジョイスティック1端子、下部中央に電源スイッチ、下部右側にはボリュームつまみ、キーボードコネクタ、マウスコネクタが並んでいます。

 当時の雑誌を確認すると、1988年4月号にACE-HDが掲載され、翌月の5月号にACEが紹介されています。『Oh!X』1988年5月号には「まだ寒さの残る3月の初め、Oh!X編集室にも、X68000ACE-HDが届きました」とあることから、ACE-HDは3月上旬に発表されたようで、ACEは雑誌が校了(おおざっぱに言うと作業終了)した中旬以降に公開になったのがわかりました。今回取り上げたACE-HDは、『マイコンBASICマガジン』1988年4月号によると3月20日に発売されています。

背面の左側にはI/Oスロット×2、リモートコネクタ、プリンタポート、その下にフレームアース、立体視端子、TVコントロール端子、CZ-6VT1と接続するためのシースルーカラー端子とイメージ入力用コネクタ、アナログRGB端子が並んでいます。右側にはサービスコンセント、電源スイッチ、拡張FDD接続コネクタ、ハードディスク接続コネクタが設置されていました。下部は左から、RS-232Cコネクタ、オーディオIN/OUT端子、ジョイスティック2端子が配置されています。

 価格は、ACE-HDが標準価格(以下同)399,800円でACEが319,800円、同時発売のドットピッチ0.39mmマルチスキャンモニタCZ-601Dが119,800円、翌月にリリースされたドットピッチ0.31mmのCZ-611Dが145,000円となっていました。ちなみに、初代X68000は369,000円で、オプションとして発売されていた20MBのHDDは178,000円だったので、合計すると547,000円に。そう考えると、たった1年で非常にお買い得な価格になったと言えるのではないでしょうか。もちろん、今から比べれば高いことには変わりないのですが(笑)。

 初代X68000登場時「5年間はスペックを変更しない」と宣言していたこともあり、いくつかの基本的な回路は変わっていません。ただし、電源部分の大幅な小型化を行い、その空いたスペースに3.5インチHDDが内蔵されています。また、回路はそのままで基板の設計を一から見直し、ボード面積の縮小を図っていました。これにより、初代は右側のタワーに2枚、本体下に1枚の基板で構成されていたボードが1枚分減少して、部品点数だけで約30%ほどコンパクトになっています。

上部には、インタラプトスイッチとリセットスイッチ、押すと飛び出るキャリングハンドルがありました。

 カスタムチップはほぼ全面的に見直されて、11個あったものが8個の新たなチップに統合されました。メインメモリも、従来は256Kビット×32本だったものが1Mビット×8本となり、基板の小型化に貢献しています。

 外観では、X68000ロゴの下に“ACE”または“ACE-HD”と赤で入っている以外、これまで“HIGHT RESO.”と書かれていた部分がACE-HDでは“HD BUSY”になっている程度の違いしかありません。背面のインタフェース部分は、正面から見て右・背面からでは左側部分のレイアウトが若干変わっています。右側部分は、初代機では下部に配置されていた電源が上部に移動し、従来機で縦に並んでいたHDD接続コネクタと拡張FDDコネクタが、ACE-HDやACEでは左右に並ぶよう置かれました。キーボードは、初代機から大きな変更はなかったほか接続端子も同じ規格なので、マウスと共に流用することも可能です。

広告でのキャッチは「ますます熱くなる。」「アートの領域へ」が使われていました。イメージキャラクターは、初代機に引き続きツタンカーメンとなっています。

 HDDを内蔵した初めてのモデルということもあり、HDDへのインストールユーティリティソフトが付属しました。これを使用することで、領域確保やフォーマット、システムファイルのコピー、更にはメモリスイッチの設定をすべて行ってくれます。“20MBのHDDを10MBずつ分けて使いたい”といった場合でも、このソフトを使用すれば簡単にできました。

 この時期には、マイコンソフトから『スペースハリアー』『源平討魔伝』『ドラゴンスピリット』といったタイトルがリリースされていたほか、ハドソンからは『桃太郎伝説』が、ザインソフトからは『魔神宮』が発売されるなど、ソフト面でも大いに盛り上がりを見せていたタイミングでした。ちなみに、同時期に登場していたパソコンはPC-8801FA/MAやPC-88VA2/3、PC-9801UV21、PC-9801VX21、FM77AV40EX/20EX、X1turboZII、HB-F1XDなどがありましたので、価格面やソフトのことなどからどれを買おうかと考えると、ユーザーとして非常に悩ましいラインアップだったと思われます。