ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

驚きの19,800円!コンパクトで安価なMSX「カシオ MX-10」

一目見て、そのコンパクトさが印象に残るパソコンです。電源はACアダプタを使用するため本体重量も軽いのですが、造りはシッカリとしています。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、カシオがPV-16の次にリリースした低価格MSXのMX-10です。

 1983年にMSX(1)規格が発表されると、さまざまなメーカーが参入して数多くのMSXを発売していきます。中でも大きな出来事の一つとして記憶されているのが、電卓メーカーとしてお馴染みだったカシオがリリースした、低価格MSXパソコンのPV-7でしょう。

 搭載メモリは8KBながらも、それまでには考えられなかった29,800円という値段で登場したPV-7は、大変な話題を呼びました。その後、値段はそのままにメモリ容量を2倍にしたPV-16を後継機種として送り出しますが、阪神タイガースが日本一になった1985年、インテックス大阪で10月17日から開催された「エレクトロニクスショウ '85」にて初お披露目されたのが、今回取り上げたMX-10です。価格は、PV-7やPV-16の29,800円から1万円ダウンとなる19,800円で、さらに多くのユーザーに衝撃を与えました。

初登場時は見開きページを使い、実機の約2/3程度の大きさで本体を掲載して印象深い広告を掲載していました。右ページには、最大の武器である19,800円という価格が目立つように印刷されています。次のページでは、これまでにカシオが発売していたソフトも掲載されていて、その充実ぶりもアピールされていました。

 外観はPV-7と比べて一回りコンパクトに、そして少しだけ柔らかみのあるデザインへと変わっています。PV-7とPV-16は少々いかつい感じがありましたが、MX-10はどちらかというとコロコロした雰囲気を漂わせていると言えるでしょう。PV-7時代から本体に備え付けられている、ジョイスティック1の操作の代わりとなるキーパッドは、MX-10では4方向それぞれに分かれる形となりました。これにより、さらに操作がしやすくなっています。ジョイスティックのボタンに対応したキーも、本体左下にTR1、TR2として設置されていました。

 PV-7やPV-16ではプラスチック製だったキーボードですが、ここはコスト削減のためにゴム製へと変更されています。少々ふにゃっとした感じがあるのと、それぞれのキーが小さいため、慣れるまではタイピングするのに少々苦労するかもしれません。カーソルキーもジョイパッドの上部分に一列に並んでいるため、体がキー配置を覚えるまではプログラミング時に多少なりとももたついてしまうことがありました。

本体右上にカートリッジスロットが1つ配置されていますが、使用しないときは蓋をして閉めておくことができます。数少ない本機の可動部分ですが、それ故にふとした弾みで外れて無くしてしまうことも……。

 外部インタフェースとしてはデータレコーダやラジカセなどが使用できるのですが、いわゆるCMTケーブル1本で接続することはできません。3,000円で別売されていたFA-32というカセットインタフェースを使うことで、カセットテープへのセーブやロードを行うことが可能になりました。PV-7などと同じ仕様で、コストダウンの努力がこのようなところでも見受けられます。

 本体に用意されたカートリッジスロットは1つでしたが、PV-7が拡張ボックスのKB-7で拡張できたように、MX-10にも拡張ボックスのKB-10が13,800円で用意されていました。これと合体することで、カートリッジスロットは3つに増加。さらにはKB-10には電源コードも用意されていたので、付属のACアダプタを使わずとも稼働させることができるようになりました。

 KB-10を接続すれば、拡張ボックス専用の64kbytes増設RAMカートリッジを挿入することで、メモリ64kbytesのMSX(1)へと大幅にパワーアップさせることも可能です。このため、KB-10を追加購入したという人もそれなりにいたのではないでしょうか。

本体右側面にはジョイスティック端子が2つ、左側面にはFA-32を接続するための端子とRF端子、音声端子、映像端子がそれぞれ用意されていました。

 なお、用意された本体のカラーリングは赤と黒の2種類で、拡張ボックスのKB-10も同色が用意されていました。通常は同じ色で合わせるところを、わざとツートンカラーにして運用していた友人が当時いましたが、個人的には「うーん」と思ったものです(笑)。

 ちなみに、同時期に雑誌で宣伝されていたMSX(1)機種としては、ソニーのHB-201(59,800円)、ナショナルのワーコンFS-4000(106,000円)、YAMAHAのYIS503II(59,800円)とSX100(36,800円)がありました。HB-201とFS-4000、YIS503IIはメモリ64kbytesで、さらにFS-4000とYIS503IIはRGB出力も装備、加えてFS-4000は熱転写プリンタも本体に内蔵していたということで、それぞれこのような価格になっています。値段的にMX-10の対抗馬となりそうなSX100は、搭載RAMはMX-10の2倍でRGBでの出力ができましたが、カートリッジスロットはMX-10と同じ1つだったこともあり、当時はどちらを買うかで悩んだ人もいたのではないでしょうか。

本体背面には通常フタでふさがれている、拡張ボックスKB-10と接続するための端子とACアダプタ接続端子、電源スイッチのみとシンプルです。底面には、1チャンネルと2チャンネルを選ぶスイッチがありました。

 MX-10を発売したカシオは後に、ワイヤレスで電波を飛ばし離れたテレビに映すことができるMX-101をリリースすることとなります。それを最後にMSXからは離れてしまいますが、10年後となる1995年にはデジタルカメラQV-10を登場させ、またも話題に上ることとなるのでした。