ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

NECの第2世代98ノート「PC-9801NOTE SX(PC-9801NS)」

HDDを搭載するモデルのために、PC-9801Nよりも厚みが増しましたが、それ以外の外見はほとんど変わっていません。液晶モニタの隣に「PC-9801NS」の表示が見えますが、これはNOTEのNとSXのSをピックアップした名称です。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、PC-9801Nに続くノートパソコンとしてNECが発売した機種、PC-9801NOTE SXです。

 1989年、東芝がノートサイズのパソコンとしてDynabookを発売すると、その3ヶ月後にNECはPC-9801Nをリリースします。PC-98向けのソフトが動く、持ち運べるノートパソコンとしてPC-9801Nは大きな衝撃をもたらし結果的には10万台委出荷という大ヒットを記録しました。そして、ここから本格的に98ノートというジャンルが始まることになります。その翌年、1990年の5月14日に発表されたのが、新たな98ノートとなるPC-9801NOTE SX(PC-9801NS)でした。6月に発売された雑誌には広告が掲載されていることを考えると、市場に流通したのは発表翌月となる6月のようです。

広告は、PC-9801Nに引き続き大江千里さんがイメージキャラクターを務めています。キャッチコピーとしては「やってくれると思ってた。」や「98NOTEは、もっとも進化したノートパソコン。」などがありました。

 ラインアップは、FDモデルのPC-9801NSが298,000円、20MBのHDDを内蔵したPC-9801NS-20が448,000円でした。持ち運ぶ機種ということで重量は軽い方が良いわけですが、前モデルのPC-9801Nが2.7kgだったところ、PC-9801NSは約2.8kg、HDD内蔵のPC-9801NS-20でも約2.95kgと、両機種ともギリギリ3kg以内に収まっています。とはいえ、やはりズッシリとした手応えがあるため、カバンなどに入れて長時間持ち運ぶと腕や肩にキますが……。

 本機の特徴は、広告に書かれているようにCPUに「高速32ビット386SX(12MHz・メモリアクセスノーウェイト)を採用した」ことでしょう。当時の雑誌『Oh!PC』には、「80386SXはCPU内部では32ビットで処理を、外部とのデータのやりとりは16ビットでそれぞれ行う仕組みになっています」とあって、更に「このCPUは、PC-9801NS発表のわずか1週間前に公開されたばかりでした」とも書かれていました。

背面は、左側上部にモデムスロットがあります。その下は左側からテンキーボード用コネクタ、マウスポート、RS-232Cコネクタ、プリンタポート、その右側に拡張バスとなっています。PC-9801Nでは拡張バスまで含めて1枚のフタでしたが、PC-9801NSはフタが中央で2分割されたことで壊れづらくなりました。なお、拡張バスの上にはバッテリパックを装着できます。

 肝心の処理速度ですが、NECは広告などで「PC-9801Nと比べて約2倍の処理能力を持っている」と謳っていて、これを確かめるべくベンチマークを取ったところ、ファイル操作が無い場合であればPC-9801Nと比べて約半分の処理時間で終了することが確かめられています。またDhrystone、Whetstoneの両テストでも、PC-9801Nと比べて2倍以上の差を付けていることが分かりました。

 そんなPC-9801NSの搭載するメインメモリは640KBとPC-9801Nと同じですが、RAMドライブを1MBのユーザーズメモリとして使用することで1MBをプラスできたほか、1MBまたは2MBの増設RAMカードを使用すれば最大で3.6MBまでの拡張が可能です。なお、NEC純正の増設メモリPC-9801N-01は2MBで140,000円でしたが、アイ・オー・データ機器ならば38,000円、メルコ(当時)のものでは39,800円と1/3以下に抑えられていました。

本体右側面には、PC-9801Nに搭載のものよりも静かになったFDDがあります。本体左側面にはDCコネクタと、スライドを開けることで現れるバックアップメモリスイッチ、リセットスイッチ、そして増設RAMカードスロットが設けられていました。

 PC-98NOTEシリーズ初となる20MBのHDDを内蔵したPC-9801NS-20では、HELPキーを押して電源を入れることで表示させられる98NOTEメニューにて、時間を1分から60分まで任意で設定することで、HDDにアクセスがなければ自動的にモーターが停止してリトラクトが行われる仕様が追加されています。この場合は、STOPキーをいちいち押さなくても良いほか、停止からの復帰も数秒で行われ、しかも動作音もかなり静かでした。

 静かという観点では、PC-9801Nに搭載されていたFDDはアクセス時の動作音が少々耳障りでしたが、PC-9801NSではかなり静かになり、耳を近づけないと聞こえないほどになっています。あわせてキーボードのキータッチも改善され、PC-9801Nの若干引っかかる感じがなくなり、全体的に反発力が弱まりました。

PC-9801N(右)とPC-9801NS(左)を並べて、真横から撮影してみました。これを見ると、厚さが変わっていたりキーボードに若干の傾斜がついているのが分かるかと思います。

 搭載されている液晶ディスプレイは、ブルー液晶そのものは変わっていません。しかし、PC-9801NではELバックライトだったものが、PC-9801NSではCFL(冷陰極管)サイドライト付き8階調液晶ディスプレイに変更されました。これにより、画面が格段に見やすくなっただけでなく、寿命も倍以上になっています。

同じく、蓋を開けた状態でPC-9801N(右)とPC-9801NS(左)を並べて、真上から撮影しました。液晶ディスプレイ左側に縦のスリットが入っているのと右側のロゴ、そしてHDDアクセスランプのDISKインジケータ、POWERボタンの位置がキーボード近くからヒンジ近くへと移動している以外は、ほぼ同じです。

 他にも、PC-9801Nでは左側面に設置されていたディップスイッチですが、PC-9801NSではそれがなくなりました。代わりにPC98NOTE SX メニューにて、デスクトップと同じ8個×3連ディップスイッチを設定するように変更されています。また、スピーカのボリュームもこのメニューから設定できるようになり、音量を変更出来なかったPC-9801Nの時から大幅に使いやすくなりました。とはいえ、物理的なボリュームつまみがついていないため、音量を変えるには必ず98NOTE SX メニューを経由しなければならないのが残念なところですが。

 CPUにV30を搭載したPC-9801Nから、一気に80386SXへと進化を遂げたPC-9801NSは、この後も新機種がリリースされることとなります。

これは8月時点での広告ですが、98NOTEが169,800円、発売されて2ヶ月ほどの98NOTE NSが239,800円と、思ったよりも手の出しやすい価格となっていました。定価はそれぞれ248,000円と298,000円だったので、この価格差を考えてどちらの機種を買うか悩んだ人も多かったのではないでしょうか。