ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち
NECの第2世代98ノート「PC-9801NOTE SX(PC-9801NS)」
2024年8月27日 08:05
想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、PC-9801Nに続くノートパソコンとしてNECが発売した機種、PC-9801NOTE SXです。
1989年、東芝がノートサイズのパソコンとしてDynabookを発売すると、その3ヶ月後にNECはPC-9801Nをリリースします。PC-98向けのソフトが動く、持ち運べるノートパソコンとしてPC-9801Nは大きな衝撃をもたらし結果的には10万台委出荷という大ヒットを記録しました。そして、ここから本格的に98ノートというジャンルが始まることになります。その翌年、1990年の5月14日に発表されたのが、新たな98ノートとなるPC-9801NOTE SX(PC-9801NS)でした。6月に発売された雑誌には広告が掲載されていることを考えると、市場に流通したのは発表翌月となる6月のようです。
ラインアップは、FDモデルのPC-9801NSが298,000円、20MBのHDDを内蔵したPC-9801NS-20が448,000円でした。持ち運ぶ機種ということで重量は軽い方が良いわけですが、前モデルのPC-9801Nが2.7kgだったところ、PC-9801NSは約2.8kg、HDD内蔵のPC-9801NS-20でも約2.95kgと、両機種ともギリギリ3kg以内に収まっています。とはいえ、やはりズッシリとした手応えがあるため、カバンなどに入れて長時間持ち運ぶと腕や肩にキますが……。
本機の特徴は、広告に書かれているようにCPUに「高速32ビット386SX(12MHz・メモリアクセスノーウェイト)を採用した」ことでしょう。当時の雑誌『Oh!PC』には、「80386SXはCPU内部では32ビットで処理を、外部とのデータのやりとりは16ビットでそれぞれ行う仕組みになっています」とあって、更に「このCPUは、PC-9801NS発表のわずか1週間前に公開されたばかりでした」とも書かれていました。
肝心の処理速度ですが、NECは広告などで「PC-9801Nと比べて約2倍の処理能力を持っている」と謳っていて、これを確かめるべくベンチマークを取ったところ、ファイル操作が無い場合であればPC-9801Nと比べて約半分の処理時間で終了することが確かめられています。またDhrystone、Whetstoneの両テストでも、PC-9801Nと比べて2倍以上の差を付けていることが分かりました。
そんなPC-9801NSの搭載するメインメモリは640KBとPC-9801Nと同じですが、RAMドライブを1MBのユーザーズメモリとして使用することで1MBをプラスできたほか、1MBまたは2MBの増設RAMカードを使用すれば最大で3.6MBまでの拡張が可能です。なお、NEC純正の増設メモリPC-9801N-01は2MBで140,000円でしたが、アイ・オー・データ機器ならば38,000円、メルコ(当時)のものでは39,800円と1/3以下に抑えられていました。
PC-98NOTEシリーズ初となる20MBのHDDを内蔵したPC-9801NS-20では、HELPキーを押して電源を入れることで表示させられる98NOTEメニューにて、時間を1分から60分まで任意で設定することで、HDDにアクセスがなければ自動的にモーターが停止してリトラクトが行われる仕様が追加されています。この場合は、STOPキーをいちいち押さなくても良いほか、停止からの復帰も数秒で行われ、しかも動作音もかなり静かでした。
静かという観点では、PC-9801Nに搭載されていたFDDはアクセス時の動作音が少々耳障りでしたが、PC-9801NSではかなり静かになり、耳を近づけないと聞こえないほどになっています。あわせてキーボードのキータッチも改善され、PC-9801Nの若干引っかかる感じがなくなり、全体的に反発力が弱まりました。
搭載されている液晶ディスプレイは、ブルー液晶そのものは変わっていません。しかし、PC-9801NではELバックライトだったものが、PC-9801NSではCFL(冷陰極管)サイドライト付き8階調液晶ディスプレイに変更されました。これにより、画面が格段に見やすくなっただけでなく、寿命も倍以上になっています。
他にも、PC-9801Nでは左側面に設置されていたディップスイッチですが、PC-9801NSではそれがなくなりました。代わりにPC98NOTE SX メニューにて、デスクトップと同じ8個×3連ディップスイッチを設定するように変更されています。また、スピーカのボリュームもこのメニューから設定できるようになり、音量を変更出来なかったPC-9801Nの時から大幅に使いやすくなりました。とはいえ、物理的なボリュームつまみがついていないため、音量を変えるには必ず98NOTE SX メニューを経由しなければならないのが残念なところですが。
CPUにV30を搭載したPC-9801Nから、一気に80386SXへと進化を遂げたPC-9801NSは、この後も新機種がリリースされることとなります。