ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

待望のレジューム機能を搭載した98ノート「PC-9801NV」

外見はPC-9801Nから踏襲されたデザインになっているため、それほど大きな違いはありません。しかし、インジケータが一新されていたり、サイズ的に少々大きく、重くなっていたりと、細かい部分は変わっています。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は、NECがPC-9801NSの次にリリースしたノートパソコン「PC-9801NV」を取り上げました。

初めて広告が掲載された時は「母上、私はしっかり成長しています。」とのキャッチコピーのもと、イメージキャラクターの大江千里さんがPC-9801NVを小脇に抱えて撮影に臨むという写真が使われていました。以降はRAMドライブを前面に押し出して、PC-9801NSと同時掲載パターンもありました。その時のキャッチコピーは「前向き人生のオーエは、RAMドライブである。」でした。

 1989年11月24日、NECはPC-98シリーズ初となるノートパソコン「PC-9801N」(愛称98NOTE)を登場させました。ノートサイズのPC-98シリーズを待っていた人に大ヒットした同機種は、その約半年後の1990年6月、CPUに386SXを搭載したPC-9801NSを発売します。これにより、CPUにV30を採用したPC-9801Nとの2本柱となったわけですが、1990年11月21日に発表されたのは、PC-9801Nの後継機となる新機種、PC-9801NVでした。価格は248,000円で、PC-9801Nと同じお値段ながらも数々の新機能が搭載されています。

 CPUは刷新され、V30を高速(High speed)かつ低消費電力(Low power)で駆動させるようにしたV30HLを採用していました。クロック周波数はメモリアクセスノーウェイトの16MHzで、PC-9801Nと比べると約1.6倍の高速処理を実現しています。本体メモリは640KBytes、RAMドライブ専用メモリ1.25MBytesを標準装備していて、RAMカードを追加すれば最大8.6MBytesまでの増設が可能です。

蓋を閉めて、セカンドバッテリも取り外した状態で撮影してみました。バッテリを2つ外すだけで、一気に軽くなります。また、インジケータがPC-9801NやPC-9801NSとは違っているのも良く分かります。強く拭きすぎて、一部塗装が剥げてしまいました……。

 また、これまではモデムを内蔵していた部分に、新たにセカンドバッテリを実装することができるようになりました。これにより、内蔵バッテリと合わせて最大3.8時間のバッテリ駆動を可能としています。今でこそ、ノートパソコンは充電せずとも1日中使えるのが当たり前ですが、この頃は4時間弱でも長時間稼働の領域に入るものでした。その代わりに、厚みはNSに比べると5.5mmほど増加しています。これはセカンドバッテリを載せるためなので、稼働時間とのトレードオフと言えるでしょう。

 本機最大の特徴が、98NOTE市場で初となるレジューム機能を装備したことです。レジューム内容は、搭載された2つのバッテリがフル充電されていれば10日もの間、内容を保持することができました。レジュームからの復帰時には、起動時の「ピポ」とは違う「ピピ」というビープ音を鳴らして動き出すので、どの状態から稼働したのかを耳でも区別できるようになっているのも新しいところです。レジューム機能がついたことで98NOTEは、「持ち運んで使うという機動力を得た」と言えるかもしれません。

正面から撮影した写真です。ディスプレイは、初期98NOTEお馴染みの、青みがかかったものとなっています。キーボードも前モデルと同じなのでキーストロークは少々深め、フワッとしたキータッチもほぼ変わっていません。

 レジューム機能と合わせて、インジケータ表示もパワーアップされています。メインのバッテリパックを使用しているときはグリーンに、セカンドバッテリパック使用時はアンバー、そして両方が消耗するとレッドに、それぞれ点灯しました。充電表示ランプも、メインバッテリ充電時が赤、セカンドバッテリ充電時にアンバー、そして充電終了と同時に消灯となります。PC-9801Nでは、バッテリの状態を知る手段がなかったので、これは嬉しい変更と言えるでしょう。

 物理的なディップスイッチを廃止したPC-9801NSから内蔵された98NOTEメニューですが、本機では“98NOTE NV メニュー”という名称で搭載されていました。新機能として盛り込まれたのが、1分から最大60分までの任意の時間キーボードを触れないでいると自動的に電源を切る、オートパワーオフ機能です。ただし、同時にレジューム機能も使用する設定にしておかないと単に電源が切れてしまうだけで、それまでの作業内容がパーになってしまうので要注意(笑)。

本体背面は左から、テンキーパッド接続端子、マウスコネクタ、RS-232Cコネクタ、プリンタポート、バックアップスイッチ、拡張バスと並んでいます。それぞれの上段には、標準ではバッテリパックが設置されています。

 また、CPUクロックを16MHzにするか、それとも稼働時間を延ばすために8MHzにするかといった設定や、EMS機能を何に使用するかといった項目も、新たに設定できるようになっていました。

 ディスプレイとキーボードはPC-9801NSと共通のパーツを使用しているため、モニタ部分はPC-9801NSと同じCFLサイドライト付き単色8階調液晶ディスプレイとなっています。しかし、PC-9801NS登場から半年が経過したためか、その時のものよりも少々改良されたようで、明るく見やすく、スクロール時の画面の乱れも少なくなっていました。

右側面には3.5インチのFDD、左側面にはACアダプタ接続口とリセットボタン、そして拡張RAMカード挿入口が設けられていました。

 この頃になると、98NOTEをターゲットとしたソフトや周辺機器も充実してきて、ノートでも十分な作業が出来るようになってきます。このため、デスクトップ型は拡張スロットを4つ確保したモデルが占め、ヘビーな使い方をしないのであればノートでも、というスタイルが徐々に生まれていきました。とはいえ、まだ内蔵されているモニタがカラーでは無かったため、市場ではカラー液晶を搭載した98NOTEの登場を待ち望む声もあったのですが、そのあたりに関しては回を改めて紹介したいと思います。

この頃には98NOTEに接続するHDDや増設EMSメモリカード、FAXアダプタなどだったり、98NOTEを対象にした情報管理ソフトが発売されるなど、いわゆる98NOTE市場と呼ばれるものも拡大していきました。