ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち
歴代のPC-8801シリーズを振り返る その3「PC-8801FH/MH編」
2025年2月12日 09:05
想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今春に発売予定となっている「PasocomMini PC-8801mkIISR」を前に、特別企画として「PC-8801シリーズを振り返る」をお送りします。第3回目は、CPUのクロックスピードをアップさせた「PC-8801FH/MH」を取り上げました。
歴代のPC-8801シリーズを振り返る 連載一覧
- その1「PC-8801/PC-8801mkII編」
- その2「PC-8801mkIISR/TR/FR/MR編」
- その3「PC-8801FH/MH編」(近日公開)
1980年代には数多くのマイコンやパソコンが登場しましたが、その中でも一際目立っていたのがNECから登場した「PC-8801」シリーズではないでしょうか。1981年に誕生した初代のPC-8801から始まり、PC-8801mkII、PC-8801mkIISR、PC-8801mkIITR、PC-8801mkIIFR、PC-8801mkIIMR、PC-8801FH、PC-8801MH、PC-8801FA、PC-8801MA、PC-8801FE、PC-8801MA2、PC-8801FE2、そしてPC-8801MCと、最終的には全部で14機種が発売されています。
この連載では数々の機種を取り上げてきましたが、今春に発売が予定されている「PasocomMini PC-8801mkIISR」を前に“PC-8801シリーズを振り返る”と題して、今回はCPUのクロックスピードを8MHzへとアップさせた「PC-8801FH/MH」を改めて見ていきます。
初代PC-8801が発売されたのは今(2025年現在)をさかのぼること44年前、1981年9月21日の事です。その2年後に、ディスクドライブを搭載したPC-8801mkIIが誕生しますが、基本的な機能はPC-8801とそれほど大きくは変わっていませんでした。これらをPC-88第一世代と呼ぶならば、前回この連載で取り上げたPC-8801mkIISRやFR、MR、TRは、PC-88第二世代と言えるでしょう。
そして1986年11月6日、NECはPC-88第3世代となるPC-8801FH/MHを発表します。さらに、同日から8日にかけて行われたNECパソコンフェア'86では、この2機種もいち早く展示されていました。
PC-8801FHには3モデルが、PC-8801MHは1モデルがそれぞれ用意されていて、価格はFDDレスのPC-8801FH model 10が99,800円、model 20が138,000円、model 30が168,000円となっています。1Mバイトタイプ5インチFDDを2基搭載したPC-8801MHは、208,000円でした。
それぞれ前機種に当たるPC-8801mkIIFR、MRと比べると、FHはmodel 20とmodel 30が1万円ずつ安くなり(model 10の価格はFRと同一)、MHは3万円も価格ダウンとなりました。PC-8801FHに関しては、後に本体、キーボード、ディスプレイとも黒色というブラックモデル・PC-8801FH model 30(B)が、PC-8801FH model 30と同価格でリリースされています。この時点では、NECのパソコンにブラックモデルはなかったということもあり、非常にシックで格好良く見えました。ただし、現在あまり見かけないことを考えると、それほど多くの台数は流通しなかったようです。
PC-8801FH/MH最大の特徴が、広告で「一線を越えた高性能に触れて下さい。新しい88は君の至近距離」という見出しにあるように、従来機種比でアップした速度とダウンした価格でした。中でも、速度に関しては「新CPUにμPD70008AC-8を新たに採用。8MHzのクロックで、処理スピードを飛躍的に向上させました(従来は4MHz)」と書かれていたほど、ウリとして前面にだしています。
さらにMHは、MRから引き続いての2HD対応FDD2基内蔵と128Kbytesの拡張メモリも搭載していました。これにより、標準で添付されているN88-日本語BASICでは文節変換が可能となっています。FHもmodel 10以外はN88-日本語BASICが同梱されていましたが、変換方法は熟語変換でした。
付属するキーボードも、従来機種から大きく変更されています。日本語処理が念頭に置かれたことで、キートップには日本語をふんだんに取り入れてあるほか、変換キーや全角キーなど日本語処理時にあると便利なキーも追加されていました。これまでずっと不便だったカーソルキーも逆T字型に設置されて、ようやく不自由の無いカーソル移動が可能となっています。
PC-8801FH/MHの登場により、市場には8MHzをターゲットとしたソフトが少しずつ並ぶようになりました。特に、エニックス(当時)から発売された『プラジェータ』は、パッケージに8MHz専用と謳われていたのは有名かと思われます。もっとも、動作速度が遅くても良いというのであれば、従来の4MHz機種でも動かすことはできました。もちろん、それで面白いか? ちゃんと遊べるものになっているか? といった話とはまた別ですが……。
また、4MHzと8MHzでは演出が変わるタイトルも登場してきたことで、4MHz機種ユーザーとは違うリッチな体験をしたという人もいたかと思います。分かりやすいのは、『ソーサリアン』のエンディングや、『イースIII』のオープニングデモで見られるスクロールではないでしょうか。こうして、御三家のシャープと富士通がやらなかった部分をNECはパワーアップし、結果としては成功を収めたと言えるかと思います。
「PasocomMini PC-8801mkIISR」では、4MHzと8MHzの切換があるのかどうかや、Mシリーズが搭載していた128Kbytesの増設メモリに関してはどうなのか、といった部分は今のところ謎ですが、時間と共に明らかになっていくと思いますので、続報を待ちたいと思います。
次回は、これまでのFM音源3声、PSG音源3声からパワーアップして、FM音源6声にPSG音源3声という新たな表現力を備えたPC-8801FA/MAを取り上げます。