ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

80年代後期のパソコン事情Part1~永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記~

永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記

 連載「ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・ゲームたち」の番外編として、この記事では総合科学出版から発売されている「永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記」(著:佐々木 潤・レトロPCゲーム愛好会)の一部記事を抜粋し、紹介しよう。

 今回取り上げるページは、“80年代後期のパソコン事情Part1”だ。なお、書籍版では画像はモノクロだが、諸事情により本記事では一部カラーや別の写真を掲載している。


80年代後期のパソコン事情Part1


ジャンルの固定化とパワー勝負が印象深い80年代後期のパソコンゲーム

 1984年から86年を80年代中期とすれば、87年から89年までが80年代後期と定義づけられるだろう。

 1987年といえば、あの名作『イース』や「ハイドライド」シリーズ完結となる『ハイドライド3』が発売された時期であり、ソフトラインアップが徐々にNECのPC-8800シリーズへと偏っていったタイミングでもあった。『ソーサリアン』や『ウィザードリィ#3』、そして『マイトアンドマジック』など名作も続々と登場し、ソフトの当たり年だった。

 この頃になると、NECのPC-8800シリーズが数的優位に立っており、富士通のFMシリーズとシャープのX1シリーズはユーザ数を減らしていた。

 その状況を反映してか、ソフトは最初にPC-8800シリーズで発売され、その後に他機種版がリリースされる流れになっていく。これも、時間の経過とともに対応機種がPC-8800シリーズのみというタイトルも出現し、その潮流は次第に大きくなっていった。

 また、発売されるソフトのジャンルもロールプレイングゲームがほとんどで、パソコンハードとしては作りづらいアクションやシューティングはごく稀、シミュレーションやアドベンチャーが若干の勢力を保っていたという程度だ。

『イース』や『ハイドライド3』、『ソーサリアン』といったRPGが豊富だったのが1987年。この頃、PC-8800シリーズの人気がピークを迎えた。

ユニークな思考ルーチンを実現した麻雀ゲーム

 そんな時代に、『テグザー』や『シルフィード』で一躍名を広めたゲームアーツは、片山まさゆき氏の麻雀漫画『ぎゅわんぶらあ自己中心派』を題材にした同名の麻雀ゲームを発売する。

 それまでの麻雀ゲームといえば、イカサマなしの強力な思考ルーチンをうたい文句にするか、脱衣など別要素をウリにするか、どちらかのパターンがほとんどだった。しかし本作は、原作漫画のキャラクター設定通りの思考ルーチンで打たせるというユニークな試みを実現させ、強さ、弱さ、打ち方などをゲームに反映させていた。

 もちろん、キャラのクセを取り除いた通常の思考ルーチンで対局することもできる。場決めのときにアニメーションするサイコロの挙動に納得がいかないので何度も作り直して発売が伸びたという噂や、各キャラクターが“リーチ”や“ロン”としゃべるのが魅力という部分はよく取り上げられている。しかし、思考ルーチンに注目することで、同作のさらなる面白さを再認識できるはずだ。

『シルフィード』の広告とペアで掲載されていたため、注目を惹いたと言われる『ぎゅわんぶらあ自己中心派』。片山まさゆき氏が漫画で描いたキャラクターたちを、比較的その思考に近いかたちでゲーム中に登場させることに成功している。

アドベンチャーゲームも少数精鋭でジャンル確立

 ロールプレイングゲームに押され気味だったこの時期のアドベンチャーゲームだが、市場に登場する作品はどこかとがっており、しっかりと一定の評価を得ていた。特に目立っていたのが、ハードボイルド調でストーリーが展開していくリバーヒルソフトの「J.B. ハロルド」シリーズや、アニメをゲーム化したマイクロキャビン一連の版権物作品だろう。

 前者は、1986年に登場した『殺人倶楽部』が1作目で、実写を思わせるようなイラストと綿密に練られた人間関係、重厚なシナリオが特徴だった。2作目の『マンハッタン・レクイエム』、そのアナザーストーリーである『キス・オブ・マーダー』、そして3作目の『D.C. コネクション』も魅せるアドベンチャーとしてユーザの評価も高い。

リバーヒルソフトはJ.B.ハロルドを主人公にしたシリーズで、アドベンチャーゲームの雄として名を上げていった。J.B.の渋い人物像に惹かれた人も多いだろう。

 マイクロキャビンの一連の作品は、1作目が漫画家・高橋留美子氏の作品『めぞん一刻』を原作としたアニメをゲーム化した『めぞん一刻』。しかし、その土壌は『英雄伝説サーガ』や「は~りぃふぉっくす」シリーズ、『カーマイン』『ギャルっぽクラブ』などに見ることができるだろう。

 残念ながら一発目の『めぞん一刻』は、グラフィックがアニメ絵とあまり似ていないという致命的な部分もあった。これを反省してか、アニメ作品2作目『うる星やつら~恋のサバイバルバースディ~』ではクオリティが大きく向上し、ユーザからの評判も大幅アップ。以降、『めぞん一刻 完結編 ~さよなら、そして……~』『きまぐれ オレンジ☆ロード ~夏のミラージュ~』『ホワッツマイケル』などの作品も、アドベンチャーブームの終わった80年代後半によい結果を残している。

知名度的に高かった高橋留美子氏の作品を原作としたアニメを題材に、ゲーム化していたのがマイクロキャビン。『めぞん一刻』がヒットしたことで、以降も『うる星やつら』など同じ路線の作品をコンスタントにリリースしていく。
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