パワレポ連動企画

Core i7-5675Cで作る静かに使える省エネ小型PC
~CPUを活かした自作プラン その2~

【勢力図一変!? 最新CPUはこう使え!(8)】

DOS/V POWER REPORT 2015年8月号

 こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の特集をほぼまるごと紹介するこのコーナーでは、「2015年8月号」の第一特集「Broadwellが来た! Godavariも来た!! 勢力図一変!? 最新CPUはこう使え!」を掲載する。

 3回連続でお送りする、CPUを活かした自作PC作成プラン。2回目の今回は、机に置くことのできる小型で静音、しかもパフォーマンスは妥協しないPCの登場だ。強力なGPUを内蔵しながらTDPは65WというCore i5-5675Cを搭載した、性能に妥協のない省エネ小型PCをとくとご覧あれ。

 この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2015年8月号は全国書店、ネット通販にて6月29日(月)に発売。新CPUを一挙に紹介する第一特集のほか、冷却も静音もバランスが大事!シチュエーション別に検証をする第二特集「自作ユーザー志向別 冷却・静音チューンナップ指南」、老若男女誰でも使える、安くてすごい小型のPC!「超小型ARMコンピュータ Raspberry Pi最前線」、余ったドライブをUSB 3.1で有効活用!「USB 3.1対応製品登場で新展開! 最新外付けドライブケース 40選」、見逃した番組も好きなときに観られる。そう、インターネットならね。「絶対加入しておきたい動画配信サービス」など、特別企画も満載。人気の連載記事、髙橋敏也氏による「髙橋敏也の改造バカ一台」や本Web連載中のAKIBA限定!わがままDIY+の本編「わがままDIY」も掲載だ。

 今号の特別付録は豪華二本立て。最新の略語まで一冊でカバー、明日からバリバリ使える知識満載の「最新 パソコン略語辞典 2015」と、最新のスラングまでバッチリ収録、ネットでしか通じない知識満載の「30代以上のためのネットスラング辞典」だ。


- 静かに使える省エネ小型PC ~CPUを活かした自作プラン その2~ -


CPUを活かしたオススメ自作プラン2
Core i5-5675Cで作る、静かに使える省エネ小型PC

使うCPUはこれ!

Intel
Core i5-5675C

 4コア4スレッド実行に対応したCore i5シリーズの上位モデルだ。動作クロックは3.1GHzで、内蔵するGPU は「Core i7-5775C」と同じ「Intel Iris Pro Graphics 6200」


 Core i5-5675Cは、動作倍率が解除されたオーバークロック(OC)対応の高性能CPUだ。しかしその一方で発熱の目安となるTDPが65Wと低く、冷却の負担は小さい。また内蔵GPUは性能が高い「Iris Pro Graphics 6200」であり、描画負荷の低いPCゲームなら十分楽しめる。こうした特性を考えると、小型の静音PCを作るのに向いている。


・机の上に置けるサイズの小型PCが欲しい
・低発熱の構成でも性能には妥協したくない
・書類作成などは静かな環境で行ないたい

ここがポイント
拡張スロットが上に来る形でマザーボードを設置する。背面の12cm角ファンは、サイドフロータイプのCPUクーラーと相性のよい位置だ

 そこで今回は、デザインに優れるMini-ITX対応の小型PCケースを使い、静音性と性能の両方を突き詰めたPCを作ってみた。

 液晶ディスプレイの横に置いて、静かに使えるメインPCに向いている。また小型でPCらしくないデザインなので、テレビの横に置いて、メディアファイルや写真を表示するPCとして使うのもよいだろう。

使用したパーツとベンチマークスコア
【検証環境】OS:Windows 8.1 Pro Update 64bit版、PCMark 8:PCMark 8 v2.4.304- Home Acceleratedのスコア、3DMark:3DMark v1.5.884-Fire Strikeのスコア、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:OCCT 4.4.1 Power Supplyテストを10分稼働させたときの最大値、電力計:Electonic Educational Devices Watts Up? PRO

このマシンの重要パーツ

PCケース
カラバリ豊富で内部が見える小型キューブタイプケース

RAIJINTEK
METIS

 METISは、アルミ外装の小型キューブタイプケースだ。カラーバリエーションが豊富で実売価格も安い。今回の作例では静音性を重視しているため、比較的大型のCPUクーラーを組み込むが、高さ16cmまでのCPUクーラーに対応する。ただしサイズの関係で内部の容積が小さく、実質的に組み込めるパーツの種類は限られる。またPCケースから外せる部品が少ないため、組み込み難易度が非常に高く、パーツ選択の目利きや自作力の高さが問われるPCケースである。

Specification
規格:Mini-ITX●カラー:グリーン、ゴールド、シルバー、ブラック、ブルー、レッド●付属電源:なし●ベイ:3.5インチシャドー×1、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:12cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:なし●本体サイズ(W × D × H):190×277×254mm●重量:約2.8kg

右側板はアクリルパネルがはめ込まれ、組み込んだパーツがよく見える。CPUクーラーのファンや背面ファンの動作状況を確認しやすい
小型のキューブタイプケースとしてはめずらしく、12cm角の比較的大きめのファンを装備している

マザーボード
高度なファンコントロールが可能なZ97搭載の小型マザー

ASUSTeK Computer
Z97I-PLUS

 Intel Z97を搭載するMini-ITX対応マザーボードだ。このマザーボードで利用できる「Fan Xpert 3」では、CPUクーラーやPCケースのファンの回転数を柔軟な設定で調整できるため、静音性重視で小型PCを作る際には、欠かすことのできないパーツである。CPUソケットの位置が中央寄りで、大型CPUクーラーを組み込んでもヒートシンクがPCケースやPCI Expressスロットに干渉しにくいのもメリットの一つ。UEFIを最新版にアップデートすることで、Core i5-5675CやCore i7-5775Cが利用できるようになる。

ディスプレイ出力ポートは、DisplayPort、HDMI、DVI-D、Dsub 15ピンの4種類だ。無線LAN用のアンテナ端子は、添付のバックパネルシールドにアンテナケーブルを取り付けて利用する

Specification
規格:Mini-ITX●チップセット:Intel Z97●対応CPU:Core i7/i5/i3、Pentium、Celeron●メモリスロット:PC3-25600 DDR3 SDRAM×2(最大16GB)●拡張スロット:PCI Express 3.0 x16×1●主なインターフェース:Serial ATA 3.0×4、M.2(Socket 3、PCI Express 2.0 x2接続)×1、USB 3.0×6、USB 2.0×6

こちらにも注目

電源ユニット
ファンレスモードを備えた小型のSFX対応電源

SilverStone Technology
SST-ST30SF

 ATX対応電源より一回り小さく、ケース内に占める容積が少なくてすむ。出力は300Wまでとやや少なめだが、今回の作例では高負荷時でも100W前後なので問題ない。電源の内部温度が55℃に達するまではファンが動作しないファンレスモードを備えており、静音PCを作りやすい。

CPUクーラー
高さ16cmのサイドフロータイプ、METISにも収納可能

サイズ
虎徹

 12cm角ファンを備えるサイドフロータイプのCPUクーラーだ。ヒートシンクは中型で場所を取らないタイプだが、高さは16cmある。そのためMini-ITX対応PCケースでは組み込めないことも多いのだが、METISではギリギリだが対応しており、実際に組み込みが可能だった。

組み込みテクニック
パーツの組み込み順序と延長ケーブルの活用がカギになる

 METISから外せるのは両側板と3.5インチシャドーベイのみだ。天板や底面、前面は外せない構造なので、パーツを組み込んでいくにつれて、ケーブルを整理したり、接続したりするための手を入れるスペースがなくなっていく。しかし以下で紹介している手順に従えば、ほぼトラブルは起きないはずだ。

小型ケースは組み立ての順番がカギ

 今回の作例では、マザーボードのEPS12Vコネクタへのケーブル接続と、2.5インチSSDの組み込みに手こずった。虎徹はCPUクーラーとしては中型サイズだが、METISクラスの小型ケースに組み込むとかなり場所を取る。普通に組み込むと手が届かないEPS12Vコネクタに関しては、延長ケーブルで対処した。

 SSDは本来、底面の2.5インチシャドーベイに組み込む。しかし虎徹のヒートシンクがSSD用のスペースに目一杯張り出すため、事実上利用できないのだ。そのため、3.5インチシャドーベイにあった2個のネジ穴を使ってSSDを固定した。電源ケーブルは、内部にある電源用のAC延長ケーブルをフックの代わりに使って整理を行なった。

EPS12Vコネクタへの接続は延長ケーブルを使う

 虎徹を組み込んだマザーボードをPCケースに固定すると、EPS12Vコネクタの周囲のスペースは非常に狭くなり、EPS12Vコネクタには手が届かない状態になる。

 この問題を解決する一番簡単な方法は、EPS12Vの延長ケーブルを使うことだ。マザーボードに延長ケーブルを挿して、延長ケーブルのメスコネクタに、電源からのケーブルを挿す。

今回はアイネックスの「EPS12V用電源延長ケーブル(PX-011A)」を使った

SSDは天板近くの3.5インチシャドーベイに組み込む

 METISでは、底面に2.5インチシャドーベイを搭載する。しかし虎徹を組み込むと底面ギリギリまでヒートシンクが張り出してしまうため、事実上利用できない。

 天板に装備する3.5インチシャドーベイを見ると、二つの穴があった。この穴に2.5インチSSDのネジ穴を合わせてみると、ちょうどピッタリの位置に来るので、これを使ってSSDを固定した。

SSDを固定した3.5インチシャドーベイを、METISに戻した写真だ。周囲には十分に余裕があり、ケーブル接続も余裕を持って行なえる

内部のAC電源ケーブルに沿って各種ケーブルを整理

 天板近くには、前面近くに装備する電源用のAC電源ケーブルがある。PCケース内にはケーブル整理用のフックがないので、このAC電源ケーブルをそのフックとして利用すると便利だ。

 こんな感じでピンヘッダケーブルや電源のケーブルなどを、AC電源ケーブルと一緒にケーブルタイでまとめる。

検証
小型ケースでもCPU温度は低く動作音は非常に小さい

 Fan Xpert 3を利用するために「AI Suite3」をインストールしようとしたのだが、「対応バージョンではない」と表示されてインストールできない。どうもCore i5-5675Cの問題らしいので、Core i7-4790Kを装着してOSとAI Suite3をインストールした後にCore i5-5675Cに挿し換えたところ、AI Suite3が起動し、Fan Xpert3も利用できた。

 ファンのAuto Tuning機能のみでCPU温度の状況と動作音を検証したのが下のグラフだ。定格であれば高負荷時は66℃、全コアを4GHzにOCした状態でも72℃と、METISのような小型ケースでも十分に冷却できていることが分かる。一方で動作音は、グラフには掲載していないがどの状態でもアイドル時は暗騒音以下、高負荷時でも34dB前後と非常に静かだ。

CPU温度
動作音

 Z97I-PLUSの最新UEFIでは、Core i5-5675Cの動作クロックなどを調整し、性能や発熱を調整する機能が利用できる。これを使ってTDPを下げたところ(TDP DOWN状態)、CPU温度や消費電力は低下した。

システム全体の消費電力

OCとcTDPを試す

CINEBENCH R15では13%の性能向上

 定格状態でCINEBENCH R15を実行すると[CPU]は568cbだったが、全コアを4GHzまでOCすると644cbで、約13%性能が向上した。

TDP DOWN状態では性能が若干低下

 最新版のUEFIでCore i5-5675Cを利用する場合、Advancedメニューに[Configurable TDP Level]という項目が表示される。[TDP DOWN]を選択すると、モバイルCPUのように、TDPを下げて消費電力と発熱を抑えられる。

 [TDP DOWN]の状態だと、「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」のScoreは3,898だった。定格の4,270と比べると約9%低下している。


 Mini-ITXに慣れている筆者にとっても、かなり難易度の高い作例ではあった。しかし実際の動作音や温度の状況を考えれば、その苦労に十分見合う静音PCと言える。

 またM.2対応のSSDを使うと、SSDへのケーブル接続が必要なくなるので、組み込み難易度はちょっとだけ下がる。実売価格が下がってきたら、検討してもよいだろう。

Lite-Onの「M6e M.2 2280 PX-G512M6e」。実売価格は6万円前後

【検証環境】

OS:Windows 8.1 Pro Update 64bit版、室温:24.5℃、暗騒音:31.1dB、CPU温度:使用したソフトはHWMonitor 1.27で、CPU Temperatures のPackageの値、動作音測定距離:ケース正面から20cm、ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルドベンチマーク:設定は高品質(ノートPC)で、解像度は1,280×720ドット、電力計:Electonic Educational Devices Watts Up? PRO


【問い合わせ先】

Intel:0120-868686(インテル)/ http://www.intel.co.jp/
ASUSTeK Computer:info@tekwind.co.jp(テックウインド)/ http://www.asus.com/jp/
CFD販売:-/ http://www.cfd.co.jp/
Micron Technology:-/ http://jp.crucialproducts.com/
RAIJINTEK:info@itc-web.jp(アイティーシー)/ http://www.raijintek.com/jp/
SilverStone Technology:03-5298-3880(ディラック)/ http://www.silverstonetek.com/
サイズ:support@scythe.co.jp / http://www.scythe.co.jp/
アイネックス:042-467-7676 / http://www.ainex.jp/
Lite-On Technology:03-5812-5820(リンクスインターナショナル)/ http://www.plextor.com/


[Text by 竹内亮介]


DOS/V POWER REPORT 2015年8月号は2015年6月29日(月)発売】

★第1特集「勢力図一変!? 最新CPUはこう使え!」
★第2特集「自作ユーザー志向別 冷却・静音チューンナップ指南」
★特別企画「超小型ARMコンピュータ Raspberry Pi最前線」「最新外付けドライブケース 40選」「絶対加入しておきたい動画配信サービス」
★連載「最新自作計画」「自作初心者のための[よくある質問と回答]」「New PCパーツ コンプリートガイド」「激安パーツ万歳!」「髙橋敏也の改造バカ一台」「PCパーツ スペック&プライス」「全国Shopガイド」「DOS/V DataFile」

★ 紙版を買うと電子版(PDF)を無料ダウンロード可能
★ 特別付録小冊子「最新パソコン略語辞典 2015」「30代以上のためのネットスラング辞典」(紙版のみ別途付録、電子版では本誌末尾に収録)
★ 毎月700円(税込)で最新号が読める 直販電子版 月額プランも受付中
http://book.impress.co.jp/teiki/dvpr/2015-06-22-1648.php

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(AKIBA PC Hotline!編集部)