プロダクトレビュー・ショーケース
コスト重視“Non-K”モデルのベストパートナーも!?Intel B860/H810マザーボードカタログ
物価高の今だから気になるミドル~エントリーモデル text by 石川 ひさよし
2025年2月5日 10:00
2025年1月14日、“Arrow Lake”ことCore Ultraプロセッサー(シリーズ 2)対応のミドルレンジチップセット「Intel B860」、およびエントリー向け「Intel H810」を搭載した最新マザーボードの販売がスタートしている。
先行する上位モデル「Intel Z890」チップセットを搭載する製品は、チップセットのグレードが上なこともあり、マザーボード自体もハイグレード寄り。B860/H810マザーボードは、ミドルレンジ~エントリー向けの製品も多く、いわゆる“non-K”と呼ばれるオーバークロック非対応のCore Ultra各モデルとの組み合わせにも向く。
上位モデルや前世代も出るとのチップセットの主な違いは以下の通り。Intel 700世代にはアッパーミドルのH770がラインナップされていたが、Intel 800世代には現状存在していない。
Z890 | B860 | H810 | Z790 | B760 | H610 | |
CPUソケット | LGA1851 | LGA1851 | LGA1851 | LGA1700 | LGA1700 | LGA1700 |
CPU OC | ○ | × | × | ○ | × | × |
メモリ | DDR5 | DDR5 | DDR5 | DDR5 DDR4 | DDR5 DDR4 | DDR5 DDR4 |
メモリ OC | ○ | ◯ | × | ◯ | ◯ | × |
CPU PCI-E 5.0 レーン数 | 16(分割可)+4 | 16+4 | 16 | 16(分割可) | 16 | 16 |
CPU PCI-E 4.0 レーン数 | 4 | × | × | 4 | 4 | × |
DMI レーン数 | 8 | 4 | 4 | 8 | 4 | 4 |
チップセット PCI-E 4.0 レーン数 | 24 | 14 | 8 | 20 | 10 | × |
チップセット PCI-E 3.0 レーン数 | × | × | × | 8 | 4 | 8 |
SATA | 8 | 4 | 4 | 8 | 4 | 4 |
USB最大数 | 14 | 12 | 10 | 14 | 12 | 10 |
チップセット自体の世代交代による差は、PCI Expressのレーンがすべて4.0対応になった点、それに伴いPCI Express 4.0のレーン数が増えた点。チップセット内蔵の機能としては、Wi-Fiは6E、USBは3.2 Gen 2x2までが標準対応だが、マザーボードとしてはWi-Fi 7、USB4やThunderbolt 4をサポートする製品が多いのが今世代の特徴と言える。
人気ミドルレンジ~エントリー製品が勢揃いASRock
ASRockのIntel B860マザーボードラインナップはSteel Legend、Live Mixer、Pro RSそれぞれにATX、microATXモデルを展開。Mini-ITXモデルも2製品用意されている。Intel Z890モデルの目玉機能だった機能で見ると、Steel Legend、Live MixerおよびLightningモデルはThunderbolt 4、1000uF、20Kコンデンサを採用。Steel LegendおよびLightningモデルはメモリOCシールドを採用。Steel Legendモデルは2オンス銅箔PCB、Lightningモデルは10層PCBを採用している。
ネットワークについては現状のメインストリーム環境に即した2.5GbE、Wi-Fi 6Eとしている。ビデオカード着脱をサポートする機能も昨今トレンドになっているが、Intel B860モデルではシンプルにレバー部分を大型化した「ライト・リリース」を採用している。
Intel B760世代のSteel LegendはmicroATXのみの展開だったがIntel B860世代ではATXモデルもラインナップ。ホワイト基板に変わり白さもアップした。下段M.2ヒートシンクとチップセットヒートシンク部分にLEDを搭載している。
STEEL LEGENDのmicroATXモデル。拡張スロットはx16スロット1本のみとなる一方、M.2スロットは4基と豊富。M.2スロットのうち1基はチップセットヒートシンクの上という独特なレイアウト。
豊富かつ安定性重視のUSBポートを特徴とするLiveMixer。シルバーヒートシンクのシック路線のデザインがIntel B860モデルにも継承された。下段M.2ヒートシンク部にはLEDを搭載。拡張スロットとM.2スロットは少なめだがUSB機器の安定性を重視する方に向いている。
今回のラインナップでは、LiveMixerにmicroATXモデルが加わっている。コンパクトになっても機能的にはATXモデルとほぼ同等を実現。M.2スロットレイアウトの違いとそれによるM.2ヒートシンク、2番目のPCI Express 4.0 x4スロットが本機ではx16形状ではなくx4形状になっている、というくらいの違いだ。
質実剛健な仕様としつつ、ストレートのみで構成されたVRMヒートシンクはモダンを感じるデザイン。拡張スロットは2本、M.2スロットは3基とミニマム+αといったところ。なお、Thunderbolt 4やUSB4(40Gbps)は非搭載だが、USB 20Gbps(USB 3.2 Gen2x2)を搭載している。
PRO RS WiFiのmicroATXモデル。仕様はほぼ同じで、異なるのはCPU電源端子が8+4、2番目のPCI Express x4スロットの形状がx16からx4に、USB 5Gbpsが1ポートに、といった程度。
Phantom GamingシリーズのMini-ITXモデル。メモリOCシールドを採用、1000μF 20Kコンデンサを採用、10層PCB、10+1+1+1フェーズ電源回路とIntel B860モデルの中でもかなり豪華な設計になる。Thunderbolt 4も利用できるので、Mini-ITXベースのPCでも一つ上のスペックを目指す方に最適だ。
B860I Lightning WiFiをさらに一段シンプル化したMini-ITXモデル。8層PCBで8+1+1+1フェーズの構成になる。Thunderbolt 4は非搭載だがUSB 20Gbpsを搭載。映像出力にDisplay Port、HDMIの2系統、ネットワークが2.5&1GbEというデュアルLAN構成といったスペックも特徴的。
上位モデルからエントリーまで幅広く展開ASUSTeK
ASUSTeKからはIntel B860マザーボードがROG、TUF、PRIMEそれぞれ3製品、AYM GAMINGが1製品の計10製品が展開されている。加えて、PRIMEからIntel H810搭載製品も1モデル登場している。
ROGはATX、microATX、Mini-ITXの3サイズ展開。microATXモデルはホワイトモデルでもある。また、Thunderbolt 4に対応しているのはROGのみだ。B860のTUFは、Z890搭載モデルにあった“PRO”モデルはなし。TUFとPRIMEのB860搭載モデルは、いずれもATXが2製品とmicroATXが1製品をラインナップする。AYM GAMINGはパソコン工房専売モデルで、エントリーゲーマーにちょうどよいスペック&価格の注目株だ。
ROG STRIXの“F GAMING”という点でIntel Z890版「ROG STRIX Z890-F GAMING WIFI」のデザインを踏襲している。細かなところを見ていけば相違はあるが、ミドルレンジ向けのB860チップセット搭載モデルながらも、スペック重視のゲーミングユーザーの心をつかむ仕様に仕上がっている。
M.2も4基と豊富で、Thunderbolt 4、Wi-Fi 7も搭載。一見するとx16スロットのリリース機構が普通のものに見えるが、「傾けてロックを解除」するPCIE SLOT Q-RELEASE SLIMを採用。以下2つのROGモデルも同様の機構を備えている。
ROGのmicroATXモデルかつホワイトモデルでもある。拡張スロットをx16×1本に絞っているが、代わりにそのスペースをM.2スロットに用いて計4スロットを確保。メモリスロットも4本あるので、拡張スロット1本と言ってもMini-ITXをはるかに上回る拡張性を有する。VRMは80A SPSを用いた14+1+2+1フェーズ。
ROGのMini-ITXモデル。ヒートシンクには微細なパンチングホールを設けてROGらしい見た目を演出。無線LANはWi-Fi 7、Thunderbolt 4も装備する。PCIE SLOT Q-RELEASE SLIMをはじめ各種のEZ PC DIY機能も搭載しており、Mini-ITXでも組み立てやすさを改善している。
ヒートシンクの配置はIntel Z890の「TUF GAMING Z890-PLUS WIFI」に近いが、形状は若干シンプル化。とはいえソリッドなTUFデザインは健在だ。チップセットの扱えるPCI Expressのレーン数もあり拡張スロットは5本→3本へと削減されている。
TUFのmicroATXモデル。2本の拡張スロットの間にあるM.2にもヒートシンクを装着。TUF GAMING B860-PLUS WIFIよりもソリッド感が強く感じられ、色こそ違うが「TUF GAMING Z890-PRO WIFI」のイメージに近く見える。拡張スロット2本、M.2スロット3基、メモリスロット4本と、バランスのよいスペックだ。
上のTUF GAMING B860M-PLUS WIFIからWi-Fi/Bluethoothを省いたモデル。有線LANをメインに使うユーザーなら、コスト重視で無線通信機能なしが選べるのは嬉しいところ。
カジュアルゲーマー向けに価格を抑えつつ基本のゲーミングスペックを実現した「AYW」。PCIe Slot Q-Releaseを装備するところはまさにゲーミング向けだ。シルバーカラーはPRIMEシリーズにも通じるが、スペックは独特だ。x16スロットはGen4仕様でメモリも2スロット。一方で2基のM.2スロットのうち1基はGen5 x4仕様になっている。
スタンダード向けのPRIME、企業向けに高品質なマザーボードを安定供給するCorporate Stable Model(CSM)プログラムに属するモデル。かなりユニークな製品で、今どき拡張スロット5本もあるマザーボードは数少ない。とくに拡張カードをたくさん挿したいニーズならこのマザーボードだ。
PRIME B860-PLUS WIFI-CSMからWi-Fiを抜いたような名前だが、まったく異なるスペック。拡張スロットは2本になり、代わりにM.2スロットは4基に。豊富なM.2スロットは上位モデルにもあるが、本製品は価格を抑えたスタンダードマザーボードというところがポイントだ。
ゲーミングモデルと比べると安価格ゾーンのPRIME、かつmicroATXモデルだが、大型VRMヒートシンクに一体型バックパネルなどを装備している。安いが安く見えない、安定性や組み立てやすさで手を抜いていないところがポイントだ。メモリスロット4本、拡張スロット3本、M.2スロット2本など、拡張性も見劣りするところがない。
Intel H810チップセットを用いたミニマムなmicroATXマザーボード。拡張スロットは2本でいずれもGen 4、M.2スロットも2基あるがどちらもGen 4 x4という仕様。VRMは6+1+1+1フェーズで、CPUソケットの左側のみ小さなヒートシンクを装着している。ほかPS/2のようなレガシー端子を備えるところも特徴的。メモリスロットは2本、映像出力はDisplay PortとHDMI。